機動戦士ガンダムダレト   作:オンドゥル大使

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第193話「聖獣誅殺」

 

 全ては想定内だ、とイリスは告げていた。

 

「《セブンスベテルギウス》……この次元宇宙において《ダーレッドガンダム》と呼ばれし機体が禁断の扉に行き着く事も。そして、私達はその扉が開くのを観測する側である事も、だ」

 

「それは僕達に……安息なる死に場所なんてない、って言いたいのか……」

 

「それがエーリッヒの運命。エーリッヒは……この次元宇宙に漂着したその時に、全てを悟っていた。次元宇宙の終焉、“破局”を。そして、何のために自分は召喚され、これからも同じく、自分達は呼ばれ続けるのかを」

 

「……それがクラードの名を辿る者の末路だって言いたいのか……。私達にはもう、手段なんて残されていないとでも?」

 

 マーガレットの抗弁はある意味では正しい。

 

 彼女はエンデュランス・フラクタルに潜んでまで、この世界を変えようとした。

 

 見据えようとした世界の果てが、まさか拒絶なんて誰も思わないだろう。

 

「エーリッヒの名を継ぎし、私達は感じ取れる。五感を超越した感覚で。これも、思考拡張の賜物だと、そう思っていい」

 

「だが分からないのは、何故、エーリッヒは自分が彼らに解体され、その末に待つのが地獄だと分かっていても、そうせざるを得なかったのか、という事だ。僕達はだって……彼よりも後にこの次元宇宙に訪れた。救済者……英雄としての働きを期待されて。それらが全て嘘……虚飾だって言いたいのか?」

 

「嘘ではない。あなた達を呼んだのはこの次元宇宙の祖たる存在。もっとも、彼の声は遮られ、あなた達にはただ単に情報として、光の一つとして受け取られたのだろうけれど」

 

「だってそうだ……そのはずだ……! 私達は、この世界を……! 欲望と俗世に塗れた、このどうしようもない次元宇宙を……救いに来たはずじゃないかぁ……ッ! そこに何が待っていたとしても! 英雄として! 世界の総意として!」

 

 マーガレットの声に熱が籠る。

 

 彼女は世界に絶望するのと同じくらい、世界に希望も見出していた。そうでなければ、世界への叛逆行為など実行に移せるはずがない。

 

「……分からないものだ。拒む事と愛する事が、同じ意味を持つなんて……」

 

 力なく呟いたザライアンはそのまま上昇軌道に移っている《ファーストヴィーナス》よりもたらされる映像を仰ぎ見ていた。

 

《ゲシュヴンダー》を擁したまま、《ファーストヴィーナス》は遥か彼方――成層圏にまで至っている。

 

「……これが君達の狙いなら、僕らはとんだ水先案内人ってわけか」

 

「MFだけでは《シクススプロキオン》を倒せない。だが、私達の叡智があれば、まだ届く。この世界そのものを覆う悪意に」

 

 イリスは手を差し出す。

 

 それは先ほどまでとは意味合いが違っていた。

 

「……私は、殺せればいい」

 

 そう、小さくこぼしたのはヴィヴィーであった。

 

 彼女はイリスよりもたらされた情報に何の異論も挟まなかったが、ここに来て真紅の瞳が殺意を帯びる。

 

「そこまでして……私達を迫害したいのなら……私は殺してやる……! 私達に襲いかかる、全てを! 我々、波長生命体を拒むと言うのなら、とことんまで……! この世界全てを血に染めてでも……! 塵殺だ……! この世界に息づく人間共を、この手で! それこそが私達、MFパイロットにとっての救済だ!」

 

 誰もが押し黙っていた。

 

 その理論は間違っているなど口が裂けても言えるものか。

 

 ヴィヴィーは、エンデュランス・フラクタルに捕らえられ、拷問の日々を送って来たのだ。

 

 彼女にとって、現行人類は滅ぼすべき存在であり、その力の象徴こそが《ネクストデネブ》なのだろう。

 

 ならば、分かりやすい救いなど、自分達は講じるべきでもなく。

 

「判断は……これで纏まった、と言っていいのかしらね」

 

 イリスの言葉にマーガレットは言い置いていた。

 

