活動報告にて季節についてちょこっと書いときました。
忙しい人のために言うと現在は6月です。
理由は活動報告を見てください。
暗い部屋で男たちが目を覚ます。
「ん…ここは……」
「あ、やっと起きましたか」
長身で大学生くらいの男が今起きた男に鉄格子越しに話しかける。
彼の名は石黒慎吾。
この世界に転移した青年だ。
「ん、あんたは……。
てかここどこだ、なんで牢屋に入れられてるんだよ!」
男が騒ぎ立てて、体を起こそうとするがうまく立てない。
牢屋にいる男たちには手枷や足枷がされていた。
「なんだよこれ…!
おい、どういうことだ!」
「そんなに大きな声出さないでくださいよ。
この部屋声が響くんですからうるさくて仕方がないです。
あなた達はこれから商品として売られるんですよ」
「商品? どういうことだ」
「ほら、あなた達は私たちの商品を買って、返品したでしょう?
そのことで会長に怒られてるんでこうするしかないんです。
まあ、そんなこと言ってもあなたみたいな下っ端にはわからないでしょうけど」
「ざっけんじゃねえぞっ!」
男は唾を飛ばしながら言う。
男はこの状況を受け入れられずにいた。
今年で30歳になるが、今まで男は勝ち組だと思っていた。
親は資産家で何不自由なく暮らしてきた。一流大学を卒業し、卒業後は学校などで知り合った仲間と共に詐欺グループを作り、金を奪う。そしてその金で散々遊んび、女を抱いてきた。何度か警察の世話にもなったが大抵は親の金で何とかなった。そして詐欺にも飽きたころには麻薬の密売人などをしてさらに犯罪に手を染めてきた。罪悪感がないわけではなかったが、バカな奴らから金を巻き上げて何が悪い、と思ってきた。それからしばらくするとそれにも飽きてきた。
その時に現れたのがゼクスだ。
生憎と男にはゼクス使いとしての才能はなかったが、仕事を通じて知り合った仲間と共にゼクスを使った悪事にも手を出した。最初は楽に金を手に入れられたが最近は人もいなくなりつまらなくなっていた。
そこに来たのが人攫い屋だった。
仕事は簡単。
ただ避難者に紛れおとなしくしているだけ。それだけで金が手に入り、なおかつ人が絶望する顔が見れる。なんて楽な仕事だと思った。
それが今はどうだ。牢屋の中にいる。今まで自分は勝ち組だと思っていたのに今は年下の男に見降ろされている。男には我慢ならない状況だった。
「そう怒らないでくださいよ。
あなたも今までこういうことしてきたんでしょう?
因果応報だと思いますよ」
「ざけんな!
テメェ、ここから出たらぶっ殺してやるからな!
今に見てろ、テメェなんか……」
「静かにしてくださいよ」
慎吾は少しイラついた様子で言う。
だが男はなおも叫び続ける。
その声に他の男たちも起きてきた。
慎吾は今だ怨念を垂れる男に嫌気が差したのか、姿勢を崩し喧嘩を売るような態度をとる。
「あー……めんどくせぇ。
人が丁寧に話してれば調子に乗りやがって……。
あんた、自分の状況がわかってんのか?」
「あ? んなもんここから出れば……」
「あーくそっ、商品を傷つけたら怒られるかもしんねえけど我慢ならねえ。
お前調子に乗りすぎだぞ」
慎吾は檻の中から男を出した。
そして手枷と足枷を外し始めた。
「フェアプレーだ。
どっから出もかかってこい」
男は呆けた顔をしていたが、すぐにニヤニヤした顔になった。
「テメェ、俺をこんなにしたことを後悔させてやるぜ!」
「……」
男が慎吾に仕掛けるが、次の瞬間には投げられ地面にぶつかった。
受け身も取れないまま背中からぶつかったせいか呼吸が止まり肺の空気が吐き出される。
「かッ、は」
「あー、むしゃくしゃする。
こんなやつ壊したって損しかしないのにな」
慎吾はイライラした様子で呟く。
「お前らは俺の友人を傷つけた。
だが集のことだから誰も死なせたくなかったからお前らは誰も死んでないんだ。
助かった命を無駄にするようなことしやがって。
ったく、集は優しすぎるよ。
こんなやつら生かしておいても何にもならないのに」
慎吾は今も苦しむ男に手枷を付け始めた。
「本当なら友人を傷つけたお前らのことを半殺しにしてやりたいところだけど、今は命の恩人に恩を返す途中だからな。
おとなしくするならなんもしないでやるよ」
慎吾はそう言って、男を檻の中に放り込む。
「他の人たちはどうする?」
檻の中の男たちはさっきのを見たからか、皆首を横に振った。
「角さん、もうすぐ売りに行くんで用意しといてください」
「あ、了解ッス」
どうやら男たちを売りにどこかに行くらしい。
男たちはトラックに積まれていく。
「……スケさん、こいつらはどこに売るんですか?」
「この人たちは皆、ディアボロスの方たちに売ります」
「で、売られた人はどうなるんですか?」
「そうですねえ……人によりますが、拷問されたり実験道具にされたり、はたまた食用になったりして、ディアボロスの寿命になってゆきます。……かわいそうですか?」
「……いや、これっぽちも。
こんなやつら生かしておいてもしょうがないですから」
「ハハハ……手厳しいですね。
でもこういう人たちが我が社の商品を買っていくんですよ」
「そうですね……」
慎吾は死んだような目で男たちを見ていた。
「さて、トラックに乗りましょう」
「…うっす」
慎吾とスケルタルセールスはトラックに乗り込んだ。
運転はスケルタルセールスで、安全運転している。
「ラジオでも聞きましょうか」
スケルタルセールスはつまみを回す。
慎吾は肘をつき考え事をする。
こんなやつらは生かしておいてもしょうがない。
それは元の世界にいたころから思っていた。
だからこの男たちを間接的にでも殺してしまうこの仕事は嫌ではない。
だが、自分は狂ってきているんじゃないかと思う。
元の世界ではイライラしてもどこかでブレーキがかかっていた。
だから今までだったら殺すとまではいかないだろう。
しかし今は殺すことに躊躇いがなくなってきている。
悪い奴らだから?
