ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

シスターの名前を考えるの、面倒くさかったの……。

では、本編どぞー!



第百十六話 シス! シス!

 

 アベルはショコシスの答えを待った。

 だが。

 

 

「……これ以上、私の口からは……。マザーかアリアさん本人から直接お聞きになって下さい。ああ、そうでした。そちらの本棚はご自由に閲覧下さいね、私は仕事に戻ります」

 

 

 アベルが伺うがショコシスは慌てて掃除に戻ってしまう。

 アリアのことはそんなに不味い話なのだろうか。

 

 

「えっ、ちょ……」

 

 

 何それ、すっごい気になる~……!!

 そこまで言ったなら最後まで教えてくださいよ……!!

 

 

 アベルはそう思ったが、ショコシスが掃除に夢中になって話してくれそうにないので推された本棚を調べてみることにする。

 

 

 

 

 アベルは本棚を調べた!

 

 

 

 

 すると“これを読んで!”と本棚に言われた気がして、一冊の本を手に取った。

 

 

「“神の塔の乙女”……か」

 

 

 表紙を読み上げ、アベルは本を捲ってみる。

 内容はというと、

 

 

 “神の存在を疑う少女は、真実を確かめるために神が住むという塔に登った。神を疑う少女に神はいくつかの試練を与えるが、少女はそれを乗り越えた。少女の勇気を称え神は塔の頂上で真実を映すという不思議な鏡を授けたという。”

 

 

 と書かれている。

 

 

「真実を映す……不思議な鏡……か。失った記憶なんかも映してくれたりするのかな……」

 

 

 そんな上手い話があるとは思えないけど……、彼女が記憶を失くしたのは僕の所為だから……。

 

 

 パタン。と本を閉じ、アベルはアリアの記憶をどうにか戻してやれないかと考えたのだった。

 

 

「……シスター」

 

「は、はい?」

 

「……失礼しました」

 

「……ええ」

 

 

 アベルはびくっと肩を揺らしたショコシスに会釈して部屋を出る。

 

 

「……アリアのこと……マザーに訊いてみるか……」

 

 

 二階の祭壇へ行こうかと思ったが、祭壇前でマザーは別のシスターと話をしているので今話を訊くのは無理だと判断し、修道院内を歩くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 【特別室】を後にし講堂を抜けて、祭壇に背を向け修道院の出入口まで戻ると、左右奥に扉が見えた。

 アベルは右の通路を行き奥の扉を開け、中へと入る。

 その部屋には手前に炊事場と奥には食事テーブルが置かれていた。

 

 

「ここは……食堂……兼、台所か……」

 

 

 部屋の中では食事テーブルで芋を剥くシスター(以下、イモシス)と小さな女の子がうろうろと行ったり来たり、時々かまどに置かれているお鍋の蓋を開けて中の料理をつまみ食いしていた。

 

 

「あ~あ、また遊びに行きたいなあ……」

 

 

 女の子が鍋蓋を閉じて天井を見上げて呟くのでアベルは、そういや僕もサンチョの料理をつまみ食いしたことがあったなと、口角を上げる。

 

 

「……遊びに?」

 

「あのね! ここから北に行くと大きな町があるのっ。とっても面白い所だよ!」

 

 

 アベルに気付いた女の子は口の周りに赤いソースを付けながら笑った。

 

 

「へえ……」

 

「アリア姉ちゃんがこないだこっそり連れてってくれたんだっ。でも、その所為で……」

 

 

 楽しそうに話していた女の子が急にしゅーんと落ち込んでしまう。

 

 

「ん……?」

 

「……アリア姉ちゃん、今度お嫁に行っちゃうの」

 

「え……っ!!??」

 

 

 なんだって!?

 アリアがお嫁に……!? ど、どういうことだ……!?

 

 

 アベルは目を見開く。

 

 

「……アリア姉ちゃん、北の町で時々お仕事をしてるんだけど、この間、私に付き合ってくれてね。でもその所為で怖い人達に脅されて、修道院が潰されたくなければお嫁に来るようにって……!」

 

「っ……、そ、その怖い人達っていうのは……!?」

 

 

(まさか、光の教団……!?)

