『クラード、聞こえている? 《サードアルタイル》は旧連邦支配領域の大陸に進出。現在、管轄しているのは旧態然とした貴族体質よ』
「地球連邦の連中を間接的とは言え、助けると言うわけか」
鎧のパイロットスーツを身に纏い、クラードはインジケーターを調整する。
『気が乗らないのはお互い様でしょう。……大丈夫なの? 《ダーレッドガンダム》は』
「大丈夫、かどうかは判定しかねるな。こいつがどう挙動するのかは、俺にも分からない」
バーミットが通信先で嘆息をついたのが伝わってくる。
『……あんたってそういう……まぁいいわ。愚痴は帰ってからたくさん言ってあげる』
「あんたには珍しいじゃないか。先延ばしにするなんて」
『ミュイっ! クラードっ!』
通信先で不意に弾けた声にクラードはアクティブウィンドウ越しのファムを見やる。
『こらっ、ファムー。あんた、今は戦闘警戒中なんだからねー』
「……ファムはそこに居るのか」
『いるよ? クラード、がんばってね』
「……頑張る、か。頑張って死ねという事なのかもな」
『ミュイ……しんじゃうのは、やだよ……』
『あんたってば。少しはマシになったかと思ったら、そういう事は言わない!』
「あまりマシな戦局でもないんでね。楽観視は捨てたほうがいいだろう」
『……だからってねぇ……これから出る人間相手に死ぬなんて言えないでしょうが。……カトリナちゃんとは話したの?』
「ああ、話しておいた」
『ふぅーん。あんたも隅に置けないわねぇ』
「何の事だ。カトリナ・シンジョウとは委任担当官としての話しかしていない」
『あれー? あたしは何も言ってないわよ? あんたから口を滑らせたんだからねー』
こういう時に妙に聡いのがバーミットの強みなのだろう。
「……あんたらしいな。他人のゴシップに興味でもあるのか」
『別に、こういう時に笑い話の一つや二つは言えたほうが命は拾いやすいって言う経験則よ』
分かっている。
自分達はあまりに無謀な賭けに出ているのだ。
聖獣討伐作戦――月軌道決戦で実行したあれとはまるで異なる。
戦力も、それに死力もまるで足りていない。
それに、地球連邦の議席が少し減ったところで、自分達には何の影響もないはずだ。
だと言うのに割って入って死中に活路を見出そうと言うのがそもそも酔狂だろう。
「……正直なところ、勝てるか勝てないかの分水嶺はとうに超えているだろうに」
『そうね。でも勝って帰ってらっしゃい。これはあんたを前から知る人間の言葉よ』
「……そんなに軽く言われてしまうものなのか」
『大げさに言ったって、あんたは無理をするんだから。だったら、ちょっとした別れ程度で湿っぽくなるもんでもないでしょうに』
「……それもそうだな。俺も、らしくない感傷に足を取られているのかもしれない」
『長く生きている人間の言葉で言わせてもらうと、あんたは少し悲観的なのよ。幸せ女のカトリナちゃんを見習いなさい。あの子は……まだ、それでもまだ、って抗っているでしょう? あれくらい意地汚くなったほうが、勝ちの目はあるわよ』
『ミュイっ! バーミット、いじきたない!』
『あたしは意地汚くないっての! ……まぁ、ともかく。特別な事は言わないわ。ただ、帰ってらっしゃい』
咳払いして佇まいを正したバーミットにファムがモニターを覗き込んでくる。
そんな二人に、クラードはサムズアップを寄越していた。
「……ああ。俺はまだ、死ねないからな」
『クラードさん! 修繕、細かいところもやっておきました。ベテルギウスアームに直結するビームマグナムも一緒に。武装は最大規模で装着してあります。重力下ですので、少し重たいかもしれませんが』
ティーチの接触回線にクラードは応じていた。
「火力としては、聖獣に比肩出来そうか」
