Z/Xの世界で生き延びる!   作:よーと

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 アニメ、原作から少し持ってきました。


32話「綾瀬」

 ビルに入っていくと案外片付いていた。

 外は瓦礫とかガラスの破片とかが落ちてるからもっと汚いかと思ったんだけど……。

 電気はついておらず暗いがまだ日があるので何も見えないほどじゃない。

 

 ……足音がする……二人分だ。

 やっぱり誰かいるのか。

 もしかしたら893とかの取引だったりするのかもな。

 気が付かれないようにこっそり行こう。

 

 カツッカツッカツッ…………カツン。

 ……足音が止まった。

 ギィーー。

 ドアが開く音がする。

 二つの人影が部屋に入っていくのが見えた。

 ギイィー。

 ドアが閉まる。

 くっ、これじゃ何してるかわからない。

 どこか見れる場所……ダクト。

 昔あこがれてたダクトの中を移動して監視の目をかいくぐるという映画を思い出すけど、これくらいしかないよな。

 

 (クー子、あの排気口のカバー、音出さずに壊せるか?)

 

 「キュー!」

 

 (おい、でかい声出すな)

 

 ガコッ!

 …………おお、結構でかい音出たけど誰も来ないな、よかった。

 よし、何してるのか見させてもらいますか。

 

 

 サッ…グッ…ズリズリ……。

 ダクトの中を通るのって結構きついな。

 しかも見つからないように音を出さずやるから精神的にも来るな。

 

 だが何とか部屋の真上に来たぜ。

 どれどれ…………!

 あ、綾瀬じゃん!

 なんでこんなとこに……もしかしてカードデバイスを手にいれる前か?

 

 「話が違うじゃない! さ、三百万持って来ればカードデバイスを……」

 

 「残念だったねぇwwそれは昨日までのね・だ・ん」

 

 「っ!」

 

 ああ、アニメのまんまですわ。

 かなりムカつく。

 

 「需要と供給って言葉知ってるう~?

  まあ、座んなよ」

 

 「あと二百万……なあに、今日中に払わなきゃもっと高くなるぜぇ~」

 

 「うっ……」

 

 このままいくと……。

 ドゴオオオオン!

 来たな。

 

 「うお!」

 

 「きゃあ!」

 

 突如壁が破壊され砂埃が舞う。

 

 「なんだぁ!?」

 

 ガッ。

 ぬこキター!

 

 「いい匂いがするはずだぜ、若い女がいるじゃねえか」

 

 「ひっ!」

 

 「うう!」

 

 綾瀬のわきにいた男二人が逃げ出す。

 

 「ッ、くそゼクスが……これでも食らえ! キャプチャー!」

 

 ……シーン……。

 男はポケットからカードデバイスを取り出しそう叫ぶが、何も起きない。

 

 「え゛? 不良品かあ!」

 

 ズシン……。

 

 「…はあ!」

 

 ズッシャアアアアア!

 ズィーガーが男を切り裂く。

 

 「バーカ、そいつを使うにはそれなりの資質ってもんが必要なんだよ。

  やだね、物を知らねってのは」

 

 ズィーガーが爪についた血を舐めながら言う。

 

 「……さて、メインディッシュだ……」

 

 「あ、ああ……」

 

 綾瀬は怯えた表情だったが、さっきの男が落としたカードデバイスを掴みズィーガーにかざした。

 

 「おいおいネーチャン、俺の話聞いてなかったのかい?

  そいつを使うには……」

 

 「きゃ、キャプチャー!」

 

 おお、魔方陣的なエフェクトが光りながらズィーガーを取り込む。

 

 「ナニッ!」

 

 光が消えるとズィーガーはカードデバイスに収まっていた。

 

 「……や、やった……」

 

 やったー、にゃんこ先生ゲットだぜ……って、思うじゃん。

 

 「なンつってな」

 

 カードデバイスが光だし、勝手に動き出す。

 綾瀬はそれを必死に抑えるがアクティベートの許可なくズィーガーが現れる。

 

 「あぶねえあぶねえ。まさかてめえみてえな小娘が本物とはな。

  デバイスも本物だったら、マジで捕獲されてたぜ……。」

 

 「どうして……」

 

 

 カードデバイスに捕獲したゼクスは使用者の意思でのみ解放を行える。

 また、ひとたび捕獲したゼクスは使用者に従順な使い魔となる。

 そのように聞いていた綾瀬は、目の前で起きている事態に当惑した。

 

 「冥土の土産に教えてやるよ。

 てめえはカードデバイスを使える側の人間のようだが、そいつは偽物だ。

  よく似せてあるが、機能が完全じゃない」

 

 「もうひとつ。仮に本物のカードデバイスを使ったとしても、

 人間に従うのは、低級で何も考えてない馬鹿なゼクスだけだ。

 俺様はどっちかって? 人間の首を掻っ切ってやる方さ!」

 「あぅっ!」

 

 ズィーガーは前足で綾瀬を突き倒すと、そのまま踏みつけた。

 背中から恐ろしいほどの力がかかり、まったく身動きが取れない。

 

「ほかのヤツらがあっけなかったからなア。てめえは存分にいたぶってやるよ」

 

 全身の骨がきしみ、胸が圧迫される。

 息が詰まりそうになる中、腹の底から声を絞り出し、

 綾瀬はズィーガーに語りかけた。

 

 「……気に……入ったわ……」

 「なに?」

 

 綾瀬が取り乱し命乞いをする様を期待していたズィーガーは、

 死をまったく恐れないそぶりを見せる綾瀬を訝しんだ。

 不意に力が緩んだことで、前足の束縛から逃れる綾瀬。

 

