ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

青年期スタートですっ!

では、本編どうぞっ!



青年期・前半【大神殿】
第九十九話 そして十年後


 

 かくして父を失ったアベルは、ヘンリー王子と共に何処ともわからぬ所に運ばれていた。

 

 

 “お前の母さんはまだ生きているはず……。わしに代わって母さんを”

 

 

 アベルは知っていたが、父から母の捜索を託されたことに自分の運命を呪う。

 

 

 ああ…………、そっか。

 また(・・)……始まるんだ。

 

 

 父さんを失い、唯一の“初めて(アリア)”まで、失って……。

 

 

 結局何も変わらなかったなんて、

 

 

 

 

 最悪だ……。

 

 

 

 

 ――……アベルを待ち受けていたのは過酷な奴隷の日々であった。

 

 そして十年の月日が流れた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――十年後の、世界の何処か。

 

 山の頂だということだけはわかっていた。

 山を切り開き、【大神殿】を建てているのだと知ったのはここに連れて来られ、労働を始めて何年目のことだっただろうか。

 

 辺りは岩と土だらけ、アベル達以外にも奴隷服(ボロ)を身に付けたたくさんの奴隷達が労役を余儀なくされていた。

 

 人力で回す回し車に、人力で持ち上げる大きな吊りカゴ。大岩を砕き、岩や土を掘る者に、掘り出したそれらを運ぶ者。

 その全てを奴隷達で賄おうということで、たくさんの人間達がここに連れて来られたようだった。

 

 毎日見張りの魔物に鞭で叩かれながら、したくもない労働を日々こなす。

 

 標高が高い場所なのか、酸素が薄く無駄に反抗すると酸欠に陥るし、この場所の位置が特定できないから逃げようにも逃げられない。

 建設途中の神殿から下界を一望すると、雲の合間に微かに海が見える時もあるが、基本的に雲以外は何も見えなかった。

 山の下に雲があるということは、相当な高さに位置しているわけである。

 

 アベルは、何度かここからの脱出をイメージトレーニングしてみてはいるが、この場所がどこなのかさえわからない為にいつもイメトレしては途中で頓挫している。

 

 

 今日も大きな岩を運びながら、どうやって脱出するかな……。と、すっかり慣れた作業をこなしながら頭の中であれこれ考えていた。

 

 

「こらー! 何をしているっ! さっさと岩を運ばんかっ!」

 

 

 ピシッ、ピシッと、見張りのぽっちゃり丸い身体、紫と白のツートンカラーの服と帽子に、黄緑色のネクタイといった一見お洒落な格好の鞭を持った魔物、【ムチおとこ】が鞭を振り上げ奴隷服姿のアベルに叩きつけて来る。

 

 

「ぅ、っ……はぁ…………」

 

 

 痛いけど、叩かれるのも慣れて来たなぁ……。

 これが、アリアやビアンカからだったなら良かったのに……。

 

 

 アベルは大きな岩を運びながら眉を顰めるが、良からぬ考えがふと浮かんで頬を赤らめた。

 

 

「なっ、何を赤くなっているっ!!??」

 

 

 ピシッ、ピシッと【ムチおとこ】は慌てて鞭を振るった。

 

 

「……っ、いった……」

 

「オレにその気は、な、ないんだからなっ!! 勘違いするなよなっ!!」

 

 

 アベルがまたも眉を顰めると、【ムチおとこ】はちょっぴり切なそうな目をアベルに向け「イイ男……」とぼそっと呟く。

 

 

「っ! は、運んできます……!!」

 

 

 背中にゾワゾワとした何かが這った気がして、アベルはすぐさま大岩を転がし、岩の集積場まで向かった。

 背中に【ムチおとこ】の熱い視線が刺さるが、無視した。

 

 

「ほらほら、休んでいないで次の岩を持ってこないとまたムチでぶたれるぞ」

 

 

 アベルが持って運んで来た岩を、マスクを被った集積係の男に渡すと注意される。

 少し離れた場所で「働け! 働け! 働けば幸せが待ってるぞ!」という【ムチおとこ】の発破を掛ける声と、鞭が地面を弾く音が聞こえた。

 

 

「……ムチで打たれるのも慣れたけどね」

 

「……お、お前……正気か?」

 

 

