オリ主が死んで周りが曇る話【新章開幕】 作:D.D.D_Official
慌てふためくクズの様子をお楽しみ頂ければ幸いです。
トーマ夢女子の皆様ごめんなさい。
ここ最近、俺の耳に少しずつ入ってくる噂が段々と過激な物になっていく。なんでも、やれ天女の降臨だの紅瞳の悪魔だのと言って荒唐無稽なモノばかりだ。
俺は神里家の家司として極秘の案件を調査したり、お嬢の我儘を聞いたりするのが仕事だ。この噂はお嬢には伝えてはいけない。特に悪魔の方はだ。
俺は今日、その噂の調査の為離島へと赴いていた。
うん、ここはいつも活気があって良いな!
離島の人々が俺とすれ違う度に笑顔で会釈してくる。やはり挨拶をされると嬉しくなってしまうのはしょうがないだろう。
それから離島で噂の調査を続けていると、ふと金髪の娘が目に入った。はて、離島にこんな娘がいただろうか?俺は不審に思いながらその娘に声をかけた。
「やあ!こんにちは、お嬢さん?こんな所でどうしたのかな?」
声をかけられた金髪の少女は振り向き、こちらを見据えた。
!?なんだ…この娘…すごく可愛いぞ!
服こそ見窄らしい物だが、その立ち振る舞いはまるで殿上人の様に優雅で何とも蠱惑的だ。
「あの…私に何か御用ですか……?」
小ぶりな唇から鈴の音のような可憐な声が漏れる。その紅い宝石の様な瞳は怯えと動揺の色を隠そうともしない。
「あぁ!これは失敬。ごめんね、怖がらせちゃったかな?つい君が可愛いもんだから、つい声をかけちゃった」
俺がそう言うと、少女は目に疑惑を浮かべ「そう…ですか。その、ありがとう…ございます…」と控えめに言った。なんて奥ゆかしいんだ。
「ねぇ、君の名前を教えて貰っても良いかな?君みたいな可愛い子の名前を知れるだけで、千金の価値があるよ。あぁ!言い忘れてた。俺はトーマ!よろしくね!」
「あ、えと…はい。魔妓阿…です。よろしく…お願いします……?」
未だに困惑しながら名乗り返してくれる。成る程、魔妓阿…魔妓阿ちゃんね…
「魔妓阿ちゃんて言うのか、良い名前だね!誰につけて貰ったんだい?」
「……先生が、つけてくれました」
「先生って?」
「先生は…私に作法や礼儀を教えてくれた人です。世間の常識や法律まで教えてくれたんですよ」
ふぅん。その先生とやらは良くもまあこんな娘を家から出せた物だ。こんな娘、誰もほっとかないだろうから直ぐに攫われてしまうかもしれない。もしかしたら、多少の武術の心得もあるのかもしれないな。
「そっか、じゃあ先生って人は魔妓阿ちゃんの恩人な訳だ。会ってみたいものだね」
「そ、そうですか…それじゃあ私はここで…人を待っている物で…」
誰かと来ていたらしい。それはそうだろう。こんな別嬪を一人で歩かせるような奴がいたら俺が許さない。
「魔妓阿様〜っ!すまねえ、今戻っただ!」
どうやら、戻ってきたみたいだ。おや、この声は…たしか画家の高尾さんの所の娘さんの…そう!深沙ちゃんだったかな?あの子も可愛かったから特に覚えている。しかしなぜ彼女が魔妓阿ちゃんと…?
「うん…?あっ!トーマさんじゃねえだか!いつもありがとうなぁ!」
実は俺は以前より深沙ちゃんの家に多少の金銭を送っている。3年ほど前、貧困に喘いでいる彼女を見つけ事情を訊いたのだ。そこから俺が少しずつお金を送っている。
「ああ、深沙ちゃんか。もしかして、魔妓阿ちゃんの待ち人って深沙ちゃんの事?」
「え"っ…!?トーマさん、深沙を"識っている"んですか!?」
「ん?妙なことを訊くね。勿論知っているとも」
俺が答えると魔妓阿ちゃんは震え始めた。
寒いのかな?俺が気を遣って軽く炎を出してあげると、魔妓阿ちゃんは怯えたように後退りした。
「魔妓阿ちゃん、大丈夫。怖くないよ…あっためてあげよう。ほら、おいで?」
「いえっ!いえっ!大丈夫ですっ!大丈夫ですからっ!」
ふぅむ。すっかり怯えられちゃったみたいだ。やっぱり女の子の扱いは難しいな…お嬢なら何とかできるか…?
◆◆◆◆◆
(ロイ視点)
おおおーっ!ここが離島!中々活気があって良い所だ!それに僕の鼻をくすぐるおでんの香り!んー!懐かしいねえ!
おっ!モラミートが売ってる!久々に食べちゃお!うん、おいしい!
…おっと。年甲斐にもなくはしゃいでしまった…けど、それぐらいはしゃぎたくなるのも仕方ないだろう。だってここは蛍が初めて上陸する稲妻の土地なんだから!
それに、和洋折衷と言うだろう?それだ。和と洋の絶妙なバランスが僕の美的センスを刺激する!たまらないねえ!
