機動戦士ガンダムダレト   作:オンドゥル大使

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第108話「死の淵に立つ」

 

 ――自分の生きていく世界なんて存在しない。

 

 そう規定して、複数のロックがかけられた隔壁を通過し、潜入用の秘匿パイロットスーツに身を包んだまま、コロニーの天蓋を進む。

 

「……あまりにも静かだな。いや、しかしここは……」

 

 見下ろした先は工業地帯の緑地が広がっており、砂塵が舞い上がっていた。

 

 コロニー、レイチェル。

 

 中規模の統合機構軍に配されるコロニーでありながら、その真の目的は試作機の運用にある。

 

 ビル群が居並んでいるが、どれもこれも中身は薄っぺらい。

 

 ダミーの会社が入っているばかりの虚飾。

 

 まるで性質の悪い舞台劇のよう。

 

「……幕切れには程遠い。それにしたってカーテンコールにはあまりに遅いな。動きを悟られていないと言う証明でもあるが……」

 

 言葉を濁したのはこの先どうなるかはまるで不透明だからだ。

 

 バイザー上にポップアップディスプレイを呼び起こす。情報として得たものは大きく二つ。

 

 一つは、このコロニーで数時間以内に実行される作戦と、そしてその作戦に誘い込まれる形の陣営。

 

 両者がぶつかり合えば、人死にが生じるのは自明の理。

 

「……だが、もう一つある。試作機運用のためのコロニーならば、如何にブラフとは言え、それなりのものを用意しているはずだ」

 

 たとえ疑似餌であったとしても、何かしら掴めれば大きな成果となる。

 

 パイロットスーツに備え付けられた推進剤を噴かせつつ、近場の製造工場へと乗り込んでいた。

 

 眼前にあったのはライドマトリクサー専用コネクターである。

 

 片腕を翳し、何度か交錯の赤い光が明滅した後、目元を覆い隠している補助端末に偽装情報を走らせていた。 

 

 赤い残滓が線となって漂う。

 

 稼働した扉の向こうは完全な暗礁の闇に染まっている。

 

「……まったくの嘘と言うわけでもないはずだ。何かがある……その何かは……」

 

 しかし深く潜り込み過ぎれば危険なのは自明の理。

 

 ヘルメットの耳元を探り、通信を繋いでいた。

 

「こちらコード、マヌエル。コード、ロキへ。そちらの解析情報を乞う」

 

『“達す。こちらの走査の限りでは事前情報にあった新型機はその奥にある模様”』

 

「助かる。それにしても、嘘偽りにしては厳重な警備だ。ライドマトリクサー以外を拒む機構とは」

 

『“恐らくは我々の介入目的を察知しての警戒レベルなのだと思われる。重々承諾せよ”』

 

「分かっているさ。要はいつも通り、痕跡さえも残さなければいい」

 

 それにしても、と緑地から漂ってくる砂塵を見据えて、ふと呟いていた。

 

「……戦闘になれば、穏やかではなさそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出撃前のゲン担ぎだ、と言い出したのはサルトルであった。

 

「カトリナ女史。生きて帰って来いよ」

 

「当たり前じゃないですか。私は……これまでも……」

 

「だが無茶をするな。無理だと思ったら即時撤退するんだ」

 

「そんなの……私が作戦責任者なんですから――!」

 

 そこから先の言葉はサルトルの真剣な面持ちに遮られていた。

 

 彼は心の奥底から自分を心配してくれている。

 

 そんな相手に虚飾で振る舞うのは不義理だ。

 

「……私はそんなに……頼りないですか」

 

「前にばかり出る。もう期待の新人とは呼ぶまいが、それでも危ういのは変わらん。……あいつの影を、精一杯追いかけているのは分かる。だがな、お前さんはカトリナ・シンジョウであって、あいつではないんだ。なら、自分に出来る戦いをすべきだろう」

 

