Z/Xの世界で生き延びる!   作:よーと

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 力を入れたところ:食レポ
 しかし拙い。


58話「護ります 命に代えても」

 「どれくらいで着くんだ?」

 「ここからならほんの10分程度で着くわ」

 「へー……そういえば気になってたんだけど、俺のことどうやって知ったの?」

 

 そう、気になっていたんだ。俺は自分の武勇伝を聞かせて回るような趣味はしてないし目立つ方でもないはずなのになんで知ることができたのか。しかも俺以外にも知ってるみたいだったし。

 

 「あなたも組織の一員になったことだし、もう教えてあげてもいいか。

  スキエンティアってディアボロスに聞いたのよ」

 「スキエンティアか……なるほど。

  対価に何を払ったんだ?」

 

 スキエンティアといえば大和が情報屋として使っているゼクスだ。

 確か情報を教える代わりに他の情報を提供しないとダメだったはずだ。

 

 「対価として何か情報を渡さないとダメらしいから、カードデバイスをくれた女の子のことを教えたわ。

  あとバトルヒーローとか青の世界のこともちょっと」

 

 カードデバイスくれた女の子って巫女さんだろ?

 組織設立のきっかけともいえる人の情報を売るなんて……まあ、滅多なことでは死なないだろうし、そもそも巫女さんの情報なんてあげても役に立たないだろうからいいか。

 それからしばらくこれから組織として何をするか話しながら歩いた。

 

 

 

 

 

 「ついたわ」

 「……え? ここ?」

 

 歩いていると突然そう言われた。

 アリスがそういって入っていったのは道場だった。

 

 「そういえば言ってなかったわね。

  私のお母さんはお花の先生、お父さんは日本文化の研究と趣味で道場を経営してるわ。

  道場にはお父さんを呼びに行くだけだから、話し合いは隣の家でするわ。

  ついてきて」

 

 外人だって聞いたからまさか道場を経営してるなんて思わなかった。

 アリスはどんどん進んでいく。

 中に入るとアリスと同じ金髪碧眼の男性がいた。

 稽古が終わったのか他には誰もいない。

 もう夕方だしな。

 竹刀が置いてあるから剣道の道場か。

 

 「お父さーん、いる?」

 「アリスか、どうした?

  ん、そこにいるのは?」

 「あ、どうも。荒川集といいます」

 

 アリスパパに睨まれたので挨拶する。

 今まで気づいてなかった感じだな。

 

 「オーケルマン・ラウノだ。

  それで何の用だ?」

 「今日話したいことがあるの」

 「話したいこと?」

 「うん、大切なことだから断っておこうと思って」

 

 胴着姿だからか威厳がある。

 

 「……そういうことか、私もアリシアと交際し始めたのもこのくらいの……。

  わかった、シャワーを浴びたらすぐに行こう。

  家で待っていてくれ」

 

 「わかったわ」

 

 最初の方は俯いて小声だったので聞こえなかったが、すぐに顔を上げた。

 そして俺をチラッと睨みながらどこかへ行った。

 シャワーを浴びに行ったんだな。

 なんか勘違いされてる気がするけど、何とかなるでしょ。

 

 

 

 

 家に行くとアリスママが出迎えてくれた。

 

 「まあ、アリスもついに彼氏を連れてくるような歳になったのね」

 「お母さん違うって、私がこんなのと付き合うわけがないじゃない」

 「……こんなので悪かったな」

 「照れなくてもいいじゃないアリス。

  お父さんと話し合いしてたら晩御飯が冷めちゃうわ。

  食べてからゆっくり話し合いなさい」

 

 そういって台所に戻っていくアリスママ。

 

 「そういうわけだから食べていきなさい。

  お母さんの作る料理はおいしいんだから」

 

 

 

 

 そんなわけで夕飯をごちそうになっているわけなんだけど、すまん。舐めてた。

 出てきたのは和食だったんだ。

 だから外人が作った和食なんて……とか思っていたんだけど、これがめちゃくちゃうまい。

 

 ※ここから集の拙い食レポが始まります。

 

