ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

105 / 828
いつもありがとうございます、はすみくです。

恋バナです。年頃ですもの。

では、本編どうぞっ。



第百四話 男子の恋バナ

◇

 

 

 

「……ん……。ぅ……」

 

 

 アベルは長い夢から覚める。

 いつもならアリアが夢に出てくると寝覚めが悪く気分が重いのに、今日は何だか気持ちが好い。

 もう彼女が夢に出て来たとしても、自分を責めたりしない気がする。

 

 ひょっとしたら夢の中のアリアは、自分の作り出した幻影だったんじゃないか。

 アベルはそんな気がしたのだった。

 

 

 そもそも、彼女は僕を責めたりはしないんだ……。

 

 

 

 

『え……? 何でアベルが謝るの……?』

 

 

『謝らなくていいよ。……アベルの所為じゃないでしょ?』

 

 

 

 

 不意に十年前、古代の遺跡で再会した際にアリアに云われた言葉をアベルは思い出す。

 

 

 あの時、僕は未来に気付けなかったことをアリアに詫びた。

 けれど、彼女は僕の所為じゃないって云ってくれていたんだ。

 

 ロープで拘束してまで置いて行ったのに、どうやって解いたのか自らやって来て父さんを護ってくれた。

 結果的に、二人とも死んでしまったけれど……。

 

 

 

 

 

 

 “アリアと居ると楽しくて、離れたくなくて”

 

 

 っていうのは建前で、

 

 

 “未来を変えるために、彼女を利用した”

 

 

 っていうのが、本音だった。

 

 

 自分がそんなずるい人間だと認めたくなくて。

 

 

 けれど、アリアを死なせてしまった事は事実で、アベルは夢の中で自分を罰していたのだ。

 

 

 

 

「やあ! アベル、やっと目が覚めたようだな。随分うなされてたようだけど、またムチで打たれる夢でも見たんだろ」

 

 

 アリアの事を考えていたら、ヘンリーの元気いっぱいな声が耳に響いた。

 

 

「…………うーーん……。朝から元気過ぎるよヘンリー……」

 

 

 起きたばかりでまだぼーっとするアベルの脳内にヘンリーの元気な声が木霊して、アベルは上体を起こすと胡坐を掻いて頭を抱える。

 

 

 せっかく気持ち好く目覚めたのに……。

 

 

 アベルのヘンリーを見る瞳が、ちょっぴり据わって不機嫌そうに見えた。

 

 

「しかし、お前はいつまで経っても反抗的でドレイに成り切れない奴だよなあ。その点オレなんか素直になったと自分でも思うよ。わっはっは」

 

 

 さあ、今日も張り切って働くぞー! とヘンリーは腰に手を当て笑っている。

 

 

「……ヘンリーは随分変わったもんな」

 

「もっとも、オレが素直になったのは、お前の親父さんの死が堪えたのもあるけどさ。あれから十年……。月日が経つのは早いもんだぜ」

 

「十年……、だもんなぁ……。僕らも大人になったよね」

 

 

 アベルとヘンリーは向かい合って、互いに頷き合った。

 

 

「ホントホント。アベル、お前なんかは特にそう思うだろ?」

 

「え? 特にって何が?」

 

「ほら、大人になるとさ、こう、女の子に目がいっちゃったりするだろ? お前、奴隷の女の子達に人気じゃん。水汲みの女の子、お前に気があるみたいだったぞ?」

 

「あ、ああ……」

 

 

 アベルはヘンリーの言葉の意味がわかったのか、後ろ頭を掻く。

 それくらい理解できる年頃に成長しているのである。

 

 けれども、ヘンリーには伝わらなかったようで……、

 

 

「ああって……、お前あの子の好意に気付いていないのか? ってそうか、お前昔からアリアしか目に入ってないもんな……」

 

 

 ヘンリーに“そろそろ忘れろよ”と、憐れむような目を向けられる。

 

 

「っ、そういうわけじゃ……、って、僕はアリアのこと好きだったわけじゃないんだけどっ!?」

 

「は……? そうなのか? オレが彼女に求婚した時、めっちゃ怒ってたじゃんか」

 

 

 ヘンリーは眉を顰め、何言ってんだこいつと訝しがった。

 

 

