Shadow Corridor 回廊に迷い込んだ1人の少女   作:楠崎 龍照

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神と怨念の戦いは時空を引き裂き、外縁での戦闘になった。
あの場で戦えば、アリスや由奈さん、アリスのお爺様達に被害が出る可能性があるからだ。
薄青い晴れ模様に照らされた神龍と得体の知れない怨念が対峙する。

周辺の山々よりも遙か上空、高高度の大空での戦闘が始まった。


10.5話 外縁天空決戦

 

 

 

 

 

 

 

『化け物め!!』

『『『自己紹介どうも』』』

 

 

─影縫─

 

 

発狂する怨念をサラリと交わして、ギルティアは影を操って奴を縛りつけた。

 

『ぐぅぅぅぅぅ……!!』

 

しかし、奴は怨念で作られた鎌や鉈を使って、自身を縛ろうとする影をズタズタに引き裂いて拘束を解いた。

 

『『『……ほいっ!!』』』

 

 

─影打ち─

 

 

だが、素早い速度で引き裂かれて飛び散った影を槍状に変化させて怨念の全身を突き刺した。

 

『っ!?』

 

突き刺さった箇所から黒い液体が滴る。

その液体は何なのか定かではないが、少なくとも色合いから見て血で無い事は確かだ。

少しすると、その影の槍はフッと消えて傷が露出する。

痛覚があるのだろう。

27個の顔は苦悶に歪み、醜悪さが倍増していた。

 

『貴様らああああぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

歪みきった顔のまま奇声を発して鉈を生み出した怨念は、神を滅多斬りにしようする。

 

『『『無駄ですよ』』』

 

 

─影実交替─

 

 

しかし、神は自身の肉体と影を入れ替え、怨念からの攻撃から逃げる。

やつの滅多斬り攻撃は神の肉体(かげ)をズタズタに斬り裂くがそれは今、影となっている為に斬っても斬ってもダメージが入ることなく瞬時に再生される。

ただし、この力は5分が限界であり、時間が経つと元に戻る。

 

『何故死なない……!?』

『さぁ? 何故でしょうね?』

 

 

─龍の息吹─

 

 

しらばっくれつつ、神は口から龍を象った青い光線を怨念へと放つ。

 

『……!』

 

怨念はそれをスルリと回避しながら接近。

神の懐まで移動して、生み出した鎌を使って神のお腹部分を斬り裂くように刈り取る。

 

『死ね!!』

 

しかし、斬り裂いた部位は傷付くことなく、すり抜ける。

 

『なんで……』

『『『隙あり!!』』』

 

 

─影爪─

 

 

6本の触手を伸ばし、その先端にある鋭利な爪で怨念を引き裂いた。

しかし、怨念の方も裂いた傷口が塞がっていく。

よく見れば、影打ちで刺した傷も再生していた。

 

『『『再生? 厄介ですね〜?』』』

 

神は間延びした口調でそう言い終えるや否や、再び怨念に攻撃を加えた。

 

 

─影爪─

─影爪─

─影爪─

─影爪─

─影爪─

 

 

怨念の身体をズタズタに八つ裂きにする。

だが、開いた傷口は直ぐに何も無かったように再生するばかりだ。

苦悶の表情は浮かべているため、痛みはあるようだが、厄介なものである。

 

『俺達は化け物達を殺すまで、消えない!!!』

 

恨みのこもった声を上げ、神に桑を振り下ろす。

神は自身の巨大な尻尾に龍のエネルギーを宿らせる。

赤黒い稲妻がバチバチと放電し始めた。

 

『『『さいですか〜?』』』

 

 

─龍尾─

 

 

龍のエネルギーを纏った尻尾を振るって怨念を叩き飛ばした。

吹っ飛んだ怨念はそのまま、巨大な屋敷に背中から激突する。

 

『ぐぅっ!?』

 

 

─龍星群─

 

 

神の頭上から黒い雲が現れ、そこから小型の隕石を連続発射した。

怨念は起き上がって退避しようとするが、尻尾で殴られた部分に激痛が走り、退避が遅れた。

 

『ぉぐわっ!?』

 

小型隕石の雨が怨念に降り注ぎ、爆煙が奴の全てを包み込んだ。

その小型隕石は流れ弾として外縁の建物にも着弾し、破壊していく。

 

『『『……やったかな?』』』

 

身体をくねらせながら、天の海を泳ぐように怨念の元へと近づく。

モクモクと煙が上がる場所に近づいた時、恐ろしい殺気を察知した。

爆煙を薙ぐように巨大な怨念の影で作られた刃物が神を貫こうとする。

 