 まず肉じゃが。今は6月。つまり今が旬のじゃがいもと玉ねぎを使った料理である。

 新じゃが、新玉ねぎ、人参、さやいんげん、豚肉、糸こんにゃくが入っていて甘めに仕上げている。

 具は一口大に切ってあり食べやすく、煮崩れせずにホクホクに仕上がっている。

 俺が肉じゃがが好きなことや旬の野菜を使っていることを考えてもおいしい。

 豚肉の方が旨みが出てじゃがいもの甘みが味わえる。

 ご飯がすすむ。

 アリスパパが俺を睨んでいる気がするけど、食べているうちに忘れた。

 次に焼き茄子。これも旬の野菜だ。皮を剥かれ食べやすくカットしてある。

 おろし生姜を添え鰹節をのせる。器に盛り醤油を回しかけて食べる。

 俺は昔から茄子のむにむにした変なやわらかさが嫌いだったんだが、集落で暮らしたおかげか食べられる。

 いや、作り方がいいのか俺でもおいしく食べられる。

 次は俺の好物で前に作った時は味見が止まらず、味見だけで全部食べてしまったことのあるほうれん草の胡麻和え。

 これは粗く擂ったスリゴマがいい。ものすごくいい。マジでうまい。これは真っ先に食べ終わってしまった。

 最後に長ネギと豆腐の味噌汁。味噌汁といったら長ネギに豆腐か、わかめだと思ってる。なめこも捨てがたいがやはり好きなのは長ネギだな。長ねぎは1cm幅くらいの斜め切りに、豆腐は絹ごし豆腐で2cm角に切ってある。うん、理想の形だ。絹ごし豆腐もいいけど木綿豆腐もおいしいんだよな。長ねぎの甘さとツルンとする豆腐がいい組み合わせだ。

 と、ご飯がなくなってしまった。おかわり貰おう。

 アリスパパは相変わらず俺を睨んでいるけど気にしない。というか食べてると気にならなくなる。食の前では恐怖などなくなるのだ。

 

 

 

 「ごちそうさまでした」

 「お粗末様でした」

 

 ふう、満足した。

 腹八分といわず満腹になるまで食べてしまった。

 

 「どう? お母さんの料理はおいしかったでしょ」

 「ああ、めちゃくちゃうまかった」

 「でしょ! なんたって……」

 「ゴホン!」

 

 ラウノさんがわざとらしく咳払いし、険しい顔で俺たちを見る。

 

 「アリス、私に話があるんじゃなかったのか」

 「あ、そうだった。

  お父さん、言ってなかったけど私この町を出ようと思ってるの」

 「……何故? やはりその男が……」

 「集は関係ないわ。私、カードデバイスを手に入れたの。だから困ってる人を助けられるようなことがしたいの」

  

 ラウノさんは少し安心したような顔をしたがすぐに真面目な顔になる。

 よかった。物語のように勘違いから決闘とかにはならなかった。

 

 「助けるだけならカードデバイスなんぞに頼らんでも何かできるだろう。

  それにここにはバトルヒーローのような町を護る奴らもいる。

  アリスがそんなことしなくてもいい」

 「でもここはよくても他の場所はゼクスに苦しんでる人がいるはずよ。そしてゼクスに対抗するにはゼクスを使って戦うしかない。私はその力を手に入れたの。守れる人が守らないのは間違ってると思う」

 

 守れる人は守らないといけない。

 俺はよく小説とか読む方だったからこの考え方にはちょっと考えてしまう。

 たとえ力があっても守る義務はない。しかし守れるのに守らないのは人間としてどうなのかとか考える。

 これは人によってはエゴと受け取られるかもしれないがアリスは真面目だ。

 

 「それにまなかと基樹もカードデバイスを持ってるわ。そして隣にいる集も。この4人で人助けをしていきたいの」

 「そうか……アリスは私に似て正義感が強いからな。私もカードデバイスを手に入れていたら同じように思うだろう。しかし、認めるわけにはいかない。私たちはお前を戦ってもらうために育てたんじゃない。それにいくらゼクス使いが4人いたところで所詮は子どもの集まりだ。最初はよくてもいずれ危険な目にあうだろう」

