ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

マリアさんの洗礼式です。

では、本編どぞどぞ。



第百十二話 マリアの洗礼式

 

 マリアの洗礼式にアベルとヘンリーも参加することになり、修道院の一階へとやって来た。

 

 この修道院の礼拝堂兼、講堂は吹き抜け構造で出来ており、一階には修道女達が日々神の教えを学べるように、長机が左右に設置されている。

 左右長机の向きは祭壇に向かい合うように置かれており、机と机の間の通路には古くなり赤茶けた絨毯が敷かれていて、それは修道院の出入口から二階に向かう階段手前まで真っ直ぐ延びていた。

 

 階段を上がった二階部分には祭壇が設置されており、そこではマリアの洗礼式を行う為、この施設の代表者である【マザー】が静かに洗礼式が始まるのを待っていた。

 

 左右に分かれた長机、一番前の席にそれぞれ左はアベル、右はヘンリーが着き、祭壇に続く階段の下には、見違える程美しくなった修道服姿のマリアが洗礼式の始まりを手を組み祈りながら待っている。

 マリアの隣には補佐するシスター二人が左右それぞれに立って、洗礼式の最終確認をしていた。

 

 

「…………(アリアは……)」

 

 

 アベルがチラッと、ヘンリーの後ろの席に座るアリアに視線を投げる。

 アリアはマリアの方を穏やかな顔で眺めていたが、アベルの視線に気づくと、頬を赤らめ俯いてしまった。

 

 

「っ……!!??」

 

 

 刹那、ドクンッ。と、アベルの胸が強く波打つ。

 

 

(何、その反応……!?)

 

 

 ドクドクドク、と急に鼓動が早くなり、アベルは慌てて前を向いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「それではこれより、私たちの新しい友マリアさんに、神の祝福が授けられます」

 

 

 マリアの準備が整ったのか、マリアの傍にいたシスターの一人が洗礼式開始を宣言する。

 

 

「……っ……」

 

 

 ……こっちはそれどころじゃないっていうのに……。

 

 

 アベルはもう一度こっそりアリアを窺い見ていた。

 アリアは祭壇に向かうマリアを見ているのか、今度はアベルの視線に気付かなかった。

 

 

 どきどきどき……、とアベルの胸が逸る中、マリアが階段を上り祭壇へと向かっていく。

 その様子をヘンリーが惚けたように黙って見ているのが視界の隅に入った。

 

 

 

 

 

 

 

「わが修道院へ導かれし、我らの友マリアよ。そなたに聖なる神の祝福を授けましょう」

 

 

 祭壇前に辿り着いたマリアに、マザーが厳かな雰囲気の下、凛とした顔で洗礼式を始める。

 マザーは祭壇に置かれたグラスを手に取ると、中に入ったルビー色の水を少しずつマリアに振り掛けた。

 

 ルビー色の水はマリアに触れると、キラキラと光り輝き、その輝きはマリアの身体を包み、やがて体内へと消えていく。

 

 輝きが収まると、

 

 

「……さあ、これであなたにも聖なる加護が与えられました。これからは、その美しき魂が汚されることのないよう、正しき道を学ぶのですよ。では、これで儀式を終わります。さあ皆さん、今日のお仕事に戻りましょう」

 

 

 ……無事、洗礼式を終え、マザーは漸く破顔して優しい笑みを溢すと皆に告げた。

 

 マリアもマザーに会釈して、祭壇近くで補佐をしていたシスターに連れられそのまま二階のどこかへ行ってしまう。

 

 

 アベルはその間、アリアのことを見ていたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 洗礼式を終え、ヘンリーが着席したままのアベルの元へとやって来る。

 

 

「は~、終わったな!」

 

 

 マリアさん、光り輝いて綺麗だったなぁ~……。

 

 

 ヘンリーはマリアの洗礼式を思い出して、うっとりと口角を上げていた。

 

 

「ぅん…………」

 

 

 アベルは生返事で、アリアを見ている。

 

 そのアリアはというと、階段を上がり、洗礼式の後片付けをしていた。

 アリアはルビー色の水が入ったグラスを手に、硬い顔でマザーに何か語り掛けていたがマザーは優しく微笑み掛けて、彼女の肩を撫でている。

 

 

「ん? おい、アベル」

 

「ぅん…………」

 

 

 ヘンリーが声を掛けるがアベルはアリアを追っていて、アリアがグラスを持って階段を下りて来るまで見つめていた。

 

 

「……っ、ぁっ……」

 

「ぁっ……」

 

 

 グラスの中の水を零さないよう、ゆっくりと階段を下りた所でアリアはアベルに気付き瞳を揺らす。

 再び彼女の頬が真っ赤に染まった。

 

 アベルの頬も釣られて赤くなる。

 

 

「…………おい」

 

 

 こいつ……!