「……でも、ベアトリーチェは追い込まれていくばかりです。なら、私が示さなくってはいけないのは、せめて《オムニブス》でアルベルトさん達を支援する事くらい。……前回、《マギアハーモニクス》でマヌエルを使ったと聞いた時には、私……」

 

「あいつも無茶をやるようになった……ってのは前からか。三年前からお前さんとアルベルトは時が止まっちまってる。その時間を、埋めようにもオジサンはどうしようもない。若い連中に立ち止まれって言えるほど、偉くなったつもりもないんでね」

 

「……サルトルさんは正しいですよ。私は……おだてられているだけで……」

 

「それも実力のうちだ。カトリナ女史。何も浮ついた話なわけじゃない。本心から、生きて帰って来い。お前さんはおれからしてみれば孫みたいなもんだ。生きて帰って、その務めを果たすまで、絶対に死ぬな。それだけだ」

 

 整備班が次々と《オムニブス》から離れていく。

 

 カトリナは最後のサルトルの言葉に胸元に提げていた鍵を意識する。

 

「……孫……おじいちゃん……。私、何やってるんだろうね。おじいちゃんの言う、立派な人間って言うのに、成れているのかな。それともこれは……」

 

 これは間違いなのだと、正してくれる人間は誰も居ない。

 

 皆、居なくなってしまった。

 

 なら、暗礁の中を這い進むのは、自分の特権だ。

 

『《オムニブス》、カタパルトデッキに移行。発進どうぞ』

 

「……《オムニブス》。カトリナ・シンジョウ、先行します……!」

 

 リニアボルテージの電流を巻き上げて《オムニブス》が発艦する。

 

 今回のメイン任務であるコロニー、レイチェルへの潜入は既にパスコードを受け取っており、さほどリスクはないはずだ。

 

 MS用の運行扉へと《オムニブス》より伸長させたハッキングアームでパスコードを打ち込む。無重力の虜となった《オムニブス》は機体各所に備え付けられた火器の照準を同期した自分の視線で彷徨わせる。

 

「……ここから先は……出たとこ勝負……!」

 

 幸いにして人は居ない。

 

 コックピットハッチを開け放ち、カトリナはタラップを駆け上がっていた。

 

 グリップは生きているが待ち伏せされれば狙い撃ちにされてしまう。

 

 足で蹴りつけ、無重力地帯を漂う。

 

「それにしたって……警備もない? 少しずさんなくらい……」

 

 いや、今はそれさえも自分の進む糧とすべきだろう。

 

 カトリナはホルスターに留めておいた拳銃を意識する。

 

 トリガーに指をかけたところで、震えが生じていた。

 

「……また……っ。私は、また、こんなところで躊躇ってる場合じゃ……」

 

 深呼吸し、己を研ぎ澄ますも拳銃を握る手は想定外なほど冷たい。

 

 血潮など通ってはいないかのように。

 

 あるいは、これそのものを拒む自分の潜在意識か。

 

「……今さら殺意を拒んでいる場合じゃないでしょ、カトリナ……」

 

 道を折れたところでカトリナは監視カメラがこちらを見据えているのを発見した。

 

「一拍遅れた……!」

 

 慌てて監視カメラが発動する前に無力化の銃撃を見舞うが、それにしても奇妙だ。

 

「……すぐにタレットを起動させて、警戒レベルを引き上げてもいいはずなのに……。ここの警戒網は緩い……。まるで……潜り込んで来てくれと言っているようなもの……」

 

 だが自分の目的は潜入にある。

 

 相手の思惑は知らないが、その懐に入れるのならば最大限に利用させてもらう。

 

 隔壁を手持ちの爆薬で吹き飛ばし、カトリナは目的の階層にある格納デッキへと肉体を躍らせていた。

 

 カバーのかけられているのはロールアウト前の新型機か。

 

 その開発現場に辿り着いた、と意識の網を緩めた瞬間――不意に警戒色に周囲が染まる。

 