『それも、出たとこ勝負でしょうね。《ダーレッドガンダム》の性能としては、これ以上とないほどに引き上げたつもりですが……』
濁すのは、前回の戦闘でも巻き起こした不明現象の元凶が未だに理解出来ていないからであろう。
オフィーリアの整備班の頭脳を結集しても、《ダーレッドガンダム》はブラックボックスのままであった。
『……ただ』
ティーチは声を潜めワイヤーで繋がった接触回線でギリギリ聞こえる声を絞っていた。
『……ヴィルヘルムさんの仰っていた事が気にかかります。このMSも、聖獣の一部だって言うのは……』
混乱をもたらさないようにヴィルヘルムは自身の持ち得る憶測を誰彼かまわずに話す事はないが、それでも《ダーレッドガンダム》と自分の変化に戸惑っているのは理解出来る。
「……そうだとしても、俺は変わらない。敵を殲滅し、その末に勝利を掴み取るまでだ」
『……ですよね。安心しました。こっちはバックアップは可能ですので、どれだけでも言ってください。……ご武運を』
「すまないな、ティーチ。あんたには無理をさせる」
その言葉を返した途端、ティーチは茫然とした後に涙ぐんでいた。
理由が分からず、クラードは問い返す。
「どうした? 何かあったのか?」
『い、いえ……っ。……昔、似たような事を、言われた事があったので思い出してしまって……忘れてください。ちょっとした恋煩いのようなものです。思い出の中だけの話ですので』
「……そう、か」
ティーチは涙を拭ってワイヤーを外す。
自分もまた誰かの思い出の中で生きてけるのだろうか、と脳裏を掠めた考えに、クラードは自嘲する。
「……馬鹿だろ、その考え。思い出の中で生きるなんてのは、死んだ人間にだけ許される特権だ。俺は、まだ生きているだろう。ならばその命、燃やさないでどうすると言うんだ」
腕を可変させ、接続口に繋いだ途端、電磁の刃が突き立ち、クラードはその痛みを脳髄の中に埋め込んでいた。
『レヴォル・インターセプト・リーディング、起動します。“懲りないのだな、お前も”』
「……《ダーレッドガンダム》、お前は俺の何かを知っているようだ。だからこそ、言っておく。俺はお前に呑まれない。むしろ、逆だ。振り落されないように気を付けておけ。お前を乗りこなすのは、この俺だ」
『“お前に従えと言うのかね?”』
「……いつだってそうだっただろう。レヴォル・インターセプト・リーディング、俺に従え」
『“努力しよう”。コミュニケートモード終了。専用アイリウムはこれより、戦闘モードに移行します』
カタパルトへと移送されていく中で、クラードは誘導灯が青く染まるのを視野に入れていた。
『射出タイミングをエージェント、クラードに譲渡。発進どうぞ』
「了解。――《ダーレッドガンダム》、エージェント、クラード。迎撃空域に先行する!」
青い電流がのたうち、重力の重石を引き受けた《ダーレッドガンダム》は背部格納バックパックを展開させていた。
二対の翼が開き、推進剤の尾を引かせて安定領域へと引き上げていく。
続いてダビデの《レグルスブラッド》とRM第三小隊を束ねるユキノの機体が後ろを固め、鹵獲されたという《ネクロレヴォル》も戦線に加わる。
「……単純戦力でも聖獣には比肩し得ない……。それでもやるしかない、か」
『クラードさん。《ネクロレヴォル》はもしもの時にはダリンズ中尉にお任せしています。私達は、前衛として第三の聖獣の出端を挫く役割です』
「……一番槍と言うわけだな。引き受けよう」
クラードは暗雲の垂れ込める大陸の景色が次々と切り替わっていくのを目の当たりにしていた。
《サードアルタイル》が行き過ぎた空は電磁が想定外の出力を弾き出し、街の明かりが明滅する。
