冬木に綴る超越の謳   作:tonton

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境界
-Break of day-


 

 目の前に広がる景色がこうも現実と乖離していると、人もそれに倣うように無になるのだと改めて実感した。

 茫然自失放心、記憶に残る光景とあまりにかけ離れすぎて、虚脱しかける思いだった。

 

 何が、と問われればそれは、

 

「どこだよ、ここ」

 

 夕暮れに染まる水平線と砂浜。

 自分の記憶が確かなら、と思い浮かんだのは巌のような漆黒の鎧に身を包んだ狂戦士。その理不尽な暴威の前に、自分は討たれたはず、だ。

 だとしたら、ここは死後の世界なのかと問われれば、それは答えに窮する。つい最近似たような経験をした気もするが、ここは恐らく、多分違うと断言できた。これも何が、と問われれば答えに困るのだが、あえて言葉にするのなら、どこかここは“温かい”のだ。

 

 例えば暮れていくはずの陽光。

 打ち寄せる波と共に運ばれてくる潮風は、そこにいる者を害するのではなく、寧ろ包み込むように柔らかな風だ。

 

 だから不思議と警戒感が持てなかったし、ここが何処だと慌てる気にもなれなかった。

 そんな時だ。波音以外に風に乗ったその旋律は、微かであっても耳に届いたのは。

 

「――歌、声? こんな所で」

 

 不思議と鼓膜から脳へと響くように訴える音。だが、煩いだとかいう不快な音ではない。寧ろ心が引かれるように、己の足は意識を外れて知らず音の下へと歩きだしていた。

 

 ――sang, ■■■, sang, ■■ sang.

 

 英語、ではないだろう。学生の身だが、これでも不真面目な成績だったわけではない。いや、文武両道品行方正を地でいく学友のように生真面目だったわけでもないが、それでもこの響きがそれらと違うくらいはわかる。だからか、余計に興味を引かれ、足は先程より少し早く進む。

 

 ――Pour guerir la secheresse de la ■■■■lot■■■.

 

 透き通った声が耳に心地いい。

 砂を踏む足の感触。そういえば裸足なのかと、ここにきて気付いたが、既にそんなことはどうでもよかった。ただこの声の持ち主がどんな人なのか、それだけが胸を占め―――そこに、彼女はいた。

 

 金髪の、白い肌。精巧に作られたフランス人形のようで、けれども豪奢なドレスに着飾った、という訳ではない。正反対にシンプルな白い一枚のドレスで、どこかちぐはぐな印象を受けた。

 儚い、というには存在感が明確で。

 確固たるというには浮世離れした姿。

 一目見ただけで、というにはおかしな感覚だが、まるで“別の世界で生きている人”というのが、衛宮 蓮が彼女に抱いた第一印象だった。

 

 どれくらい眺めていただろうか。

 歌の内容は全く頭に入ってこないのに。

 探した歌い手がそこにいるというのに。

 この足は何故かまったく前に進まず、ただ放心したように立っている蓮に気付いた彼女が振り向くまで一歩も動かなかった。

 

「あ、いやえっと。綺麗な歌、だな」

 

 行った後で、自分の馬鹿さ加減に頭を叩きたくなった。

 初対面に口ごもるような性質でもないだろうとか、もっと普通に話せないのかと目の前で小首を傾げる彼女を見て言葉を探す。

 

「あー……違う。そう、だな。というか、言葉、わかるか?」

 

 探すが、そもそもこちらの言葉が通じるかも怪しいだろうと、当たり前の問題に直面した。

 もしこれが夢の類だとして、なら何故会ったことも聞いたこともないような人と出会い話をしなくてはならないのか。夢というのは人の願望のようなものが形作るだとかなんとか、そんな話を聞いたことがあるが、はっきり言って自分にそんな意味不明な願望があるなどと思いたくはない。

 

 そして、こちらの言葉を理解したのか彼女が満面の笑みで、こちらを指さし口を開いた。

 

 ――と、――えた。

 

「は? え?」

 