『……っ!?』

 

神は冷や汗を流しつつも、瞬時に姿を消した。

 

『え……消え──』

 

怨念は脇腹を抑えながら、唖然とした表情で言い終える前に神の声が重ねた。

 

『『『シャドーダイブ!!!』』』

『─────!!?』

 

怨念がいた場所に、神の背部にある触手が突起して奴の全身を貫いた。

今まで感じた事のない激痛が怨念の全身に伝わる。

声にならない声をあげて、周囲を黒く染めた。

そして、苦悶に歪む怨念の目の前の地面から、フッと神が姿を顕わした。

 

『貴様ぁ……』

『『『諦めて成仏してはいかがですか? 少なくとも、成仏すれば今のような苦しいなんて事は無くなりますよ』』』

 

神は優しげな口調で相手を諭す。

だが、長きに渡る恨みや呪いを抱き続け、魂までもそれらに侵食された彼らには、意味のない言葉だった。

 

『黙れ!! アイツら化け物の家族を殺さなければ、他の村人が殺される!! 殺される前に殺さなければ!!』

『『『ですが、もう蛭南村の人達は皆死んでいますよ(寿命で)』』』

 

そういったのが不味かった。

やってしまったと後悔している。

神の一言に怨念は激情するように怒り狂う。

 

『やはり化け物共が皆を殺したんだ!! 許さない!! 必ず殺してやる!!! 殺してやるぅぅうううぅぅぅぅぅぅ!!!!!』

 

狂ったように周囲を薙ぎ倒しながら暴れ回る。

神は少し引きながら、その場から離れる。

そして、怨念はギロリとこちらを睨みつけてきた。

嫌な予感しかしない。

 

『お前も、あの化け物達に味方するなら……殺してやる!!!』

 

怨念は叫びをあげながら、再び襲いかかってくる。

神は心底嫌そうな表情を浮かべて、怨念の攻撃を躱して龍星群を降らせて迎撃する。

 

『食らうかあああああ!!』

『『『っ!?』』』

 

しかし、小型隕石の雨あられに当たりながらも怯む事無く神に接近しナタを生み出す。

怨念の持つナタが、神の腹部を斬った。

傷口から血が垂れる。

 

『殺してやる!! 殺してやるぅぅぅぅぅぅ!!!』

『『『うるさい黙れ〜?』』』

 

怒り狂う怨念の首元を鷲掴みにして、地面に叩きつけた。

 

 

─逆鱗─

 

 

神は怨念に巻きつき動きを封じ、怒りに身を任せ、龍の力纏った触手を使って怨念をタコ殴りにした。

 

『ごはぁっ!?』

 

怨念は苦痛の表情を晒しながらボコボコに殴られた。

 

『ごふっ、おごっ!?』

『『『動かないでくださいね〜?』』』

 

冷静に怒る神は、ただただ怨念を殴りつけるだけだ。

しかし、その直後、神の横腹に痛みが走る。

 

『『『……っ?』』』

 

その痛みがする場所を見ると、稲を刈り取る時に使うような鎌が深く刺さっていた。

そして、巨大な何者かによって、神は吹き飛ばされる。

 

『『『……うっ!?』』』

 

吹っ飛んだ神は建物を破壊しつつ、巨人が使うぼっとん便所のような場所に落下する。

落下する時に勾玉のある部屋にぶつかった事で、砕けた台座と一緒に赤い勾玉も落ちた。

下は少しだけ水が貯まっており、全身がひんやりとした感触が伝わってきた。

 

『『『い、いったい何が?』』』

 

クラクラする頭を起こして上を見ると、能面を被った多腕の怪物、走り廻る徘徊者が神を見下すように凝視していた。

 

『俺達は、この世界に跋扈する人の成れの果ての魂を抜き出して、操る事ができる……。お前に殴られている間に、近くにいた徘徊者を操ってお前を攻撃したんだよ』

 

怨念の声が走り廻る徘徊者から聞こえてきた。

怨念のような闇がモワモワと溢れ出ている。

 

『『『なるほど〜……厄介な力だね』』』

『お前ほどじゃない……!』

 

そう言って、怨念の本体がユラユラと空を泳ぐように現れる。

 

『『『だって神だからね!』』』

 

神は刺さった鎌を抜き捨てて、近くに落ちてた勾玉を拾いながら、走り廻る徘徊者に巨大な尻尾で叩き落とした。

 

