機動戦士ガンダムダレト   作:オンドゥル大使

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第275話「真実は無情にも」

 

 修繕作業に運ばれていく《レグルス》を眺めていたメイアは、《ネクロレヴォル》から離れるなり整備班と向かい合ってサインを送る人影を目に留めていた。

 

「ねぇ、キミ、確かゴースト、スリーだったよね? 艦長の前で会った……」

 

 呼び止めた自分に意識を振り向けた相手は、ヘルメットを外していた。

 

 汗の玉が浮かび上がる、白雪のような髪を持つ麗しいかんばせだ。

 

「……驚いた。びっくりするくらい美人」

 

 こちらの軽率な発言に少しむっとしたようであったが、それさえも絵になる容貌であった。

 

「……何か。メイア・メイリス」

 

「あ、いや……あー、駄目だ。ガチの美人見ちゃうとど忘れしちゃう……」

 

「ふざけているのか? 《ネクロレヴォル》の修繕と作戦の随時実行、一秒でも惜しい」

 

「あっ……分かった、分かったってば。……えーっとさ、キミ、何で逃げなかったの?」

 

「……質問の意図をはかりかねる」

 

「……嘘じゃん。分かっているクセに。だってキミは、鹵獲されたって言う見識だ。だから、別にボクらを見限って、相手についてもよかったんじゃない?」

 

 少し思案するように中空を睨んでから、相手は告げていた。

 

「……不義理となる、と思ったからだ」

 

「それはこの艦に対して?」

 

「いや……一個人としてぶつかってくれた、人間が二人も居る。なら、私は彼らの意思に殉ずるべきだ。如何に死人とは言え、約束は約束なのだと」

 

「ふぅん……何だかちょっと意外だな。だって、キミ、モルガンに居た頃は本当に切り詰めた刃みたいだったから」

 

「……私も、鈍ったものだと思う。しかし、同時に、それでよかったのだと思う事にした」

 

「いいね、思う事にしたっての。何だか前向きで、騎屍兵っぽくない」

 

「……メイア・メイリス。単純な知的好奇心なら、私に付き纏わないほうがいい」

 

「あっ、待ってって。キミ、本当の名前、あるんでしょ? 教えてよ」

 

「……シズク・エトランジェ。何でもない、記号だ」

 

「シズク、か。何なら、また話そうよ。キミ、思ったよか面白そうだ」

 

 こちらの評にシズクは渋面を返す。

 

「……断る。個人的な興味で時間を割くような場合でもない。……大勢、死んだようだな」

 

 帰還した《アイギス》も《レグルス》もどれもこれも中破レベルだ。

 

 それも当然、王族親衛隊の擁する《パラティヌス》と真正面からやり合えば、人死にが出ないなんて都合のいい事もない。

 

「……まぁ、辛いのはオフィーリアに前から居た人間でしょ。ボクみたいな、途中から割って入った人間じゃ、分かった風にも成れないよ」

 

「王族親衛隊は、ほとんど壊滅、か。あれで一つ事に殉ずる精神を持っていたのだろうか」

 

「どうだかね。どっちにしたって、ボクには命題もある」

 

 合流してきたラムダに、そして生きているのならばもう一度会いたい人間も居るのだ。

 

 だから、ここでは死ねないと言う思い一つを胸に、《レグルス》で戦い抜いてきたつもりだったのだが。

 

「……いやはや、でもお荷物だったみたいだね。ボクってば、もっと上手くやるタイプだと思っていたのにな」

 

「戦場に投げられれば、ヒトは容易に価値を見失う。足を取られれば負けだ」

 

「それもそうだけれどさ。うーん……何て言うのかな。ボクの事、知っているでしょ?」

 

 こちらの興味津々な質問にシズクは心底呆れ返ったように口にしていた。

 

「……ギルティジェニュエンのボーカル、だったか? “罪付き”のメイア」

 