「げほっげほっ……。あ、あなたならきっと私の願いを、叶えられる。

 

 そして私は、あなたに快楽を与えられる」

 

「何のことだ」

 

「取引をしましょう」

 

 不敵な笑みを浮かべる綾瀬。

 しかし、手の平と背中にはじっとりと汗が滲んでいた。

 

 ……なんかアニメと原作が混じってるな。

 

 (クー子、一応突入の準備しとけ)

 

 「私はあなたの力を使って復讐を果たす。

  あなたは私のカードデバイスを扱える力を利用して、天使をすべて殺す」

 

 「確かに悪い取引じゃねえ。

  ここいらは黒の世界の見慣れたゼクスや弱っちい人間ばかりだし、

  飽き飽きしてたところだぜ」

 

 「だったら……!」

 

 希望を見出した綾瀬は、

 目の前のゼクスが残忍な性質を持っていることも忘れ、前のめりになった。

 

 「それだけに残念でならねえ。

  本物のカードデバイスがなけりゃ、てめえは普通の人間なンだよな」

 

 「それは……」

 

 「というわけだ。あばよ!」

 

 ズィーガーの鋭い爪の先端が、綾瀬の首筋に突きつけられた。

 つうっと、一筋の血が滴り落ちる。寸止めされた形だ。

 

 ああ、ズィーガーてめえ! 美人になんてことしやがる!

 

 「普通の人間なら、死の寸前だってのに、ンな冷たい目はしてねえか。

  ……面白れえ! てめえを殺すのなんざ簡単だがな、1日だけ時間をやるよ。

  本物のカードデバイスを手に入れてみろ。そしたら復讐ごっこに付き合ってやるぜ」

 

 「わかったわ」

 

 気丈に振る舞っていたが、綾瀬の心臓は破裂しそうなほどに高鳴っている。

 張り詰めた精神も限界ギリギリのところまできていた。

 

 そこへ、なんとも間の抜けた声色で話しかけてくる者があった。

 

 「あー……取り込み中のところ悪いのじゃが」

 

 いつの間にか綾瀬とズィーガーの傍らに、頭に角飾りと巫女衣装を身につけた、小柄な少女が立っていた。

 ゼクスがすぐ側にいるというのに、少女はまったく臆した様子を見せない。

 

 あ、無職の巫女さん、チィーっす。

 

 綾瀬はズィーガーの前に立ちはだかると、後ろにいる少女へ、小声ながらも強い口調で告げた。

 

 「早く逃げて!」

 

 「お主、上柚木綾瀬じゃな?」

 

 綾瀬の表情が凍りつく。

 しかしながら、少女は変わらぬ呑気さで綾瀬を見上げている。

 

 「……何故、私の名前を知っているの?」

 

 「ワシは竜の巫女、世界の平和を願う者じゃ。

  なに、怪しい者ではない。お主が持っておるカードデバイスを見せてくれぬか?」

 

 名前を知っていたことに加え、

 カードデバイスを所持していることまで知られている。

 警戒を強める綾瀬だったが、カードデバイスが偽物だったことを思い出し、

 言われるままに竜の巫女へ差し出すことにした。

 相手の出方を見る意味も込めて……。

 

 「ふむふむ。これはまがいものじゃな。

  信用が落ちるから、こういった中途半端な代物をつくらんで欲しいのう。

  まあ、いいわ。他社製品じゃが、あふたーさーびすで取り替えてやろう」

 

 「何を言っているの……?」

 

 「ほれ」

 

 戻ってきたカードデバイスを手にした瞬間、

 綾瀬はさっきよりはるかに強い、強烈なリソースの奔流を感じた。

 

 「まさかこれは……。あなた、いったい!?」

 

 しかし、ほんの数秒カードデバイスに気を取られていたうちに、竜の巫女は姿を消してしまっていた。

 

 「消えた……?」

 

 「ちっ。殺し損ねたか」

 

 獣の動体視力をもってしても、いなくなる瞬間を捉えられなかったらしい。

 いずれにしても、いないものはいない。

 綾瀬の興味はすぐ、竜の巫女から手元のカードへ移った。

 

 「ズィーガー、ちょっといいかしら」

 

 「あァん?」

 

 「キャプチャー!!!!」

 

 「うぉっ!?」

 

偽物より遥かに強い光を発し、カードデバイスはズィーガーを呑み込んだ。

 

 「いきなり何しやがる! なんだこれ、出られねえ!」

 「これで契約は成立かしらね?」

 

 「……てめえ、いい根性してるぜ」

 

 

 ふう、何とか無事にキャプチャーできたみたいでよかったぜ。

 大丈夫だとわかっていても緊張するな。

 

 

 「……ところで、さっきから俺たちのことを覗いてるお前はいつ出てくンだ?」

 

 

 ッ! ばれてたか……。

 しゃーない、降りるか。

 

 「ばれてたのかよ……今降りるから待ってろ……。

  ……あ、ここ案外高い。

  やっぱここからじゃなくて……ああ、クー子押さないで!」

 

 クー子に押されて天井から真っ逆さまだ。

 

 「うわっ! ……っっつつ」

 

 覗いてたもんだから頭から落ちた。

 受け身はとったけど痛い。

 

 「っ! あなた誰!」

 

 「いやあ、怪しいもんじゃないよ。

  ちょっとそこらへんをうろついてたら偶然ここに人が入ってくのを見たからさ……」

 

 「キュウ!」

 

 「ッ……ゼクス使い……!」

 

 「ああ、警戒しないで、別に敵対したいわけじゃないから」

 

 ばれたのは誤算だったけど……。

 さあ、ここからどう持っていくか……。

 目標は綾瀬のメアドゲットだな。

 

 

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