Shadow Corridor 回廊に迷い込んだ1人の少女 作:楠崎 龍照
私たちは、あの家族を救い繋ぐ
それだけです
「……」
「……」
「……」
炎に包まれる中、母が四つ尾を翼のように羽ばたかせ、火炎弾を私達に向けて狙い撃つ。
「来るぞ!」
Kさんの声に私達は蜘蛛の子を散らすように散開する。
撃たれた火炎弾は素早い弾速だが、追尾するような弾ではないようだ。
余裕で回避ができた。
「えやっ!!」
由奈は周辺に散らばっている勾玉を回収して、天狐の母に向けて、力強く撃った。
その弾は一直線で天狐へと飛び、綺麗に直撃する。
『!?』
天狐は少し仰け反るが、直ぐに態勢を立て直し、彼岸花の花びらを散らしながら、私達の後方にワープ。
その後、火炎弾を何発も撃ってきた。
「やばっ……」
「避けるぞ!」
私達はそれを回避しながら、全力で逃げた。
しかし、今度は何度も火炎弾を放ち、意地でも私達に当てにきている。
私は近くにあった石灯篭の後ろに隠れて、火炎弾の弾幕から逃れた。
「コンニャロー!」
由奈は走りながら拾った勾玉を力無く撃って、その勾玉に2発目の弾を当てることで、爆発と粒子を散らばらせて迫り来る火炎弾を防いだ。
「チィっ!」
Kさんは驚くべき身体能力で火炎弾の雨あられを全回避する。
反射神経がバケモンである。
「……」
あの面がなくなったいま私は完全にお荷物だ。
天狐の面は由奈が被っている。
返せなんて言える訳がない。
「参った。どうしよう……」
考えていても仕方がない。
金メダルを持っている訳だし、光石でも投げて囮にでもなるか。
そう思い、光石を取り出して飛び出そうとした時だ。
リュックの中にあった勾玉の首飾りに何やら魂の流れる感覚に気づいた。
「……え?」
その感覚は、天狐の面や、ヒバナちゃんから受け取った面と何ら変わらないものだった。
私は、そんな事があるの?と疑心暗鬼になりつつも、首飾りを首に掛けた。
「……」
すると、勾玉の首飾りは緑色の輝きを放ち、私の全身に魂のエネルギーが流れてくるのが分かった。
私は勾玉を手に取り、力を込める。
「おりゃっ!!」
持っている勾玉を撃つと、緑色の直線の軌跡を描きながら天狐に直撃した。
「撃てた!!」
私は目を真ん丸にして驚いた。
それを見た由奈は「すごーい!!」と拍手をしている。
Kさんは「ほう。その勾玉の首飾りにもそんな力があったのか」と関心していた。
この首飾りにそんな力があるのかは知らない。
ダメージを軽減できるとは聞いたけど……。
「まぁ、何にせよ。勾玉を撃てるなら問題無いか!」
私は勾玉を回収して、天狐目掛けて連射する。
『……』
だが、天狐は赤い残像を残しつつスライドするように私の後ろに回り込む。
「……!?」
『……』
天狐は細い熱線を私の周辺に照射する。
その直後、その照射した箇所に複数の爆発と炎柱が天を穿った。
「バケモンじゃん……」
辛うじて回避できた私は、尻もちをついたままドン引きする。
「あれは食らいたくないね……」
「あぁ、同感だ」
その様子を見た2人も、引きつつ共感しあっていた。
『……』
更に天狐はワープして私たちから距離をとり、火炎弾を発射する。
「うりゃ!!」
私は火炎弾を当たる覚悟で、持っていた勾玉20個を放った。
撃った20発の勾玉の内、17発が火炎弾と相殺。
残りの3発が天狐に命中する。
『……!』
天狐は少しだけ怯む素振りは見せるが、直ぐに彼岸花の花弁を散らしてワープする為、効いているのかイマイチ分からない。
『……』
天狐は両手を広げたかと思えば、縦に伸びる炎の柱が私達を狙っているように渦を巻きながら迫ってくる。
これには私たちは「ふざけんな」と憤りを感じつつ、必死に走った。
「これヤバいって!!」
「ほんとにやばいよこれどうやって避けるのよ!?」
由奈と私は迫り来る炎柱から必死に逃げる。
そんな中、Kさんは自身の力で生成した水晶を取り出す。