「そう! そろそろさー……やっぱりライヴもしたいし、こうやって戦場を歩き回っているのも疲れちゃった。凱旋ライヴ、早くしたいなー」

 

「自分一人で出来るのか?」

 

「そこなんだよねー。……ボクに帰る場所があるのなら、それを感じたい。イリス達が生きているかどうかは分からないけれど、分からないからって悲観に持ち込むのは、違う気がするから」

 

「分からないから悲観に持ち込む、か。……私もそうだったのかもしれない。騎屍兵であったそれ以降の事は、もう分かろうとも思わなかった。戦場で踏みしだく敵兵にいちいち気を取られていれば、敗北以前に騎屍兵としての価値を失う。私は、悲観もましてや生への憧れも、とっくの昔に失ったものだと思っていた。それが単純な……誰かとの繋がりを希釈化しただけの代物だとは思わずに……」

 

「キミには帰る場所がある。それに尽きるでしょ」

 

 シズクはハッとしたように周囲を見渡してから、そうか、と小さく呟く。

 

「……帰る場所が……あれば、それでよかったのかもしれないな」

 

「よく分かんないけれど、さ。誰かの悲しみを自分のもののように語るのも違うだろうし。それでも、ここに帰れればいいって、思える居場所が一つ、あるといいよね」

 

 メイアは身を翻していた。

 

 シズクは《ネクロレヴォル》の改修作業と次の作戦に忙しいはずだ。

 

 そう感じた背中に、声がかかる。

 

「待って……欲しい、メイア・メイリス。一つ、答えてくれ。……それが心なんだろうか?」

 

「分かんないよ、そこまで言い切れる身分でもないし。ただ、一つ言えるのは、そこまで思えるのならさ、いつかボク達のライヴを観に来てくれない? きっと損はさせないから」

 

 その言葉を潮にして、メイアは重力ブロックに向けてグリップを握り締める。

 

 道中で遭遇したのは泣きじゃくるファムを抱えたカトリナだった。

 

「……あっ、えっと、メイアさん……」

 

「カトリナ……だっけ? それとファム」

 

 ファムの眼からは涙の粒が溢れ出し、止め処ない。

 

 その理由はオープン回線で告げられた事実に符合するのだろう。

 

「……本当に、万華鏡の妹だって?」

 

「にいさま……にいさま……いっちゃ、やだよぅ……」

 

「……ファムちゃんの悲しみに寄り添う事も出来ないんですよね。だって、万華鏡……ジオ・クランスコールとの日々はファムちゃんだけの思い出なんだし」

 

「……あの鉄壁の万華鏡に妹が居たのも驚きなら、最後の最後に遺した言葉がそれかぁ……。何だかやるせないね」

 

「でももっと辛いのは……きっとクラードさんなんです。だって、必死に戦い抜いたのに、これじゃあ……あんまりですよ」

 

 面を伏せた様子のカトリナにメイアは手を引いていた。

 

 ハッとした瞬間には笑顔を咲かせている。

 

「大丈夫だって! クラードなら、大丈夫っ! だって、今までだって辛い事も、しんどい事だってあったわけじゃんか! でも立ち上がって来たんだ、だからクラードなら……!」

 

 あれ? とメイアはその言葉尻が震えている事に気付いていた。

 

 頬を伝い落ちる涙の粒にも。

 

「……何で? あれあれ? 何で何で……? 何でなんだろ……?」

 

「……メイアさん、クラードさんの事、心配してくださっているんですよね?」

 

「あ、うん、そう……なのかな? ボクはクラードの事が心配……? でも、何で涙?」

 

「泣けるのは……痛み以外で泣けるのは、人間だけらしいです。それがきっと……メイアさんがクラードさんを想っている証なんだと思いますっ」

 

 崩れそうな感情を持ち堪えさせて、笑顔を向けるカトリナに、メイアは頬を掻く。

 

「……何だかな。励まそうとして、逆に励まされたんじゃ、世話ないや」

 

「でも、ありがとうございます。クラードさんを、きっちり想ってくれて」

 