「……支配特権層の戦い振りか」
空を舞うのは何も自分達だけではない。
おっとり刀で抵抗のために出撃したであろう、《レグルス》編隊が応戦の火線を咲かせている。
《サードアルタイル》は虹の皮膜で防衛しつつ、実体弾もビーム兵器も意に介さずとでも言うように跳ね返していた。
虹の皮膜は触れただけでも毒のようで、機体が融け落ち、《レグルス》はアイカメラから生命の光を奪われて墜落する。
街並みは半狂乱に陥っていた。
そのほとんどが《サードアルタイル》本体のもたらした悲劇と言うよりかは、《レグルス》の無用な抵抗によって生まれた流れ弾の被害のようである。
『……何て惨い……』
『抵抗するな、とは言えないだろう。あれは仕方のない事だ……』
ユキノとダビデの言葉を受けながら、クラードは《サードアルタイル》の索敵領域に入った事を関知する。
それはレーダーによるものでもあったが、何よりも肌を粟立たせる感覚であった。
――同族が狩人の領域に押し入った事を、否が応でも感じさせる。
「……そうさ。俺とお前は、同じだろうな」
《サードアルタイル》が振り返る。その単眼はこちらを捉えていた。
「《ダーレッドガンダム》より各機へ。これより、迎撃戦闘を開始する。……断っておくが、これは要らぬ追撃だ。相手にとってしてみれば、俺達なんて羽虫のそれだろう」
『それでも、やる意味があるんなら、私達はやるしかないでしょう。……《アイギス》はミラーヘッドの両翼を広げて敵を包囲。パーティクルビットに警戒しつつ、波状攻撃を仕掛けます』
ユキノの声にクラードは《ダーレッドガンダム》の右腕に装着されたビームマグナムを意識する。
《サードアルタイル》は照準されたのを感じ取ってか、虹の防御膜を押し広げていた。
「……パーティクルビット相手にこっちの火力がどこまで通じるのかは未知数……。だがそれでも……」
ビームマグナムが光を充填し、そのまま一射する。
それを嚆矢としてRM第三小隊の火砲が掃射されていた。
現状、自分達の最大限の抗いはしかし、《サードアルタイル》の生じさせた虹の防御膜を前に霧散していく。
『弾幕を切らすな。パーティクルビットは有限のはずだ』
ダビデの声に彼女を指揮官としての部隊が火線を途絶えさせないが、それでもこちらの総火力だけでは《サードアルタイル》の装甲にさえも届かない。
クラードは前進していた。
友軍の火力を引き受けながら、ビームマグナムを構え、直上から《サードアルタイル》を射抜こうとする。
しかし、相手の反射速度はこちらの想定以上であった。
すかさず回り込んだパーティクルビットの皮膜が裏返り、即座に反撃に移る。
舌打ちを滲ませて後退し様に距離を稼ごうとするが、パーティクルビットの追撃は容赦ない。
「相手はほとんど動いてないって言うのに……!」
自在なる腕か、あるいは相応の意識のように虹の皮膜が《ダーレッドガンダム》を捉えようとする。
反転し様にビームマグナムを一射するも、相手からしてみれば避けるまでもない。
エネルギーが拡散し、虹が吸収する。
「パーティクルビットにはエネルギー吸収の力もあるって言うのか……!」
機体を加速させ、街並みスレスレを滑空するが、《サードアルタイル》には人命の頓着さえ存在せず、パーティクルビットの荒波が人々の営みを洗い流していく。
『逃げ遅れた人達が……!』
『今は……聖獣討伐が最優先だ。気を割いている場合でもない』
ダビデの論調が正しいがクラードはこの時、逃げ遅れた親子が虹の波に飲み込まれ、そのまま消滅して行ったのを目の当たりにしていた。
掻き消されるようにして、触れた個所から分解されていく。
そこに人間の尊厳など、まるで最初から存在していなかったかのように。