「ある程度、止める事はできるか……?」
Kさんはそう呟き、迫る炎に向けて水晶を放り投げた。
水晶は砕け、周辺の時間が停止する。
炎の勢いも収まっていく。
「どこまで止めれるか分からない。今のうちに天狐に攻撃しろ……!!」
「分かった!」
「Kさんありがとう!!」
私と由奈は急いで勾玉を拾い、全弾を天狐に当てた。
天狐は水晶の影響で動くことが出来ず、固まっていた。
「もう……これ以上は無理だ……!!」
苦しげな口調のKさんの声が聴こえ、水晶の効力が切れる。
『……!!?』
その瞬間、大量の勾玉を無防備でモロに食らった天狐は、ゆっくりと膝をついた。
「これチャンスじゃない!?」
「だね!!」
由奈と私は拾っていた勾玉を全弾撃ち尽くす。
先程、天狐が私達に大量の火炎弾を浴びせたように、勾玉ビームの雨あられを天狐に浴びせる。
完全なタコ殴り、袋叩きである。
若干、同情する心が芽生えるレベルだ。
『…………!』
しかし、天狐は起き上がり、再びワープする。
私達は辺りを見渡して、天狐を探した。
「ちょっ、皆! 天狐の上空に何か……!!」
初めに天狐を見つけた由奈が、奴の頭上に浮かぶ真ん丸の石を指さして訴える。
だが、次の瞬間に私と由奈の全身を悪寒が走り、私と由奈の視界が赤くノイズが走る。
「う、ぐううううう!!」
「ぐっ……がぁ……!!」
あの呪の眼だ。
私と由奈はうめき声を上げながら、灯籠の裏に隠れてやり過ごそうとするが、天狐は目の前に移動したりして、意地でも神通力を当てようとする。
コイツほんま……。
「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」
「アアアアアアアアアアアア!!!!!」
私と由奈は頭を押さえて、今までにあげたことのないような悲鳴を出す。
「アリス!! 由奈!!」
Kさんの声も神通力で聴こえず、私は抵抗もできずに呪の眼を食らうしか出来なかった。
「A....Aaaaaaaaaa.......」
「く……うああああぁぁぁぁぁ……」
徐々に睡魔に襲われるような感覚が来る。
死ぬ……。
本当に死んじゃう……。
私と由奈は死を感じた……
その時───。
「うるああああああああぁあぁぁぁぁぁ!!」
Kさんの雄叫びが私の耳に少しだけ入ってくる。
赤いノイズが掛かり、全てが3重に視界の中でKさんの方を見ると、大食らいと成ったKさんが物凄い勢いで呪の眼の石に突撃する。
天狐は炎の壁を作って、大食らいの突撃を防ごうとするが、彼はその壁を食い破って突破した。
「壊れろおおおおお!!」
『……!?』
大食らいは呪の眼の石に激突し、それは花火のような爆発を起こして砕け散った。
「くぅ……うぅぅ……」
「はぁ、はぁ……くっ……んぅ……」
呪が収まった後も、私と由奈の頭はグワングワンしており、立ち上がることすらままならない状態だ。
その無防備の状態を見た天狐は即座に私達に攻撃を仕掛ける。
「させん!!」
Kさんは自身に蠢く触手を伸ばして、天狐の全身を絡みつかせて拘束。
地面に組み伏せた。
『……っ!?』
「アイツらには触れさせん……!」
しかし、天狐はワープする事で、大食らいからの拘束を無理矢理逃れて、火炎弾を撃って反撃する。
「無駄だ」
大食らいは、触手を伸ばして火炎弾を巻き付かせて防いだ。
「おい、大丈夫か?」
大食らいとなっているKさんはチラリとこちらを向いて聞いてきた。
私達は頭を抑えながら立ち上がり、「大丈夫。まだ少しフラフラするけど……」と言った。
それを聞いたKさんは一言、「良かった」とだけ言った。
「Kさん、大食らいに成れるんだ」
「あぁ、少しだけな。あまり長い間は成れない」
「そうなのね」
私とKさんが話をしている中、、天狐は突如として両手を天に掲げ始める。
「今度は何をするつもりだ?」
大食らいはジッと見つめていると……。
