次は15日には更新できるようにしたいと思っております。
「うっうっ……本当に無事でよかった」
真っ赤なメタリックボディのスーツを着た長身の男が泣く。
全身をスーツで覆っているため、涙は見えず腕で涙を拭う動作だけが見えるのだが、声から考えるに本当に泣いているのだろう。
「お、おい、こんなとこで泣くなよ……」
集とクリムゾンハートこと大和は町に戻ってきていた。
月下香は現在カードデバイスの中で治療中である。
「しかし、友人の一大事に駆けつけることができなかった。
集なら大丈夫だろうと思っての事だったが、まさかあんな結果になっただなんて……。
本当にすまなかった!」
急にクリムゾンハートが深々と頭を下げたことによって、周りの観光客や工房で働くマイスターたちの視線が集まる。
「頭上げろって。
別に怒ってなんかないし、俺もこうして無事だったんだし。
だからさ、早く頭を上げてくれ」
視線が突き刺さり、早くこの場から逃げたい集は早口でそう言った。
あの後、腰が抜けて動けなくなったところにクリムゾンハートがやってきて、ゼクスから守ってくれたことにはものすごく感謝してる集だったが、いかんせん周りの視線が痛い。
「そうは言ってくれると助かる」
「そうそうそれでいい。
早くここから逃げよう」
「ん? 一体何から逃げるというのだ?」
集は事情が呑み込めなていないクリムゾンハートを引っ張りながら、一刀の工房へと足を進めた。
「こんちはー」
「あ、集さんこんにちは」
熱気とカンカンと金属を叩く音に負けないように大きな声で挨拶すると、黒髪ミディアムの細身の女の子が奥から出てくる。
「あのですね、先に言っておきます。
すいませんでしたっ!」
「え? え? 何が?」
会って早々深々と頭を下げるこだちに戸惑う集。
こだちは言い辛そうに言葉を紡いでゆく。
「えー、とですね。
朝方アームドさんが借りたメガネの件なんですが……いえ、見てもらった方が早いですね」
「なにその人を不安にさせる言い方」
顔を合わそうとせずに具体的なことを言わないこだちに、少し不安になる集。
「何を言ってもすべて言い訳になってしまいますから……。
ついて来てください」
そう言ってトコトコと奥の部屋に向かうこだち。
不安になりながらも集はついてゆく。
コンコン。
「こだちです。
集さん帰って来ました」
「……どうぞ」
部屋からアームドの声がした後、こだちがゆっくりとドアを開け集を先に部屋に入れる。
部屋の中には、アームドやキャノンシェルとタンクハート、その他数名のマイスターがいた。
「やあ集。
さっき君たちがいた方角から大きなリソースの奔流を感じたけど、大丈夫だったかい?」
「あ、大丈夫でしたよ」
「そうか、それはよかった」
前回あった時より、フレンドリーに接するアームドに少し困惑気味の集。
「……アームドさん、逃げないでくださいよ」
「うっ……」
タンクハートがアームドに言うと、ばつが悪そうに本題を言い始めた。
「コホン……実は君に借りたあのメガネを改造してみたんだ。
マイスターの技術をフル活用したから、
「……なんすかこれ?」
はい、とアームドが手渡したそれは、集にとって見覚えのある、しかしメガネの原型をほとんどなくした物体だった。
それは片メガネに似た形状をしている。レンズというよりは、付属の小型スクリーンに何かが表示されるようであり、半透明でピンク色。
「これは平たく言うと、相手の戦闘力を測る計測器だ」
つまり、どう考えても――。
「スカウターじゃねーかッ!」
集の世界の男の子なら一度は見るあのマンガのあれだった。
「スカウター? なんだいそれは?
とにもかくにも、気に入ってくれるとうれしいよ」
「いや、気に入るとか入らないとかじゃなくて、これ原型ないじゃん、完全に別物じゃん。
もはやレンズが片側にしかない時点でメガネとして機能しないじゃん」
「それは大丈夫。
ここにもう一つ……」
「なんでやねん!