「全てを委ねるとは言っていない。あくまでも、その事実が正しいのなら、と言う前置きがある。もし……一部でも私達を謀ろうと言うのなら、反撃が来ると思っておいてもらいたいね」

 

 ザライアンもイリスへと眼差しを据える。

 

 彼女は首肯していた。

 

「約束しましょう。それに、ここまで話した事の中に、間違いはない。私達の知り得る、世界の仕組みであったのだから」

 

「エーリッヒの忘れ形見、か……。彼は真っ先にこの次元宇宙に迷い込んで、絶望し、そして救済の道を辿れない事を理解した。もう、そこには何もないのだと……“破局”でさえも、織り込み済みの事象であったのならば」

 

「エーリッヒ・シュヴァインシュタイガーは偉人として登録されるか、それとも異端として裁かれるかのどちらかであった。彼にとってしてみれば、千年前の叡智で成立する来英歴を、ともすれば救いたかったのかもしれない。あまりにも……我々は暴虐の果てを辿っていた」

 

「それが純正殺戮人類の最果て……か。《ファーストヴィーナス》、静止軌道に入った。本当にこの座標で合っているんだろうな?」

 

 浮かび上がった《ファーストヴィーナス》は衛星軌道上より走査の網を走らせる。

 

 ザライアンが思考拡張の網の中で捉えたのは、巨大なる魔であった。

 

 三角錐型の推進装置を一対有する、「8」の字型の拠点防衛砲撃装置――《シクススプロキオンエメス》が、宙域より地上を睨んでいる。

 

「……今ならば獲れる、か……」

 

「油断はしないほうがいい、ザライアン・リーブス。相手もパイロットが乗っている……このマグナマトリクス社のエージェントが言うのには……彼らの手の者だと言うのは……」

 

「にわかには信じ難いが、それでも飲み込むしかないだろう。僕らには……もう選択肢なんて多くないんだから」

 

 勝負は《シクススプロキオンエメス》がこちらに勘付く前に、であった。

 

《ファーストヴィーナス》が加速度を上げて推進し、黄金の反射装甲を逆立たせる。

 

 先ほどの砲撃は、咄嗟の防衛が働いたが、今の自分達にそれほどの余裕はない。

 

 如何にMFとは言え、操るのは人間だ。

 

 よって聖獣同士の戦いでは、手の読み合いが決め手となる。

 

《シクススプロキオンエメス》がゆっくりと、その一対の砲門をこちらへと照準していた。

 

 全体としては極めて行動は緩慢でありながら、一度でも見据えられればお終いなのだと直感出来る。

 

 ザライアンは唾を飲み下し、メインコンソールに腕を突き立てて生態部品を絡みつかせていた。

 

 脳髄に焼き付く、電磁の刃。

 

『“言っておくが機会は一度きりだ。外せばそこまでだぞ”』

 

「分かっている。……これだから、レヴォルの意志って奴は」

 

 逆立たせた黄金の帯を敵勢へと狙いを定め、そのまま掃射する。

 

《シクススプロキオンエメス》の堅牢な装甲を射抜くのにはあまりにも足りないが、それでも自分達に出来る抵抗はこの程度だ。

 

 薄紫色を誇る装甲の一部を剥離させつつ、第六の聖獣がこちらを睥睨する。

 

 咆哮が銀河を引き裂く雄叫びのように相乗し、その叫びそのものとしか思えない砲撃が、空間を突き抜けていた。

 

 掠めるだけでも全滅。

 

《ファーストヴィーナス》は直上へとミラーヘッドの段階加速で逃れ、一撃目を回避してみせる。

 

『“初撃は計算通り、真っ直ぐであった。だが、再チャージまでの概算時間はまるで分からない。もし……今の砲撃が十パーセントにも満たない力だった場合”』

 

「分かっている! ……再装填までの時間的余裕なんて与えるつもりはない!」

 

《ファーストヴィーナス》が降下するとの同時に黄金の稲光を放射し、《シクススプロキオンエメス》の表皮を抉る。

 

 僅かに垣間見えた内部装甲板に向けて、黄金の帯を穿っていた。

 

 波打った軟体の内部装甲がこちらの攻勢を受け止め、直後には拡散させている。

 

「……ミラーヘッドか……!」

 

