Shadow Corridor 回廊に迷い込んだ1人の少女   作:楠崎 龍照

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鏡に触れた瞬間、辺りが暗闇に包まれた。
気づくとそこはさっきまで私がいた路地ではなく、どこまでも暗闇が支配する回廊だった。
私はここからでなければと思い、さっきの神楽鈴の化け物のこともあり、私は不安と焦燥感に包まれながら、出口を探すこととなった。



2話 ヒグラシの回廊

 

 

 

 

 

 

「いたたた……」

 

再び暗転から覚めると、先ほどいた場所と似たような造りの場所だった。

台座の上には鏡の他に、手鏡や爆竹らしき物、綺麗に畳まれた着物や小瓶などが置かれてあった。

この手鏡はもしかすると、あの鏡と同じような力を宿していると感じ、背負っていたリュックの中に入れ、爆竹はポケットの中に忍ばせた。

そして、薄暗い部屋を出ると、壁に紙が張られており、こう書かれていた。

 

 

 

 

 

君の身に何が起こったか理解できずに混乱していると思うが、どうが私の言うことを聞いてほしい。

君がいる場所は「ヒグラシの回廊」と呼ばれる場所だ。

そして、奴ら……徘徊者に見つかる前に今すぐにここから移動するんだ。

もし見つかれば君の命はないだろう。

ここから更に奥に進むためには、勾玉を三個集めて奥の祭壇に納める必要がある。

勾玉は鍵の掛かった部屋や、泣き声の主の近くに置いてある可能性が高い。

またこの回廊に存在する徘徊者は基本音に敏感だ。

コンパスを探すんだ。

コンパスの針が指す方向に祭壇がある。

私はこの回廊の奥で君を待っている。

私たちがこの世界から出るためにも、君の協力が必要だ。

君に生きて会えることを願っている。

 

-K-

 

 

 

 

と書かれていた。

 

「Oh.....私が神隠しにあっちゃったよ……」

 

私はガクリと肩をおろした。

元々路地に入って、猫を追いかけてしまった自分が悪いので、何も言えないが。

 

とりあえず、いま分かっている現状は、この入り組んだ回廊には徘徊者なるものが存在する。

そして、その徘徊者に捕まれば命はない。

徘徊者は音で相手を察知できる。

勾玉を三個集めて祭壇に納める必要がある。

よし!

まだ、ギリギリ生きれそうだ!

 

ポジティブにそう考える他ない。

この回廊から抜けるために、勾玉を探すことにした。

しかし、無闇に探しても難しいところ……。

あと、暗い。

幸い、この回廊には燭台の火が灯されており、ギリギリ視界が視認できる感じだ。

最悪、このジッポライターを使えばいいけど、実はこのジッポライターは祖父の形見の物だから、あまり使いたくないのだ。

 

そんな事を考えながら、ワビサビに満ち満ちた廊下を歩いていると……。

奥の燭台の蝋燭がユラユラと明滅しているのが目に入る。

 

「……」

 

時間が止まったかのように動きを止めて、それを凝視する。

その蝋燭の炎の明滅は、次第に激しくなり、近くの蝋燭までもがチカチカとし始める。

それと同時にドコドコドコドコと何かが走っている音が聴こえきた。

何かが近づいてくる。

 

「(……これ絶対徘徊者だよね……)」

 

直感的にダメなやつと判断したため、近くにあった扉を開けて小部屋に息を殺して身を潜める。

 

『◎$♪×△¥●&?#$……』

 

その徘徊者はボソボソと下手な口笛みたいな音を発しながら通りすぎていった。

更に、その数秒後、木の板が破壊されたような音が聴こえた。

その後、徘徊者はどこかに行ったのか、何も聴こえなくなった。

そして、私はそっと扉を開けてキョロキョロと見渡すと、別の扉が粉々に破壊されていた。

多分、あの徘徊者が通った時に扉ごと壊して行ったのだろう。

あの徘徊者……かなりのパワーを持っているようね。

どんな姿か知らないけど。

 

私は、あのドコドコと走る徘徊者を"走り回る徘徊者"。

鈴を鳴らす徘徊者を"神楽鈴の徘徊者"と呼ぶことにした。

 

「むぅ……」

 

