機動戦士ガンダムダレト   作:オンドゥル大使

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第154話「汚泥の感情」

 

「戦局はこう着状態に陥りつつある」

 

 そう述べたダビデは作戦指揮を執る自分へと視線を流していた。

 

 カトリナはゆっくりと応じる。

 

「……ええ。それでも、コロニー、ルーベンで補給が受けられるのは我々としても助かります。ブリギット艦の修復も出来ますし……」

 

「ブリギットの脚が戻って来れば、そのままミラーヘッド段階加速も使えるようになる。私達としても戦力の幅が増える事になるのはありがたいのだが……」

 

 含むところのあるダビデの声に、カトリナは問い返す。

 

「何か……懸念事項でも?」

 

「いや……レジスタンスとの連携はどうなっているのか、そう言えば聞いていなかったと思ってな。カトリナ・シンジョウ。そちらに一任しているが、ルーベンで合流すると言う認識でいいのか」

 

「それに関しては……レジスタンス勢力への伝達係の方がいらっしゃいまして。その方との定期通信で補給路は要請済みです」

 

「それならばいいが……信用なるのか?」

 

「大丈夫ですよっ。もう、長い付き合いの方なんですから」

 

 ダビデは少しばかり神経質になっている気がある。そうでなくとも、軍警察のコロニーに停泊している以上は、オフィーリアの存在はそれだけで起爆剤だ。

 

 彼らをいたずらに刺激している自覚はあるのだろう。

 

「統合機構軍の船舶は、それだけで何が起こるか分かったものではない。ブリギットと私の命令でどうにかなっている部分はあると思ったほうがいいだろう。彼らの中に叛意がある、と言うケースも想定しておくべきだ」

 

「それって……仲間から離反者が出るって言いたいんですか?」

 

「可能性としてよ、可能性」

 

 そう言って宥めてくれたのはバーミットで、彼女は自分とダビデを見比べて微笑む。

 

「……何だ。サワシロ大尉」

 

「バーミット、でいいわよ、ダビデちゃん」

 

「……失礼。今、私をちゃん付けで呼んだか?」

 

「そうだけれど、何? そこまで相手に許容するところを知らない人間だった?」

 

「……いや、それは恐れ知らずと言う」

 

「そうかしらねぇ。あたし、これでもトライアウトネメシスでは大尉待遇だったし、あなたは中尉でしょう? なら、どう呼んだって別に、ここは軍隊じゃないしー」

 

「バーミット先輩! 何言っちゃってるんですかっ!」

 

 こちらの戦々恐々としている様子もバーミットは面白がっているようで、彼女は片手にコーヒーを握って以前までと変わらずOL然として応じる。

 

「カトリナちゃん、ビビっちゃってカワイイー。けれどま、今言った通りでしょ? ここは軍隊じゃないし、あたしは大尉待遇を経験しているだけで、今は大尉じゃない」

 

「……その通りだ。貴君はただのオペレーターのはず」

 

「あれ? 怒っちゃった? ダビデちゃん」

 

「……別に。何でもないだけの話だ」

 

「そう言うところがカタブツなのよ。クラードと同じ」

 

「あの……それで、そのなんですけれど……コロニー、ルーベンでの補給物資が届き次第、オフィーリアは先んじてでも出港したほうがいいと思うんです。だって、統合機構軍の新型艦なんですよ? 一ところに留まるほうがおかしいって言うか……」

 

「それに関してはシンジョウの感覚が正しい。サワシロ大尉は楽観視が過ぎる。騎屍兵に関してもそうだ。何も手掛かりを掴んでいないに等しいのに、何故焦らない」

 

「焦ったって事態は好転しないからねー。それに、尋問だとかはヴィルヘルム先生の職務でしょ? あたしは、もう軍属でもないし、じゃあ気楽なOL身分にでも戻ろうかしらねー」

 

「ば、バーミット先輩。でも、もうエンデュランス・フラクタルからも見限られたんだから、OLには戻れないんじゃ……」

 

「分かっているわよ。再就職の道もあるってだけの話」

 