 忌々しげに口にしたザライアンは、相手がミラーヘッドの残像現象を利用して、致命的な一撃を凌いだのを感じ取る。

 

 砲口を中心軸にして円環を辿った宇宙を引き裂く絶叫が再装填される。

 

「間に合わない……!」

 

「狙われているぞ! ザライアン・リーブス!」

 

「……ああ。だが、これでいい。今の一撃を食い込ませられただけで――僕らの勝利だ」

 

 確信した声音と共に《シクススプロキオンエメス》の砲撃が中断される。

 

 何が起こったのかと相手が認識したその時には既に遅い。

 

 先ほどの黄金の帯に潜ませたのは《ゲシュヴンダー》編隊であった。

 

 如何に相手がミラーヘッドによって致命傷を免れようとも、ゼロ距離での《ゲシュヴンダー》の破壊工作には反撃も出来ないはず。

 

 全て――作戦通りであった。

 

《シクススプロキオンエメス》が内側より爆ぜる。

 

 光学迷彩を纏った《ゲシュヴンダー》は次々と爆薬を発動させ、《シクススプロキオンエメス》を粉砕していた。

 

「……拠点防衛の聖獣が、墜ちる……」

 

 茫然と口にしたマーガレットに、ザライアンは詰めの一手を加える。

 

 黄金の帯を四つに組んで、直方体にして速射し、イリス達が開けた傷口へと止めの一撃となって食い込んでいた。

 

 着弾と同時に雷撃が拡散し、《シクススプロキオンエメス》の叡智が破られていく。

 

 派手な爆発の光輪を広がらせることもない。

 

《シクススプロキオンエメス》は完全に沈黙していた。

 

「……さて、拝ませてもらおうか。彼らの姿を」

 

《ゲシュヴンダー》が分け入り、敵機から抉り取ったのは小さなカプセルであった。

 

 それは彼女らが言及を恐れていた存在であり、同時に自分達をこの世界に「約定」で縛り付けた張本人。

 

『……こんなに小さい存在が、まさか――話に聞いていた彼ら、ダーレットチルドレンだったなんて……』

 

《ゲシュヴンダー》の掌に無数のケーブルと共に引き千切られたダーレットチルドレンの躯体が転がる。

 

《ファーストヴィーナス》をゆっくりと降下させ、《ゲシュヴンダー》達と合流していた。

 

「……これが……彼らの本当の姿、か」

 

 そして何よりも意味を成すのは、この来英歴が始まって以来の、この次元宇宙の人間による、神殺しに等しい行為であった。

 

『こちらでも確認。イリス、“聖獣討伐作戦”の完遂と、思考拡張による相手の構想阻害を加味し、これよりラムダは通常航行に移るわ。ジャマー装備を展開、相手の出端を挫く』

 

『了解。それにしたってこんな小さなのが……世界の支配者なんてね』

 

『物事は分からないものよ。私達が推測するよりも早く、推移していく。それに、どれだけ憶測を並べ立てたって真実の前には無力でしかない』

 

「真実……本当に、これでよかったのだろうか……」

 

 浮かべた懸念にマーガレットが応じる。

 

「彼らの判断だったんだ。それに、私達は手を貸しただけに過ぎない。いずれにせよ、頭を押さえられている状態では、《ファーストヴィーナス》は敗北しかなかった。たとえこの結末が現行人類にとって望まぬ結末であったとしても、私達が手助けしたのはひとえに、自らの生存権のため」

 

「ああ……ラムダへ。こちらの望み通りの計画に手を貸してもらえると、思っていいのだろうか」

 

『請け負っているわ。私達、マグナマトリクス社はこれより、MFパイロット三名の亡命先として、あなた達の身柄を受理。三体の聖獣の力を用いての反撃戦闘に移る』

 

「……まだここは僕の思考拡張の領域外だ。よって月のラグランジュポイントまでの水先案内人をお願いしたい。《ファーストヴィーナス》は目立ち過ぎる」

 

『空間転移で行けるのでは?』

 

「……それも万能じゃないと、分かっているから協力体制を敷いたんだろうに。僕達はそちらに従おう。マグナマトリクス社の……」

 