「それはキミのほうでしょ? クラードの事、好きだって言うんなら」

 

 少し不意を突くつもりで声にしたが、カトリナは満たされた笑顔で応じていた。

 

「……はいっ。クラードさんならきっと、何度だって立ち上がってくれます。なら、私はその歩みを支えるだけで……」

 

「それだけで幸せって? おめでたいね。でも……嫌いじゃない。キミみたいなナチュラルボーン馬鹿ってのも居たもんだ」

 

「……それって、貶してます?」

 

「分かるようになってるじゃん。じゃあ、ちょっとばかし、ハンカチを借りようかな?」

 

 差し出されたハンカチでちーんと鼻をかんでから、メイアは持ち直す。

 

「……大丈夫ですか? 私から見ればメイアさんも無茶しているように映りますけれど……」

 

「誰も大丈夫じゃないのかもね。けれど、予感だけはある。何か、重要な事が起ころうとしている、そんな予感は。カトリナ……も、あれでしょ? 呼ばれたんでしょ? 作戦会議」

 

「あ……はい。ラムダの構成員との顔合わせも兼ねてって、レミア艦長から……」

 

「……ファム……は連れていくしかないか。ファム? 歩ける?」

 

「……ミュイ……あるける……けれどでも、とっても……かなしいね……」

 

「うん、とっても悲しい。ファムにしてみれば、大事な人が二人も居なくなっちゃったんだから。でも、右足と左足を交互に動かせば、前に進む事だけは出来るはず」

 

 そこでカトリナはくすっと微笑む。

 

 メイアは首を傾げていた。

 

「あれ? 何か変な事言った?」

 

「あ、いえ……。クラードさんにも昔、同じような事を言われたっけなって思いまして」

 

「……何だか癪だな。クラードの二番煎じみたいで」

 

「でも、本当にそうだと思います。私達は……苦しくっても前に進まないといけない局面ばっかりで……それでも、前を向くだけの覚悟があれば……」

 

「幸運なんだろうね。ボクは、分かった風な事を言うつもりはないけれど、ここまで戦ってきたキミだって相当だと思う。だから……もうそろそろ終着点が見えれば、きっと展望としちゃいいはずだ」

 

 重力ブロックを潜り抜け、オフィーリアの会議室の前で三人で佇む。

 

『入ってちょうだい』

 

 内部よりレミアの声が響き渡り、カトリナが先行してノックして踏み込む。

 

 会議室の手前にはオフィーリアの構成員が集っていたが、向こう側にはラムダの構成員が机を挟んで対峙していた。

 

「……マーシュ……生きていたんだ……」

 

「久しぶりね、メイア。再会を祝うような余裕もないわ。早速だけれど」

 

 顎をしゃくったマーシュに、一人の青年が歩み出る。

 

 蓬髪に、憔悴したような面持ちの彼は率先して名乗り出ていた。

 

「お初にお目にかかります。僕はザライアン……ザライアン・リーブス。MF04、《フォースベガネクサス》のパイロットです」

 

 その一言で全員に緊張が走ったのが伝わる。

 

 まさか、MFのパイロットが世界的にも有名な木星船団の師団長だとは想定外であった。

 

「……宇宙飛行士、ザライアン・リーブス。木星船団の師団長であり、幾度となく木星への資源調達に赴いている……まさに人類代表と言ってもいい。この経歴に、間違いはないわね?」

 

 問い質したレミアに、ザライアンは強張った表情のまま応じていた。

 

「尾ひれがついているようですが、大方その通りです」

 

「そして、MFのパイロット……ね。なかなか信じ難いけれど……イレギュラーが起こり続けてきたのが現状……。飲み込みましょう。それで、何故、マグナマトリクス社とMFのパイロットが結託を? それがまるで分からないのだけれど」

 

「結託と言うのは少し違ってね。利害の一致、とでも言うべきなのだろうけれど」

 

 マーシュは軽く挙手し、説明責任を果たそうとする。

 