別の徘徊者の出現に、若干絶望しつつ、あの紙に書かれたように鍵が必要な扉や泣き声のする主を頼りに勾玉を探すことにした。

徘徊者に出会わないように、爆弾処理をするかのような細心の注意を払って、ゆっくりと歩きながら各部屋を見る。

 

 

そこにあるタンスや棚等から使えそうなものを拝借させてもらうことにした。

 

「凄い広い屋敷だなぁ…」

 

多分3、4時間ぐらい歩き回っているが、予想以上に広い。

東京ドーム〇個分所の騒ぎではない。

ここから祭壇を見つけろとか無理難題にも程がある。

鳥取砂丘で落としたコンタクトレンズ探して拾えって言われているようなものだ。

 

ただ、嘆いていても仕方がない、私はこの屋敷で拾えそうな物をある程度拾った。

 

・昔の古いフラッシュバック式のカメラ。

ワンチャン徘徊者に見つかった時、目眩しに使えると感じた。

 

・爆竹。

音に反応するのなら、この爆竹は囮的な陽動に使える。

 

・青い光を発する石。

ヘンゼルとグレーテル風に使えそう。

あと、行った場所に置くことで、分かりやすくなる。

 

・懐中電灯。

辺りの風景や様子と比べるといささか近代的な物に思えるけど、外から持ち込まれた物と見て間違いなさそうだ。

だけど、持ち主はどこに……。

そう考えたとき、なんとなく察しがついてしまったので、それ以上は考えないことにした。

それでもこの暗い回廊に、懐中電灯は最強のアイテムと言って間違いない。

 

「うわー、凄い見やすい!」

 

私は懐中電灯の明かりを頼りに歩きつつ、辺りをくまなく散策する。

すると、ヒグラシの鳴き声が聴こえてきた。

私は早歩きでその方向へ行く、窓から夕陽が指す廊下にきた。

しかし、窓から見える外は、淡い夕日が見えるだけで、景色らしい景色は見えず、叩いたり蹴ったりしても、その窓はぶっ壊れず出れそうになかった。

 

「壊れないかー。……ってちょっと待って」

 

私は妙な違和感を感じる。

私がこの世界に迷い混んでからざっと三、四時間は経過しているはず。

つまり、現在時刻は7時から8時ぐらい。

なぜ外はまだ夕陽なのだろう。

まるでこの世界の時間が止まっているかのようだ。

私は考えながら歩いていると……。

 

『……うっ……うぅ……』

 

女の子の泣く声が聴こえてきた。

私はピタリとその場に固まる。

ゆっくりと泣き声のする方に行き、部屋の扉を恐る恐る開けた。

すると丹塗りの台座の近くに16才ぐらいの白の服をきた少女がうずくまり、泣いていた。

一瞬、この世界に迷い混んだ人なのかなとおもったが、彼女は能面を被っていたので確実に、彼女が泣き声の主であることがわかった。

 

「絶対あれが泣き声の主だよ……」

 

私は小声で言葉を漏らしながら、意を決してその泣き声の主近くの台座に緑色の光を発す勾玉を獲るために、私はゆっくりと音を発てずに泣き声の主を迂回しつつ接近する。

もちろん、手鏡を構えて。

 

「……」

 

冷や汗をダラダラと流しつつ、ゆっくりと歩いて台座に近づく。

もう少しで勾玉を……。

そう思った時……

手鏡を床に落としてしまった……。

 

すると泣き声の主は泣くのをやめ、ゆっくりと静かに立ち上がった。

そして……

 

『何処……。何処にいるの……?』

 

静かに消えるような、か細い声でそう言いながら、辺りをキョロキョロと見渡し始めた。

 

「(お馬鹿あああああああああああああああ!!!!!)」

 

私は心の中でムンクのような悲痛の叫びを上げてその場で硬直する。

涙目で、放流されたダムの如き勢いの汗を流し、お願い見つからないでと祈りに祈りを捧げる。

最早、あまりの恐怖で手鏡を使うことを忘れてしまっている。

 

『何処……。何処にいるの……?』

 

そして、泣き声の主は私の方を振り向いた。

あ、これもう終わりね……うん。

そう覚悟した。

しかし、泣き声の主は私の方を見ても何も言わずに『何処にいるの……?』と探すばかりだった。

 

「(あれ? コイツ目見えてない?)」

 

多分、音にはすごい敏感だけど視覚はすごい狭いのだろうか……。

それなら……いける!!