「……恐れながら、サワシロ大尉。事ここに至っては、最早退路はないと思っていただきたい。軍警察からも正直なところで言えば追われている身なのだ。私が決起したと言ったところで、ジェネシスの全戦力が集結したわけでもない。せいぜい、三分の一がいいところ。残りとトライアウトネメシス、それにブレーメンの動きはまだ分からないと言うのが正しい」

 

 中空に浮かんだ三次元図はコロニー、ルーベンの見取り図であり、ミラーがゆっくりと回転している。

 

「……結局、トライアウトジェネシスも残った側は敵だし、ネメシスからも追われ、ブレーメンからも追求が飛ぶ。その上で統合機構軍の厄介なピアーナとかとも戦わないといけない。はぁー……憂鬱」

 

「で、でもっ、いいじゃないですか! ダビデさんは心強いですし!」

 

「私は所詮、兵士だ。兵士は職務を全うするために居るもの。……軍警察全ての真意を代弁する事なんて出来ない。私は信じるべきものが貴君らにあると判断したから寝返っただけ。トライアウトの真意は未だに探れないまま。その上で、尋ねたい。統合機構軍は何を画策しているのか」

 

「……画策って……そんな大げさな……」

 

「大げさでもなくなってきているのよねぇ。騎屍兵の運用に、モルガンみたいな新鋭艦。それに再三のMAの投入。どれもこれも、オフィーリアを轟沈させるためだけにしては戦力の分布がここまで異常だって言うのは、正直思いも寄らなかったってわけ。あるとすれば、その一因は」

 

「――《ダーレッドガンダム》。あれか」

 

 バーミットの言葉の赴く先を言い当てたダビデに、彼女は指鉄砲を向ける。

 

「それね。モルガンが……と言うよりも、統合機構軍のアキレス腱に成り得る機体だからこそ、何度も追撃しようとしてくる」

 

「でもそれって……やっぱりレヴォルの意志を積んでいるからなんじゃ? だって、ミラーヘッドジャマーが効かなかったって報告もありますし」

 

 書類を手繰った自分に、ダビデは腕を組んで思案する。

 

「それなのだがな。戦場に出て感じたセンスだ、汲んでも汲まなくてもいい話に過ぎないが……」

 

「何? ダビデちゃんの恋愛事情?」

 

 ダビデはバーミットを睨み据え、それから心底侮蔑するような声を発する。

 

「……何故そうなる? 湧いているのか」

 

「ああー、そういうタイプなのねぇ。あたし達は戦場じゃ一単位である前に女なんだから。色恋沙汰も少しは学ばないと」

 

 ダビデの殺意が先鋭化したのを感じ取ってカトリナは大慌てで言葉を差し挟む。

 

「そっ! そう言えばっ! ミラーヘッドジャマーって、あれはクロックワークス社の技術……なんですよね?」

 

「……ああ、それもある。クロックワークス社に関して、予備知識は?」

 

 怒りを仕舞ったダビデに安堵しつつ、カトリナは自分の中の知識を探る。

 

「……えっとぉー……統合機構軍の擁する、企業の一員ですよね。確か、ミラーヘッドのログを取る専属会社だって……」

 

「ミラーヘッドログはこの世界を支配する第四種殲滅戦のルールそのものだ。第三者機関たる陣営から、MAが補給されたと言う事実。それだけでも相当に手をこまねいているわけではないのは窺える」

 

「クロックワークス社はでも、MAの開発をしているなんて寝耳に水だわ。いいえ、この場合は騎屍兵と同等に扱うべき戦力としての拡充、よね。MA《サイフォス》の真価は一方的なミラーヘッドオーダーの送信を阻害する。実際、前回と前々回でアルベルト君達の持ち帰ったデータじゃ、ミラーヘッドオーダーの送受信のタイミングや令状の種類を変えれば対応可能だったけれど」

 

「だが、そのすぐ後に、オーダーの無効化を確認した。恐らく、前回のように軍警察を経ての令状の種類を変えたところで対応はリアルタイムで成されるだけだろう。まさに、相手にとって都合がいいだけの戦場を描く事が出来る」

