『報酬はちゃんと出すからさ、よろしく』そう言って俺を送りだした伊吹からの依頼は『幽霊退治』だった。
なんでも最近、梅雨に入ってから夜な夜なぼんやりとした影が町を彷徨っているらしい。で、学生を中心に噂になっているらしく伊吹の耳にも入ったと。
曰く、人を襲う。
曰く、学校に現れる。
曰く、一人より数人の方が襲われやすい。
曰く、雨の日に出る。
曰く、黒髪長髪の綺麗な少女の霊。
曰く…………。
噂は絶えないが町や学校で聞きこみをしたところ、実際に幽霊が現れたのはなんと1年前。最初は目撃情報だけで人を襲うことはなかったらしいが、2,3ヶ月前から人を襲うようになったらしい。ただ、襲うといってもホラー映画のように人殺ししたりするのではなく、「寂しい……寂しい……」とうわごとのように繰り返し近づいてくるのだとか。
で、なぜ伊吹が俺に頼んだかというと幽霊、しいてはオカルト全般が苦手だからだ。
伊吹もこの事件を白の世界から依頼されたが断ったらしい。なぜ白の世界が依頼したかというと、幽霊とは実体がない、ならばエンジェルが悪ふざけでやっているのではないか? という噂が広まりつつあるからだ。脅かすだけで直接的な被害を出していないところも噂を助長させているらしい。
さて、そんなわけで俺は一人で聞きこみ調査をしていた。全員で行くことを主張したが、まだ夜になっていないことや気の合う友人ができたことで拒否された。本人達は夜になったら合流するとのことだがどうなんだか……。
「小腹も減ったし、少し休むか……」
調査のために結構な距離を歩いたので疲れてしまった。ちょうどいいところにカフェ見えたのでここで休もう。カフェの名前は……『Broccolo』か。……どこかで聞いたことのある名前だが思い出せないな。とりあえず入ろう。
「いらっしゃいませー」
「……あっ!」
目の前に飛鳥がいた。そうか思い出した、ここはアニメで飛鳥が働いていた店じゃんか。
「ん、どないかした?」
「あ、いや、なんでもないです」
「そうですか、ではこちらの席どうぞ―」
まさかカフェで会うとは思わなかった……。
注文済ませてこれからのことまとめるか。
なぜか知らないけどアニメで押してたカレーでも食べるか。
さて、カレーが届く間に幽霊と飛鳥のことについて考えておこう。
幽霊は被害が少ないから、すぐに見つけなくてもいいらしいから夜の見回りだけでいいとして、問題は飛鳥だな。今すぐ友達になってもいいが、飛鳥と綾瀬が戦うときに俺はどちらの味方をするのか……。仲良くなっても知らぬ存ぜぬを突き通してもいいが、俺がゼクス使いなのは学校から知られるだろうし、事務所は教会から近い。何かあったら学校から出動命令が出るだろう。うーむ、難しいな。そしてそれを乗り越えても飛鳥と仲良くなりすぎるのにはデメリットもありそう……というかこれが一番嫌なんだけど、巻き込まれ系残念イケメン主人公とか嫌な予感しかしねぇんだよッ! やはり知り合うタイミングが重要だな。
「カレーお持ちしました」
「あ、どう……も……!?」
「……どうかしましたか?」
「あ、いえ、なんでもないです」
アイナダヨー。
そんな言葉が脳内再生される。
カレーを運んできたのは
「では失礼します」
アイナダヨー、もとい藍那ちゃんは厨房に戻っていく。
あ……ああ……なんてこった。さらにめんどくさそうなのがここにいるじゃないか……。この世界での藍那ちゃんが今後にどう作用するかは知らんが、絶対にめんどくさくなるだろう。まず、彼女は珍しく『人間にはモテないが、ゼクスにはモテる』という特殊体質の飛鳥に惚れている人間だ。まあアニメではオディウムに取りつかれるから飛鳥の謎体質は健在といってもいいのだが、問題は飛鳥とフィエリテがパートナーになる時や綾瀬との戦闘時。さらに言うと飛鳥がゼクスと接触することで藍那ちゃんのゼクスに対する恐れや憎しみが加速することでオディウムになることだ。あの時は軍師や世羅、ちーちゃんとあづみ、飛鳥、綾瀬がいたからなんとかなったものの、今回はフィエリテとの出会いまであと2ヶ月、早ければ梅雨明けすぐにでも起きるだろう。それまでにアニメと同じく多数の主人公を集まる状況を作り出すのは困難だ。