 

私はポケットから爆竹を一個取り出して、それを遠くに投げた。

泣き声の主は『そこにいるの……?』と言って爆竹が落下したほうにゆっくりと歩いていった。

その隙をついて私は台座にある勾玉を一つ取ってゆっくりとその場から離れた。

 

「(っしゃああああああああぁぁぁあああああ!!!)」

 

私は心の中でガッツポーズを取り、直ぐ様何処かの小部屋に避難する。

私は即座に靴を脱いで靴下のみの状態にする。

私の靴だとコツコツと足音がなってしまう。

それを防ぐために靴下の状態にした。

それならある程度の音は出ないしね。

 

「ふぅー」

 

先程の緊張状態が解けて、私はゆっくりと腰を下ろす。

周りをキョロキョロと見渡すと、結構大きめの蓋つきの篭を見つけた

行李というやつである。

私ぐらいなら余裕で入れる大きさで、徘徊者に見つかったとき、この篭の中に入れば難を逃れそう。

私は光石を一つ行李の側に置いて、部屋の扉付近にも念のために一つ置くことにした。

万が一徘徊者に見つかった時、この場所に駆け込む事が出来る。

 

「(そろそろ行こうかな)」

 

私は立ち上がり、別の場所に移動を始めようとした。

だが、再びあの鈴の音が遠くから聴こえはじめる。

私はビクリと体を震わせて、走って行李の中に隠れた。

ライトを消して息を殺し、ひっそりと蓋の隙間から覗いていると、神楽鈴は徐々に近くなっていき……。

私のいる部屋でピタッと止まったと思えば、扉を殴る音が響く。

ドンドンドンと。

 

「!!!!!?????」

 

私は心臓が爆発するのではないかというレベルで驚く。

そして、扉がバゴンと破壊されて、神楽鈴の徘徊者が入ってきた。

神楽鈴の徘徊者はキョロキョロを見渡し、何事もなかったかのように鈴を鳴らしながら、ゆっくりと別の場所に移動していった。

 

「(……心臓に悪いよこれ……)」

 

私はため息をつき、そろりと別の場所へと向かった。

5つほど部屋を見て、戸棚や台座、タンスから念願の鍵、爆竹、古いカメラを手にいれた。

また、何やら小皿にトカゲの尻尾と思われる物体が包み紙と共にあった。

 

「……なんじゃこれ……??」

 

私はこれの意味が分からなかったが、とりあえずバッグの中に丁重にしまった。

 

「……さて、そろそろ出ようかな」

 

私はこの物置部屋から去ろうとした。

……だが、戸棚に紙が二枚、雑に置かれていたのに気付きそれを手に取った。

 

「……」

 

ページは1と2のようで、要約すると、昔に蛭南村を流れる桑食川が大雨で氾濫し、多くの命が奪われた。

ある少女は溺れて生死の境をさまよったが、息を吹き返した。

そして、その少女は「神通力」身に宿したらしい。

千里眼の能力であり、遠距離の物を見透かし、未来予測も行えた。

それにより一躍時の人となったが、次第に気味悪がられ、村人から距離を置くようになった。

 

氾濫により、少女の両親は亡くなったために身寄りがなく、村人は少女の扱いに困っていた。

そこで、村人たちは「少女を山神様の御使いとして大切に崇める」という名目のもと、少女を山奥の廃れた社へと住まわせた。

しかし、時代と共に廃れた山岳信仰は、失われており、少女に給仕する者などいなかった。

こうして、信じてもいない神様の使いとして少女を祭り上げ、体よく山奥に厄介払いした。

 

こう書かれていた。

昔によくある話だなと私は感じつつ、一応念のために私は鞄の中にいれた。

部屋から出て、先ほどきた道とは別の方向へと進んだ。

運良く徘徊者に出会すことなく鍵が閉まった部屋を見つけ、鍵を使って扉を開けた。

鍵はそのまま壊れたが、見事にタンスの中から勾玉を1つ手にいれることができた。

 

「(よっし、勾玉1つゲット!!)」

 

あと2つだ!!