こんなの二つもつけて外、出れるかっ!」
片目用スカウター(緑版)を出され、思わず関西弁になりながらツッコむ集。
「つかこれ考えたの誰だよ!」
「それは凌士だよ。
そろそろ戻ってくると思うんだけど……。
お、来たみたいだね」
ドアが開き、ぽっちゃりとした背の低い男が入ってくる。
「あ、集。
そのスカウター気に入ってくれた?」
「てめぇ……輝からもらったメガネどうしてくれる!」
「ご、ごめん。
でもしょうがなかったんだ。
おれが来る前にみんなが
「はい?」
アームドたちを見ると、みんな俯いたり顔を合わせないようにしている。
「いやー、そのね、青の世界の技術がどんなものか見るためにまず
「でもあたし達じゃ扱えなくて、しょうがないから材質を調べることにしたんだけど」
「思ったより硬くて『しゅほうはっしゃー!』でも壊せなくてアームドさんが真っ二つにしちゃったんだ」
アームド、タンクハート、キャノンシェルの順に言った。
アームドはハハハと苦笑いしながら、頬をポリポリと掻いた。
「で、もうここまで来たらもう完全に
「いや、そんな自信満々に言われても……」
キャノンシェルが無い胸……もとい一部の人間が喜びそうな胸を張り言った。
「見た目はこれだけど、出来はなかなかいいはずだよ。
なんたってあたし達や一刀さんやフォージさん、さらにアームドさんも参加しても製作だったからね。
青の世界にも負けないよ」
「いやいやいや、そんなこと言われても――」
「大体、レンズを防弾なんかにしたらレンズより自分の身が持たないよ。
このメガネ考えた人は、アイディアはあっても素人だね」
「そうだぜ。
それにビジュアル的にも――」
グリーブがビジュアルについて語り始め、他のマイスターも各改善点などを述べてゆく。
確かに輝は素人なのだが、自分達の失敗をあたかも良いことをしたかのように言われると、どうも釈然としない。
「それにあの機能も―――ッ!!?」
「……?
どうかしましたか?」
がやがやと騒いでいたマイスターの声が一瞬で止む。
「これは……」
「アームドさん!」
「これは仕事が忙しくなるかな……。
悪いけど、これで解散だ!」
「え? なになに?」
アームドが声をかけると、あれだけ騒いでいたマイスターが一斉に工房に戻ってゆく。
「あの、こだちちゃん。
一体何がどうなってんの?」
「あ、そうですね。
集さんは普通の人間ですから、分かりにくいかもしれません。
実はさっき東から強烈なリソースが感じられました。
おそらくこれからブレイバーの皆さんから仕事がたくさん入るので皆さん持ち場に戻ってるんです」
「……東か」
もしかするともしかするんじゃないかなー、なんて考えながら少し冷や汗をかく集。
すると、間髪入れずに集のスマホが鳴る。
「うわ、みかどんだ……。
はい、集です」
『お前もゼクス持ちならわかるかもしれんが、先程東……正確には関東から巨大なリソースの反応が見られた。本当は別の仕事を与えるつもりだったが、お前にはこれの処理に向かってほしい』
「え、もしかして一人で?」
『一応こちらからもブレイバーやマイスターの一個分隊を送る。
関東へは船で向かってもらう』
「さいですか……。
ならどこから船は出るんだ?」
『場所は福岡、出航は明日の明朝。
そこからは少し遠いが、お前らなら何とかなると信じてのことだ』
「うひゃ~。
分かりましたよ、軍師様。
期待に応えられるように頑張るよ」
『武運を祈る』
素っ気なくそう言われると通話は終わり、ツーツーと機械音だけが聞こえる。
「あーあ……全然転移者の件片付いてないのに、次は
これから忙しくなりそうだ……」
集はそう呟くとアリスたちを探し始めた。
次は15の予定。
それとまだヒロイックサーガ編には入りませぬ。
次章はおそらく来月になるかと。