読みにくければ、戻します。
11月に入ると戦車を動かすような演習や訓練も数少なくなり、四国混成団による駐屯地や演習場の環境整備、中隊レベルでは史跡研修といった行事が予定されていた。
11月の第2週、四国混成団演習場整備が行われ、善通寺駐屯地業務隊の支援のもと第15普通科連隊は国分台演習場に進出して整備作業を行う。
他の中隊に比べて人と機材が少ない戦車隊はというと、歩哨訓練場近辺の森に入って
伐開とは伸びるに任せた下草や立ち枯れした木の除去、密に生えている木を間伐して安全な訓練空間を作る作業であり、こうした手入れは森林の保護にもなる。
私物ゴーグルにエプロンを着けたシュウジはエンジンチェンソーを使って枯れ木を細かく切っていく。
「エンジン入れるぞ!」
「おう!」
リコイルロープを勢いよく引っ張ると軽く高い音でエンジンが回りだし、ハンドルに着いたスイッチを握りこむと刃が回りだす。
傍にいる玉嶋や今年10月に配属されたばかりの新隊員たちはシュウジが細切れにした枯れ木の幹を仮置き場所に運ぶのだ。
「なあ、秋山、ちょっとコールしてみてや!」
「コール?」
「ヤンチャな兄ちゃんが原付でやるやつ」
小刻みにスロットルを上下させ、「ブォーンヴォンヴォヴォヴォーン」とかいうふうに回転数を変えてメロディを作ることをコールと言うのである。
玉嶋はチェンソーや草刈り機といった2ストエンジンの機械を見るとこうしたネタを振るのだ。
なお、こうした機械は事故防止の観点から陸曹クラスが使うことが多いのだが、陸士長であるシュウジが使わせてもらえるのは真面目であり、3年目ということもあって使いやすいからだろう。
「タマ、回転数変えたらチェーンに負荷掛かるからやらせんなよ、やったらシバく」
「あっ、すいませーん」
ちょっとした悪ふざけの誘いは監視役兼作業員の佐倉班長に即見つかってやめろと念を押されることになった。
玉嶋が演習場整備などでエンジン付き機械を触らせてもらえないのはそういうところがあるからだろう。
木くず舞う中でシュウジがごろごろ転がる太い幹を切っているとき、安示や大野は草刈りだ。
戦車の擬装材を集める時に使う三日月鎌を持って、雑草の根本を掘るように引き切りながら引き抜いては後ろへ後ろへと投げていく。
そんな中、レーキで投げ散らかされた草をかき集めていた築山一士が呟いた。
「鎌って、千景ちゃんも使ってたな」
「見ろよ、
「オサレ武器だけどよく似合ってて良いよね」
「千景ファンか」
鎌を持っている永田一士が有名な漫画のネタをして乗っかる。
「お前、黒髪で物静かな子がタイプなだけじゃねえかよ」
千景のファンである築山と永田の二年目コンビが話しているところにツッコミを入れたのが二年目の中で最も背の高い駿河士長である。
バスケットボールが趣味でさわやか系イケメンという雰囲気を醸し出している。
三人は同期であるが駿河士長は一般曹候補生で入隊したため、自衛官候補生で入隊した築山一士と永田一士より早く陸士長になったのである。
「そうなんだよな……そういうお前はちっさい子が好きなんだろ」
「ち、ちげーし、俺は高嶋ちゃんが凄いなって、奈良から戦いながら避難してきたんだぜ」
「それを言ったら乃木ちゃんもだろーがよ」
「で、土居ちゃんのインタビュー記事や写真集めてる駿河士長はなんだって?」
「なんっ……」
「えっ、球子ちゃん推しかよ」
「図星って、マジかよ。もうヤダこの営内班」
築山一士にカマをかけられて動揺した駿河士長に思わずドン引きの永田一士。
自衛隊にはオタクも多い。
娯楽の少ない営内士にとってアニメ、ゲーム、ネット小説は取っつきやすくハマりやすいとはいえアイドルオタクは中隊にごく少数いるかどうかであり、同じ班にこうも勇者オタクが集まるのは何かの業だろうか。
勇者はアイドルグループではないのだが実際に戦っているのを見た人も少なく、中には「政府ごり押しのジュニアアイドルグループ」などと言う者もいた。
そこまでは言わないものの、民心安定のために大社が用意した“戦時の偶像”であるという見方もある。
過去の例でいうところの*1
時代が時代なら『護国の勇者』やら『救世の五勇士』というレコードも出ていたかもしれない。
なんにせよ勇者は見目麗しい少女であったということもあって、熱烈なファンも現れてアイドルやタレントより人気がある。