 アベルが苦笑すると、マスク男は呆れていた。

 

 

「……次を取って来るよ」

 

「ああ、そうしてくれ」

 

 

 アベルは集積場を後にし、次の岩を取りに向かった。

 途中でアベルと同じように岩を運ぶ人が二人、集積場に向かって来るので声を掛けてみる。

 

 

「大丈夫ですか? 僕が代わりましょうか?」

 

「うう……。一体どれだけ岩を運べば休めるんだ……」

 

 

 一人目は疲れているのか、目が虚ろでアベルの声掛けにも気付かずに岩を運んで行ってしまった。

 

 

「……大丈夫かな……、あ、大丈夫ですか?」

 

 

 一人目を見送り、二人目の奴隷にも声を掛ける。

 二人目も随分と辛そうで、足元をフラフラさせながら岩を運んでいた。

 

 

「はあはあ。邪魔をしないで下さい。ムチで打たれたくないんです」

 

「……僕は慣れましたけど……」

 

「…………っ、あなたと一緒にしないで下さい……」

 

 

 ジロリと睨まれてしまった。

 

 

 アベルは仕方なく二人目の人物も見送る。

 ふと、アベルはこのまま次の岩を取りに行くのが面倒臭くなりサボることにした。

 

 

 僕にとってここは、慣れた場所なんだよな……。

 

 

 アベルは【ムチおとこ】の目を掻い潜り、ここに来たのは何度目だっけなぁ、と数えようとするが、回数が多過ぎて数えられなかった。

 適当にサボっても鞭で叩かれるだけで、殺されたりはしないことをアベルは知っている。

 

 

 この地へ運ばれた時、また(・・)、あの感覚が襲って来たのだった。

 

 

 何十、何百、何千……、いやそれ以上。

 アベルはもう、何度も奴隷としてここに来ている。

 

 

 都合の良いことに、奴隷としての日々しか今の所降りて来ていないから、この先どうなるのかはわからないが、成長するにつれ、相変わらず使い物にならないこの感覚と折り合いをつけて暮らしていた。

 

 

 アベルは持ち場を離れ、外の空気でも吸おうと階段へと向かう。

 階段を上がって行けば外気に当たれる。

 特にこのフロアは切り出した土や岩ばかりで埃っぽく、空気が汚れているので新鮮な空気が吸いたい。

 

 深呼吸がしたかった。

 

 

「私は水くみ女よ。ステキなドレイさん。水を一杯いかが?」

 

「あ、貰えますか」

 

「はい、どうぞ。のどが渇いた時は私に言ってね」

 

 

 外階段へと続く通路の坂の手前、そこに立っている薄汚れた女性に声を掛けられ、素直に貰うと女性がにっこりと微笑む。

 黒く汚れた顔でも女性の笑顔は可愛くて、アベルも釣られて「ありがとう」とはにかんだ。

 

 その様子に女性は嬉しそうに「いつでもどうぞ」と手を振って、坂を上るアベルを見送ってくれた。

 

 この女性にはよく水を貰うので、すっかり顔馴染みなのだが、余計なことを話していると【ムチおとこ】が邪魔しに来るので親密にはなれていない。

 

 

 ここが少し不満なところだな……。

 

 もう少しいろんな人と話せたら、脱出に役立つ情報も聞けるかもしれないのに……。

 

 

 歩き回る分には多少寛容だが、他の奴隷達との私語は許さない【ムチおとこ】達は中々優秀な見張りなのかもしれない。

 

 

 毎日の過重労働の所為で、作業を終えるとクタクタで他の奴隷達と会話するのもままならない日々。

 

 アベルは他の人より体力があるので話したいと思う時もあるのだが、他の奴隷達は疲れ果て夜は泥のように眠っており、昼間は監視の下の強制労働。

 中々他の奴隷達との情報交換は進んでいない状況だった。

 

 時折こうして労働から抜け出し、サボるのが今のアベルの日常である。

 見つかると折檻されるのだが、今のアベルにはどうということはないらしい。

 

 

 何か良い脱出方法はないかな……。

 

 

 アベルはそんなことを考えながら外気に触れたくて階段を上っていった。

 




突然のアベルM男説www
目覚めつつあるのかな(何に)。

いや、せっかく青年期に入ったというのになんかすみません……。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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