『『『えいっ!』』』

神の魂を宿した勾玉を怨念へと撃つ。

しかし、その攻撃は怨念の身体に弾かれ全く効いている様子ではなかった。

 

『『『効かないか……いや、1個だけだから効いていないのかな?』』』

 

 

─龍爪─

 

神はそんな事を考えつつ、龍の力を纏った触手で斬り裂く。

しかし、怨念は持っていたナタで攻撃を防いだ。

 

『『『そのナタ邪魔です!!』』』

 

 

─オーバースラッシュ─

 

 

神は身体を翻しながら二本の触手でナタをはじき飛ばした。

 

『小癪な……!!』

 

怒る怨念は再び、怨念を纏う農具を生成しようとする。

しかし、神はそんな事を許すはずが無い。

 

『『『二度と、どうぐを持たせるつもりはありません!!』』』

 

 

─カオスウィール─

 

 

光と闇が混じりあったエネルギーが一直線で怨念を貫通し、農具生成を阻止した。

 

『うぐォ……! ふざけた真似を……!!』

 

怨念は呻き声をあげて痛みに顔を歪めたが、直ぐに怒りの表情に変えて、再度農具を生成しようとする。

しかし……。

 

『な、何故……。何故、武器を生み出せない!?』

 

いくら念じても生まれ出ない武器に、怨念は焦りと唖然を足したような表情を見せた。

 

神が先程放った攻撃を受けた相手は、武器、防具、道具の生成やフィールド生成などが行えなくなる力がある技だ。

それにより、怨念は農具を生み出す事が出来なくなったという訳である。

 

怨念は若干のパニックになっている間に、神は搦手を使用する。

 

『『『隙あり、あやぴかー!』』』

 

 

─怪しい光─

 

 

神は両目を光らせて、怨念を錯乱状態させる。

 

『くぁっ!? 目が……!! 目がぁぁぁ!!』

 

怨念はどこかの大佐みたいなセリフを吐いて、手をブンブン振り回す。

更に神は追撃を食らわす。

 

 

─電磁波─

 

 

怨念の身体に触れて、微弱な電磁波をぶつけて全身を麻痺らせた。

 

『ががががががががあああぁぁぁぁぁぁ!!』

 

怨念はビクビクと痙攣しながら、震わせた絶叫が外縁を響かせた。

 

『『『これで終わりです!!』』』

 

 

─シャドーインパクト─

 

 

影を纏わせ、全ての力を込めた突撃を行った。

その一撃は凄まじいの一言。

直撃した怨念は閃光と爆発が全身を覆い隠し、気持ちいいぐらい吹っ飛んだ。

 

『おぐおおおおあああああ!!!』

 

怨念は断末魔をあげ、屋根を破壊して勾玉部屋に落着した。

 

『ぐぅ……がはぁっ!!』

 

口から黒い液体を吐き出す怨念。

神はポッカリと間に屋根を覗いて怨念に話す。

 

『『『今のあなた達では勝ち目はありませんよ』』』

『……何故、お前はアイツらの肩を持つ? 何故俺たちの邪魔をする……!?』

 

麻痺状態のせいか、ビクビクと身体を痙攣させながら怨念は神にそのような事を問う。

その問いに神は平然とした態度で返答をする。

 

『『『あの家族が貴方達にした事なんて、私達には知りませんよ』』』

 

神は続ける。

 

『『『ただ、貴方達は、この地でアリスを殺そうとした。いえ、実質的に殺した。私達が貴方達を滅する理由は、それ以外の理由はありません』』』

 

ギロリと睨む眼光に怨念は『くっ……』と歯を食い縛った。

 

『強大な力を持つ存在が……何故、あんな小娘に……?』

 

怨念は再び問いただす。

神は目を瞑って理由を述べた。

 

『『『勝手に人間に生み出され、能力が低いからという理由で勝手に捨てられ、消える運命にあった私達を、アリスは救ってくれた』』』

 

目を開けて、神は話を続ける。

 

『『『私達がアリスに仕える理由はそれだけで充分ですよ……!! 私達は未来永劫……永遠にアリスに仕えるつもりです……!!』』』

 

語気を強めて言い放った。

それを聞いた怨念は『そうか』と言い……。

 

『ありがとう。時間稼ぎはできたよ……!!化け物!!!』

『『『……!?』』』

 

襖や障子を破壊して飛び出して来たのは、怨念に支配された神楽鈴の徘徊者、走り廻る徘徊者、泣き声の主達、総勢10名ほどの徘徊者だ。

 