 聞こえた。いや、断片的にとらえたその発音は先程まで流れていたイントネーションと異なり、聞きなれた、日本語のようなものだった。

 思わず停止してしまうという間抜けな顔を晒した気がしたが、すぐさま再起動をはたす。言葉が通じるのなら面倒は減るし、夢と思われるここで“どこか”などと問うのも馬鹿らしいかもしれないが、そうでなくとも君は誰かくらい聞くのは自然の流れだろう。

 

「―――――っ、――!!」

 

 だが、次に言葉にしようとした声は、彼女に伝わる事はなかった。

 口から洩れる音が掠れる。まるで出し方を忘れたかのように、もしくは過呼吸で喘ぐように、咽から出てくる音は形を成さない。

 

 先程からこれが夢だろうとは思っている。つまり自覚しているのだ。なら何故こんなにも自分の意思と真逆をいくような出来事が次々と起るのか。

 目の前の少女も、突然目の前の男が首を押さえて悶えて出したら困惑するはずだ。実際、こちらを覗きこんできた彼女は戸惑いつつも心配げな顔を――――していなかった。

 

 むしろ物珍しそうに、まるで初めてのモノを見るように興味深そうにこちらを覗きこんでいた。

 

 こちらが苦しんでいる原因がどうやら“のど”によるものだと気が付いたのか、覗き込む為に屈んでいた姿勢からこちらに彼女が手を伸ばした。

 

 

 そして、その白い腕が首へ伸ばされ、何故か、どういうわけか、自分の視界がゆっくりとずれていった。

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 目が覚めた。

 自分が先程まで夢を見ていたのだと、視線の先にある見慣れた天井にようやく実感を持った。いったい何時からと、多分見ていただろう“悪夢”の類、その内容を思い出そうとして、脳裏に走るのは砂嵐が吹荒れているかのようにノイズで乱れた映像。

 脳に血液が足りていないような気だるさを感じながら、左手が無意識に自分の首を撫でた。まるでそこが無事であることを確認するように。ゆっくりと、一度だけ。

 

「なにやってるんだか。あたりまえだろ」

 

 夢から覚めてまた夢を見る。という経験は確かにある。が、コレは現実だ。なぜなら体が脳裏にうったえる痛み、あの夜、アサシンに襲われバーサーカーに襲撃されて受けた痛みが幻ではないと証明しているのだから。

 

「って、なんで生きてるんだよ」

 

 狂戦士の拳は“絶死の一撃”、幕引きの一振りだ。触れた対象、それこそ無機有機とわず、実体のない魔術ですら“死”を与える。だから夢の夢の前、あの夜の最後の記憶。狂戦士を前にして立ちすくんだあの状態から、衛宮 蓮は生き残っている筈がない。

 

「おどろいた。ほんとに“なんとも”ないのね」

 

 まるで理解不能だという風な言葉を投げつけたのは、襖から顔を覗かせた学友、遠坂 凛だ。

 

「とう、さか?」

 

「おはよう、衛宮君」

 

 理解の追い付かないこちらに対し、まるで気が付いていない、いやむしろ知っていながらあえて無視をしている様な態だ。半開きの襖を開け放った遠坂はそのまま寝そべっていたこちらに近づいてくる。

 

「おはようって」

 

 当たり前のように挨拶をしてくるが、ここは一応我が家の筈だ。あの夜どうやってかは知らないが、バーサーカーから逃げおおせて此処へ避難したというのならまだわかる。だが、だとしてもあの時の少女、イリヤが然程離れていなこ家まで逃れるのを見逃すなどあるのだろうか。

 

 そう考えて、思いつくのはもちろんノーだ。

 

 黒い鎧を身に纏った狂戦士を従えていた少女、イリヤスフィールは明確な目的をもって蓮たちの前に現れた。彼女の言葉を信じるのなら、最初は殺す気はなかったのかもしれない。少なくとも、彼女の興味を引いてしまったあのときまでは。だから尚の事、今この状態で生きているというのが不可解だった。