私は少しだけやる気が出て別の場所へと進んだ。

長い廊下を進んでいると、なんか大きな部屋があった。

タンスとは違うキューブボックスのような収納箱が横3つ、その3つの端の上にもう1つ置かれているのを見つけ、1つずつ開けていく。

 

「え!? マジ!?」

 

真ん中のキューブボックスを開けた私はあまりに予想外な事に驚愕する。

その中に勾玉があったのだ。

私は思わず大声を上げてしまい、ハッとして両手で口を覆ったが、時既に遅く……。

 

シャン……シャン……シャン……と、遠くから神楽鈴の音が木霊するように私の耳に入ってくる。

 

「(ド阿呆おおおおおおおおおお!!!!!)」

 

自分のお馬鹿加減に罵倒し、勾玉を手に取って、全力でその場から走り去る。

だが、逃げた先が不味かった。

私は鈴の音が聴こえる方へと走ったのだ。

頭を殴られたような感覚と共に、視界が一瞬だけ赤いノイズが走る。

そして、神楽鈴の徘徊者が目の前から走ってきた。

 

「これはヤバイ!!」

 

私は恐怖に顔を歪め、身体をクネらせてUターンする。

後ろからはシャン!シャン!シャン!シャン!シャン!シャン!と神楽鈴の音が乱暴に鳴っていた。

ホントにヤバイ。

私は嫌な汗を滝のように流しながら、全力で逃走する。

 

「ヤバイ!!迷子になった!!!」

 

私はパニックの状態で逃走している為、違う道に逃げてしまい、物の見事に迷子になってしまった。

しかも、まだ後ろから神楽鈴の音が聴こえる。

何なら、手鏡やカメラを使うことすら頭から離れていた。

 

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ!!」

 

神楽鈴の徘徊者に追いかけられて、脇腹が痛い。

私は苦痛の表情を浮かべて必死に走る。

だが、それも疲労から次第に遅くなる。

それなのに、神楽鈴の徘徊者は疲れるどころか一定のスピードを保ったまま、追いかけてくるのだ。

化け物すぎる。

あー、化け物だったわ……。

私は絶望しながら、後ろを振り返った。

神楽鈴の徘徊者が走ってくる。

 

「うはー、終わったー!!」

 

私はだるそうな表情で「なははははー」と乾いた笑いを上げて諦めた。

 

「ごめーん、私死んだーーーーー!!」

 

私は笑いながらディアルナ、ルキア、ギルティアに謝罪をして目を瞑った。

 

「南無ーーー!!!」

 

私がそう叫んだ時だ。

目を閉じた暗い視界が真っ白になった刹那。

直ぐに暗転する。

 

「……」

 

荒々しく鳴る神楽鈴の音は聴こえず、不気味なまでに静まり返っている。

それが怖い。

 

「……」

 

何が起こったのか……。

私は死んだのか?

まだ生きているのか?

目を開けたい。

でも、怖い。

目を開けて、目の前に神楽鈴の徘徊者が居たら、私の心臓は口から飛び出る事は明らかだ。

 

「……」

 

私は、恐る恐る。

本当に恐る恐る、ゆっっくりと目をあける。

 

「……え?」

 

目の前に映る景色を見て、私は呆気に取られた。

私が居たのは、先程いた廊下ではなく、別の部屋だった。

壁や柱の感じ的にヒグラシの回廊内である事に間違いはないが……何が起きたのだろうか?

 

「(勾玉とか大丈夫だよね?)」

 

私は咄嗟にカバンに入っている自分の持ち物を確かめた。

そこで、とある物が無くなっていたのに気がついた。

 

「(あれ? トカゲの尻尾みたいなのは?)」

 

カバンの中身をガサゴソと探すも、見つからない。

 

「……」

 

ポカンとする私。

ただ、先程の出来事と、とあることわざが頭に浮かび上がり、私は1つの仮説を立てた。

多分、あのトカゲの尻尾は危険を感じた時に何処かへ転移させる力があるのかもしれない。

確か、トカゲの尻尾切りということわざがある。

もしかしたら、私が神楽鈴の徘徊者によって殺される?瞬間に、トカゲの尻尾が発動したのではないか。

と、私は考えた。

 