何も無理して止めなくても飛鳥達なら何とかなる、と思ってたら大間違いだ! もし飛鳥がオディウムを倒すなり藍那ちゃんのゼクス嫌いを克服させたりさせてみろ、飛鳥が綾瀬や藍那ちゃんとの距離がグッと縮まる。そうなった場合、ヒロイックサーガ等の大きな節目でめんどくさそうなことが起きるに違いない。具体的に言うと、藍那ちゃんが『第一次乙女大戦』に参加したりだとか、綾瀬とくっついて未来が白の世界に確定しそうじゃないか! 実に面倒だ。
こりゃ幽霊探しの前に藍那ちゃんの周りをうろつくディアボロス退治に出ないといけないかもしれないな……。
俺は店を出た後も幽霊やディアボロスについて聞き込みしていた。が、情けないことに迷子だ。こっちに来て間もないし、聞き込みに集中しすぎて山の方まで来てしまった。しかも梅雨時だからだろうか、雨が降り始めた。はあ、傘とか持ってきてないんだよな。ちょうどいいとこに神社があったからここで雨宿りさせてもらおう。たぶんここはアニメで元日に来ていた神社だろう。アニメとか遠い記憶だが、なんとなくこんな感じの見た目だった気がする。
シトシト降る雨はしばらく止みそうにない。梅雨の雨ってなかなか止まないから困る。疲れたし、しばらく寝てようか。
今は午後6時だから、アラームを2時間後に設定すればちょうどよく幽霊探しの時間になるだろ。床はもちろん布団ではないので寝づらいが、俺はどこでも寝れるので大丈夫だ。ああ……横になったら眠気が……。
「ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!」
「……ん……ぁあ……」
ちょうどメイラルのおっぱいをもみしだこうとする直前でアラームが鳴った。くそっ! もう少しで届いたのにッ!
どうでもいいことだが、俺はメイラルが好きなのだ。巫女服とか、胸の形に合わせたアーマーとか、アーマーの隙間から覗くおへそとか大好きなのだ。月下香のおへそもなかなかいいが……っと、こんなこと考えている場合じゃない、幽霊探しに行かないと。ああ、瞼を開けるのダルいなぁ……。
「あ、起きました?」
「うおッ! だ、誰?」
瞼を開けたら、とても綺麗な少女が俺の顔を見ていた。目を開けたら真上に女の子の顔があったんだもの、そりゃ驚く。俺の言い方からわかる通り、綺麗な女の子だ。いつもだったら『めっちゃ』とか使うけど『とても』と使ったのは品のある少女だったからだ。黒く長い髪は夜空が透けて見えるかのようにキラキラと光っていて、少し幸薄そうだが目はぱっちりとしていて大きい。綺麗というより、美しいと言った方がいい感じの女の子だった。
「あ、失礼しました。私は
「そうなんですか、俺は荒川集といいます。心配してくれてありがとうございます。……よっこいしょ。俺はこれから町に行くんですけど、幸さんはどうするんですか? もしよかったら送っていきますよ?」
「ありがとうございます。でも、まだ帰る時間じゃないんです。よろしければ私も集さんについて行ってもよろしいでしょうか?」
「そういうことならいいですよ。では行きましょうか」
「はい」
やったぜ! なんか知らないけど美人さんと一緒に町に行くことになったぞ。
カツカツカツ……。
おっと、少し緊張してるのか早足になってしまった。幸さんの足音も聞こえないしこういう時は男が気を使うもんだろ。
「すみません幸さん、早かった……です……よ…ね?」
後ろを振り向くとちゃんと幸さんはついてきていた。
が、足がなかった。
性格には透けていた。
「いえ、大丈夫です。集さんこそ大丈夫ですか? 顔色が悪いようですけど……」
「ひっ!」
幸さんが俺に近づいてくる。思わず情けない声が出てしまった。
今日聞き込みしたキーワードが俺の脳で再生される。
『黒髪』『長髪』『雨の日』『綺麗な少女』
もし幸さんが幽霊なら、さっき髪がキラキラ光っていたは星が透けて見えたからだろう。俺を見ていたのも襲うためなのかもしれない。
俺は今までの幸さんの行動や聞き込みのキーワードで確信した。
『幸さんは幽霊だ』と。
「……集さんもそんな反応するんですね……。あなたなら友達になってくれると思ったのに……。もう寂しい思いしなくていいと思ったのに……」
そう言われた瞬間、俺は全力でその場から逃げた。
メイラルの形のいいおっぱいとかへそとか大好きです。