瞬火さんがなんか急に語りだした。
か昔。の、この地方で。ある赤ん坊が産声を上げた。ある伝承が産声を上げた。
他の子供がまだ母親の腕に抱かれている頃、その赤ん坊は、既に自立して歩行し始めていたという。その後も、他の子供とは段違いのペースで成長していくその子供に、周りの人の目が集まった。伝承では三歳ですでに周りの者を率い、戦に出ていたとあるが、それはきっと伝承故の誇張だろう。しかし、そんな誇張が生まれるほど、彼の成長は異常だった。村も、ゆくゆくは彼をリーダーにしようと動き始める。
が、その翌年、年にしてたったの四歳で、彼はこの世を去る。
一部の人間の妬みか、それとも単純に重い病気だったか。その詳細は、伝承の最重要人物の最期だというのに、どの資料にも記されてはいない。その点だけでも奇妙ではあるが、この伝承のクライマックスは、彼が亡くなってからにある。
彼の葬儀を終えた村で、辻斬りが起きたのだ。被害者の数は五百。小さな村だったため、村事態が壊滅の危機に陥ったほどだった。
しかし、その辻斬りは、死んだ赤ん坊の父親が、死刑に処されるという形で幕を閉じている。
資料には、その父親が村長を襲っていたところを、村人が数人がかりで取り押さえたとある。やがて村長は死んだが、その遺体には、死に至る傷跡は、一切見つからなかったとか。さらに、父親が何かに憑かれたように狂っていたことや、持っていた刀が血を吸っていたなどという記述もあるが、比較的に新しい資料なため、こちらはあまり信じていい情報ではないだろう。しかし、それほどまでに異様で、その伝承のもとになった刀が―――――
「君の刀。つまりは朱肚というらしいんだけどねぇ。」
瞬火さんが楽しそうにこちらを見る。
「えっと、瞬火さん。マンガお好きなんですか?」
「だから、伝承だって言ってるじゃん。」
「いや、何か言い方とか、空気からとか、なんて言うか、その――――――。」
言いたいんだけど、流石に言えない・・・。
「痛いって言いたいんだね?」
察しが早い先輩だ。とても助かる。
「えぇ。はい。すみません。」
「まぁ、君が思うのも仕方がないよ?実際、どっかの伝承かと思って調査してたら誰かさんのノートの内容が流失してただけだったりするし。」
御影がびくっと体を震わせた気がした。いや、気がしただけだろう。
「逆もあるさ。なんかすごい痛くて、理不尽で、都合がよくて・・・、英雄を立たせるための神話とかね。」
「外国からわたってきたものとか、結構な尾ひれがつきますよね。伝説自体、段々と痛々しくなっていくのは仕方ないんじゃないですか。」
こちらを振り向いて御影が言う。が、その顔は、かなりひきつっており、浮かべた愛想笑いもどこかぎこちない。」
「御影。」
「なんでしょう?」
「自分を正当化したって、なんにもならないぞ。」
別に決めていたわけではないものの、一週飛ばしてしまいました。・・・まだ第一章だというのに!
まぁ、時間&やる気のある時はバンバン更新していきたいと思うのでこれからもご愛読していただければ幸いです。