「(何にせよ、助かったぁぁ)」

 

私は音を立てないように、ため息をついて畳にへたり込む。

若干、手の震えが止まっていない。

やはり、先程の神楽鈴の徘徊者が効いたのだろう。

私は少しだけ精神を安定させるために、この小部屋で休憩することにした。

 

私は目を瞑り、自分の妄想空間の中に入り込む。

内容は……お察しでお願いします。

 

多分、3時間ぐらいだろうか。

自身を慰めて、狂いそうな精神を安定させた私は、一息ついて小部屋を出た。

 

「(ふぅ……さてさて、行きますか)」

 

私は警戒心を強めて、回廊内を散策した。

長い直線の廊下を歩き、1つの戸を開けると不思議な空間の場所に出た。

私は眉を顰める。

 

「……?」

 

戸を開けた先には、大きい空間の場所に出て、その空間の中央に大きな階段があった。

それ以外には端にタンスがあるだけで、階段の上にあると予想できる構造だった。

 

「もしかして、ここ?」

 

私は、この階段の先に、あの置き手紙に書かれている祭壇があるのではないかと考え、階段を上がり、曲がり角を曲がった。

そこには大きな石で出来た扉らしき物があって、その先には巨大な般若の面が飾られている部屋があった。

 

「え……ここ……なに? 怖い……」

 

私は警戒心MAXでゆっくりと般若の面のある部屋に入る。

よく見れば、そこにある台座に、大きな勾玉が供えられているように置かれていた。

ついでに言うと、鍵もあった。

 

「あ、やった。勾玉と鍵だ」

 

脱出に必要な勾玉だと感じた私は、その大勾玉を手に取った。

 

しかし、この部屋はなんなのだろう……。

先ほどから見た部屋とは全く雰囲気が違っていた。

……言葉には言い表せない……。

何か大事な部屋なのかな?

そう考えながらも、私は別の部屋へと向かうことにした。

鍵部屋を探して、長い一直線の廊下を歩いていると、それは起こった。

前からドタドタドタと走ってくる音が聴こえてくる。

あ……。

と思った時、それは曲がり角からやって来た。

黒く六本の手足を持ち能面を被った異形極まりない存在。

走り回る徘徊者の登場です。

 

『◎$♪×△¥●&?#$……!!!』

「ぎわあああああああ!?」

 

唐突すぎる登場に、私は心臓が飛び出るレベルで驚き、大声を上げて全力で逃げた。

あれはビックリする。

 

「ヤバイヤバイヤバイ!!」

 

私は必死に逃げる。

しかし、走り回る徘徊者も伊達ではなく、扉を破壊しながら追いかけてくる。

 

「ハァハァハァハァハァ!!!!」

 

どうする!?

どうしたらいい!?

私は走りながら脳をフル回転する。

 

「そうだ。出来るか分からないけど鏡を使って……!!」

 

私は回廊を走り回りながら手鏡を取り出し、手鏡に触れて別の場所にワープした。

ワープ先は小部屋……というか倉庫?物置?のような場所で、行李とタンス、木製のオープンラックのような物があった。

一応、壁や部屋の作りから考えるに、ヒグラシの回廊である事は把握できた。

 

「(やっぱ、あの手鏡は徘徊者に見つかった時の緊急脱出に使えるね。でも、これ1度きりな感じか……)」

 

私は心の中で思いながら、割れた手鏡を見つめた。

もう一度触れてみるが、ワープする事はない。

やはり1度きりのようだ。

まぁ、何にせよ、助かった。

私は傍にあったタンスを開けて、中を物色する。

 

「(あ、コンパスあった)」

 

タンスの中に、見つけたコンパスを手に取って、マジマジと見つめる。

コンパスの指針は北の方を向いていた。

 

「……」

 

私はゆっくりと戸を開けて、恐る恐る顔を覗かせる。

誰もいない。

私は警戒心を強めたまま、コンパス通りに北の方へと回廊を歩き始めた。

歩き始めて直ぐに私は、奥に緑色に輝く物が目に入った。

 

「(よし、勾玉あった!!)」

 