連日のように流れていた勇者関連の情報はこのように定着し、至る所で話題となっていた。
社会現象化した勇者報道に、身内がいる安示は複雑なものを感じていた。
「伊予島士長は従妹の子と連絡とってるんですか?」
「まあ、時々」
「すごい!今度勇者の話聞かせてくださいよ!」
「また今度ね」
勇者発表以降こういう感じの話をいろんな人からされるようになったのだ。
伊予島という苗字も元から数少なく、天災後の四国でも数十人しかいないため特定が容易で言い逃れが難しい。
しかも自衛隊という狭いネットワークの中では同じ部隊の隊員から噂は回るもので、発表後半日で「勇者の親戚がいるらしい」と話題になってしまった。
「はあ……」
「どうしたん?」
「勇者って、大変だよね」
「そりゃなあ、テレビには出なあかんわ、バーテックスとは戦わなあかんわ」
「でもさ、中学生の女の子に背負わせるような仕事なのかな」
「せやな」
一個下の後輩が盛り上がるのを傍で聞いていた安示の呟きに大野は「こいつも苦労してるんだよな」と相槌を打つ。
大野も年端も行かない少女を“勇者”と祀り上げて戦わせる現実に対して考えることはあるが、あの晩に見た乃木若葉の強さと自分たちの無力さから「しかたない」と割り切っている。
安示とシュウジを見ていて、勇者の親戚だったり友人になったから心配するし無力感にさいなまれるわけで、わざわざ苦労をしょい込んでると感じていた。
四国の大多数の人間のように、バーテックスや壁の外のことを深く考えず胸にしまい込みその日の生活のことだけを考え、大社によって祀り上げられた勇者の外側だけを見て平穏が続いていくことが
それができないからこそ、バーテックスとの戦いが自分たちの手を離れた今でも思い悩むことが多いのだろう。
悔しいが、
「お前ら喋ってないで、ダンプ来たから積んでけ積んでけ!」
「はい!」
班長の号令のもと、集めた草を演習場整備の支援にやってきた資材運搬車のダンプ荷台に積み込む。
資材運搬車は本管施設小隊等が保有する不整地運搬車でゴムクローラーを履き、全長約4m、幅が約2mとコンパクトながらも2tクレーンやダンプ装置を装備している便利な装軌車両だ。
小さな荷台いっぱいに刈った草、カットした幹、枝葉をこんもり積んで広く大きな集積場所と訓練場を何往復もする。
こうして集積場所に溜まった膨大な枝葉や枯れ木はと言うと、駐屯地業務隊や施設隊の支援の下で破砕されてチップなどに処理されるのである。
午前中いっぱいを伐開作業、運搬食を喫食後、午後から伐開作業と並行し歩哨訓練壕の整備を行う。
戦車隊の隊員たちは「今日でここを刈りつくす勢いでやるぞ、オー!」と気炎をあげながら、刈って積む作業を懸命にやる。
陽も高くなった昼前、隊員食堂で受け取った食事が詰め込まれた「バッカン」と呼ばれるOD色の断熱容器がパジェロに乗って演習場にやってきた。
みそ汁に
クリーム色のメスプレートにおかずとご飯を盛り付けてお椀にみそ汁を注ぐと、上位者から次々と手渡していく。
喫食が始まるとシュウジ達はゴマダレのかかった棒棒鶏とひじきのサラダを食べながら、上空を警戒する。
シュウジは歩哨訓練の昼、雑のうから出したパック飯をカラスに搔っ攫われそうになった。
『歩哨の一般守則』では“絶えず敵方を監視し、併せて四周を警戒し”とあるが、身をもって実感したのだ。
カラスやトンビといった上空の猛禽、サルやアライグマなどの雑食動物が徒党を組んで空地一体の作戦を展開してくることこそないが、彼らは食事のありかを学んでいて隙をついてくる。
取られたとしても動物愛護の観点から殺したり痛めつけるわけにもいかず、逃げ去るのを呆然と見ることしかできない。
そう、野外での喫食は虎視眈々と自衛官の食事を狙う野生動物との戦いなのである。
缶飯より大幅に進歩したとはいえ食感も微妙で冷えたパック飯はともかく、駐屯地から持ってきた温かい食事の器をひっくり返されるのは悔しさしかない。
食事が終わって後片付けをやると、草刈り機を持っていた陸曹が「
教育施設である歩哨訓練壕の壁が崩れたりしないよう補強するために土嚢を積むのだ。
安示や大野が土嚢チームとして3トン半に乗っていくのを横目にシュウジ達は引き続き伐開作業である。
