『はじめまして』の方は『はじめまして』、そうでない方はお久し振りです。
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━━七耀暦1204年3月31日・エレボニア帝国・近郊都市トリスタ・トールズ士官学院・旧校舎
その日は、死を覚悟したと後にリィン・シュバルツァーは語る。
エレボニア帝国内外にその名を知らしめるトールズ士官学院……そこへ入学したその日、彼と彼の所属するクラスの生徒とその担任教官は二つの怪物と遭遇した。
一つは、人の顔を持ちながらその身体は巨大な肉塊であり、鞭の様にしなり、空を切る速度で打ち出される触手を持つという奇怪な化け物。
その化け物の出現と同時に、突然、教官の左腕が肩から斬り飛ばされた。
傍から見ていた生徒は勿論、斬り飛ばされた教官ですら何が起きたか理解していなかっただろう。宙を舞う腕が床に転がるのを目にして、化け物の周囲の壁や床が何かに斬り付けられていくのを目にして、ようやく理解した……してしまった。
何が起きたのかを理解した女生徒の一人が小さく悲鳴を挙げる。思わずリィンは彼女の腕を引くと、女生徒の首があった場所を化け物の触手が空を裂くのを感じ、そして……彼は左半分の視界を失った。
温かい何かが頬を伝わり、ポタポタと足元に溜まるのを感じたが、見下ろす前にそこに電流が走る。
女生徒を助けたは良いが、その代償と言うべきか、彼は顔の左側、額から眼、頬を通り、顎に至るまで深く斬られていた。
傷口を抑えながら苦悶に満ちた表情を見せる彼の耳に、腕を斬り飛ばされた教官の声が響く━━『奥に逃げなさい!』、『アンタの狙いはアタシでしょ!』という声が。
━━が、教官の願い虚しく、化け物は生徒の方に近づく……狂気に染まった眼に無邪気に嘲笑いながら触手を振るう。
空を裂く速さで放たれる触手……絶体絶命など生温い、必死という言葉が相応しいだろう。
誰もが死を覚悟した……短い一生に別れを言う者、理不尽に蹂躙される事に涙する者、己の無力さに憤る者、そして家族へ別れを言う者。
迫る凶刃に対し、せめてもの抵抗として皆、目を伏せる……だが、その凶刃が彼らに触れる事は無かった。
恐る恐る目を開けると、そこには巨大な十字架とそれを持つ人影があった。
「やぁれやれ、十字架背負って怪物退治たぁ、どこぞの関西弁神父だよ……“そいつは神父じゃなくて牧師”? そういやそうだっけな」
幅の広い帽子を目深に被り、黒いコートを羽織るその人影は声色や立ち振る舞いから察するに男だろう。
だが、彼らは男に対して妙な違和感を感じた。
幅の広い帽子がそうさせているのか、男の肌が妙に黒い……浅黒いや焼けているという意味ではなく、文字通り黒い。そういった肌の色の人間かとも考えたが違う。まるで、影が実体化したかの様な……いや、全身黒タイツの男がスーツを着て現れた様な……。
「んー、左腕欠損の重傷1に……左目失明1か。治療はあの肉団子を料理してからで良いか?」
その時、自身の顔を男が覗き込んだ事でリィンは理解した。
この男には顔が無い……いや、目や鼻、口はあるのだが、影人間とでも呼べば良いか、まさに影が実体化し、目や鼻といったパーツを貼り付けた様な顔なのだ。
……読者の諸君に分かりやすく説明すると、名探偵コナンの犯人がスーツ姿でそこに居た。
そう、その男こそがリィン達が遭遇したもう一つの怪物……“顔の無い男”だった。
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かなりハードモードというかDoDなレベルの化け物を投下! ……“やりすぎ”? 引用元のストジャじゃ瞬で全滅しますからまだ有情ですよ。
そして全身黒タイツの変態が登場! ……“なぜ”? 諸々混ぜたらそうなりました。
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