 けたたましいブザーが鳴り響く中で、カトリナは新型機を照準に捉えていたが、その時には相手が起き上がっていた。

 

 灰色の喪服を思わせる機体が挙動し、能面の頭部より赤い眼光を滾らせる。

 

「……あれは……騎屍兵……《ネクロレヴォル》? 誘われた……ッ!」

 

 そうだと気付いた時には既に遅い。

 

 格納デッキに収まっていたのは全て、新型機に偽装した《ネクロレヴォル》隊であった。

 

「……まさか、作戦が割れていた? それにしたって、待ち伏せなんて……!」

 

 自分一人では確実にここでの作戦実行には至らない。カトリナは直通回線を開いてアルベルト達に救援を要請するも、《ネクロレヴォル》の動きはあまりに迅速であった。

 

 まず、自分の想定していた帰投ルートを塞がれ、次いでこの深部まで潜って来た道筋をビームライフルで溶断される。

 

 これでは退路も進路も存在しない。

 

「網にかかったって? ……これじゃ……《オムニブス》!」

 

 アイドリングモードに設定しておいた《オムニブス》が隔壁を火器で破り、深部へと自分のシグナルを頼りに機動してくるが、パイロットの搭乗していない《オムニブス》など格好の的であろう。

 

 発振されたビームサーベルの残光が焼き付き、《オムニブス》を両断する。

 

 爆発の光輪が押し広がる中で、カトリナは脱出の手立てを探ろうとしていた。

 

「……今ので私が危機的状況下にあるのは伝わったはず……。でもどうやって? どうやって逃れれば……」

 

 否、と自身を奮い立てる。

 

 逃れるのではない。ここで《ネクロレヴォル》相手に立ち回って時間を稼ぎ、アルベルト達を間に合わせるのだ。

 

 カトリナの視野の中には格納デッキに収まっていた年代物の《エクエス》が入っていた。

 

 それに取り付き、コックピットハッチを無理やり開く。

 

「……よかった。一昔前の操縦席なら、思考拡張で操れる――」

 

 その安堵を胸に噛み締める前に《ネクロレヴォル》のビームライフルが周囲を火炎に押し包んでいく。

 

 灼熱地獄の中で、《エクエス》の起動パスコードを省略し、強制起動をかけていた。

 

「お願い……動いて……!」

 

 灰色の試験機カラーを施された《エクエス》の眼窩に光が灯り、カトリナは武器を探ろうとする。

 

「武装は……ヒートナイフ? たったこれだけ? ……でもやるしか……ないっ!」

 

 ビームサーベルを振りかぶって直上より迫ってきた《ネクロレヴォル》相手に、ヒートナイフを逆手に握り締め、干渉波が眼前でスパークする。

 

『そんな年代物の機体で、騎屍兵とやり合えると思ったのか』

 

 接触回線が響き渡り、カトリナは奥歯を噛み締める。

 

「……何で、騎屍兵に私達の作戦が……!」

 

『知る必要はない。ここで散れ、反抗勢力の頭目が』

 

 薙ぎ払われた勢いで《エクエス》はよろめき、そのまま工場地帯へとなだれ込む。

 

 カトリナはようやくおっとり刀で起動し始めた《エクエス》のモニター類を確かめつつ、操縦桿を強く握り締めていた。

 

「このままじゃ……私は……」

 

 アルベルト達が辿り着くまでに自分は死ぬであろう。

 

 ならば、せめて一発でもいい。相手へと反撃の糸口を――と感じて操縦桿を握り締めるが、ヒートナイフで攻勢に打って出る事はどうしても出来なかった。

 

「……何で……っ! 今さら人殺しが出来ないなんて虫がよ過ぎるでしょう……! カトリナ……!」

 

 だが反撃するような気概も湧かないまま、一機の《ネクロレヴォル》が肉薄するのを止められない。

 