「外哨長こちら第2歩哨!児島方向にバーテックス、数30以上!送れ!」
何も知らない戦車隊が演習場整備で森の伐開作業をしている頃、瀬戸内海では100体を超えるバーテックスが壁を越えて襲来、警戒隊の警戒ラインを突破した中に橋梁上を走る新型が確認された。
道路の中央を走ってくる新種はドロワーズを履いた細い足に作りかけの脊柱を乗せたような奇妙な姿であった。
全高は3メートルほどで、車線を塞ぐように幾重にも設けられたコンクリートブロック製の対戦車障害を軽々と飛び越して防御陣地へと向かってきた。
この骨董品は
重MATこと79式対舟艇対戦車誘導弾は、
対戦車隊廃止後もどういうわけか廃棄されずに武器庫の奥深くに眠っていた第2混成団時代の遺物であった。
かつて“団本部中隊対戦車小隊”で勤務していた定年間近のベテラン曹長や准尉は使いこなして全弾直撃させるも新型「かぼちゃパンツ」は止まらない。
どんどん近づいてくる敵の姿に
バブル経済終期の90年に22歳で入隊し、結婚と娘の誕生、二度の震災、娘の成人式、7.30天災、ろくでなしだった自分の人生は自衛隊と娘によって変わった。
悔いることがあるとすれば、あの時大分に帰省していた妻と娘をもっとちゃんと見ておくんだったという事。
飲み会も多く家を空けがちで妻には苦労を掛けたし、突然の災害派遣で家族旅行に行けなくなり泣かれることもあった。
「お父さん派遣なんでしょ、がんばって」
辛く苦しい受験を制した高校の入学式を目前に発生した東日本大震災では送り出してくれた。
そこに泣きそうな小学生時代の姿がかぶって見え、成長を感じたことが昨日のことのように思える。
こうして彼は家族を失って“最前線の島”に志願した隊員たちのひとりとなったのだ。
__ごめんなあ。お父さんはなんもしてやれんかった。敵を討つこともできんか。
丹生准尉のいる重MAT陣地まであと数メートルといったところで時は止まり、樹海化が発生した。
瞬きをする間に不気味な化け物は消え、戦いは丸亀城の勇者たちへと引き継がれる。
戦闘が終わって樹海化が解けると、監視および迎撃に動いた自衛隊には大社から短い通知が届く。
“15時34分、バーテックス125体および進化体1体の撃滅に成功した”
こうした通知は四国政府にも行われるが、開示される内容は限定的で戦闘の内容は分からないことのほうが多かった。
大社としても勇者に貸与された記録機器“勇者アプリ”が得た情報や勇者本人からの聞き取り、結界突入前に観測した情報をもとに戦闘の状況を再現していくのであるが、不完全なところも多く、実情を把握しているとは言えないのだ。
「戦う前ならともかく、戦っている最中に悠長に敵の数など数えているヒマなんてないぞ」
「えー、覚えてないよぉ。ばばーっと敵が来たのを近い所からズドーンって!」
「えっと、友奈さんと若葉さんを取り囲むように敵が集まっていました、数はわかりません」
撃破数ひとつとっても敵中に率先して斬り込みをかける若葉に叱られ、擬音が多くわかりにくい友奈、比較的後方にいた杏でさえ覚えていないとあって、情報担当者は頭を抱えた。
諏訪地方の敢闘により得た2年半という時間をもって開戦までに霊的な感知方法によるバーテックスの探知機能を実装し、マップ画面にちらちらと動く敵の光点を表示することができた。
しかしながら我の位置と敵の方位および大体の距離が平面上に表示されるだけで、数のカウントや高低差などを表示することが出来なかったのである。
アプリで記録していたとしても勇者しか樹海に入れない特性上、大人による戦域管制はできないし、そのデータを振り返っての戦技教育をすることも出来ない。
いくら大社の職員が「敵の光点が突出する者に集まるから、それを他の者が挟撃する……」などと言って演練させたところで、次も同じ状況が起こる保証はない畳の上の水練に他ならないのだ。
結果、出来ることは日々の訓練や開発中の新システムなどによって勇者一人当たりの戦闘力を強化し「
シュウジ達が勇者の戦いを知ったのは演習場整備二日目の朝、朝礼で大社からの通知文の発表があってからだった。
「大丈夫なの?」
「安兄さん、うん、タマっち先輩が無理した以外はみんな無事だったよ」
昼休みに安示が杏に電話を掛けて話を聞くと、球子がケガをしたという。