 

 ダビデからしてみても悩みの種に違いない。

 

 でも、とカトリナは戦闘時の動きを思い返す。

 

「《ダーレッドガンダム》だけは、それに左右されない……。やっぱり、レヴォル・インターセプト・リーディングがあるからで……」

 

「しかしあまりにも不可解だ。騎屍兵の持つシステムと同等のものを、統合機構軍が開発していた、となれば……。やはりそれは既存の戦争のシステムへの懐疑へと繋がる」

 

「ヴィルヘルム先生の報告書にもあったわね。第四種殲滅戦が覆るのならば、それはクロックワークス社の凋落に繋がりかねない、っと」

 

 書類を捲りながら、三者三様に渋面を突き合わせる。

 

「……でも、こうも続いていますよね。それでもクロックワークス社がMAを開発し、そして優位を保ち続けているのは、《ネクロレヴォル》が……第四種殲滅戦のルールに則っているからだって……。どういう意味なんでしょう?」

 

「分かんないわよ。頭のいい男の言い分なんてね」

 

 肩を竦めるバーミットに対し、ダビデは推論を並べていた。

 

「……我々軍警察は、何度か統制に割り込んできた騎屍兵をモニターした事がある。騎屍兵の有するミラーヘッドシステムは、我々の使用する令状よりも高位の代物なのだと、いくつか言われてきた。……だがこの報告書に書かれているのは、まるっきり逆の事柄だ。《ネクロレヴォル》の用いてきたミラーヘッドのシステムは、既存の戦争システムを利用してのものだと? ……信じられるとでも……」

 

「でも、ヴィルヘルム先生が嘘を言うメリットはない……ですよね?」

 

 うーん、と呻ったバーミットは、書類の端を叩く。

 

「この報告書、信用しないわけにもいかないし、かと言ってそれを信じると、次の戦場からどう出るのかって言うのはカトリナちゃんに投げられているのよねぇ……。どうする? 《ネクロレヴォル》のシステムはクロックワークス社のログを掻い潜る。まずこれは間違いない。でも、何でなのだかそんなあったら困るシステムを、クロックワークス社はむしろ重宝している。その証拠がMAの存在。まるで騎屍兵、彼らのためのような戦力を作ってみせる。これは……うーんと、つまり……」

 

「戦争のシステムは変わっていない。それどころか、これまでよりも色濃くシステムは汎用されている。第四種殲滅戦は、根こそぎ変わるような要素なんてない」

 

 結んだダビデに、カトリナは下唇を指で押し上げて首をひねる。

 

「えっとぉー……つまり?」

 

「統合機構軍からしてみれば、困るのは騎屍兵ではなく、《ダーレッドガンダム》と言う一個のイレギュラーだけ、と言う事実……ではないのか? だから排除しようと何度も追ってくる」

 

「ただ……それだと何で開発したんだって話になるのよねー。造らなければいい話なんだし」

 

 バーミットの困惑にカトリナは空間を共有しながら答えを探る。

 

「……えっと、そもそも《ダーレッドガンダム》とオフィーリアはセットなんですよね? レミア艦長の話じゃ」

 

「そうね。かつてのベアトリーチェとレヴォルの関係性らしいし。情報集積艦としての役割を果たしていると見るべきよね」

 

「ならば、オフィーリアは《ダーレッドガンダム》の動きをモニターし、何者かに送る意味があった。……待て、オフィーリアのシステムログはどこに送信されている?」

 

 その段になってハッとしたカトリナは、端末を呼び出していた。

 

「えっと、確か……エンデュランス・フラクタル……にデフォルトでは設定されているはずで……」

 

「まずいな」

 

 そう呟いた時にはダビデはブリーフィングルームを飛び出していた。

 

 バーミットと肩を並べつつ、管制室に向かう。

 

「あの……バーミット先輩は分かって……?」

 

「そこまでシステムの中枢にアクセスするような余裕もなかったし、今思い至ったところよ。カトリナちゃんと同じ」

 

「……ですよね。ずっと追われ続けていましたし……。でも、こんな事に気付かなかったなんて、迂闊だったかも……」

 