 眼前にまで迫られた時には既に遅く、ようやく振るえたヒートナイフを袖口から溶断され、もう片方の腕に装備されていたワイヤーを牽制に見舞おうとするも全てが遠かった。

 

《ネクロレヴォル》の機動性が《エクエス》を突き飛ばし、カトリナは無様に転がっていた。鼻筋を切ったのか、血が滴ってくる。

 

 一気に濃くなってくる血の臭い、死の臭気――。

 

「……でもまだ……死ねない」

 

 そう、死なないのではなく死ねない。

 

 そう誓った人が居たから。

 

 そう言ってくれた人ともう一度、出会いたいと強く思えたから。

 

 自分は今日この日まで戦い抜いて来られた。

 

 どれだけ理想が遠くとも、どれだけ望むだけ自分の願いが消え入りそうになろうとも。

 

 それでも心の奥底にあったのは、ただもう一度、という純粋な祈りそのもの。

 

 片腕の《エクエス》で立ち上がり、カトリナはコックピットの中で雄叫びを上げて操縦桿に力を込めていた。

 

 右手の手の甲の赤い印が瞬く。

 

 思惟を受け取り、直進した《エクエス》が《ネクロレヴォル》に組み付こうとするも、その大雑把な機動は相手からしてみれば避けるまでもないらしい。

 

 単純な膂力で突き飛ばされ、ビームサーベルの熱波が《エクエス》の残っていた片腕も吹き飛ばす。

 

 ミラーヘッドも起動出来ないまま、自分は終わる。

 

 両腕を失った《エクエス》に出来る事などあるものか。

 

 それでもカトリナは折れない志を瞳に宿し、《エクエス》を《ネクロレヴォル》に対峙させていた。

 

『そろそろ諦めては? 反抗勢力の頭目のお方』

 

「……私は、諦められない……! だって、だってだって……! オムライスを作るって……約束したんだから――ッ!」

 

『意味不明な事を。トゥエルヴ、ここで倒します。いいですね?』

 

『構わん。レジスタンスの頭目なら少しは頭が回るかと思っていたが、ただの猪突猛進の愚昧らしい。死体でも少しは有用だ。コックピットは狙わずに無効化せよ』

 

『御意に』

 

《ネクロレヴォル》の眼窩に光が灯ったと思った直後には、これまでにない速度で回り込まれていた。

 

 まさか、今の今まで手加減されていたのか、と意識する前に、背後から蹴りつけられ、カトリナの乗る《エクエス》は砂塵を舞い上げながら工場地帯を滑る。

 

『レジスタンスの頭……一度顔を見ておこうかと思ったが、ここまで向こう見ずだとは思いも寄らない。コックピットは潰すなとのお達しだが、なに、不可抗力なら問題ないだろう』

 

 ビームサーベルが振るい上げられる。

 

 その粒子束の無慈悲さに、ああ、これが、とカトリナは横たわった《エクエス》の中で感じ取っていた。

 

 これが世界の無常さ。

 

 これが宇宙の冷たさ。

 

 これが――たった一人で死に行くと言う冷徹な答え。

 

「……でも、これが終わりなの……? 私の……運命の……」

 

 自分の運命が閉じる時は自分で決められるものだと思っていた。

 

 だと言うのに何だ、このざまは。

 

 単身乗り込んで味方の援護も得られないままに、何も出来ないまま死んでいく。

 

 こんな答えが、自分に与えられた終生の意味なのだとすれば――そんな運命は要らない。

 

 カトリナは右手に浮かんだ思考拡張の印がまだ赤く輝いているのを目にする。

 

「まだ……私は……死ねない。そう……死ねないんだ……!」

 

 操縦桿を握り締める。

 

 立ち向かう意志を伝導させた《エクエス》は、ミラーヘッドジェルを腹腔から噴き出させながらも立ち上がっていた。

 

『無様だ。倒れておけばいい』

 

「それは違う……」

 