『お前が話してくれたおかげで、この外縁にいる徘徊者全員を支配できた!! いくら神でも、この数の徘徊者の前には敵うまい!!!』

 

錯乱状態が解けた怨念は、少しだけ身体をビクビクさせてながらも、恨みや呪いのオーラを膨らませて襲いかかる。

 

『貴様を殺した後で、あの家族や、お前の主であるクソガキや、ジジイも全員殺してやる!! 皆殺す!!! 全員殺してやる!! 殺してやる!!! 殺す!!殺す殺す殺す!!殺すうううううう!!!』

『『『…… 』』』

 

狂乱する怨念の発言に、神は静かなる怒りを抱いた。

そして、その沈着冷静の怒りのまま、神は転がっていた勾玉を1つ手に持ち、それを撃った。

 

『『『今の私は時間、空間の能力を使用する事ができます。つまり……』』』

 

 

─時間断絶─

 

 

神は時間を停止させる。

停止できる時間は、神の力的に3分が限度だろう。

だが、何も問題は無い。

 

『『『……!!』』』

 

そして、神は撃った勾玉を指定し、ルキアの持つ空間能力を使う。

 

 

─コピーアンドペースト─

 

 

神は撃った勾玉をコピーし、それを何度も複製した。

何度も何度もだ。

時間停止することができる時間ギリギリまで複製した結果、あたり一面が勾玉ビームに覆われる誠にカオスな事になった。

弾幕などというものでは無い。

これを回避することなんて不可能というほど密度の高い状態となっている。

神は1つの技を10体の徘徊者に掛けた。

 

 

─破空の一撃─

 

 

『『『……』』』

 

そして時間が動き出す。

次の瞬間だ。

数億個の勾玉ビームが10体の徘徊者……いや、外縁を襲う。

耳を塞がなくなるほどの爆音、目を瞑りたくなる程の光。

怨念に支配された徘徊者は一瞬にして全滅し、徘徊者の遺体は予め掛けていた技によって、別の次元に吸い込まれる。

その勾玉ビームの雨は周辺の部屋もバッキバキに破壊していく。

無論、怨念も無事では済まない。

一発じゃ大したこともない勾玉ビームも、数億となれば話は別だ。

 

『ギャアアアアアアアアァァァァァァァァァァアアアアア!!!!!!!!!!!?????』

 

勾玉ビームの爆音に掻き消されてよく聴こえないが、多分断末魔をあげていると思う。

怨念の悲鳴が聞こえていると……思う。

気のせいかもしれないが……。

 

『うぎゃぁぁぁぁあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!』

 

 

数億の勾玉ビームの大嵐が去った後、そこには怨念以外何も無かった。

外縁と呼ばれた回廊の50%が、勾玉ビームによって破壊されて跡形も残っていない。

 

『……か……ぁ……』

 

怨念は脅威の再生力でも対処する事ができずに虫の息だ。

 

『『『……さようなら』』』

 

その声は非常に冷たかった。

しかし、神の声にも、怨念は反応する事もままならない程にダメージを負っていた。

神は話を続ける。

 

『『『安らかに眠れ……』』』

 

 

─ニルバーナ・レクイエム─

 

 

神は、先程別の次元に送った徘徊者の遺体から得た霊魂のエネルギーを使い、瀕死の怨念に叩きつけた。

 

『ゥオゲエエエエエェェェェェェェ!!?』

 

黒い泡を吹いた刹那、怨念は口から黒い何かを大量に吐き出した。

そして、全てを吐き出した瞬間、怨念の身体が腐れ落ちるようにドロドロと溶けていく。

 

 

 

─あれ? 俺達は……なにを……─

 

 

 

怨念の身体が腐り落ちて完全に無くなった時、神の耳には男の声が聴こえた。

 

『『『……安らかにお眠り下さい』』』

 

突如、外縁が音を立てて崩壊していく。

そんな中、神は27人の魂に祈りを捧げた。

あの場所があの少女によって生み出された場所なら、この外縁はあの怨念によって造られた場所だったのだろうか?

 

『『『……』』』

 

神はこの場所から離れるまで祈りをやめなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




……ヒグラシの回廊、骸流しの渓谷、深淵、大食らい、霊魂の淵叢、聖域。
全ての場所が崩壊しつつある。

目的を達成したから、この世界を維持する必要がない……。
この世界は崩壊する運命にあるのだろう……。
そうなると、あの家族は……。

……。
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