「エンデュランス・フラクタルのどこに送られているのかにもよるわ。送信ログはある?」

 

 カトリナは右手に光る思考拡張の赤い標を端末に読み込ませる。

 

「……私が触れた限りですけれど……エンデュランス・フラクタル、兵器開発部門……。タジマ営業部長の……!」

 

 面を上げた自分にバーミットは、なるほど、と声にする。

 

「もしかして最初から織り込み済みだった? あるいは、あの営業部長が真っ黒だったかの違いよね。いずれにせよ、《ダーレッドガンダム》のデータ流出を止めるために、あたし達は努力を――」

 

 そこで激震が見舞う。

 

 オフィーリアに設定されていた1Gの設定が狂い、浮かび上がった肉体をバーミットが握り締めていた。

 

「しっかり! 状況は?」

 

「……攻撃だと? しかしここは……ルーベンの裏港だぞ……!」

 

「モルガンの追撃なんじゃ……? ピアーナさんなら私達の航路を把握出来るはず……!」

 

「だったら余計に迂闊よ。こっちには騎屍兵の人質が居るって言うのに……」

 

 続いて通路の灯りが揺らぎ、衝撃波が艦艇を揺さぶる。

 

「……とにかく! 管制室に! ダビデちゃんはMS部隊の出撃を頼むわ!」

 

「了解した。……だがその呼び名は了承していないからな」

 

「カトリナちゃんはあたしと一緒に管制室に! ……クラード、聞こえている?」

 

『ああ。敵襲か』

 

「逸らないで。何かあったのかもしれない。……軍警察のコロニーよ。闇討ちくらいは想定されていてもおかしくはないわ」

 

「でも……っ! それじゃダビデさんは……っ!」

 

「カトリナちゃん。他人を信じる、大いに結構だけれどこの戦局じゃ、信じた側が馬鹿を見るも想定してちょうだいね」

 

「信じた側が……」

 

「バーミット、現着しました!」

 

 管制室に押し入るなり、バーミットは自身のオペレーター席に座り込む。

 

 レミアは既に戦闘警戒に入っているようで、艦長席の肘掛けを握り締めていた。

 

「遅いわよ。……それにしたって、港に停泊中を狙うなんて、趣味のいい事」

 

「なりふり構っていられないって事じゃないですか? ……MS部隊、戦闘準備! オフィーリアからは出せる戦力は出し渋りしないで行きますよ! クラード、前線を抑えて! やれるわね?」

 

『誰に言っている』

 

 通信先のクラードの声にカトリナは言葉を吹き込んでいた。

 

「あの……っ! クラードさん! もし……軍警察の勢力だったら、その……」

 

『迷っている暇はない。俺は撃てる』

 

 違う。そんな言葉が欲しいのではない。

 

 そう思いつつも、それ以上を言及出来なかった。

 

「……頼みます」

 

「オフィーリア、迎撃準備!」

 

 弾けたレミアの声を聞きつつ、カトリナはメインモニターに拡大された敵陣を見据えていた。

 

「……敵勢は……何、これ……。《アイギス》? 軍警察カラーじゃなくって……?」

 

 現れた第一部隊は、統合機構軍の色彩を誇る《アイギス》であった。

 

 しかももたらされた識別信号はカトリナに驚愕をもたらす。

 

「識別信号受諾……! 参ったわね、これは……。相手はレジスタンスと推定! あたし達とこれまで戦ってきた、レジスタンス組織の一部……」

 

「で、でもそんなの……おかしいじゃないですかっ! だったら何で、攻撃なんて……!」

 

「いずれにせよ、迷っていたら轟沈よ。クラード、行けるわね?」

 

『レミア。墜としてはいけない敵なのか? それならば判断を乞う』

 

「いいえ、選別している場合でもない。とにかく相手の攻勢を削いでちょうだい。《ダーレッドガンダム》による先行を許可するわ」

 

『了解』

 

「エージェント、クラードへ。《ダーレッドガンダム》、リニアボルテージに固定。出撃タイミングを譲渡。……頼むわよ、クラード。あんた、余計な感傷に足を取られないでよね」