 もう一方の手で鼻血を拭う。

 

 ボロボロになったパイロットスーツでは恐らく《ネクロレヴォル》とまともに打ち合えば一発で肉体が吹き飛ぶであろう。

 

 それでも――最後の最後まで運命に抗うだけの――叛逆の心を。

 

「私は……私は死にに来たんじゃない! これから先の運命を拓きに来たんだから……! 絶対に……幸せになるんだ……ッ!」

 

『頭が湧いているのか? そんなもの、真っ当な現実を前にすれば、塵芥であろうに』

 

 敵が大上段にビームサーベルを構え、必殺の太刀を見舞おうとする。

 

 武器はない。

 

 機動性も皆無。

 

 避けるなんて事は出来っこない。

 

 ――ならば、最後まで見据えろ。

 

 叫べ、決して立ち止まる事などなく進め。

 

 己を振り絞り、自我を噛み締め、絶望を押し込めて前へ前へと。

 

 それこそが自分に出来る唯一の叛逆。

 

 唯一の、世界の不条理に抗う牙なのだ。

 

 カトリナは吼え立て、《エクエス》の推進剤を目いっぱいに開いていた。

 

「ここから――ッ、居なくなれェ――ッ!」

 

 ノズルに詰まっていた異物を吐き出して、《エクエス》がその稼働限界を凌駕して《ネクロレヴォル》に見舞ったのは、精一杯の体当たり。

 

 だが、それでいい。

 

 その一発が決まれば、繋げられる。

 

 カトリナの思惟は《エクエス》の片脚に留まり、大地を踏み締め、袖口から切り裂かれた腕で《ネクロレヴォル》の振りかぶった腕を押し止めていた。

 

 そのまま《エクエス》の可動部が悲鳴を上げるほどの挙動を強いての、全身全霊の――大外刈り。

 

《ネクロレヴォル》が姿勢を崩し、《エクエス》に圧し掛かられる形で形勢が逆転していた。

 

『……まさか……MS戦で柔道技を決めただと……』

 

 敵の隊長機から漏れ聞こえた驚愕の声を意識する前に、カトリナは眼前の《ネクロレヴォル》の腕が頭部へと伸びたのを関知していた。

 

『……よくも。こけにしてくれたな……反抗勢力の羽虫が……ッ!』

 

《ネクロレヴォル》の掌に込められた粒子束がゼロ距離で爆ぜ、《エクエス》の頭部を貫いていた。

 

 機体が激震し、ビルへと背筋から突っ込んだのを感じ取る。

 

 アイリウムが機能を停止させ、思考拡張が薄れていた。

 

 中核となる頭部を失ったのだ。

 

 右手に輝いていた赤い灯火も消え失せようとしていく。

 

 ビームサーベルを携えた敵機はミラーヘッドの反応炉心から怨嗟の蒼い焔を上げていた。

 

 それはまさしく亡霊の怒り。

 

 悪鬼の形相に染まった《ネクロレヴォル》は今度こそ本気だ。

 

 本気で自分を消し飛ばすであろう。

 

 その前に、少しでいい。

 

 考える時間が欲しかった。

 

 自分の人生について。

 

 自分の生きてきた意味について。

 

 だが、それらを考えるにしては、時間は有限で、なおかつあまりに短い。

 

 せめて瞼を閉じたほうがいいか、なんていう余計な感傷が脳裏を掠めた刹那――カトリナはブロックノイズを生じさせる直上から舞い降りる機体を目の当たりにしていた。

 

 それは濃紺の色彩を誇る、異形の機体であった。

 

 敵の援軍か、と身構えたが、もうどうでもよかった。

 

 ここまでの抵抗で無意味ならば、最早死ぬだけだろう。

 

 だが最後の最後に、口から出た事実は――。

 

「……死ぬのは……やだなぁ……。お腹も、空いたし……」

 

『――ならば身構えろ。激震するぞ』

 

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