この世界が苛酷だから?
生きるために仕方なく?
そんなわけない。
少なくとも集は変わってなかった。
転移した場所が違うこともあるかもしれないが、集もそれなりに苦労したはずだ。
今回もボロボロになるまで戦っていたみたいだし。
……集は優しすぎる。
あんなにボロボロになるまで戦っておいてなんでこいつらを殺さなかった?
罪を犯した奴らはその時は反省しても、また犯罪に手を染める。
そのくらいわかるはずだ。
知り合ったのは高校からだが集のことはよく知っている。
あいつは誰でも仲良しになれると思っている節がある。
そこがいいところでもあり、悪いところでもあるんだが……。
……いつか集はその優しさから傷つくときが来るだろう。
でも、あいつには人を殺してほしくない。
俺は元の世界に戻りたいって言ったけど、仕事でもう何人か殺した。
こんなんじゃ戻れないよな……。
だからせめて俺以外のやつらにはこんなことせずに無事に戻ってほしい。
ラジオがノイズ交じりに聞こえる。
トラックには会話はなく静かに進んでいく。
「慎吾さん、着きましたよ」
「…はい」
トラックはBPの近くにある店の前で止まる。
店の看板にはanimaiteなどと書いてある。
トラックから降りると男たちのうちの6人を降ろす。
「…待っていたぞ。
それでそこの男たちを売ってくれるのか?」
〈器の魔人アーク〉がスケルタルセールス達に言う。
「はい、毎度ありがとうございます。
6人でよろしかったでしょうか?」
スケルタルセールスがペコペコしながら言う。
「ああ、金は会社の方に送っておいたぞ。
私の研究も捗りそうだ……ククク。
私は研究があるのでこれで失礼させてもらおう。
じゃあな」
アークはそういってさっさと店の中に戻っていった。
「み、店に送ったですって……!」
「スケさん頑張ってください。
それじゃあ次行きましょう」
青ざめたスケルタルセールスと共にトラックに戻っていった。
エンジンをかけたころ、男たちの悲鳴が聞こえてきたが無視して発進する。
集もみんなも俺がこんなことしてるとは思ってないんだろうな……。
次の相手は〈野蛮の魔人バルバルス〉だった。
「この男たちか……。
もっと殺し甲斐のある奴がいいのだがな」
「申し訳ありません。
ですがなかなかによく叫びますよ、彼らは」
「そうか、金は会社の方に送っておいたぞ」
「か、会社に……また……」
スケルタルセールスが膝をつく。
「お、おい。
助けてくれよ、同じ人間だろ? なあ」
男の一人が情けない顔をして慎吾に縋りつく。
「知りません。
さっさと歩いてください」
そんなに死にたくないなら始めから悪事を働かなければいいのに……。
慎吾はそう思いながら男をバルバルスの前まで歩かせる。
「クハハハハ……情けない顔をするのだな。
だが心配するな。
今に美しく死を迎えることになる。
どのような生物でも苦しみにのたうつ瞬間だけは美しいものだ。」
「ひ、ヒィッ!」
バルバロスは男の一人の足を踏みつける。
「がっ!」
バキッ! と骨の折れる音がするがバルバルスはさらに強く踏む。
「ククク…」
さらにバルバルスは爪で男の目を切りつける。
「ぐぁぁああっ!
目がああああああ!」
男は目を押さえ悶える。
それからバルバルスは死なない程度に骨を折っていく。
視力を奪われ、見えないところから来る暴力に怯えながら男は悲鳴を上げ続ける。
そしてバルバルスは最後に前足を大きく上げ、一気に振り下ろした。
「た、助けてくれえええええっ、ぐばああっ!」
男の体が無残に飛び散る。
「クカカカ、活きの良い贄が手に入ったぞ!今宵は退屈せずにすみそうだ!
今回は多めに金を払っておいてやる」
「あ、ありがとうございます!」
スケルタルセールスが大きくお辞儀をする。
男たちはこれから来る暴力にガタガタと震えるしかない。
「では慎吾さん、行きましょうか」
「了解ッス」
男が四散するところを見ても慎吾には罪悪感やかわいそうという感情は湧かなかった。
やはり自分は壊れ始めているんだなと慎吾は思う。
トラックに乗り込みながら慎吾は共に転移した友達のことを思った。
せめて汚れるのは自分だけで済むようにと。
あれー?
もっと明るい職場のはずなんだけどなー(棒)
なんか暗くなっちゃいました。