 

『造作もない。《ダーレッドガンダム》、エージェント、クラード。迎撃宙域に先行する!』

 

 カタパルトより射出されていく《ダーレッドガンダム》を目にしつつ、カトリナはこの状況の異様さを感じ取っていた。

 

「……何かが……何かがおかしい。おかしいはずですっ! だって、レジスタンスが……私達に仕掛けて来るなんて!」

 

「カトリナさん。あなたは委任担当官としてレジスタンス組織との渡りがあったはずよね? 彼らに反感を買った覚えは?」

 

「い、いえ……そんな事は……。もしかして、統合機構軍の根回し? でもそれにしてはタイミングが……」

 

「停泊中だって統合機構軍に教えたとかじゃないわよね?」

 

「そんな事は絶対……! ……いえ、でももしかして……でもそんな……っ! そんな事はないはず……! だって、そうだとすれば私達は最初から……っ!」

 

『――その通りだよ、カトリナさん』

 

 不意打ち気味に繋がった通信は自分の思考拡張を施した右手より受信されていた。

 

 管制室に響き渡った声に、カトリナは震撼する。

 

「ハイデガー……さん?」

 

「まさか、ハイデガー少尉? 何で……」

 

『我々レジスタンス軍は、カトリナ・シンジョウを旗印として掲げ、今日まで戦い抜いてきた。だが、あなたは裏切った』

 

「そんな事……! 統合機構軍とは――!」

 

『統合機構軍じゃない! ……あなたはもっと前から、僕を裏切って来たんだ……!』

 

 その憤怒に塗れた声に、カトリナは眼を戦慄かせる。

 

「何を言って……ハイデガーさん……?」

 

『こうして、僕らに向かってくるじゃないか。死出の使者が! その名は――ガンダム……ッ!』

 

「ハイデガー少尉。どういうつもり? これまでレジスタンス活動を支援してきたあなた方の明確な離反行為だと、そう思っていいのかしら」

 

 レミアの冷静な声音にハイデガーは自嘲気味に応じる。

 

『……僕を捨てておいてよく吼える。それにあなた方だって! 裏切り者の称号はよく似合うだろうに! そうだろう、死神のレミア・フロイト!』

 

「死神……」

 

 その言葉にレミアは奥歯を噛み締めた後に声を振っていた。

 

「……あなたはそんなつまらない事で叛意を翻すような人間とは思えない。何か理由があるのなら、聞き届ける準備くらいは……」

 

『必要ない。僕の目的は、ただ一つ。エージェント、クラードに絶対的な死を。そしてあの日、僕を見限ったあなた達への叛逆を。そうさ、ここに来るまで――随分と待った! 三年間だぞ! この三年間、僕が平気な顔で、支援し続けたと思っているのか! カトリナ・シンジョウ! 僕の想いに気づいていながら利用し続けて……!』

 

「何を……何を言っているんですか、ハイデガーさん! あなた達は、私を……私達をそんな風に……」

 

『そんな風に……? どの口が言っている! この魔女が!』

 

「《アイギス》、波状攻撃を仕掛けて来ます! ……艦長、これは応戦しかなさそうですよ」

 

「カトリナさん。何があったのか、どうしてこうなってしまったのかは問わないわ。ただ……クラードに攻撃させる。構わないわね?」

 

 問い質された詰問にカトリナは茫然自失になっていた。

 

 何が起こっているのか。

 

 何が、ハイデガーを歪ませたと言うのか。

 

 まるで心当たりなんてないのに、それでも現実だけはこうして迫ってくる。

 

 自分の意思なんて関係なしに、状況だけが転がりつつあった。

 

「……私は……」

 

「迷っている暇はないわよ、カトリナちゃん。クラードはもう出撃してしまった」

 

 それでもまだ、間に合う事なんて一つもないとでも言うのか。

 

 拳をぎゅっと握り締めたカトリナは、メインモニターに投射されるレジスタンスの攻勢がオフィーリアを沈めるべく攻撃網を走らせてくるのを目の当たりにしていた。

 

 

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