文化祭も終わったし、少しはラクニナッタヨー。
でも更新速度はしばらくアガラナイヨー。
昨日、学校の隣にある教会でゼクスが暴れてたらしい。
教会の壁は破壊されてバラバラになってた。
それに天王寺君も怪我したみたいだし……。
やっぱりゼクスは大っ嫌い。
BPが出現したあの日、ゼクスに両親を殺された。
それ以来ゼクスは嫌い。
ゼクス使いの人も嫌い。
白の世界以外にも、いいゼクスもいるって話はあるけど、どうしてもあの時の事が思いだされて駄目。
ゼクスの進行が激しくて、今の学校に入学して、天王寺君と出会って、好きになって……。
ここら辺ではゼクスの話題なんかほとんどなくて平和だったから、もうゼクスのことなんて思いださなくて済むと思ったのに……。
弱い自分は誰を憎めばいいのか……。
「誰か教えて……」
「ならワタシが教えてあげる」
「え、だ、誰!?」
「ンフフフ」
私が振り向くと、そこには黒いパーカーを着て、フードで顔を隠した人が立っていた。
そんな……ここは寮の私にあてられた部屋で、しかも鍵も閉めてたのに……。
「ワタシのことなんてどうでもいいじゃない……。
そんなことより、藍那ちゃんのことについて話そうよ」
「な、なんで私の名前を……」
「この密室に忍び込むくらいだから、部屋の主のリサーチくらいするでしょ」
声からしてたぶん女の人なんだろうけど、なんか不思議な感じがするその人は、やれやれと首を振った。
「そ、それでなんで私のことについて話さなくちゃいけないんですか?」
「それはね、このままじゃ藍那ちゃんは黒のゼクスにおもちゃにされて、ゼクスになっちゃうの。
この件は私に一任されてるし、私が悪巧みしてるゼクスを倒して回ってもいいんだけど、それだと根本的な解決にはならないからね。
こうやって話に来たのよ。
あっ、座っていいわよ」
嘘をついてるようには見えない……けど私がゼクスになるなんて……。
信じられないけど、彼女(彼?)は続けて言う。
「藍那ちゃんはさ、ゼクス嫌いだよね。
嫌いな理由は目の前で両親を殺されたとか、好きな人を傷つけたとかいろいろあるんだろうけど、ゼクスに対して仕返ししようとか思わない?」
「仕返しだなんて……私にはとても……」
私はゼクスが怖い。
あの時のことを思いだして足がすくむ。
それに私にはそんな力はないし……それに……強くもない。
私には無理な話だと思う。
「今、自分には無理だとか考えたでしょ」
目の前の人は、心を読むかのようにズバリ当ててくる。
「なんで無理だと思ったの?
力がないとかなら、少しくらいなら力になれるよ?」
「そんな、力があっても私なんかには……」
「できないって?
それは怖いから?
攻撃されても傷一つ付かなくて、一撃で倒せる力があったとしてもそんなこと言える?
復讐しようとか思わないの?」
彼女は俯いた私の顔を覗きこむように屈む。
仕返しとか、復讐とか、私には無理だよ……。
怖くて哀しくて……きっと無理。
諦めた方がいいんだ……。
「例えば、藍那ちゃんが今好きな天王寺飛鳥を、目の前で、しかも惨たらしく殺されても、それでも復讐せずにいられる? 憎まずにいられる? 行動を起こせる?」
「それはっ!
……でも、そんなのわかんないよ」
いきなりそんなこと言われたってどうするかなんてわからない。
好きな人が殺されたら憎むかもしれないけど、でも復讐しようとかそんなの……。
「哀しいからって、怖いからって、諦めるの?
嘆いてばかりでは何も変わらないわよ」
その言葉は私の胸に深く突き刺さる。
「あなたは守られてばかりで何もしないの?
守られてるのに守れない。
そもそも守ろうともしない。
そんなんじゃいつまでたっても彼には近づけないわよ」
それは嫌だ。
もう私の中で天王寺君は、この世界で生きるための目的みたいになってる。
「……なんて、いきなり言われても困るわよね。
でも、このままじゃ駄目だと思うならこのカードデバイスを取りなさい。
これをとるならひとまずあなたに目的を与えてあげる」
そう言うと彼女は私の目の前にカードデバイスを差し出した。
これをとれば私は変われる。
けど……怖いよ。
「怖い?
でも変わるしかないの。
こんなになった世界で、自分だけ殻に籠って知らんぷりだなんて、そんなの最初から負けを認めてるみたいなものよ。
このカードデバイスは嫌になったら捨ててくれても構わないわ。
これを受け取ったからってすぐに変われるわけではないもの。
でも、少しでも変わりたいと、彼を助けたいと思うならこれを取りなさい」
変わるのは怖い……けど、私は……変わりたい。
「うん、これで藍那ちゃんも変われるわ」
気づくと私はいつの間にかカードデバイスを取っていた。
「じゃあ藍那ちゃんに目的をあげる。
あなたは戦争を憎みなさい」
「戦争を憎む……?」
「誰だって暗い心はあるもの、聖人君子になんてならなくていいの。
あなたは本当に優しいから、憎くても憎み切れずにいたんでしょう?
なら最初は漠然としたものでいいから目標を立てて、それからそれをするにはどうすればいいか、自分で考えなさい」
「……難しいですね」
戦争を憎むなんて、規模が大きすぎてよくわからない。
「そうね……なら例えばだけど、あなたは強大な力から身を守るための楯をとる?
それとも……より強大な力でそれをも平らげる剣?
どうすればいいか分からないなら、方向性だけでも考えて置きなさい。
……そろそろ時間ね……また来るわ」
「あっ、もう行っちゃうんですか?」
「うん、そろそろ忙しくなる時期だしね。
ああそう、ゼクスのことなら心配しなくても、あなたでも扱えるようないい子にしておいたから。
じゃあね」
そう言うと彼女は普通にドアの鍵を開け出ていった。
「あっ……行っちゃった。
これ、どうしよう」
私はカードデバイスを見てため息を吐いた。
「でも、変わりたくて受け取ったんだから……。
よし……!」
ゼクスをアクティベートすることを決意した私は勢いよく立ち上がった。
っと、その前に逃げる準備しないと……。
よし。
「……アクティベート」
震える声でそう言うと、カードデバイスから光が発生し、思わず目を閉じる。
やがてそれが終わると目の前には……あれ?
「何もいない……?」
「ここです!」
かわいらしい声がした方を向くと、足元に親指サイズの小さな妖精がいた。
「ひっ!」
「怖がらないでください。
わたしは悪いゼクスじゃないですよ。
わたしはオーラブラウニーっていうです」
つい条件反射で悲鳴を上げてしまった。
かわいいし、悪いゼクスじゃなさそうだけど、この子もゼクスだと思うと気分が……。
「うーん、前途多難れすね……。
まあそのうち慣れるです」
そう言ってブラウニーちゃん? は小さな箒を持ってトテトテとタンスに向かって歩いていく。
「え、何するの?」
「お掃除するです!
その次は洗濯、その後はお夕飯を作るです!」
見の周りにゼクスの魔の手が……あわわわわわわわ……!
どうやら変わるのは当分先になりそうです。
~その後の二人~
アイナ「ご飯は寮のが出るの」
ブラウニー「がーん!」
次はたぶん30日です。