 

 

 ヘンリーはアベルの様子に眉を顰めたのだった。

 

 

「アリア、あのっ……!」

 

「ぁ、私、これを片付けないと……」

 

 

 アベルが声を掛けるが、アリアは片手には水の入ったグラス、もう片方の手には分厚い本を抱えていて、目礼して去ろうする。

 

 

「アリアさん。オレも手伝うよ。それ貸して」

 

「あっ、ありがとうございます。ヘンリーさん」

 

「いいっていいって。って、これ結構重いじゃん。そっちは外……かな?」

 

「ぁっ」

 

 

 ヘンリーはアリアの持っていた本を奪って肩口に載せると、グラスもひょいっと奪取する。

 

 

「はい、すみません……。私が受け持った仕事なのに……」

 

「いいよいいよ。昨日の食事美味しかったし、あれ、アリアさんが作ったんでしょ?」

 

「あ、はい。……ふふっ、お口に合ったようで良かったです」

 

「めっちゃ美味しかった! ドレイの食事と来たら、もう酷いもんでさ~……」

 

 

 ヘンリーは茫然とするアベルを横目に、祭壇下に位置する書庫の方へとアリアを伴い消えて行く。

 そして、アベルを席に残して書庫の扉が閉まった。

 

 

「っ……!!??」

 

 

 一体、何なんだ……っ!?

 何がどうなって……!!??

 

 

 アベルは訳が分からなくて、二人の後を追おうと机を叩いて立ち上がる。

 

 

 が。

 

 

「あんた、アリアちゃんの知り合いかい?」

 

 

 アベルの後ろの席に居たおばさんに声を掛けられてしまった。

 

 

「え?」

 

「あたしゃ亭主から逃げて来たんだよ。とんでもない乱暴者でね。おや? あんたもどこかから逃げて来たのかい?」

 

「え、ええ……まあ……」

 

「そりゃ奇遇だねえ。あたしゃ…………――…………でさ、…………――だと思っ……――てな訳でさ、もう………………――…………――…………」

 

 

 おばさんがマシンガントークを始めてしまい、アベルは逃げようとしたが、回り込まれて逃げられなくなってしまう。

 

 

「……あ、……ははは……」

 

 

 逃げられなかったアベルは適当に相槌を打って、早く終わることを祈った。

 

 

 そうこうしているうちに、ヘンリーとアリアが楽しそうにお喋りをしながら書庫から出て来ると、アベルとおばさんの横を通り過ぎる。

 アリアがちらりとアベルを見ると、視線がかち合ってしまい、アリアはまた恥ずかしそうに目を逸らした。

 

 チラッと、ヘンリーもアベルを見て「お気の毒に」と口角を上げて、アリアに親し気に話し掛ける。

 

 二人はそのまま外へと出て行った。

 

 

「……っ! あのっ、僕ちょっと……!」

 

「あっ、まだ話は終ってないよっ! 聞いていきなさいって……! あたしの亭主はとんでもない乱暴者で……」

 

「いやっ、そのっ……!(話がループしてるっ!!)」

 

 

 大神殿で昔、元神官や元貴族といった人達に女性の扱いを何度かレクチャーされていたアベルは、

 

“女性の話は頷きと共感が大事である、話が終わるまで決して途中で適当に切り上げてはいけない。でないと……云々”

 

 と習い、それに従って聞いていたわけだが、“おばさん”という人種はとにかく話が長いのである。

 しかも、高確率で同じ話を何度も繰り返す!

 

 

 付き合い切れないよっ!!

 

 

 アベルは話し続けるおばさんを振り切るように、頭を何度か下げて無理矢理離席し、出入口へと向かった。

 




おばさんはね~……よく喋るもんなのよ。
可愛いよねぇ……。
にこにこ頷いて聞いてたら色々話してくれるもの。

アベルさんモテるけどあれよな。
変な人にも好かれるっていう……。

アリアとマリアが続くとどっちがどっちかわからなくなる件。
一字違いって空目してしまうぅ。
ここに来て名前を適当に付けてしまったことを後悔……はしていません。
読み辛くて申し訳ありません、ありがとうございます!

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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