「まず一つ。マグナマトリクス社はラムダの現状を把握していない。私達は本社から背を向けた形となる」

 

「私達と同じ……と言うわけ。でも信用し切れないのは、今の今まで関知されないわけでもなかったでしょう」

 

「それに関しては私から、説明しましょう」

 

 恭しく頭を垂れた懐かしい面影にメイアは絶句する。

 

「……イリス。生きてくれたんだ……」

 

「メイア、久しぶりね。死んだとばかり思っていたけれど、生きていてくれたほうが都合もいいわ。説明も簡略化出来そうだし」

 

 何だかその言葉振りは――自分の見知ったバンドメンバーであり、エージェント仲間でもあったイリスとはまるで別種のようであった。

 

「私達は大きな一つの目的のために動いています。それはMFの側……彼らにしてみても大きなアキレス腱であり、この次元宇宙に集約され続ける原因でもある」

 

「MFのパイロット達の弱みでも握っているって?」

 

 半分冗談めかした論調のバーミットの問いかけに、イリスは表情をほとんど動かさずに首肯する。

 

「ええ、その通り。MFのパイロット達を拘束し、彼らを今日まで縛り続けてきた存在が、この世には居る」

 

 まさかそのような言葉が返って来るとは想定外であったのか、質問したバーミットはうろたえたようであった。

 

「ねぇ、待って……。そんなのが居たとして……じゃあ何? まさか世界を裏側から回していたとか言わないわよね?」

 

「聡くって助かります。彼らはこの来英歴を支配し、王族親衛隊を組織して全てを予見されている事柄通りに進めようとしている」

 

 バーミットははぁ、とため息をこぼす。

 

「……何か?」

 

「いえ、別に。今さらスケールが大きいだとか小さいだとか、言うもんでもないけれど、MFのパイロットが目の前に居るんだもの。ちょっとは常人並みに驚く暇くらいは欲しかっただけ」

 

「そうですか。では説明に移らせてもらいます。彼らの名前は、口にする事でさえも禁じられてきましたが、最早、その段階は過ぎました。ザライアン・リーブス、名前を」

 

 ザライアンは深く瞑目した後に、その名を紡ぎ上げていた。

 

「……彼らの名は、ダーレットチルドレン。この来英歴にて、最も発達した知性体を名乗り、僕らを……いや、僕らだけではなく世界をたばかった存在だ」

 

「ダーレットチルドレン……? そんなものが居たとして……じゃあ今の今まで、キミらは何で、そいつらに縛られていたって言うんだ? MFほどの力があれば、すぐに相手を潰す事くらい――」

 

「メイア、思考拡張の分野を知っているのならば、少しは耳にした事があるはず。彼の技術は脳神経のバイパスに作用し、記憶や無意識下での状況の把握を可能にする」

 

「だから、それが何だって……」

 

「“約定”だ」

 

 短く告げたザライアンに全員の視線が集まっていく。

 

「彼らの存在を目にし、耳にした者は無意識下で逆らえなくなる。それこそが強度の思考拡張たる“約定”。我々が今まで他の人々にこれを打ち明けられなかったのは、彼らの名を知るだけでも“約定”の範囲に縛られる可能性があったからだ」

 

「“約定”……? じゃあ、キミ達は……来英歴を訪れたその時に……逆らえなくなったって?」

 

「事象は前後するが、そう思ってもらって構わない。この来英歴に呼ばれた時点で、僕達には敗北しかなかった」

 

「……“夏への扉事変”は……あれもあなた達の言うダーレットチルドレンの思惑があったと?」

 

 質問したレミアに、ザライアンは頭を振っていた。

 

「いや、あれは僕達の罪だ。この次元宇宙に召喚された際、僕達は呼応するように互いの機体で合流するはずだった。たった一つの“呼び声”に応じた結果だ。それを確かめる義務があった。しかし、この次元宇宙の者達は僕達に対し、武力で先制攻撃してきた。よって……対処するしか、なかった……」

