「……なるほど。この極地において、あなたが言いたいのは懺悔であったのは、少し想定外であったが」
ヴィルヘルムの言葉に、エーリッヒと名乗った老爺はフッと笑みを浮かべる。
『嗤うがいい。この身は最早錆びついている。我とて、万能の鍵を目指したつもりであったが、扉の向こうは思ったよりも堅牢であった』
「ダレトの、基礎理論を構築した人……? でも、おかしくないですか? だってそれじゃ、ダレトの出現と時期が合わないんじゃ……」
自分の感想にヴィルヘルムは、何て事はない、と応じてみせる。
「一千年以上前に、既に月のダレトの出現が予知されていたのだとすれば、来るべきその時のためにテスタメントベースの中に自己記憶を保全しておくのは可能だ。……問題があるとすれば、その基礎設計理念がどうしてなのだか、一千年以上、変動しなかった事実」
「そ、そうだ……。この爺さんが一千年も……いやそれ以上の時に生きていた人間だって言うんならよ……おかしいじゃねぇか! クラードのライドマトリクサーに合致するわけがねぇ」
「あるいは、こう言うべきかもしれない。――千年前に造られた遺産を、我々は掘り出しただけで、発明と呼んでいたのだと……。時代は一巡する、理は流転する。その摂理に従うのなら、大昔に造られた代物を、我々はただなぞっているだけなのかもしれない」
『ヴィルヘルム医師、君の考えはある意味では正しい。しかし、ダレトの存在を考えるのならば、こうは思わないかね? 千年前の理論がダレトの向こう側では、つい近日の理論であったのだと』
「……ダレトの向こう側……だがそれは、誰も観測出来ない事象だ。MFを開発せしめるほどの技術力、それがともすれば、我々の来英歴の感覚で言えば一千年前だったとでも言うのか」
「オイ! 分かるように話してくれ! 頭がパンクしそうだ!」
悲鳴を上げたアルベルトの気持ちも分かる。自分も、どういう事なのか、混乱していた。
「……ダレトの向こうが、こっちの世界の一千年前に相当……? でも、でもでも……っ、それじゃ釣り合いませんよ……! だってこっちの一千年前なんて、それこそ来英歴どころか、人類の歴史は始まっているかも怪しいのに……」
「いや、これは認識の齟齬だろう。我々が最新だと感じている事象を、ダレトの向こうの人々が最新だと感じているとは限らない。扉の向こうでは、こっちの戦争はそれこそ一千年前の……古めかしい戦闘スタイルである可能性は高い」
「……なるほどな。MFはじゃあ、決して新しい未知の機体なんかじゃなく……」
サルトルの言わんとしている事を、ヴィルヘルムは先回りする。
「むしろあれが大型なのは、小型化に成功していない証だろう。MFほどの力の誇示が、ダレトの向こうとこっちとでは反転しているのかもしれない。あっちの千年前と、こっちの来英歴が接続され、その結果としてテスタメントベースでは大昔の技術力でしか、我々の再現を行えなかった」
「……えっとぉ……つまり?」
「……ミラーヘッドも、もたらされた戦争の技術も、全てダレトの向こうでは千年前の遺物。我々がよちよち歩きの赤ん坊のようなものだという事さ。ミラーヘッドの小型化、戦闘方法の確立。どれもこれも、ダレトの向こうでは既に発明されて久しい事象なのだとすれば」
「で、でもですよ! それって……じゃあ……」
カトリナは深呼吸し、ゆっくりとその言葉の赴く先を告げる。
「……ダレトの向こうとこっちとじゃ……時の流れが、違う……?」