 顔を横にめぐらせば障子の下の方へ日の光が当たっている。身に染みた感覚から感じ取った肌寒さから、今現在は早朝といったところだろう。となると、いよいよもってあの深夜から今へ至る空白がどう考えても繋がらない。そしてならば、その回答を知っているだろう凛に質問を投げるのは当然の成り行きで、寝ていて姿勢から起き上がろうとして、右腕が不自然に床へと引っ張られた。

 

「いったい何がどうなって……って、なんだよこれ」

 

 正確には、右肘から指先にかけてが張り付いているかのように持ちあがらない。

 上体を起こした為、肩までかかっていた掛布団が下へ落ち、肩口から黒い包帯のようなもので巻かれていた右腕が目に入った。それも畳の上に銀製と思われるU字杭で打ち付けられているというオマケ付きだ。

 

「ああ、それ、外れないから。というより外したらだめだから」

 

「は?」

 

 空いている左手で引き抜こうと格闘しているそれは、畳の上に打ち付けられているだろうにまるでびくともしない。呪術的なものかと“解析”しようとすれば、一定のラインで弾かれる。

 

「小父様の特別製、らしいわよ。少なくとも私の手におえるようなものじゃないし、昼までは大人しくしている事ね」

 

「おじ――って、親父がいるのか!?」

 

 彼女が“小父”と呼ぶ人間はそう多くない。というより、自分は一人しか知らない。

 

「いるのかって、当たり前でしょ。私達はもともと衛宮の小父様に会うために出かけたんだし」

 

 なら、自分たちはあの後、切嗣に助けられ難を逃れたということになる、のだろうか。

 確かに、自分の、そして時たまとはいえ凛も魔術において指導を受けていた。彼と自分達とでは魔道においても、“戦う”ということにおいても差は歴然だ。

 

「ま、今はここにいないけど、昼には戻ってくるはずだから」

 

 しかし、仮にそうだとしても、一人の魔術師である事には変わりない。だというのに、彼が介入しただけであの狂戦士が、あの少女を退けられるだろうか。

 

 考えても答えなどでないのだろうが、いや、この場合は単に情報が足りないということが大きい。切嗣があまり自分について、殊更昔の事について話したがらない性格だったということもあるが、養子という関係を抜きにしても、自分は親である彼を知らな過ぎなのでは、と唖然としてしまう。

 

 そこへ、

 

「レン! 身体の具合は大丈夫ですかっ」

 

 空けられたままの襖の向こう。廊下へけたたましい音を響かせて現れたのは、あの夜から自分を主として剣となると誓いを立てたセイバーだった。

 勢いそのままに膝をおった彼女は、申し訳ないと深々と首を垂れる。

 

「あ、いや、頭をあげてくれセイバー。あれはむしろ俺の不注意だったし、こっちこそ、力になれなくてごめん」

 

 今思えば思い上がりというか、単身戦場に挑む無謀に急に気恥ずかしさが湧く。彼女から散々マスターがサーヴァント同士んによる戦いの中へ踏み入る危険性を説かれておきながら、だ。

 いや俺が悪い、いやあの場合は私がなどと互いに謝りあう不毛な光景が続いた。

 

「はいはいそこまで。いつまでも堂々巡りなお芝居は取りあえず後にしなさい」

 

 そこへ手を叩いてばっさりとその空気を切ったのは凛だった。いつの間にそこにいたのか、愉快気な表情を浮かべたアーチャーがクツクツと笑いながら実体化する。

 

「だわな。主従仲がいいのは結構だがよ、奴さんには話しておかなくちゃいけない事もある。聞きたい事も山ほどあるだろ?」

 

 至極もっともな話だ。

 剽軽者を絵に描いたようなこの男に言われると不思議と腹が立つが。

 

「そうね。衛宮君も……取りあえず問題はなさそうね」

 

 腕を打ち付けられて固定されている状態を問題ないというのだろうか。傍目から見れば奇天烈極まりない絵図らなのだろうが、この場に無関係の人間がいる筈もない。また彼女がそこを考慮していない筈もなく、二組の主従が部屋に揃い、凛があの夜の出来事を説明してくれた。

 

 

 

 

 

