オリ主が死んで周りが曇る話【新章開幕】 作:D.D.D_Official
今日も私は任務に行くべく玉京台で支度をしていた。いつもここで私が支度をしていると、いつの間にかロイは来ている。どうやっているのかは分からないが、恐らく仙術か何かなのだろう。
「それにしても、今日は遅いわね…」
縁に腰掛け、ロイを待つ。しかし、いくら待てども来る気配は無い。何かあったのだろうか?まさかとは思うが、何かの事件に巻き込まれているのでは無いか。その可能性を考慮したが、倒す方法すらわからないようなロイを手こずらせる者など世界に何人いるというのか。
数刻待ってもロイは来ないので、仕方なく一人で任務に行く事にした。きっと何か、私との任務よりも大切な事があるのだろう。
「フン、私より大切な事って何よ…」
若干の嫉妬心を覚えながら私は任務に出たのだった。
今日の任務は璃月山中に居るという白鬼姫の調査だ。璃月の山中に入った男達が軒並み「お前は違う」と言われ被害を受けているという。これまでに死亡した人数は386人。その全てが群青色に近い髪色か、赤み掛かった瞳をしているそうだ。
群青の髪に紅瞳はロイの特徴だ。何か関連性があるのだろうか?そう考えながら私は探索を続ける。
ふと、その場の雰囲気が変わったように思えた。
「これは…?空気がさっきとは違う。それに若干寒い…?」
何か異変が起きていると気づき、私は咄嗟に剣を構える。恐らく、何かしらの力を持った存在が付近にいるのだろう。
「貴様、何者だ………」
ふと、後ろから声をかけられる。酷く冷たく、酷薄な声だ。鈴の音が鳴るような美しい声は溢れ出る殺意によって台無しになっている。恐る恐る振り返ると、そこには怒れる羅刹がいた。
「貴様…何故彼奴の気配をそこまで纏わせておる…」
「あ、貴方が…白鬼姫、よね?私は刻晴。玉衝刻晴よ!」
「フッ、そんな事、我が知るものか」
精一杯虚勢を貼るも、白鬼姫にはまるで効いていないようで、鼻で笑われる。そういえば、前にロイが話してくれたっけ。
「いいかい刻晴?もし修羅や羅刹に会ったのなら会話は無意味だ。何故なら彼らは人でありながら人間に在らずだからね。目と目が合った時点でもうそこは死合場なのさ」
そうだ、目を合わせては行けない。慌てて白鬼姫から目を逸らす。だけど、心の眼ではしっかりと見据える。ロイから教えてもらった心眼という技だ。
「……!刻晴とやら、何故目を伏せ心眼で我を見る?誰から教えられた!?答えよ!!」
「っ!貴方のような、羅刹とは話すなってソイツから言われてるからね!黙らせてもらうわ!」
すると、白鬼姫の顔が驚愕に彩られたのを感じた。やはり、ロイと何か因縁があるのだろうか。
「おい、お前。その者は男ではないか?」
「だったらなんだというのよ!」
「ふむ、答えぬか。では単刀直入に聞こう。貴様、ロイ・マギアという男を知っているか?」
「な……!?」
「やはりか。今奴は何処にいる?」
何故、ロイの名前がここで出てくる?白鬼姫はロイの何だ?次々と疑問が浮かんでは消えていく。だが一つ確かな事は、白鬼姫はロイに対して殺意を込めていないという事だ。
ならば、少しは話してみても良いのかもしれない。
「ロイは、璃月港にいる筈よ。恐らくね。いつもは私と一緒に任務を遂行しているのだけれど、今日は違うみたい。何かに巻き込まれてなければ良いのだけど」
「そうか、そうか………」
そう言って複雑そうな顔をする白鬼姫。
やはりロイとの間に何かあったのは間違いないようだ。
「あの、もし良ければだけど…貴方の知るロイを教えてくれるかしら?」
思わず、そんなことを口走ってしまう。何を考えているの私は!?でも、彼女は…人殺しと言え私の目には恋する乙女にしか見えない。
それならきっと、受けてくれる筈。
「…構わぬ。それと我を白鬼姫と呼ぶのは辞めよ。我には申鶴という名がある」
「わかったわ、申鶴。では、まずは普段の態度から…」
「フハハハ!よもやあの坊主が!?フハ、アハハハハ!」
「もう!笑わないでよ!ロイはカッコイイんだから!私が困っていたらいつでも助けに来てくれたし!」