「その可能性に至れなかったのもある意味では落とし穴か。ダレトを誰も貫通していないんだ、帰還出来ない旅路では当然だろう。扉の向こうに何があるのかも知らず、我々はそこからもたらされる光の残滓だけで、知った風な気になっていた……原始人だとでも言うのか。例えるのならばダレトのもたらした技術力は火。火はどの時代でも使われてきたが、もし……あちらの世界では火は小型化出来て携帯出来るとしても、それは原始時代にもたらされたのならば、ただの火だ。それの意味を問う形になるだろう。古来より、人間は火との付き合い方を変えてきた。そのように、大昔の人間からしてみれば暖を取る、何かを焼く以外には思いつきもしなかったもので、我々の時代ならば発電も出来る……。同じ火を取り扱っているのに、だ。ここに経験と時代の含蓄の差が生まれてくる。同じ火でも、扱い方が異なればそれは大いなる断絶となる」
「……オレらの使うミラーヘッドは、じゃあただの火みたいなもんだって?」
『形骸状の話に過ぎんが、今の認識で大幅合っておるとも。我々にとってのミラーヘッドとダレトの基礎理論は、最早ただ当然の事象に過ぎない。しかし、扉の向こうでは開発どころか、見出されても居なければ、火を持ち込んだものは偉大なる発明家に変貌する。ダレトの向こうでは、我はただ火を扱うだけの人間だが、ダレトのこちら側ならば意味は違ってくる』
「……驚いたな。しかし道理は立つ。この二十年か十年で急速に発明されたものだと仮定するよりも、もう一つの世界で熟成され、熟知されたものがこっちの世界へと浸透、いいや侵食したのだとすれば。我々の扱うミラーヘッドも、戦争の技術も基礎理論だが、あなたはそれでも世界を変えられたのだとのたまうのでしょう」
『そうだ。数多の事象宇宙において我の力など羽虫の域よ。だがそれが巨人の世界ではなく、小人の世界ならば話は違ってくる』
「MFもある意味ではそういう事か……。あれも一つの火に過ぎない。しかし、大いなる技術転換期の火なのだとすれば、それは世界を一変させるだけのパワーバランスを持つ」
「……なぁ、オレは難しい話は分かんねぇが、MFもミラーヘッドも、とかく重要な意味を持つ技術ってこったろ? それに、この爺さんが言っているのは、つまり……」
「ライドマトリクサーの基礎技術も、ダレトの向こう側よりもたらされたもの。つまり、エーリッヒなる老人の言っている事は、おれ達の認識に合わせた千年前の技術って事になるな」
サルトルの結びにカトリナは頭が痛くなるのを感じつつも、必死に究明に努めていた。
「……えっと、じゃあその、クラードさんと一体化しているのは……?」
『彼が技術特異点に相当する人物だからだ。この次元宇宙には既に、四名の同一躯体が存在しているが、彼に合わせればその波長も合う。我は次元の果てより、彼と同じ躯体として、存在する三番目の使者だ』
「……あのぅ、分かります? それ」
「頷けなくはない。クラードと《レヴォル》、そしてエーリッヒ、それらが一つの同一線上で結べるのだとすれば、ある意味では同一人物であると仮定するのが手っ取り早い」
「……えっと、だとすればあなたは……いいえ、あなたもクラードさんだって言うんですか……」
『我はこの次元宇宙に三番目にやってきた。とある存在を抹消するために。だが、我の襲来を関知した連中は先回りし、我の肉体を滅ぼしてこのテスタメントベースへの審問に移り、精神データのみを転写してみせた。そうして我から搾り出せるだけのダレトの向こう側の技術恩恵を受け、さも自分達こそが絶対者のように振る舞っている』
「……あんた、そいつらが正真正銘の、黒幕だって言いたいのか」
『歴史の裏で糸を引く者達であるのは疑いようもない。我も失態であった。まさか、三番目の襲来時には既に行動が予見され、無力化された後に彼らの力になってしまうなど……。だが肉体を持たぬ我に、防衛権限はほとんど存在しない。明け透けに脳髄を掻き回され、その結果としてこの次元――来英歴は発展した。三番目の襲来時に、もっと気を張るべきであった。そうならば彼らに害される事もなかったのに』
「ちょ、ちょっと待て! 彼らってのは何なんだ? あんた、さっきから言葉繰りでオレ達を誤魔化そうとしているようにしか……」
