もともと黒かった組織が世界がカオスになってるせいで巨大化したり、世界の混乱に乗じて悪に身を染めたり……。
薄い本が……ゲフンゲフン。
アクストは翼を使い斬撃を飛ばす。
クー子だと分が悪いか。
「クー子、戻れ!
アクティベート!」
「下衆が!」
月下香をアクティベートすると、男たちを薙ぎ払いアクストに向かって跳躍した。
一応リソースをリブートしてから、この隙に女の子のもとに向かう。
「それ以上近づくなよ?
こいつがどうなってもいいのか?」
奥にいた男は女の子の喉元にナイフをあてる。
「チッ」
こうされると俺は止まるしかない。
月下香もリブート量が少ないせいか時間がかかりそうだ。
リブートしてこっちに来てもらうか。
「おっと、カードデバイスから手を放せ。
余計なことしてまらっては困るからな」
俺がリブートしようとカードデバイスに力を込めたら、男に気づかれてしまった。
「ひっ!」
俺が迷っていると女の子にナイフを近づける。
「……わかったよ」
俺はカードデバイスを地面に置いた。
「そうだ、それでいい。
にしても、やってくれたじゃねえか。
俺の仲間たちがみんなダウンしちまってる」
こいつ以外はクー子と月下香が倒した。
クー子がやった奴らは骨が折れたりして気絶しているが、月下香がやった奴らは剣で斬りつけられかなり重症だ。
まあ、自業自得だが。
このまま月下香の戦いが長引くと気絶している奴らは目を覚ますだろう。
こいつはそれを狙ってるんだろう。
「おい、ゼクスの戦いは俺の勝ちだと思うぞ。
降参したらどうだ?」
月下香は少し苦戦しているが、地力の強さで勝つだろう。
「んなこと知っている。
だが俺の仲間が起きる方が速いと思うがな」
男がクククと笑う。
たしかにクー子の攻撃が甘かった奴がいたな。
もしかしたらヤバいかもしれないな。
「だから降参するのはお前の方だぜ?」
そういう男の額には汗がにじんでいる。
男も内心焦っているんだろう。
月下香がアクストを倒すのが先か、男の仲間が目を覚ますのが先か。
俺は女の子が人質にされている限り動けないし、どうする。
……実は昨日倒した男たちからカードデバイス1枚と、奴らが警察から奪ってきたであろう拳銃、H&K P2000を持って来たんだが、今ここで拳銃を出したところで俺には銃なんかうまく使えないし、男が女の子を傷つける可能性もある。
「……く………んん」
まずい、倒れていた男が目を覚ました。
「ハハ、どうやら俺の勝ちみたいだな」
男は安心した表情で言った。
く、どうする。
このままじゃ俺はこいつらに負けるんだろう。
しゃーない。
「手を上げろ!」
俺は隠していた拳銃を男に向けた。
「てめぇ…そんなもん隠し持ってやがったのか!
だがいいのか?
こいつに当たっちまうかもしれないぜ?
クハハハハ」
「くっ!」
手が震える。
狙いが定まらない。
このままだと本当に女の子に当たるかもしれない。
「どうした、撃たないのか?」
「……わかった、撃ってやるよ!」
俺はそう叫んで発砲する。
男は女の子を離し、自分だけ回避運動をしていた。
男が離れたすきに女の子に近づく。
「大丈夫?」
「あ、ありがとうございます」
女の子は震える声で言った。
「てめぇ……どういうつもりだ?」
男は俺が撃った場所のことを言ってるんだろう。
俺が撃ったのは真上だ。
それはこの男が強がっていたが、臆病そうだったし、
上に撃つくらいなら俺にもできるしな。
そして
「今の音でここに自衛隊が来るだろうからな。
それに女の子を傷つけるわけにはいかないだろう?」
まあ、俺は紳士だからな。
「くそ!」
男は仲間を置いて逃げていった。
「逃がすか!」
しかしアクストを倒し終わった月下香が男を斬りつける。
「ぐああああああ!」
男は絶叫して倒れた。
そしてすぐに自衛隊が来て俺は事情を説明することになった。
あれから少し経って自衛隊の人から話を聞いたところ、どうやら男たちは人攫い屋らしい。
だが、らしいってだけで何も話さないらしく、尋問は長引きそうだ。
自衛隊は人攫い屋の噂や昨日俺が倒した奴らのことは知っていたらしいが、一般人に話して混乱させないために関係者以外には話はしていない。
今は一般人は全員避難所の中にいる。
人攫い屋は外で自衛隊の人に尋問されている。
まだ奴らの仲間がいるかもしれないので、避難所の中にも自衛隊が何人か配置されている。
事情を説明し終わってひと段落ついた俺は、男たちを尋問しているテントに来ていた。
「クソ! なんでこんなことに……本当は昨日のうちに攻めるはずだったのによ。
なんだか知らねえけど、別働隊がつぶされていたみたいだしよ」
「あー、ちょっといいですか」
俺からも聞いときたいことがある。
「どうして俺たちを狙ったんだ?」
「あん? 言うわけないだろ」
カードデバイスをチラつかせる。
「わかった、話すからそれをしまってくれ……。
……お前たちがここによって救助をすることは知っていたからな」
まあ、救助することは多くの人に知らさなきゃならないし、町や人、ラジオとかで放送していたんだろう。
「そうか……あんたら、たしか避難者の中にいたやつらだよな?
もしかして他にもいるのか?」
「悪いがそれは言えねえな」
男はバカにした笑いをする。
「いいのか? 俺のゼクスを使えばお前を殺すことだってできるぞ?」
「やってみろよ、今まともに話せるのは俺ぐらいだ。
他の奴らは詳しい話は聞かされてないからなあ」
それは本当のことなんだろう。
他の奴らは脅してもしゃべらなかったし、実際怒った月下香に骨を折られた奴もいるけど、何も知らないみたいだったしな。
「じゃあ、今までさらった人たちはどうした?」
「さあな、俺はこの仕事は2回目だから詳しいことは知らねえが、女と子どもはどっかの金持ちに売って、それ以外はディアボロスに売ってるはずだ。
あくまで俺たちは人攫いが仕事だからな、商品を売ったりするのは専門外だ」
「……どこに売ったのかは知らないのか?」
「さあ、最近は国内だけじゃなく海外でも取引をしてるって話は聞いたことあるが、詳しいことは知らん」
……チッ。
イライラする。
しかし、海外か……どこの国かわからないし今の日本にどの程度の移動手段があるんだか……。
「ならその取引をしているのが誰なのかは知ってるか?」
「俺は知らねえな」
はあ、こいつはそんなことも知らないでこの仕事してきたのかよ。
こいつらは組織にとって、危険が及びそうになったら捨てられるトカゲのしっぽみたいなもんなんだろうな。
「集、やっぱりこいつのこと殴らせろ」
カードデバイスから月下香が言う。
月下香もなかなかにイラついてるな。
「こいつのこと殴っても何も変わんないだろ。
拳を痛めるだけだぞ?」
殴って殺しても困るし宥めておこう。
その時テントが開いた。
「ああ、皆さんここにいましたか」
「紫炎? どうしたんだ?」
テントの中に入ってきたのは紫炎だった。