「人の心を学ぶと言い私や師の元を離れた時は何事かと思うたが、そんな気障な事をするとは!これが笑わずにいられるか!」
「むぅ…!良いわよ!私が知っているロイのカッコいい所を叩き込んであげるんだから!」
「ブフッ!あの弱音ばかり吐いていた小僧が格好いいだと!?アハハハ!それだけで10年は笑えるわ!」
「良い?ロイはね、私が変な反抗心を出して一人で任務をしていた時…私はつい油断して、敵の残党に気づかなかったの。それで絶体絶命になりかけたその時!ロイが颯爽と現れて私を助けてくれたのよ!はぁ、あの時のロイは素敵だったわ!満月を背景にして血の雨の中で薄く微笑んで私に言ったの!『僕を頼って』って!あれって、愛の告白よね?」
「何?ロイが居て貴様が絶体絶命になりかけるだと?それはあり得ん。彼奴は心配性だからな。大抵はそうなる前に何か手を打っているか何か別の意図があったか、だな。恐らくロイは貴様の成長を望んでいたのだろう」
「そう、だったの…!言われてみれば確かに…」
「ハハハ!反省など良い。それで?続きを話せ」
そうして、夜になりまた、更けていく。
ロイが璃月を離れたと知ったのはその3日後だった。
「ぇ……それ、どういう事よ凝光。ロイが璃月を抜ける…だなんて嘘、よね?」
「残念だけど嘘じゃ無いわ。望舒旅館の部屋はもぬけの殻、ヴェル・ゴレットも彼が部屋を引き払ったと記録しているわ」
「そう、そう…なの」
私は、ロイに捨てられてしまったのだろうか?
絶対に守るって、僕を頼れって言ってくれたのに。
こんなのって、無い。酷い裏切りだ。
申鶴の気持ちは、凝光の期待は、私の心はどうなるの?
私が弱いから?頼りないから?それとも、私の世話を焼くのに疲れたから?何で、どうして。そんな言葉しか浮かんでこない。
だけど、私が弱いなら……
強くなれば、問題ないよね?
◆◆◆◆◆
ロイが死んだと聞き、私は酷く動揺していた。そんな事あり得ない。あの強いロイが、絶対に死ななそうなロイが死ぬなんて、あり得ない。
だけど、提示された証拠はどれもロイの死を指し示していた。なんで。誰が?そんな事どうでも良い。私の中にはロイを喪ったという虚無感しか残されていなかったのだから。
ふと、机の上を見る。そこには知っている字で書かれた手紙があった。これは、ロイの字だ。手紙によると、ロイは生きている。それが真実なら、どんなに嬉しいことか。
これが嘘でも構わない。
私は指定された場所へと急行した。
「ロイっ!ロイぃっ!」
目の前には、何年も顔を見なかったロイの顔がある。あぁ、その紅瞳で私を見つめる時の眼差しは昔と変わらないのかしら?
ぎゅっと抱きしめる。もう会えないと思っていたのに会えたのだ。これぐらいは許されても良いだろう。
「おや、今日は随分と大胆なんだね」
「だって、だってぇ…!怖かった、もう会えないんじゃないかって…!寂しかった!…もう、離さないでよね…?」
涙をぼろぼろ流しながらロイへ気持ちを伝える。普段なら恥ずかしくて言えそうにも無いけど、今日だけは特別だ。
ロイは「わかった」と言い、私を抱き返してくれる。あぁ、あったかい。ずっと、このままなら良いのに。
「ありがとう、刻晴…さようなら」
「ぇ……?がふっ…」
意識が朦朧としてくる。あ、そんな。嫌だ。行かないで、私をひとりにしないで。
ロイの目を見る。だけど、その瞳の中に宿るのは昔のような愛情ではなく、無様な者を見る瞳だ。
ああ。そうか。既にロイの中に私なんて消えていたのか。
いつから?わからない。璃月を抜けた時かもしれないし、それ以降かもしれない。でも、たった一つ言えるのは、私は…失恋したということだった。
そして、私の心は砕けた。
ねぇ、私強くなったよ。みんなから尊敬されるようになったよ。だから、むかえにきて。深い深い黒の中で私はあなたを待ってるからね。
だからどうか、思い出して。
刻晴を刺したロイは本当のロイでしたか?
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璃月七不思議、黒い剣士の謎
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