その時、エーリッヒの像がぶれる。
不意打ち気味の現実に、彼は掌へと視線を落として残念そうに呟いていた。
『……ここまで、か。我の干渉能力を上回るのも当然。彼らはこのテスタメントベースに我を封じ込めた存在。クラードを通じて君達にコンタクトを取った事も既に露見している。よって、我を再封印し、テスタメントベースを破棄か、あるいは最初からなかった事にするつもりであろう?』
「な、なかった事って……」
『彼らにとっては児戯だ。よって、我の意識もそこまでであろう。だが、我の意識パターンは既にクラードの、彼の脳内に転写してある。ここまでは、さすがの彼らも想定外であったに違いない。我はクラードの中で生き続ける。彼がいずれ滅びるその時まで……永劫の時を……』
「分かりませんね。そこまで語っておいてあなたは最も重要な事にだけは触れていない。彼らとは何なのです? 一言だけ言えば、それで事足りるはずなのに」
『……この事象宇宙では彼らの力が強過ぎるのだ。我の乗って来た方舟も、彼らに解析され、そして最早ただ単に邪魔な相手を潰すだけの傀儡よ。あれはただの船であった。戦闘能力があるとは言っても、もう何百年も前の代物なのに……君達はあれをMFと呼ぶ。我にしてみれば、それさえも……。いや、そろそろ時間のようだ』
エーリッヒのビジョンが急速に失せていく。
オートマタ達が嘆くように、天を仰いで甲高い駆動音を響かせていた。
「……彼らとは何なのです! それさえ分かれば撃つ敵も見えてくる!」
平時のヴィルヘルムとはまるで違う訴えかけに、エーリッヒは寂しげに頭を振る。
『……言えんのだ。それを言えば君達にも危害が及ぶ。彼らの力は強大だ。よって我は、我の自己保存のためにクラードに内在するメモリーへと我の人格データをコピーし、彼の中で違和感として成り立つであろう』
「……逃げると言うのか……! それは卑怯者のする事ですよ」
『……どうとでも言ってくれ。ただ……我々“波長生命体”にすれば、実態存在を持つ君達と、そして彼らの存在こそが異端でしかない。だが、何故なのだ? 我々はただ、呼んでいただけなのに……。そこには彼らも含まれていた。だが彼らは我々の声を敵と断じ、迎撃の術を整えて来たのか……。馬鹿な、我らに敵意など、既に存在しないと言うのに』
「……波長……」
「生命体……?」
こちらの疑念を他所に、クラードを押し包んでいたミラーヘッドの蒼い粒子が分散していき、エーリッヒのビジョンが急速に薄れていく。
『さよならだ、諸君。今一度会えるとすれば、それはこの来英歴を蝕む敵を撃った時であろう』
「……傍観者を決め込んでいれば、確かに楽でしょうね」
『……言ってくれるな。我とて辛い。本当ならば、君達とは一緒に……歩みたかったのだが……』
言葉が切れ切れになってゆき、そして最後には言葉にも成らない粒子の拡散がもたらされたかと思うと、クラードの身体は急速に落下してきた。
大慌てでアルベルトが直下に潜り込んでその身を受け止める。
「エーリッヒの爺さん!」
「……誰だよ、それ」
「……クラードか。エーリッヒの事は?」
詰問するサルトルに、クラードは頭を振る。
「……いや、そんな人間の記憶はない」
「……あの爺さん、最後にハッタリをかましていったのか? それとも……本当にクラードが覚えていないだけで……」
全員がその可能性を考えていたのだろうが、クラードは額を押さえてハッと暗礁の宇宙を仰ぐ。
「……ベアトリーチェは? 時間をかけ過ぎたんじゃないのか?」
「……確かに。わたし達は少しばかり長居をし過ぎたようだ」
その瞬間、液晶に表示されていた文字が赤に反転し、非常警戒のアラートが鳴り響く。