「……俺達は、こんな奴と戦っているのか……」
《サードアルタイル》の挙動には迷いがない。
かつて、《ネクストデネブ》を相手取った時や、《シクススプロキオン》と相見えた時とも違う。
殺意だけだ。
殺意だけで、この聖獣は自分達を薙ぎ倒している。
そこに論拠はなく、倒すべきと規定した相手を葬っているのみ。
虹色の波の一端が《ダーレッドガンダム》に絡みつこうとして、クラードはビームマグナムを一射させて退けさせようとしたが、相手のほうが随分と素早い。
瞬時に機体を横ロールさせつつ、武装を手離し、近接武装の小太刀で叩き割る。
爆炎が舞い散り、虹の皮膜の挙動を一瞬だけ押し留めたがたかが知れていると言うものだ。
第三の聖獣から逃れる術はない。
彼の者の射程に潜り込んだ時点で、自分達は分の悪い戦いを講じているだけ。
『ミラーヘッドを維持しつつ、敵の攻撃射程に入り過ぎないよう、留意! 中距離からの射撃で応戦!』
ユキノの命令は的確だが、《サードアルタイル》にしてみれば、そのような判断も意味はあるまい。
背後から仕掛けようとしていた《レグルス》を虹の一閃が引き裂き、そのまま溶断された機体が街頭へと墜落する。
アステロイドジェネレーターに引火したのか収縮爆発が引き起こされ、業火が街を焼き払っていた。
朱色に染まる街の火炎を照り受け、《サードアルタイル》の単眼がこちらを睨む。
クラードは小太刀と大太刀を接合させ、双剣で敵機の射線へと加速していた。
「……ミラーヘッド展開。段階加速!」
段階加速を経た《ダーレッドガンダム》が敵の第一射である虹の皮膜を潜り抜け、一閃を薙ぎ払う。
勢いを殺さずに直上に抜ける形での再加速で、虹の荒波を断ち割っていた。
それでも修復される速度のほうが遥かに素早い。
持ち直した敵機が《ダーレッドガンダム》を狙い澄まし、視界の両側から包み込むようにしてパーティクルビットの津波を引き起こす。
瞬時に機体を急速後退。
相手の射程から逃れようとするも、別の経路を辿っていたパーティクルビットの一部が脚部へと纏いついていた。
即断即決で太刀を閃かせ、絡め取られた部位を切断する。
それでも、相手からしてみれば、自由自在な波の一部が切られた程度では、かすり傷ですらないのだろう。
荒波が湧き立ち、《ダーレッドガンダム》を包囲しようとする。
「……無敵か。無敵だとでも言うのか……第三の聖獣は……」
否、この世に無敵の機体などありはしない。
眼前から逃げ場をなくそうとした《サードアルタイル》の挙動に、クラードは奥歯を噛み締めて瞳孔を絞っていた。
右側の武装へと腕を潜り込ませ、《ダーレッドガンダム》が跳ね上がる。
その瞬間、相手はうろたえたように波の勢いを削がせた。
ほんの一瞬だが好機に繋がる。
「ベテルギウスアーム、セット。敵を照準……引き裂く!」
鉤爪を軋らせ、《ダーレッドガンダム》は頭上を覆っていたパーティクルビットを薙ぎ払っていた。
どうやら《ダーレッドガンダム》の武装の中でも、ベテルギウスアームなら相手を上回れるらしい。
しかしこれは、自分にとっても諸刃の剣――。
鉤爪を展開させた自分に、ユキノ達が僅かにうろたえたのが伝わる。
無理もない。これを用いて自分は地上まで空間転移させた。
不明瞭な武装を振るうのは何も自分も、《サードアルタイル》も同じ事だ。
「……それでも勝てる手を講じるしかない。パラドクスフィールドの補正値を固定……このまま――薙ぎ払う!」
鉤爪の掌の内側より生じた虹色の輝きを帯び、《ダーレッドガンダム》は吼えていた。
パーティクルビットを引き裂き――否、この世界より分解し、そして消滅させている。
虹の津波が触れた個所から掻き消え、相手へと肉薄する。