『名乗りが遅れたわね。ラムダの艦長を務める、マーシュ。マーシュ・ブラウニー。これより、マグナマトリクス社の責任者として、あなた達、聖獣を駆る者達への協力を行います。こちらの目的は、ただ一つ……ダーレットチルドレンの打倒にある。あなた達の約定と、そしてこの次元宇宙の人々の功罪を裁くのは、誰よりも聖獣の担い手が相応しい』

 

 マーシュと名乗った女性艦長は装甲内に《ゲシュヴンダー》を格納したこちらに対し、あくまでも対等の様子であった。

 

「聖獣の担い手、か。これまで散々恐れて来て、事ここに至って対等の立場としての交渉……本気なのか?」

 

 ヴィヴィーの疑問も分からないでもないが、ザライアンは代表して声にしていた。

 

「……マグナマトリクス社が僕達の手助けをしたのは事実だ。現行人類にしてみれば、彼らの……ダーレットチルドレンの平定に別段、不満もないはずなのに。どうして、叛逆を企てる僕らを助けた?」

 

『いずれ分かる。私達は大きな目標のために、手を組むべき相手への無為な詮索はしない』

 

 それを素直に賢明だと、言えればまだよかったのだろうが、エンデュランス・フラクタルのような強硬策を取られる可能性だってゼロではない。

 

「お互いに腹の探り合いは……現状は野暮なだけ、か。一つ、教えて欲しい。あなた方はこの世界を破滅させたいのか、それとも救いたいのか」

 

 ナンセンス、とばかりに即答される。

 

『救済しなければならないでしょう。この世界は堕ちるところまで堕ちている。このまま熟れた果実のような最後を迎えるよりかは、まだチャンスがあるのだと、私達はそう思いたい』

 

 ザライアンは《ファーストヴィーナス》より見果てぬ星の運河へと視線を投じていた。

 

「……まだまだ広いな。星の外海は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「回収した時より、手は加えていません。これで動かせるとでも?」

 

 こちらの問いにエージェント、サイファーは応じる。

 

「無論です。今や、聖獣の叡智は何も特別なものではなくなっている。コックピットブロックへの誘導を」

 

「……承知しました」

 

 しかし、とピアーナはその後ろ姿を目にして考える。

 

 どうみても、自分の記憶にあるグゥエルの姿にしか映らない。否、それよりもまさか、という思いが突き立っていた。

 

 ――騎屍兵はあの時死んだはずのトキサダだった?

 

 騎屍兵の身分情報は暗号化され、自分の権限でも彼らの「生前」の情報にはアクセス出来ない。

 

 しかし、ファイブは自らヘルメットを外し、そしてサイファーに問い質していた。

 

 ともすれば、これまでだって辛い決断をさせていたのかもしれない。

 

「……ゴースト、ファイブがトキサダ様だったとすれば……エージェント、サイファーがグゥエル様でも……何らおかしくはない、か」

 

 そうだとすればエンデュランス・フラクタル本社は深い闇を抱えているのかもしれない。

 

 ならば、その闇の集約たるクラードは、一体何者だと言うのか。

 

 彼の個人情報にかつてアクセスした事があったが、あれは表層であった。

 

 クラードは何故、レヴォルを動かすに足る存在だったのか。

 

 彼の素性に何が隠されていると言うのか――問答は増えるばかりだ。

 

「……エージェント、クラードの存在に……この世界の秘密が隠されている……?」

 

 そう規定しなければ、彼と言う一個人の手の中にレヴォルの手綱が握られているはずもない。

 

 ピアーナがエンデュランス・フラクタルの秘匿事項にアクセスしかけて、不意に声が弾ける。

 

「おい! 《サードアルタイル》が動いているぞ……!」

 

 メカニック達の声が滑り落ちていく中で、《サードアルタイル》が稼働し、モルガンの格納デッキを押し上げていく。

 

「何をやっているのです! 出撃は許可していません! エージェント、サイファー!」

 

『いえ、許可は要りません。あなたよりも上級のライセンスを得ている。私はこれより、敵の排除に向かいます。モルガンの艦長として、あなたは関知しないで結構』

 

「そうは……そうは行くと思っているのですか! あなたの身柄はわたくしの権限で――!」

 

『それは本当ですか? 一度試してみるとよろしい。そうでない事が浮き彫りになる』

 