 

 その言葉振りに浮かんだ悔恨はかつての大虐殺の記憶だろうか。

 

 彼らにしか分からぬ領域がある。

 

 そんな中でカトリナが出し抜けに声を発していた。

 

「……待ってください、呼び声? 誰かが……あなた達を呼んだって言うんですか?」

 

「僕達は、ずっと呼ばれている。それは今でも……声は情報となって認識されているという事は、呼び声の主はまだ死んでいないと思われる」

 

「一体……誰が呼んでいたって言うんですか……?」

 

 ザライアンは一瞥を振り向ける。

 

 それは先ほどから車椅子に腰掛けている女性にであった。

 

 金髪で真紅の瞳が揺れている。

 

「……答えよう。それは――オリジナルレヴォル。僕達全員を呼んだのは、たった一つの存在だ。この次元宇宙に存在する、オリジナルレヴォルこそが、僕達を召喚し、そして滅亡の淵に立っている事を告げている」

 

「オリジナル……」

 

「レヴォルって……」

 

 カトリナとバーミットが驚嘆する中で、レミアが切り口鋭く問い返す。

 

「それは、私達の擁していた《レヴォル》そのもの……なのかしら?」

 

 一拍の沈黙の後、ザライアンは答えていた。

 

「……恐らく、この次元宇宙で実装されていた《レヴォル》は、少し違う。彼女……ヴィヴィー・スゥの証言と擦り合わせるに、この次元宇宙で《レヴォル》と呼ばれていた存在は、僕らを呼んでいた“ガンダム”ではない」

 

「……ガンダム……?」

 

「僕達はそれぞれの次元宇宙にて、技術特異点と呼ばれた存在と共に、この世界に舞い降りた。世界を救済するために。その名前は、偶然の一致か、あるいは必然か。僕達は機動戦士の名を取り、そして操る機体は全て、本来の名前は《ガンダムレヴォル》である、と」

 

「ガンダム……機動戦士……ガンダム……」

 

 メイアは口中に繰り返しつつ、ザライアンの語る論調がどこか懺悔めいているのを感じていた。

 

 これまで他者に話せなかった事への悔恨と言うよりも、それを口にする事、それ自体が禁忌であるかのように。

 

 レミアは挙手し、発言していた。

 

「私達がモニターしていた《レヴォル》は、MF05、《フィフスエレメント》であった、という情報はある。あなた達を呼んでいたのは、じゃあもっと原初の、ものであったと?」

 

「……分からない。存在は感じるんだが、とても微弱なんだ」

 

「既存のMFではない……と見るべきかしら?」

 

「……《サードアルタイル》の放つ波長とも、まして現状、稼働している《ダーレッドガンダム》……あれとも違うのは、感じるんだが……明確にそれを認識する事は出来ない。MFから降りてしまっている現状では、もっとだ。それに、少しずつその波長は……僕達にとって無力なものへと変じつつあるのを、感じ取る。僕達、波長生命体には……」

 

 その言葉が放たれた瞬間、カトリナがハッとして声を張っていた。

 

「波長……生命体……。教えてください……っ! 波長生命体って言うのは、何なんですか! 一体何が……普通の人間と違うって……!」

 

「カトリナさん、落ち着いてちょうだい。今はお互いの情報の擦り合わせが急務よ」

 

「で、でも……っ! じゃあクラードさんは……あんなに苦しんだ意味が……! 少しは報われるはずじゃないですか! 自分以外の波長生命体が居るっていうのなら……!」

 

「気持ちは分かるけれど。カトリナさん、落ち着いてくれる?」

 

「い、いえっ……! ここで退けば、だってクラードさんが……!」

 

「――落ち着いてと! 言っているのよ!」

 

 机を叩いて立ち上がったレミアの怒声に、カトリナの言葉は遮られた。

 

 震える声音で、レミアは顔を向けずに告げる。

 

「……あなただけが……クラードの心配をしているんじゃ……ないのよ」

 

 

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