私は早歩きでその場所に向かう。

戸を開けようとすると、鍵が掛かっていたので、鍵を使って戸をあける。

そして、木製の棚にあった勾玉を手に取る。

 

「(よし!! 勾玉3つ手に入った!!)」

 

私は心の中でガッツポーズをして、北へ北へと向かおうとした。

しかし、勾玉を取った、すぐ側にあった戸を開けようとすると、まさかの鍵が掛かっていた。

 

「(なんで!?)」

 

私は心の中で驚きと怒りが交じった声を上げる。

……肩を降ろした私は、コンパスを持ちながら遠回りをする為に反対方向、先程きた道へと歩き出した。

 

「(なんで、徘徊者がいる中で遠回りしないのいけないのよ……)」

 

私は愚痴を零しつつ、北へと向かった。

幸運なことに徘徊者に出会う事はなく、順調に歩く事ができた。

 

結構な距離を歩いていると、何やら襖がたくさんある場所にたどり着いた。

だが、その襖の奥から泣き声の主が聴こえてくる。

その声を聴いた私は、冷や汗を流して硬直してしまう。

 

「(や、べ……)」

 

私はヨチヨチ歩きで音を発てずに、ゆっくりと襖をあける。

中は宴会場でも拓けそうな場所だ。

今までの部屋の中で1番デカイ部屋だった。

ただ、中は木製のオープンラックや、黒いつづら、丹塗の台座、タンスなどが散乱しており、非常に汚い。

そして、丹塗の台座には緑色に光る勾玉が置かれてあり、その前には泣いている女の子がいた。

 

「(……これヤバイ……)」

 

私は冷や汗を滝のように流して、ヨチヨチ歩きで進んだ。

そんな中、後ろからあの音色が木霊する。

 

シャン……シャン……シャン……シャン……シャン……。

 

その音に呼応するかの如く、辺りの燭台に照らされたロウソクの火が明滅し始める。

 

「(……冗談でしょ?)」

 

歯を食い縛り、怒りの表情を浮かべながら必死でこの場から去ろうとした。

後ろから聴こえる神楽鈴の音は徐々に近づいてくる。

 

「(どっかいけえええええええ!!!)」

 

私は心の中でキレ散らかしながら、ヨチヨチ歩きを辞めて音を立てないように、つま先立ちで走った。

そして、襖を開けて大部屋から逃走する。

後ろを振り返るが、誰も追ってこない。

ただ、神楽鈴の音は聴こえている。

……私はつま先立ちを辞めて、全力で走る。

とにかく北へと走った。

そして、私の目の前に祭壇らしき部屋を見つけた。

先程の大部屋程では無いにせよ、それでも大きな部屋で、天井もかなり高かった。

その部屋には、大きな鳥居があってその鳥居の上には蝋燭が何本も供えられていた。

鳥居の下には台座があり、その上に勾玉を3つ置くことのできる祭壇があった。

 

「ここみたいね……」

 

張り詰めた緊張が一瞬にして解けて、安堵の一息を吐いた。

私は祭壇へと近づき、手にいれた勾玉を3つ、祭壇に納めた。

すると、目の前の扉がガチャっと開き、奥には般若のお面が飾られた、台座のある部屋が見えた。

その台座には鏡があり、ここから出られると喜びに打ち震えた。

だが、それと同時に私は1つの疑問が残る。

あの3つの勾玉で開くのなら、私の持っているこの大きな勾玉は一体?

しかし、そんな疑問を感じている暇なんてない。

早く鏡に触れなければ、いつ徘徊者が襲ってくるかわからない。

私は満面な笑顔を浮かべ、奥の鏡が置かれている場所へと向かった。

 

「やった!! 帰れる!! やったー!!」

 

 

 

シャァン!!!!

 

 

鳴り響く神楽鈴。

もう少しで奥の部屋に着くところで、床が抜けて私は落下する。

 

「What the f**************k!!!???(うっそでしょおおおおお!!!!??? )」

 

思わぬ出来事に私は、とんでもない暴言を吐く。

そして、長い間落下した後、私を冷たい水が呑み込んだ。

流れる水に私は呼吸をするのが精一杯だったけど、次第にそれも疲労によって……。

 

私の意識は遠くなっていった。

 

 

 

 

続く

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