 ピアーナはサイファーへの強硬策へとアクセスしかけて全ての情報権限がエラーに上塗りされていた。

 

「エラー……? わたくしの権限を上回る……?」

 

『だから、言ったでしょう。無駄だって。それに邪魔する意義はないんですよ。我々の敵を淘汰するのみですから』

 

「……敵……オフィーリアへの攻撃を……」

 

『それはいずれ。まずは、地上に蔓延る敵を掃討します。これより、MF《サードアルタイル》は聖獣として覚醒し、既存の地上戦力を焼き払う。それによって生み出されるのは、新たなる秩序』

 

「地上戦力への攻勢……? 権力への叛逆だとでも言うのですか……!」

 

『力は、分配され得る場所に収まらなければいけない。エンデュランス・フラクタルの下に、力は統治され、そして世界は一つになる。訪れるのは調和。この乱れた世界を、再構築する』

 

《サードアルタイル》の虹色の皮膜が格納デッキを満たし、モルガンの内側から爆砕しようとする。

 

《サードアルタイル》ほどの巨躯を押し留める方法はない。

 

 最早、ここまでか、と奥歯を噛み締めたピアーナへと、声が響き渡っていた。

 

『諦めるなんて……らしくないでしょ! キミなら!』

 

 声の主を確かめる前に、出撃準備に入っていた《ネクロレヴォル》が《サードアルタイル》へと体当たりをかましていた。

 

 剥き出しのコックピットより垣間見えた面影にピアーナは絶句する。

 

「……メイア・メイリス……」

 

『キミなら、こんな事に異議を唱えるはずだ! それがボク達にとって叛逆だと言うのならば!』

 

 しかし虹色の皮膜に押し出され、《ネクロレヴォル》とは言え、機体が分解寸前まで追い込まれていく。

 

『なんの……ッ! これしきィ……ッ!』

 

 両腕を押し込み、《サードアルタイル》の中枢部に向けて《ネクロレヴォル》はビームサーベルを払っていた。

 

『小賢しい真似を』

 

 浮遊した《サードアルタイル》より波打つビットの一斉掃射が行われる。

 

《ネクロレヴォル》の装甲が浮き上がり、そのまま崩壊の途上を踏んでいた。

 

「《ネクロレヴォル》とは言え、そのままではやられます! メイア・メイリス!」

 

『いや……ゴメン。ここで撤退したら、ボクの中に眠る叛逆の因子は、また諦めちゃう事になる! 月軌道で彼に託したんだ! 間違いを正すためだけに、戦って欲しいって! ならさ……!』

 

 両腕にビームサーベルの光刃を携えた《ネクロレヴォル》が二刀流で《サードアルタイル》へと縋りつく。

 

《サードアルタイル》は児戯とでも言うように虹に波打つ光を放射し、《ネクロレヴォル》を押し飛ばしていた。

 

 コックピットの中で、メイアが衝撃波に身をひき潰されたのが伝わる。

 

「メイア・メイリス! 撤退しなさい!」

 

『……冗、談……ッ! この機体にもあるんだろう……? レヴォルの意志よ! ボクに従え……ッ!』

 

 アイリウムの輝きを灯らせた《ネクロレヴォル》が幽鬼の如く頭部を蒼く燃やして、ミラーヘッドの残像現象を伴わせつつ、《サードアルタイル》に猪突していた。

 

《サードアルタイル》より噛み砕く勢いでの虹の皮膜が蠢動する。

 

 表面装甲が剥離し、蒼く燃ゆる亡者と化した《ネクロレヴォル》が《サードアルタイル》の装甲へと爪を立てていた。

 

 浮遊した《サードアルタイル》が幾度も振り払おうとパーティクルビットを放射する。

 

 その勢いに打ちのめされた《ネクロレヴォル》が宙を舞い、モルガンの甲板部に叩きつけられていた。

 

「メイア……!」

 

『全ての事象は終わりを告げる時が来た。第三の聖獣は世界を暴くであろう』

 

《サードアルタイル》はそれこそ磔刑にかけられた絶対者の如く君臨し、虹色の光を放ちながら彼方の空へと消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

第十七章 「真実へと手を伸ばすとき〈ザ・リベリオン・オブ・トゥルース〉」了

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