 「大丈夫よ、だってそのために集をスカウトしたんですもの。

  集は関東で有名な悪党ゼクス使いを撃退したんだから。ちょっとやそっとで死んだりしないわ」

 「そうだとしてもだ。絶対に守り切れるという保証がどこにある。それにいつまで続けるつもりだ? 仮にお前たちの活躍で日本の政府機関が回復したらお前のことだ、次は世界を救うというんだろう。危険すぎる。それがわかっていて見過ごすようなことはできない」

 

 もっともだ。だがアリスはそれでも退かないんだろう。

 

 「それを言うなら私だって救う力があるのに見過ごすことなんかできないわ!」

 「…うーむ」

 

 ラウノさんが唸る。

 生まれてからずっと一緒にいたからお互いのことはよく知っているはずだ。

 アリスの意思は強く退くつもりがないことは知っている。

 どうやって諦めさせるか悩んでいるんだろう。

 そこにアリシアさんが真剣な顔で入ってきた。

 

 「あなた、こうなったら何を言っても無駄ってことは知ってるでしょ? あなたとアリスは似てるんだから。私と駆け落ちするときもそうだったし、その血を継いでるアリスもそう。

  アリス。あなたのことだから反対しても最終的には家を飛び出してもやるんでしょうね……。だから私は反対しないわ。でもね、できれば行ってほしくないの。どうしても行きたいならお父さんを納得させてからにしなさい」

 「…わかったわ」

 「あなたも。アリスもいつまでも子供じゃないんだし、いつか離れていってしまうことくらいわかっていたはずでしょう? 今回は事情が違うかもしれないけどアリスの気持ちがわからないあなたでもないはず。真剣に受け止めてあげて」

 「……そうだな」

 

 娘の気持ちがわからないでもないんだろう。本気で悩んでいる。止められないことも知っているし、その覚悟もしていたんだろう。しかし一方で娘を危険な目にあわせたくないと思っている。

 

 「……集君だったな。君は娘を護れるか」

 「護りたいと思ってます」

 

 護れるなら護っていきたいと思っている。

 しかし、ラウノさんの顔は険しいままだ。

 

 「気持ちではない、護れるかと聞いてるんだ。危険が迫った時、どんな状況でも誰よりも先に、たとえ自分を犠牲にしてもアリスを護れるかと聞いている」

 

 ラウノさんは俺の目をじっと見つめる。

 それは鬼気迫るものがある。

 こういう時かっこよく決められたらいいんだがこういう状況になれていない。

 俺はアリスを護れるだろうか……。どんな時でも、俺が傷ついても護れるか……。

 気持ちでは護るつもりだ。だが本当に護れるのか、目を見てると簡単には言えない。

 だが、言わないとダメだろう。

 チラとアリスを見る。

 不安そうな顔だ。だが期待もしている目をしている。

 何人も調べたうえで俺をスカウトしたってことは期待してるってことだ。それに俺が断ればダメになるこの場面があることは分かっていたはずだ。なのに俺を連れて来たってことは俺を信頼してるってことなんだろう。なら俺も期待に応えないとな。

 

 「護ります。命に代えても」

 「……娘を頼んだ」

 

 ラウノさんは頭を下げる。

 命に代えてもは重かったかなー、と思ったが大丈夫だったらしい。

 

 「お父さん、ありがとう。私、絶対無事に帰ってくるから」

 

 アリスの目には涙が浮かんでいる。

 

 「出発は明日だし、俺はこれくらいで御暇して家族3人水入らず過ごしたらいい。明日の朝迎えに来る」

 「ええ、わかったわ」

 

 すでに涙声だ。

 出発は明日なのに大丈夫なんだろうか。

 まあ、今日はゆっくり話して一家団欒して明日に備えてもらえればいい。

 もう夜だし、俺も戻って準備しないとな。




 アリスママの名前を知っているのは途中で自己紹介したからってことで。
 あ、2章で出た謎の女はスキエンティアです。
 この章、バトルシーンはなくなるかも。
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