「そ、それはまだヘンリーはアリアと出会ったばっかりだったからであって……!」

 

「……………………オレ、お前は絶対アリアのこと好きだと思ってたんだけど?」

 

「……っ、……違う。違うんだよ……。僕は……」

 

 

 追及してくるヘンリーにアベルはしどろもどろになってしまう。

 

 

「……あの子可愛かったからなぁ~、性格もいいし、あの時城に戻れてたら本当に嫁にしてたかもな?」

 

「っ……」

 

 

 ヘンリーの言葉にアベルは唇を噛み締めた。

 

 

「…………。お前、やっぱまだまだお子様なのかもな」

 

「っ、な、どうして……?」

 

「ははっ、まあまあ。とにかくあれから十年だ。アリアのことはもう忘れてもいいんじゃないか?」

 

「…………、……忘れる……?」

 

 

 ヘンリーに云われて、アベルは首を傾げる。

 

 

 忘れたくても、忘れられないから困ってるんだけど……。とは言わないでおいた。

 

 

「ああ。水汲みのあの子だって結構可愛いじゃん。顔は埃だらけで真っ黒だけどさ。新しい恋でもしてみれば?」

 

「こ、恋っ!!?? 恋って何……っ!!??」

 

 

 

 

 ヘンリーのメダパニ攻撃に、アベルは混乱した。

 

 

 

 

「ははっ、おもしれー……。お前そういうの奥手だったんだ……」

 

 

 ヘンリーは乾いた笑いを浮かべる。

 

 

 アリアにあんだけグイグイいってたのは何だったんだ? あ?

 

 

 問いたかったが、アベルの顔が赤いのでやめておく。

 アベルは初恋もまだなのかと思ったが、自分もアリアが初恋だったので指摘されたら藪蛇だなと思ったのだった。

 

 

「……そういや、昨日言ってたことだけど何だ?」

 

「え、あ、うん。もう、解決した……と思う」

 

「ふーん、そっか。なら良かった。で、何だったのか言ってみ?」

 

 

 ヘンリーはアベルの力になりたくて、食い下がる。

 

 十年間、同じ釜の飯を食ベて来たアベルとヘンリーは何でも話し合える友なのだ。

 特に、ヘンリーから見たアベルは危うい時期もあったことから放ってはおけないのである。

 

 親分としては、時に子分のメンタルケアもしてやらないとな~! とヘンリーは親分風を吹かせていた。

 

 

「…………けど、そろそろ時間が」

 

「大丈夫だよ。まだ時間はあるって。ほらほら白状しちゃえよ」

 

「……じゃあ……」

 

 

 アベルは夢の中で起きた出来事をヘンリーに話したのだった。

 

 

 

◇

 

 

 

 アベルの話を聞き終えると、

 

 

「あー……、そりゃ、そうだよ……。お前の所為じゃないじゃん……」

 

「……そう、なのかな……」

 

「そもそもオレが攫われさえしなきゃ…………」

 

 

 ずううううぅぅぅぅん。

 

 

 とヘンリーは頭を抱え俯いてしまった。

 朝は比較的元気なヘンリーの顔が、アベルの話を聞いて土気色に変わる。

 

 

 アベルが自責の念で夢を見て魘されていたとは……。

 

 

「すまなかった……この通り! ってか散々殴って悪かった」

 

 

 そりゃあ、鬱にもなるだろうよと、ヘンリーは再びアベルに頭を下げたのだった。

 

 

「あ、いや、大丈夫。もう僕は大丈夫だから、気にしないでいいよ」

 

 

 アベルは両手を軽くふりふりしてヘンリーを快く許す。

 そもそも全てはゲマ達が悪いのであって、ヘンリーに怒ってはいないのだ。

 

 前の世界では苛立ったこともあったかもしれないが、何度も繰り返していれば誰が本当の悪なのかは一目瞭然なわけで……。

 

 

 ヘンリーが悪いとは思えないよ……。

 

 

 アベルはヘンリーがあまり落ち込まないといいなと思うのだった。

 




ヘンリーは性に関しては早熟だったりします。
対してアベルはちょっと奥手なんかなぁ……。

子供の頃はグイグイ来てたのにねぇ……。

って何だか奴隷生活充実してる希ガスwww

----------------------------------------------------------------------

評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。