「今だ。第二部隊、及びRM第三小隊はここから斬り込め。俺が先陣を務める」
『だけれど、クラードさん。その機体は……!』
「……頓着している場合でもない。使えるものは使え」
《ダーレッドガンダム》が次々とパーティクルビットの存在そのものを打ち消していく。
それは対消滅現象にも似て、相手の微細なる虹の皮膜を構成する物質の概念を世界から殺ぎ落とす。
「……このまま……機体装甲板に取り付ければ……!」
《サードアルタイル》の装甲が眼前に迫り、クラードは雄叫びを上げて鉤爪を打ち下ろしていた。
《ダーレッドガンダム》の世界を拒む爪が、第三の聖獣に届く。
それは在り得ざる接触であったのかもしれない。世界を割る絶叫が響き渡り、《ダーレッドガンダム》を虹の皮膜が押し返していく。
機体を削られる感覚がライドマトリクサーの痛覚として伝導し、クラードは神経を引き剥がす激痛に奥歯を噛み締める。
痛みだけで精神が洗い流されてしまいそうだ。
それでも、爪弾いた攻勢を止めるわけにはいかない。
返す刀の鉤爪が奔り、パーティクルビットを切り拓く。
「――行け!」
声が連鎖した瞬間には、友軍の火線が突き刺さっていた。
敵影を捉えた一斉掃射は《サードアルタイル》の躯体を僅かに傾がせる。
『……効いている……?』
疑問でもやるしかない。
どれだけ愚行でも、行動するほかないのだ。
鉤爪を掌底の形に固定し、クラードは砲門を《サードアルタイル》の装甲へと照準していた。
黒白の輝きを誇る弾頭が弾き出され、着弾するなり敵の装甲板を概念宇宙の外側へと吹き飛ばしていく。
『……すごい……』
味方の忌避を受けても、止まってなるものか。
たとえ《ダーレッドガンダム》の力そのものが禁じられたそれであったとしても、最後の最後まで振り絞れば、それは己の力として血肉となる。
そうなのだと信じて、クラードは第二射を試みていたが、その時には虹の皮膜が先鋭化し、鋭い一陣の旋風となってこちらの肩口を射抜いていた。
鋭敏な痛みが突き抜け、コックピットを叫びが満たす。
しかし、それこそが好機でもあった。
クラードは固定化されたパーティクルビットのすり鉢状の刃を鉤爪で掴み取る。
「これ、で……お前はもう、逃げられない……」
『まさかここまでするとはな。エージェント、クラード』
その時になって初めて、接触回線が通信を震わせていた。
「……なるほど、確かにグゥエルの声によく似ている。だが、俺は甘くはないぞ。たとえ見知った人間の亡霊を騙ろうとも――ここで全て、断ち切るまでだ」
《サードアルタイル》の単眼と《ダーレッドガンダム》の双眸が重なり合い、互いを見据えた直後には、決着が付いているはずであった。
――地上を粉砕する極大化された重力砲撃が、戦場を突っ切る事を想定していなければ。
クラードは機体ごと投げ出され、宙を舞う。
《サードアルタイル》は砲撃と言う名の概念を叩き込まれた事でさえも遅れた認識であったらしい。
機体の半分の質量を奪われてから、ようやく現実認識が追いついて来たとでも言うように、その身を傾がせ、爆発の余波が襲う。
衝撃波が全部隊を震撼させ、眼下に広がる街並みはその存在の証明の一欠けらも残す事なく、消滅の一途を辿ったのであった。
「何、が……」
起こったのか。
それを解き明かすのにはあまりにも足らず、そして自分はあまりにも無力であった。
ただ、通信網を哄笑が満たす。
『あばよ、聖獣とやら。ここで俺に狙われたのが、運のツキだと思ってもらって構わねぇぜ、その他大勢の連中もよ。英雄が煌めくとすりゃあ、こういう瞬間なんだろうな。その他大勢を踏み潰す時が、一番に快楽ってもんだ!』
「……貴様、は……」
敵意は、再び掃射された高重力砲撃を前に霧散していた。