「それならいいんだ、球子ちゃんは?シュウジが聞けって。代わるよ」
安示からスマホを受け取ったシュウジは杏からケガの状態を聞かされる。
「秋山さん、タマっち先輩は左肩脱臼です」
「脱臼って痛いな……」
「いたいた、あんずー、電話してるのか?」
「ちょ、ちょっとタマっち先輩!」
電話の向こうでは昼飯を終えて午後の授業まで時間を持て余している球子が、杏を探していたようだ。
「元気そうでよかった」
「シュウジかー、聞いてくれよ、あいつらとは分かり合えそうにないんだ」
「は?」
「あいつら知性があるっていうけど、タマのとっておき最高級うどん玉を無視して突っ込んできたぞ」
「杏ちゃん、解説よろしく」
「走るバーテックスがタマっち先輩が投げた最高級うどん玉を無視して神樹様へと走っていったんです、あれは敵です」
「そりゃなあ、っていうか誰かツッコめよ、若葉ちゃんとか『真面目に戦え』って言いそうなんだけど」
「若葉さんもあれにはショック受けてました」
「マジかよ」
「……えっ?」
人の下半身っぽい新型に対しての“うどん玉デコイ作戦”を聞いたシュウジと安示は顔を見合わせる。
敵が知性を有するならば香川県民が魅力を感じてやまない“うどん玉”に何かしらの反応をするはずだという球子の発想と、誰もストップを掛けなかった勇者の感性に笑っていいものかどうか悩んだのだ。
「それに若葉のやつ、『あれは食えない』なんて言ってたし」
「えっ?食べる?」
「若葉さんもどこか天然なところあるから」
「前にバーテックスを齧ってひなたに怒られてたんだぞ……」
「やってたんかい!」
若葉が真顔でボケてくる子だという事を知って広報映像やあの晩のキリっとして強い意志を見せる勇者像にヒビが入った。
でも鍛錬が好きで生真面目な女の子であるのは変わりがないのだし、それも愛嬌だろう。
シュウジと安示は昨日の戦闘の内容と二人の活躍を聞いた。
スマートフォンの画面いっぱいに現れる赤い光点の中から、段違いに速い個体が突出してくるのを見た勇者は城郭で迎撃態勢を取る。
樹海化し地面を覆う巨大植物、電車ほどの太さのある木の根やわずかに残る建物を跳び越し、軽い身のこなしで丸亀城へと向かってきた。
的の大きさは歩兵以上、走る速度は車並み、樹海状地形の走破性はいかなる車両も凌駕する。
「変態二本足、足だけのバーテックスが走ってきたんだ」
「妖怪テケテケか」
「シュウジ、それは上半身だけのヤツだよ。足だけは『トコトコ』っていうらしいよ」
跳ねて走る下半身型バーテックスのニーソックスを履いた脚を模したような奇妙な姿に友奈は「変態さん?」と呟き、勇者に「変態二本足」という呼び名で呼ばれることとなり、自衛隊では「かぼちゃパンツ」と呼称された。
そんな進化体、二足歩行バーテックスは球子の投げたうどん玉を無視して、突入してきた。
球子が旋刃盤を投げ、杏が金弓箭での援護射撃をするもいっこうに当たらない。
秒間200mの速度で飛翔する対戦車誘導弾に比べて勇者パワーで投擲する旋刃盤や無誘導のクロスボウの矢など遅く、当たらなければどうっていうことは無い。
自分に向かって放たれる矢の射点を見つけた“二足歩行”は加速をつけて飛び蹴りを放ってきた。
まるで時速80キロの車が飛び込んでくるようなもので、杏は硬直した。
そこに旋刃盤を盾状に変形させ飛び込んできたのが球子だ。
球子は踏ん張ることもなくポーンと跳ね飛ばされることで2秒、3秒ほど空を舞った。
杏を抱きかかえるように地面に叩きつけられはしたが、転がって衝撃を軽減することが出来た。
勇者装束で防御力が上がっていて、飛んだことで蹴りの衝撃の大部分を受け流したとはいえ無傷とはいかず最初に着地した左肩が腫れあがり、痛みが襲う。
「タマは何としてもあんずを護ると決めたんだ」
聞いているだけで腕が痛みそうなケガをしても深呼吸ひとつ入れて球子は戦闘を継続する。
二足歩行は若葉から逃げるように走り回っていたが、突如方向を変えて南進して神樹へと向かってゆく。
追撃しようにも千景と友奈は後続のバーテックス群の中に飛び込んでいるし、若葉は互いに攻撃しあう近接戦ならともかく、最高速を出して逃げる二足歩行を後追いできるほど速度が出るわけではない。
この状況下で飛び道具を持っているのは負傷した球子とかすり傷の杏だけである。