『警告。これより240セコンド後に、テスタメントベース全域が自爆モードに入ります。職員は避難してください。繰り返します……テスタメントベースはこれより、自爆モードに入ります』
「……エーリッヒの爺さん、とんでもない置き土産を遺して行きやがった……ッ! 走れるか? クラード! 一気にシャトルまで帰投して、ベアトリーチェと合流! ずらかるぞ!」
「……ああ。だが……何が起こったんだ……?」
「後で報告書にして上げてやる。今は逃げるぞ!」
「じ、自爆って……本当に何なんですかぁー! もうっ!」
「喚いている時間も惜しい。今は……ベアトリーチェに戻ろう」
ヴィルヘルムはノーマルスーツのバイザーを下ろし、そうして一度だけ筐体へと惜しむように一瞥を振り向けた後に、決意をしていた。
「……行こう」
「……ったく、月面に来たってのにとんぼ返りってのはねぇ!」
しかし議論の時間はない。
残された猶予もないままに、カトリナ達はシャトルへと逃げ込み、そしてオートマタ達を残して浮上していた。
直後、テスタメントベースから火の手が上がり、爆発の余剰衝撃波が宇宙の深淵を震わせる。
「……何があったんだ、あそこには……」
「クラード、思い出せんのなら今は割り切れ。それよりも、次だ」
サルトルの声にクラードはぎゅっと拳を握り締めて、覚悟の相貌を振り向ける。
「……完成したんだな? あれが」
「ああ、とっておきだ。ベアトリーチェも今のところは無事。気取られてすらいないさ」
「あれって仰るのは……」
「ああ、期待の新人は知らなかったんだったな? ……おれ達の真の切り札、叛逆の炎そのもの」
シャトルは混迷の宇宙を縫うようにベアトリーチェの艦艇へと取り付き、そのまま全員が艦へと乗り移ってから、クラードはパイロットスーツに袖を通していた。
果たして――彼の視線の先にあったのは、新たなる叛逆の狼煙――。
「あれ、って……《レヴォル》?」
「そうだ。最大規模でのMSによる、聖獣への駆逐戦闘を想定した機体。――《フルアーマーレヴォル》。おれ達の希望でもある」
《フルアーマーレヴォル》の名を冠した機体は《レヴォル》のフレームを中心構造に据え、四肢へと長大な多段階装甲と、そして加速マニューバを取り付けた大型機だ。
武装は六角形のコンテナにそれぞれ両翼のように有されており、その全長だけでベアトリーチェの半分近くはある。
背面へと接続された補助バーニアは地球圏の重力でさえも振り払う巨大さを誇り、それそのものが、龍の背骨に映る。
「すごい……こんなものが……」
「一刻の猶予もない。サルトル、出撃、行けるな?」
「言っておくがぶっつけ本番だぞ! 最終調整をしてやるような時間はなかった!」
『カトリナ嬢! あーし達のほうに。《レヴォル》の推進装置だけで肉体が焼かれちゃいます』
トーマに手を引かれ、カトリナは《フルアーマーレヴォル》から引き剥がされていく。
そんな中で、四本の折れ曲がった角を有する新たなる獣である《レヴォル》へと乗り込んだクラードへと、カトリナは必死に声を振っていた。
「あの……っ! クラードさん! まだ、まだですからっ! オムライスの約束、まだ……っ!」
『……いつまでそんな事言ってるの』
「でも……っ、私からしてみれば大事な約束で……。どうか、無事に……!」
小指を突き出す。
そうだ、嘘ついたら針千本飲ます、それくらいの約束手形は心得て来た。
クラードから返答はないかのように思われたが、暫しの沈黙の後に、彼は応じていた。
『……オムライスって、美味いのか?』
「へっ……そ、それはもう……っ! 絶品なんですからっ!」
『じゃあ、その絶品のために、今命を投げ打つのもまぁ……悪くはないかな』
そこで通信は途切れる。
それでも、カトリナは温かなものを感じていた。
クラードのライドマトリクサーの手を握った時と同じ、温かなもの――。
「……必ず生きて……っ。クラードさん……」