「ああ!全くもって最高ですわ!」
一人ではしゃいでいると突然後ろから声をかけられる。
「やあ!こんにちは、お嬢さん?こんな所でどうしたのかな?」
あ?誰だよ僕のパクパクタイムを邪魔するのは。消して………あ"
こいつ、この、稲妻では特徴的な金髪に爽やかフェイス…まさか、いや。ありえない…一応、要件だけは訊いてやるか…
「あの…何か、御用ですか……?」
まさかもう幕府に見つかったのか?最悪の想定が僕の脳裏を埋め尽くす。ヤバい。どうにかして自然な感じで離脱しないと!
「あぁ!これは失敬。ごめんね、怖がらせちゃったかな?つい君が可愛いもんだから、つい声をかけちゃった」
何だ、何を考えている…この男は、この男は今敵にしてはまずい。何がまずいって、この男がトーマだとすればアホみたいに優秀な奴を敵に回す事になる。それは避けないと。下手すりゃ僕がトーマを始末出来ずにまんまと逃げられてそのまま雷電将軍にチクられる可能性がある。
そうなったら終わりだ。僕でも死ぬ。
「ねぇ、君の名前を教えて貰っても良いかな?君みたいな可愛い子の名前を知れるだけで、千金の価値があるよ。あぁ!言い忘れてた。俺はトーマ!よろしくね!」
やっぱりか。いや最悪だ。コイツは秘密裏に消す予定だったんだけど…顔を見られた。どうやら稲妻では僕の瞳を見ただけで恐れる奴がいるらしい。つまり、こと稲妻において僕は瞳さえ見て仕舞えば幾ら変装してもバレると言う事だ。
ここは穏便に、当たり障りのない会話を…
「あ、えと…はい。魔妓阿…です。よろしく…お願いします……?」
クソがああああ!何で僕がこんな雑魚相手に気を遣わなくちゃいけないんだ!全部雷電将軍が悪い!!!
「マギアちゃんて言うのか、良い名前だね!誰につけて貰ったんだい?」
誰でもねえよ!僕自身だよ!
「……先生が、付けてくれました」
先生って何!?誰!?知らない人の名前出すのやめなよ!
いいか、落ち着け。落ち着くんだ僕よ。まだ幕府に正体がバレていない可能性がある。それを信じてみるんだ。
「先生って?」
「先生は…私に作法や礼儀を教えてくれた人です。世間の常識や法律まで教えてくれたんですよ」
もちろん嘘に決まっている。だってそうだろう。僕に作法や礼儀を教えてくれたのは前世の親だし、世間の常識や法律は燕緋が教えてくれたものだ。
「そっか、じゃあ先生って人は魔妓阿ちゃんの恩人な訳だ。会ってみたいものだね」
居ないから無理だよ!はぁ、今日は厄日だ。さっさと帰りたい。
「そ、そうですか…それじゃあ私はここで…人を待っている物で…」
深沙、早く戻って来い。お前の大好きな天女様が困ってるぞ!オイ!
「魔妓阿様〜っ!すまねえ、今戻っただ!」
やっと来たか。遅いぞこの野郎…
「うん…?あっ!トーマさんじゃねえだか!いつもありがとうなぁ!」
オイ…待てよ…もしかしてこれって…
「ああ、深沙ちゃんか。もしかして、魔妓阿ちゃんの待ち人って深沙ちゃんの事?」
「え"っ"!?…もしかして、深沙の事を"識っている"んですか!?」
「ん?妙な事を訊くね。勿論識っているとも。」
嘘だろ…?深沙って原神のネームドだったのかよ。そんなの知らないぞ!見た事も聞いたことも無い!…ッ!そうか!深沙は未来の原神に居る存在なのか!クソ…どう言う形で蛍と関わるんだ!わからない。わからないぞ…!
僕が混乱していると、突然トーマら手から炎を出し始めた。やはり気づいているな!?ここは穏便に、逃げさせてもらおう!
「魔妓阿ちゃん、大丈夫。怖くないよ…あっためてあげよう。ほら、おいで?」
はぁぁぁぁぁ!?何があっためてあげるだ!焼き尽くすつもりだろうが!ふざけんな!
「いえっ!いえっ!大丈夫ですっ!大丈夫ですからっ!」
拒否の言葉を使うと、トーマは何か考えついたようで僕に「じゃあ、ウチ来る?」と言ってきた。
いや何でだよ!!!!!!!!
「ウチにはね、お嬢…いや、友達の少ない女の子が居るんだ。良ければ会ってみてくれないかい?もしかしたら、気が合うかも…」
友達の少ない女の子ォ?雷電将軍の事かぁ!?
…いや待て。冷静に考えよう。トーマは誰に仕えている?神里綾香だ。そして神里綾香は何派だ?反幕府派だ。
…………閃いた。
抵抗軍に入ろう。そしたら雷電将軍の支配域から逃げられるかもしれない。それに、もしかしたら珊瑚宮心海の曇らせを堪能できるかもしれない。
そう考えれば悪い気はしないな。例えこれが罠だったとしても…少なくとも稲妻の人間は皆殺しに出来るだろう。なるべくやりたくは無いんだけどね。
さぁ、鬼が出るか蛇が出るか。ここが鬼門だぞ!
よせトーマ!そいつはやめとけ!悪魔だぞ!
深沙ちゃんの運命
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絶望して死ぬ
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曇っても苦しみながらも生きる