 誰もその場で動く事が出来なかった。

 猛威を振るっていた狂戦士も、人外の領域へと暴走していた彼の息子も。

 絶好の好機だというのに、セイバーやアーチャーでさえ状況の把握に止まっていた。

 

 なぜなら、

 

「やぁ、大きくなったね。イリヤ」

 

 突然乱入してきたこの男が、たった一つの銃弾で、蓮へと放たれていた狂戦士の一撃を弾き―――続く二発目の弾丸が、あろう事か彼の息子である蓮を貫いたのだから。

 

「なんで―――」

 

 口から洩れた言葉はこの場にいる全ても者の代弁だろう。彼の存在、彼の行動、作り出したこの状況。対象は異なれど、彼に対して疑念、思考が集まっているのには間違いない。

 だからか、此処にいる皆は存在として一介の魔術師である筈の人間。それも近代兵器の代表格である“銃弾”の一発で英霊の一撃を退けたという事実におどろかないはずがない。

 そう、ただ一人を除いて、

 

 

「―――けた」

 

 

 それは唯一この場で毛色の違う色、感情の渦だ。

 皆が切嗣に向けている感情。驚愕、疑念、疑問、疑心など数あれど、この奔流の主だけは明確に、混じり気なくただ一つの感情を彼へと、それこそ射抜けとばかりに急きたてていた。

 

「見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけた見つけたミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタミツケタァアア!!!」

 

 戦いの最中にも見せた子供らしさや、感情の無い人形のように温度の無い声とも違う。それは真逆の感情に満ち溢れた発露。銀髪の少女、イリヤスフィールがあらん限りの憎悪を切嗣へと向けていた。

 

「やはり、そうだろうね。僕は君にそうまで恨まれるだけの事をしてきてしまった」

 

「当りまえよ。どの口がいまさらっ、聖杯なんてどうでもいい……私は、オマエを殺すためだけに、今日まで生きてきた!」

 

 先程まで凛や蓮たちに向けられていたイリヤスフィールの視線は、切嗣の登場によって彼だけに向けられている。言葉を拾った限りでは、どうやら二人は知り合い、ないし何らかの因縁があると見れるが。

 

「謝ってすむなんて思っちゃいないさ。だけどイリヤ、アイリの事だけは」

 

「うるさいうるさいうるさい!!! アンタの言葉なんて聞きたくないっバーサーカー!!!」

 

 銀色の髪を振り乱し、激昂に染まる紅い瞳も鋭く目の前の男を睨みつける少女。いっそ悲愴感すらただよわせ、彼女は感情にまかせて己の従者の名を叫ぶ。その名の通り、狂気すら感じさせる響きで。

 

「耳障りよ! 早くその男を殺しなさい!!」

 

 瞬間、虎兜の狂戦士が吠える。

 その音はこれまでの雄叫びと比べるべくもない。ただの叫びが空気を裂き、周囲の電灯、壁、ありとあらゆる物へ亀裂を刻む。その様は加減も遊びもない、真実全霊の発露なのだと証明していた。

 

「――分かっているさ。これも僕の」

 

 離れていた凛に、その時切嗣が何を口にしたのかは聞き取れなかった。だが、猛進する狂戦士を前に、彼はその言葉を後に表情を変える。

 昔、一度だけ見た事がある。

 先程までイリヤと呼んでいた少女に向けていた目ではない。小さい頃、魔術の師として、父である時臣の友人として接していた時のそれではない。

 

 固 有 時 制 御

『Time alter ――』

 

 感情の存在しない機械のように、ソレが不要だと言うように■を切り捨てた―――昔、父と二人だけで話していた時に見てしまった顔。

 恐らく、これが“衛宮 切嗣”という魔術師本来の顔なのだ。

 

 三 倍 速

『triple accel!!』

 

 瞬間、掻き消える男の姿。

 彼の息子である蓮のそれに酷似した――いや、アレは見るからに意識の欠如したモノ。所謂暴走状態で行使していたものだ。技と呼ぶにはあまりに稚拙。だが、男のそれはまるで違う別物、別次元の魔技だ。

 

「■■――■ッ!!!」

 