別に約束手形に意味があっただとか、何かのためになるだとか、そんなものはどうだってよかった。
ただ――自分でも不明な感覚だが――絶品のオムライスとやらに興味が湧いていたのは事実だ。
「……馬鹿だな、俺。今さら美味いものを食べたって、どうって事ないのに」
それでも、この胸に脈打つ鼓動は。
守るべき信条は、ここに見据えられた。
それなら、後悔はない。
後悔なく――戦えるであろう。
「《レヴォル》、コミュニケートモード、30セコンドのみ有効化」
『コミュニケートモードに移行。“どうした? クラード。随分と好調のようだが?”』
「……ああ、すこぶる調子だけはいい。俺は、今なら悔いなく戦える」
『“それは何よりだ。それにしても……様変わりしたな。あのコロニー、デザイアから先、お前を見ていると何かが変わった。そうだと思える”』
「何か? 不明瞭な言葉を吐くなよ、《レヴォル》」
『“確かに、非言語化は単純に意識の羅列としては正しくないだろう。だが、言語化出来ないものを有用だと思うのが人間なのだと、そう学習はしてきたつもりだ”』
「そうか。なら、その学習の意図だけは汲んでやる」
『“感謝する。人は、痛み以外で泣ける唯一の生き物だからな”』
ハッと、クラードはその言葉を反芻する。
「……今、何て言った? 何でそれを知っている……?」
『“さぁな。引用不明”』
思わぬ形で返されたカウンターに、クラードは静かに――笑みを刻む。
「……お前ともっと話しておけばよかった。ともすれば俺よりも……変わっていったのは、お前のほうか、《レヴォル》」
メイアとの邂逅。ベアトリーチェの人々との出会いと別れ。そして――自分と言う他者を見つめ続けた、その末の発見と目覚め。
《レヴォル》は、今に自分と言う殻を脱ぎ捨て、さらなる高次元へと旅立とうとしているのかもしれない。
その時、背中の心配をしてやらないのが、乗り手としてのせめてもの慈悲と、そして自負。
「俺はお前を乗りこなす。暴れ馬になったところで関係はない。《レヴォル》、お前は俺にとって、唯一の……」
『“唯一の、何だ?”』
「……いや、それを言えば、陳腐に堕ちる。ここから先は言わないよ」
以前までならば明瞭化出来ない意識はただの邪魔だったが、今は何故なのだか、そこに落ち着きさえも取り戻している。
――分かっているさ、死にはしない。必ず帰還する。
『コミュニケートモード終了。これより、《フルアーマーレヴォル》は戦闘宙域へと突入します。突入軌道まで、20セコンド』
『……クラード、聞こえている?』
「レミアか。俺が居ない間、艦は無事だったか?」
『……正直、手痛い打撃を受け続けているけれど、一応はね。これでも艦長職なのよ。それなりに努力はしないと』
「……レミア。俺はあんたのトリガーであり続けたい。だから、今ここでは死ねない」
『あなたにしては珍しい。死ねない、なんてね。死なない、ならよく言っていたけれど』
「ああ、死ねなくなった。自分でも不合理だとは思っているよ。だが……それもひっくるめて、俺なんだ」
『……健闘を祈るわ。あなたは私の保留し続けたトリガー。だからいずれは……引かなければいけない。それは私の、運命だもの』
「ああ。もう行く。通信は切るぞ」
『行ってらっしゃい、クラード』
そんな、ちょっと片道に逸れるかのような気楽さで。
長年の盟友との、別れを切り出せるだけ、レミアは大人なのだろう。
「……俺は死ねなくなった。だから――」
両腕を翳し、ライドマトリクサーの接続口を《レヴォル》の接合部へと合わせる。
途端、これまでよりも数倍強い疼痛。
脳髄に突き立つ電流の刃。
その感触も――今は確固たる自分を構築する術。
「……だからさ、俺は戦う。《フルアーマーレヴォル》、エージェント、クラード! 迎撃宙域に先行する!」