その天狐を中心に肥大化した憎悪を象った炎を纏った。
『……』
「アリス、由奈。お前達は勾玉を大量に集めるんだ。その間、俺がアイツの相手をしておく」
私たちの意見を聞かずに大食らいは宙へと飛び立ち、肥大化した憎悪を纏う天狐に突撃する。
「ああああああああ!!」
『……!!』
天狐は迫る大食らいに小金魚の形をした炎を飛ばして迎撃する。
しかし、彼にとってはそんな炎はぬるま湯だった。
魚雷をもろともせずに、天狐を纏う炎に喰らいつく。
「ア、アリス……今のうちに集めよう……!」
「そう、だね……!」
私と由奈はガンガンする頭を抑えながら、この場にある勾玉を回収し始めた。
その間も、天狐と大食らいはドッグファイトを繰り広げている。
金魚の形の炎を纏う天狐は、暗い空間を明るく照らし、優雅に泳ぎながら、小金魚雷の形をした炎と火炎弾を交ぜつつ弾幕を作って大食らいを撃墜させようもする。
だが、大食らいもその巨体からは想像もつかない程の機動力とスピードで弾幕を回避し、当たりそうな物は触手を使って弾き返す。
『……』
それを見た天狐は大食らいの後ろにワープし、炎の柱を生み出して攻撃を行った。
しかし、そんな攻撃も大食らいには大したダメージにはならず、むしろ炎の柱を大きな口を使って吸い込みながら天狐に突進する。
『……!?』
天狐は火炎弾で迎撃しようとするが、大食らいのスピードに対処できずに大食らいの巨体にぶつかった。
「逃さん!!」
大食らいは天狐を纏う炎を喰らう。
やつも必死に抵抗するが、それを大食らいの触手で動きを封じ込む。
「うおおおおおおおおおおお!!」
大食らいの雄叫びが木霊する。
天狐と大食らいの取っ組み合い。
それは次第にゆっくりとだが、降下していく。
「動くな!!」
『っ!?』
天狐は大食らいによって組み伏せられ、地に叩きつけられた。
纏っていた肥大化した憎悪の形の炎も消えていた。
「くっ……ここまでか……」
悔しそうな口調で言った大食らいは、光に包まれKさんの姿に戻った。
時間切れという事だろう。
彼は直ぐ様、天狐から離れる。
『……』
「アリス、由奈!!」
Kさんは大声で私達の名前を呼んだ。
それに応じるように私達は全速力で天狐へと駆ける。
『……!!!』
天狐の面はゆっくりと身体を起こし、走ってくる私達に向けて10発の火炎弾をお見舞いしてきた。
「うりゃっ!!」
由奈も同じ数の勾玉ビームを撃って、全ての火炎弾を撃ち落とした。
更に7つの勾玉を少しだけ力を加えて撃ち、直ぐに力強く1発の勾玉を7つの勾玉目掛けて撃つ。
「ひかれーー!!!」
後発の勾玉は7つ勾玉に当たり、それら全てが爆発し、辺り一帯を包み込む閃光となった。
由奈の叫んだ言葉に、勾玉が反応するように。
この光には思わず、天狐もKさんも顔を覆い隠した。
「アリス、今よ!!」
「あいさーー!!!」
閃光の中に黒い影が現れる。
天狐は眩い光の中にある影を見ようとしていた。
だが、その黒い影の正体に気づいた時には、既に時すでに遅かった。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
閃光から現れたのは、両手に大量の勾玉を持ったアリスだった。
彼女は憎悪振りまく影と同じぐらいの声量で叫びながら、天狐に飛びかかっていた。
天狐は即座に攻撃の構えを取るが無意味である。
彼女は持っていた50個もの勾玉を、天狐に力強く浴びせた。
「救われろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
アリスの力強い想いがこもった魂の勾玉は、天狐が被る面を粉々に粉砕するには充分すぎる火力だった。
『─────!!?』
母が被る天狐の面は音を立てて砕け散る。
しかし、その反動のエネルギーの影響で、アリスが掛けていた勾玉の首飾りも千切れ、勾玉も修復不可能な程に砕けた。
続く