さて、情報収集です。
では、本編どぞー。
一方で修道院内へと逃げ込んだアベルはというと……。
両手で顔を覆いながら熱くなった頬に戸惑っていた。
一体、な、何なんだ……!?
アリアと目が合うだけで、異常に恥ずかしいんだけどっ!?
「っ、何がどうなって……。…………っ、とりあえず深呼吸をして……。落ち着こう、うん」
アベルはすぅ~、はぁ~。すぅ~、はぁ~、とゆっくり深呼吸をして一旦アリアのことを考えるのを止める……が。
「っ、……駄目だ。やっぱり気になってしまう……!!」
アベルは気を紛らわせるために誰かと話すことにして、講堂へと足を伸ばした。
◇
「お話は聞いています。十年以上もドレイとして働き、やっと自由の身になったとか。あなたはもう誰からも命令されないでしょう。父上も亡くなられた今どこへ行き何をするか……。これからは全て自分で考えなくてはなりません。しかし、負けないで下さいね。それが生きるということなのですから」
「……はい」
どこへ行き、何をするか……。
全て自分で考えて……、か。
彼女とまた旅を……、
はないか……。
あれからアベルは講堂でシスターの一人と話をしていたのだった。
まさか、アリアと再会するとは思わなかったアベルは、
アリアとまた冒険がしたいけど……、またあんなことに彼女が巻き込まれるのだけはごめんだ。
彼女を連れ回すことなんて出来ない……、でも。
「……光の教団が無くなれば……、……はぁ」
もう、あんなことに巻き込まれることは無くなるし、人々も攫われなくて済む。
……そしたら、何も気にせずアリアと昔のように楽しく旅が出来たのにな……。
アベルは額を抱えて、溜息を吐いてしまった。
「光の教団のウワサはしばらく前に旅先の町で聞いたことがあります。なんでも、すべての人が幸せになれる理想の国を作るのだとか。理想を掲げるのは素晴らしいことですが、まずは自分の家族や身近な人々を幸せにすることが……やがてはすべての人々の幸せに繋がるのではないでしょうか」
「僕も……、そう、思います」
通りがかった別のシスターがアベルの肩を“ぽん”と優しく叩いて頷くと、“私達はあなたの幸せを祈っていますわ”と励まして仕事に戻って行く。
先程激励してくれたシスターも話を聞いていたのか、慈愛の微笑みをアベルに向けて再び声を掛けてくれた。
「起きたばかりで身体がお辛いでしょう? 今日外へ行くのはおすすめしませんが、動かないのも身体に良くないですわ。良かったら、修道院内を見て回っては? あちらの書庫を兼ねた特別室なんかは珍しい本なども置いてありますから……、気に入った本がありましたらどうぞお読みになって」
「え……」
「中に人がおりますからお話を聞いていただけたら嬉しいですわ。私達、外界の殿方とお話をする機会があまりありませんから、あなたとお話が出来てとても嬉しいのです」
「……あ、ありがとうございます。じゃあ、行ってみます」
アベルが頭を下げると、シスターは穏やかに目を細めて手を振ってくれる。
アベルは【特別室】へと行くことにした。
◇
カチャリ……。
二階祭壇の下に位置する【特別室】の扉を開けると、中では
部屋に入るとすぐに大きな本棚が三台、目に入った。
さっきアリアが片付けた本も、ここから持って来たものなのだろう。
「……あ、本当だ。本がたくさん……」
「あら? いらっしゃいませ」
アベルが部屋に入って行くと、掃除をしていたシスター(以下書庫にいるのでショコシス)が気付いてにっこりと微笑んでくれた。
「あ、こちらにもどうぞと言われて……。……シスターとお話をしにきました」
アベルが後ろ頭を掻きながら言うと、ショコシスは“まあまあっ”と頬をほんのり赤く染めて破顔する。
とても嬉しそうだ。
こんなにわかりやすく喜んでもらえると悪い気はしないな……と、アベルはショコシスの話は最後まで聞こうと決意した。
「ここは特別なお客様をお預かりする時のためのお部屋です。ついこの間まで、お金持ちのお嬢様が花嫁修業にいらしていたんですが……、それはもう、心の優しい美しい娘さんで、私達こそ勉強させていただきましたわ。その娘さんといい、あなた方がお連れになったマリアさんといい、ここは人に恵まれていますね」
「へえ……、そんなお嬢様が……。……あ、あの、アリア……さんは……?」
アベルはお金持ちのお嬢様とやらも気にはなったが、今はアリアのことが気になるのでそっちを訊ねてみる。
「え? ア、アリアさんですか? ……ええ、ええ……。アリアさんもとても良い娘さんですわ。ちょっぴり自由な方ですが、彼女も苦労をしていますからね……」
アリアのことを訊いた途端、ショコシスの歯切れが急に悪くなる。
「……? あ、僕、アリア……さんのこと……、聞いています。十年前、傷だらけでこちらに運ばれたとか……」
話しちゃまずいことなのか……?
本人の知らない所で勝手に話すのは……、まあ、そうか……。
アベルはヘンリーから大体の話は聞いたとショコシスに伝えてみた。
すると、
「……ええ、そうなのです。それはもう……酷い傷で……。今でこそ綺麗に治りましたが、背中の傷だけは少し残ってしまって……」
ショコシスは、“あれではお嫁に行くのは難しいかもしれません……お可哀想に”と瞳を伏せる。
「…………そう、ですか」
ゲマにやられた、傷か!!!!
“背中の傷”……と聞いてアベルは、アリアの翼が引き抜かれたときの記憶が蘇り、ギリッと歯を噛み締める。
無意識に拳も握り締めていて、爪が手の平に食い込んだ。
「……あ……、そういえば、アベルさんはアリアさんのお知合いでしたわね?」
不意にショコシスがアベルに訊ねて来る。
「え? あ…………、…………はい。昔の……」
「まあ……やはり」
「やはり……?」
「……アベルさんが眠っている間、
「お友達……」
友達……。
昔はそう、だった。
けど、今は……。
今は……?
アベルはショコシスに“アリアのお友達”と云われてピンと来なかった。
「あら、違うのですか?」
「あ、いえ。友達……、です……」
ショコシスにとりあえず話を合わせる。
「彼女が元々どこに住んでいて、ご両親はどこにいらっしゃるのか、何故あんな酷い怪我をして一人で倒れていたのか……。……彼女は自分がどこの誰なのかすらわかっておりません。目覚めた時もあんな……」
ショコシスはそこまで言って黙り込んでしまった。
「あんな……? 何ですか?」
そういえば、父さんは……?
アリアが生きているならもしかして、父さんも……!?
いや、でも。
アリアは独りで倒れていたって……。
アベルはふと疑問に思ったが、誰も大人の男が倒れていたとは口にしていないので悪戯に淡い期待は抱けなかった。
“期待して裏切られるのはもうたくさんだ”そんな簡単に希望を抱けるほど、アベルはもう純粋な子供ではなかった。
何度も願ったが適わなかった繰り返される同じ展開、そして絶望――。
希望を抱けという方が無理があるのかもしれない。
書庫にいるシスターだからショコシス……。
名前付ける気がありませんwww
サーセン……。
必要になったら付けようと思いますw
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読んでいただきありがとうございましたっ!