背中?から撃てば当たるか、いや敵は上半身も目のような器官も無いうえで回避してみせたのだ。
無策に撃っても先刻同様避けられて、神樹へ到達されるだけだ。
時間的猶予はない、杏は今までの人生や読んだ本の内容から策を考える。
「それで思い出したのが、ヨーヨーだったんです」
ある年の彼岸の集まりで、安示はヨーヨーを杏に渡したことがある。
“冒険”に連れて行った男の子たちの誰かが駄菓子屋で買ったジュースについていた景品あるいは鉄砲クジの景品かもしれない。
BB弾が撃てる銀玉鉄砲が欲しくてクジを引いたのかもしれないが、なかなか出なくてハズレ商品も多かったような気がする。
とにかくハイパーヨーヨーの類似商品、いわゆるパチモンを「女の子向けじゃなくてごめんね」なんて言ってお菓子と一緒に渡したのだ。
外遊びができない杏はしばらくの間もらったよくわからないライムグリーンのヨーヨーで遊んでいた。
糸を巻いてリリースして……見よう見まねで、巻き上がってくるヨーヨーの糸に指をかけて軌道を変えてみたり。
「タマっち先輩!旋刃盤を力いっぱい投げて!」
杏の声に球子は疑義を挟むこともなく、二足歩行に向かって全力で旋刃盤を投げた。
ほぼ同時に矢を放った杏は二発目を発射した。
杏が思った通りに敵は牽制の矢と旋刃盤の軌道を見て右に飛んだが、続いて放たれた二つ目の矢が旋刃盤のワイヤーを掠めた。
バーテックスいえども二本の脚で歩行する以上、左右どちらかの着地時にはわずかなラグが生じる。
思いもしない旋刃盤の軌道変化に回避しようとするも、左足が着地したばかりで向きを変えることが出来なかった。
さらに盾状に変化し攻撃面積を増やされると、どうあっても直撃コースから逃れられない。
こうして二足歩行バーテックスは脚、人間でいうところの膝裏をやられたことによって機動力を失い、動きが鈍ったところを戻って来た旋刃盤と矢の連射で叩く。
最期に金切り声とも南国の鳥の鳴き声ともつかない高い鳴き声を上げて消滅していった。
後続のバーテックスの群れは若葉と友奈、千景の三人で倒し切ったのである。
「……というわけで、タマたちは無事に敵を倒した」
「今日のお昼ご飯、タマっち先輩は投げたうどんだったんですよ」
「そりゃ滅茶苦茶ロックだ」
「だろ?」
『戦闘間隊員の一般心得』でいうところの“旺盛な
昨日の活躍を聞いている間に、もう昼休みが終わりそうになっていた。
「シュウジ、そろそろ時間じゃない?」
「悪い、イヨちゃん。じゃあタマッチ無理するなよ、杏ちゃんしっかり休めよ」
「おーう!」
「はい、安兄さんも」
「うん、じゃあ杏ちゃんタマちゃんも体に気を付けて」
二人は昼休みいっぱいの電話でいかにバーテックスと戦っているかを知り、世間ではアイドルのようにもてはやされているがその本質は戦闘員であって、球子のケガに勇者いえども無敵ではなく命がけの戦いを遂行しているのだと思い知らされた。
二日後、一般向け報道においては勇者の負傷については伏せられ、さも鎧袖一触の大勝利であったかのように報じられる。
顛末を知っている安示は「大本営発表のようにならなければいいんだけど」と大社の発表に不安を感じるのであった……。
唱歌にもなり「杉野はいずこ、杉野は居ずや」というフレーズは広く知られることとなった。
小説・映画『西住戦車長伝』やガールズアンドパンツァーの西住みほのモデルとなって広く知られることとなった。なお筆者は機会教育で映画を見て所感文を書いた。
西南戦争、日露戦争に従軍し有名なものでは旅順要塞攻略などがある。大将、学習院の院長まで勤め上げるも明治天皇の崩御に夫人と共に殉死した。
たいへん人気があり様々な逸話と共に広く知られており、「乃木」の名は様々なものに付けられるようになった。香川は善通寺駐屯の第11師団長であったことから縁が深く、若葉・園子の乃木家はここからとられているものではないだろうか。
のわゆ原作5話の二足歩行バーテックス戦です。
勇者に近い一般人と、実態の分からない勇者ファンの対比がテーマです。
ご意見、ご感想お待ちしております。
参考資料
陸上自衛隊パーフェクトガイド2003‐2004 学研
【自衛隊】決戦、長田野演習場【7連隊公式】
https://www.youtube.com/watch?v=2RqFX71Z22s&t=361s