 弾き飛ばされる漆黒の鎧。それは破片程度のモノで、傷を負わせている訳ではない。だが、彼は間近で振るわれる“絶死”の拳、その悉くを避けつづけ、あまつさえその場に釘付けにしている。

 

「何をまわって遊んでいるのバーサーカー! さっさとっ」

 

 少女の苛立ちは分からなくもない。

 彼女の身体に光浮かぶ刻印から、本気で切嗣を殺しに来ているだろう事は疑う余地はない。

 この場では絶対の力を持っているだろう英霊の力を持って、まるで遊ばれているかのようにことが思い通りに運ばない。悪夢というのなら、彼女にとってコレはまさにそうなのだろう。

 

 荒れ狂う暴風さながらに、加勢することも退く事も選べなかった凛の頭へ、直接語りかけるような音が響く。目の前で立ち回る切嗣のものだ。

 

『再会早々だけど、すまないがあまり長話している時間もない』

 

 戦いながら、イリヤスフィールと此方とを窺いながらだというのに、彼の動きは陰ることなく、依然としてバーサーカーを抑え込んでいる。

 

 彼が念話で続けて話してきたことはこうだ。

 

 まず、切嗣が現れてから倒れていた蓮の状態が一刻の猶予もない事。

 そして切嗣がこの場にいる限り、バーサーカーの狙いは彼に絞られるだろうということ。

 

 蓮については事情の分からない凛たちにも、アレが良くない現象だということぐらい解る。だが、切嗣の言うそれはことの詳細を把握しているようであり、事態はより切迫しているという。

 イリヤスフィールについては、この場で起きた言葉の応酬通り、過去の遺恨によるものだと。

 

「よそ見なんて、ずいぶんなよゆうじゃないっ」

 

「■■■!!!!」

 

 だが彼が如何に魔術師離れした戦闘の腕を持とうと、やはり念話を片手間に続ければそれは僅かといえど隙が産まれてしまう。二、三言なら兎も角、長々と話すのなら尚更にだ。

 

「時臣の所へ、彼に任せてある!!」

 

「父様のって、ちょっと待ってください。そんなこといきなり言われても!」

 

 だから、これ以上はと念話を切って短く伝えた彼はこちらを離脱させるため、バーサーカーを誘うように丘の上へと上がっていく。それは最初から上に陣取っていたイリヤスフィールの方へと向かうことで、当然バーサーカーは主の元へ向かわせるものかと追撃にかかった。

 

 一方的な指示。

 尚も高速で移動する彼は瞬く間にイリヤスフィールの下にたどり着き、驚き一瞬だけ固まった彼女の前で止まった彼は、そのまま跳躍してまた坂を駆けのぼる。彼が直前までいた場所、そこには虎兜の拳が着弾していた。

 

「ま、他に出来ることもないしなっと。なんだよ、意外と軽いなコイツ。ちゃんとメシ食ってるのかよ」

 

 軽口を挟みつつ倒れていた蓮を抱えるアーチャーを横目で睨んだが、彼がそんな非難の目を気にするわけもなく、心底分からんと空いている手でずれていた仮面を持ち上げた。

 

「なんだよ? 実際、あのデカブツの動きも凶悪だけどよ、あのオッサンが張りあえてるのも事実だ。あの嬢ちゃんがブチ切れるってなら、その矛先がこっち向く前にとんずら決めることのどこに問題がある」

 

 それは確かに彼の言う通りで、出来れば去っていった切嗣の下へ行って加勢したいというのは私の感情の問題だ。

 何ができる。と言われればあの戦いに助力できるのかも怪しい。だからその言葉は正論だ。例え認めたくなくても、受け止めるべき言葉だ。

 

「……行くわよ」

 

 終始固まっていたセイバーの腕を引き起こし、この日、私達は二度目の敗走を味わった。

 

 

 






 投稿ーなんとか月2だ。本当にギリギリ(震え
 事後処理回という名の修羅場ちょいだし。荒れに荒れたら――あの、だってまだ序盤ですよ、電波幼女さん???(目逸らし


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