 

 

 アベルの顔が眼光鋭く、険しくなる。

 

 

「えっ、わ、わかんない。アリア姉ちゃん、すぐその男の人達に連れて行かれちゃったんだけど五分もしない内に戻って来て、大丈夫だよって笑ってたから……」

 

 

 アベルの目が怖かったのかは定かでは無いが、女の子の瞳が潤っていき“私が修道院の話をしなければ、こんなことにならなかったのに……”と泣きそうな顔になっていた。

 

 

「っ……」

 

 

 アベルは咽喉の渇きを感じる。

 

 

 ……こんなことは、初めてだ……。

 

 今までアリアとの初めてはいつも嬉しい事ばかりだったのに……。

 今回ばかりは最悪だな……。

 

 

「……お兄ちゃんは、アリア姉ちゃんのお友達なの?」

 

 

 女の子がおずおずとアベルを見上げて来る。

 

 

「え? あ、ああ……」

 

「なら、お兄ちゃん。アリア姉ちゃんを助けてあげてくれないかなぁ? アリア姉ちゃん、好きな人とじゃなきゃ結婚したくないって言ってたから可哀想だよ」

 

「好きな人…………、…………うん、そうだね。……助けるよ。僕は彼女の……と、友達だから」

 

「本当? ありがとう! じゃあ、詳しい話はアリア姉ちゃんは教えてくれないだろうから、マザーに訊いてみて! アリア姉ちゃん、マザーには何でも話してるみたいだから!」

 

 

 アベルの承諾に、女の子は喜色満面に顔を綻ばせた。

 

 

「……うん、ありがとう。訊いてみるよ」

 

 

 微笑む女の子の頭をアベルは優しく撫でてあげる。

 すると、

 

 

「えへへ……、これで一安心。また一緒に遊びに行けるねっ」

 

 

 女の子はそれだけ言うと“安心したらお腹空いちゃった!”とまたつまみ食いをしに行ってしまった。

 

 

「はは……」

 

 

 アベルが女の子の背を見て空笑いする。

 

 

『まあ! またつまみ食いして……!』

 

 

 部屋の奥、食堂のテーブルでイモシスが芋の皮むきから手を止めて、女の子を諫めていた。

 

 

「……あの、さっきの話なんですけど……」

 

 

 アベルはテーブルの方へと向かうと、イモシスに話し掛ける。

 すると、

 

 

「あなた方の旅の無事をお祈りしてこの女神像を差し上げましょう」

 

「え?」

 

 

 急にイモシスがテーブル上にあった【木彫りの女神像】をアベルに差し出した。

 

 

「これは……?」

 

「それは私達、修道院に暮らす者が祈りを込めて彫ったものです。特別なチカラが宿るものではありませんが、この修道院へいらした記念にお持ち下さい」

 

 

 アリア嬢もこの辺りを彫っていたんですのよ。と、イモシスが女神像の髪の左部分を指差す。

 右部分は真っ直ぐ綺麗に彫られているが、左部分は若干……髪が短く、歪な気がした。

 その髪部分以外は左右対称に綺麗に彫られているので、多分、手が滑ってこうなっているんだろうと推測できる。

 

 

「…………プッ」

 

 

 アベルは思わず吹き出した。

 

 

「……? どうかしましたか?」

 

「あ、いえ……、味があるなと……」

 

「味……ですか?」

 

「はい……」

 

 

 アリア。

 君って記憶が無くても、細かい作業苦手なんだね……。

 

 

 そういや、昔一緒に文字を練習した時、何度書き直しても癖は治らなかったな、とアベルは思い出していた。

 




芋剥いてるシスターだからイモシス……。

掃き掃除してたらハキシス。
拭き掃除してたらフキシス。
料理作ってたら……、シェフシス……かな?

テキトー……ごめんちゃい。
名前付けてもいいんだけど、固有名詞付けちゃうと途端愛着湧いて掘り下げちゃうのでさっくり。
一人くらい付けてもいいかなぁ……。

んーでもやっぱメンド……コホンッ。

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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