Z/Xの世界で生き延びる!   作:よーと

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1話「ダッシュ」

 「なんでこないなってもうたんや……」

 

 荒川(あらかわ) (しゅう)は失意体前屈気味につぶやいた。

 

 「よりによって緑のBP(ブラックポイント)のある所に転移してしまうとは……」

 

 俺の目の前には広大な森が広がっていた。

 

 

 「なんで俺がこんな目に…」

 

 俺は目をこすりながら呟いた。

 泣いているのではない。俺は花粉症だった。

 猛烈な目の痒みと鼻水、おまけに発熱までしているようだった。

 

 「くそっ! 他の世界だったら何とかなったかもしれないのに」

 

 俺はこれが現実だと疑わなかった。俺がこれまで異世界転移ものの小説を読んだり妄想したりしていたのもあったかもしれないが、それ以上に花粉症の症状がこれは現実なんだと訴えていた。

 

 俺が花粉と戦いながら周りを見渡すと、見渡す限り緑一色だが実は緑の濃いところと薄いところがあった。

 そして、それはは道のようにも見える。と言っても、それは他に比べればというだけで決して植物がないというわけではない。がそれが俺には楽園に続く道に見えた。

 

 「一刻も早くここから離れなくては……俺は死んでしまうかもしれない…!」

 花粉症的な意味で。

 そう言うと俺は走り出した。

 

 「俺が転移したのは昼休みだから、太陽がほぼ真上にあることを考えると時差はないということになるのかな?」

 

 確かフランスにも緑のBPが発生したたはずだけどこれで外国に転移したのではないと考えていいはずだ。

 もちろん寝ていたから断言はできないけど、俺は日本から転移したんだし日本だろ。……たぶん。

 

 

 

 ★★★★

 

 どれくらい走っただろう。もう4時間くらいは走ったんじゃないか?

 というか、ぶっちゃけ迷った。道っぽくなってたから大丈夫かと思ってきたけど間違いだったな。太陽の位置をしっかり見とけばよかったな。ここからじゃ樹が邪魔してほとんど見えない。そして、よく見てみるとこの木の枝すごいんだよな。効率よく光合成できるように葉の位置が被らないようにしてんだよ。うん、すごい。腹減ったな、帰ったらカレー食べたいなぁ。Z/X仲間は元気してるかな。

 

 

 

 で、なんでこんな現実逃避してるかというとプラセクトに追われてるからだ。

 4時間走ったってのもこのプラセクトのせいで休めなかったからだよ!

 くそ! どれだけ追ってくんだよ!

 何度も転んだから服もボロボロだよ!

 暑い、のどが乾いた。

 おまけに転移したまんまだから靴は学校指定の上履きだし武器もない。そして、転移者チートよろしくの能力もなかった。

 試しに、アクティベートとかキャプチャとかイグニッションとか叫んでみたけどなんもなかった。むしろ叫んだ分、走るのが遅くなってもう少しで追いつかれそうだ。つーか遊ばれてる気がする。

 

 ちなみに追いかけてきてるのはたぶん〈毒針昆虫デスニードル〉だ。パワーは5000だからある程度戦えるZ/Xとぶつければ倒せそうではあるんだけど、BPから離れれば離れるだけ強いZ/Xは存在できなくなるし、逆に近づけばそれだけつよいZ/Xに狙われることになるわけで…。

 

 あれ? これ積んでね?

 

 俺がカードデバイスを使うのが一番いいんだろうけど、転移する前に手元に置いてたZ/Xのカードはこっちに来たらなぜか無かった。

 

 なんでだ! 転移者はチート能力の一つや二つあるもんじゃないのかよ!

 

 あああーーーもう、なんだか頭が痛くなってきた。

 

 

 とその時、森が開けていて光が漏れている場所を見つけた。

 大体50メートル先ぐらいか。俺は残った体力を振り絞り全力で走った。

 

 「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

 永遠にも思える50メートルを走り抜けた時、俺は絶望した。

 

  

 目の前には青い花が、否、めちゃくちゃでかい蟷螂(かまきり)がいた。

 確か名前は〈朝顔蟷螂グローリーサイス〉だった気がする。

 

 俺の後を追ってきたデスニードルはグローリーサイスの餌になった。

 

 よく考えてみれば、俺は迷っていたのだから森の外に向かってる保証はなかったし、頭が痛かったのだってリソース症候群(シンドローム)のせいだったんじゃないか?なんで気づかなかったんだ。早く逃げないと。

 

 だが、動くことができなかった。それは走りつ続けて疲れていたのかもしれないし、目の前にいる巨大蟷螂が怖かったからかもしれない。

 

 グローリーサイスの鎌が下ろされる。集は目をグッと閉じる。

 最後の瞬間に集が思ったのは家族のこと、まだ見終わってないアニメのこと、そして一緒に転移してきたかもしれない友達のことだった。

 

 

 

 だが、最後の時にはならなかった。

 いつまでたっても痛みがない。

 よもや自分はもう死んでしまったのではと思い始めたその時、声がした。

 

 「おい! 大丈夫か!?」

 

 その声に集は目を開けると倒れているグローリーサイスとそれをむしゃむしゃしてる虎、そして目の前には虎の獣人が立っていた。

 

 集は恐怖で意絶した。

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