ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

謎多き女。

では、本編どぞー。



第百十八話 彼女の謎

 

「えっ……」

 

 

 彼女が……何かしたのか……?

 

 

 アベルはヨムシスの言い分に目を見開く。

 

 

「……シスター。アリアさんもとても心が美しい方ではありませんか」

 

 

 マリアがアリアをフォローすると、ヨムシスは“わかっています。わかっているのですが、あれはどうしても……”と頭を左右に振っていた。

 その様子にマリアが、“きっと気のせいですわ”と立ち上がってヨムシスの背を撫でる。

 ヨムシスはふるふると身体を震わせていた。

 

 

「……か、彼女が何か……?」

 

 

 アリア、君、ここで何をしたの……?

 

 

 アベルは恐る恐るマリアに訊ねた。

 

 

「あ……、アベルさん、アリアさんと昔のお知り合いだったとか……。本当ですか?」

 

「あ、うん。そうなんだ……。と、友達で……」

 

「そうだったんですね……」

 

 

 アベルが肯定すると、マリアは残念そうに瞳を伏せる。

 

 

「……で、アリアは何を……?」

 

 

 このまま、またはぐらかされるのは ごめんだと、アベルは再び話題を戻した。

 

 

「……シスターは、アリアさんが魔物といる所を見た……と仰っていて……。それも何度も……。でも、アリアさんはそれを否定されていて……」

 

「わ、私もアリアさんが嫌いとかそういうことではないのです。ただ、彼女は神の祝福を受けておりませんから、いつ魔が入ってもおかしくないと……!」

 

 

 ぶるぶるぶる、とヨムシスは魔物を思い出したのか身体を再び震わせる。

 

 

「シスター……、怯えなど不要です。私達には神がついておりますから大丈夫ですわ!」

 

「マリアさん……!!」

 

 

 マリアが真っ直ぐにヨムシスを見つめて告げると、ヨムシスはマリアの手をぎゅっと握ったのだった。

 

 

「……魔物と……アリアが……???」

 

 

 ああ……、ますますわけがわからなくなってきた……!!!!

 

 

 アベルは混乱する呪文、【メダパニ】に掛かった気分になって頭を抱える。

 

 

「……アリアさんは神の祝福を受けられなかったそうです。ただ……私もアリアさんとお話をしたことがありますが、とてもお優しい方で……。魔物と通じているなどと、到底思えないのです」

 

「…………うん、僕もそう思う。彼女はそんな人じゃない」

 

 

 マリアの話にアベルは頷く。

 

 

 すると、

 

 

「そんなことはっ!! あなたは彼女のアレ(・・)を見ていないからっ!!」

 

 

 ヨムシスがマリアの手を強く握りしめ、急に声を荒げる。

 

 

「シスターっ? どうかされましたか!?」

 

 

 マリアは驚いてヨムシスに声を掛けた。

 

 

「ぅぅっ……! …………、…………い、いえ、な、何でもないのです……。私は黙読に戻りますわ……」

 

 

 “神よ、どうか哀れな子羊に救いの手を……。”

 

 

 ヨムシスは書物を眺めながらも、そう何度も呟く。

 何度も呟く内に、ヨムシスの震えが収まっていったが、アベルが声を掛けようとすると、また同じように唱え出してしまった。

 

 

「また……。はぁ……」

 

 

 僕が核心に触れようとすると、皆はぐらかす!

 

 

 アベルはやっぱりマザーに訊くしかないかと、溜息を吐いた。

 

 

「え?」

 

「あ、いや……。マリアさんは知らないんだよね?」

 

「え、何をでしょうか……?」

 

 

 マリアは何のことかわからない様子で、首を傾げていた。

 

 

「…………、うん、いいんだ。邪魔してごめんね。これ、ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

 

「あっ、はい……」

 

 

 アベルは思った通りのマリアの態度に貰ったお金にお礼を告げて、その部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 やはりマザーに話を訊くしかない、とアベルは二階の扉を開け、そのまま二階の通路を伝って祭壇に向かおうと思ったのだが、部屋を出た所でアリアに声を掛けられた。

 

 

「あっ、アベルさん」

 

「っ! あっ、アリアさんっ!?」

 

 

 びくぅっ!!

 

 と、何故か条件反射で、アベルは扉に張り付いてしまう。

 その拍子に鼻を扉に打ち付けてしまった。

 

 

「だ、大丈夫ですか……?」

 

「ぅ。だ、大丈夫……。な、何か……」

 

「あ、えっと、マリアさんとシスターにお茶をお持ちしたんです」

 

 

 アリアの手元を見ると、トレイの上に湯気の出るカップが二つ載っていた。

 それと、お茶菓子、……丸い形の焼き菓子だった。

 

 

「そ、そっか……(あ、あれ……? さっきあげた花がない……)」

 

 

 アリアの顔を見てみるとさっき耳に掛けた花がない。

 ひょっとして捨てられてしまったのだろうか……。

 

 

 ま、まあ、その辺に咲いてたものだし……しょうがないよな……。

 

 

 アベルはちょっぴり落ち込んでしまう。

 

 

「あの……」

 

「えっ?」

 

「中に入っても……?」

 

「あっ! そ、そうだねっ、ごめんねっ!」

 

「…………いえ……」

 

 

 アベルは先程自分が出て来た扉の前から退いて、アリアに扉を開けてやった。

 

 

「アベルさん、ありがとうございます。……シスター、マリアさん。お茶をお持ちしました」

 

 

 アリアは部屋へと入って行く。

 

 

『まあまあっ、アリアさんたらっ、何ていいタイミングでしょう! マリアさんいただきましょう!』

 

『わぁ……、このクッキー大好きですわ……!』

 

 

 アリアが二人にお茶を持って行くと、中から嬉しそうな声が聞こえて来た。

 さっきまでの怯えた態度と180度違うヨムシスの様子にアベルは面食らう。

 

 

(あれ……。シスター……アリアのこと、怖がってなかったっけ……)

 

 

 アベルがそんなことを思っている間に、アリアが「失礼しました」と会釈し戻って来たのだった。

 

 扉を開いたまま閉じないよう、押えているアベルにアリアが気付く。

 

 

「あっ、扉、開けていて下さったんですか?」

 

「っと……、えと……まあ……」

 

「ありがとうございます」

 

 

 アベルが照れたように頭の後ろを掻くと、アリアは目を細めて優しく笑った。

 

 

「っ……かわっ……」

 

 

 可愛いなぁ……っ!!

 

 

 くうっ!

 

 

 アベルは口元を覆ってアリアの視線から逃れるように顔を背ける。

 ところが、

 

 

「……あの、アベルさん……」

 

「っ、は、はいっ!」

 

 

 アリアがおずおずと上目がちに声を掛けてくるので、アベルは彼女に目線を合わせた。

 

 

「…………お話があるのですが……。少し、お時間宜しいですか?」

 

「え、……あ、はい」

 

「では、屋上で……」

 

 

 アベルはアリアに誘われるまま、屋上へと向かうのだった。

 




アベルさんの珍走はまだしばらく続きそうです。
次回まさかの告、白……、は無い。ですね……。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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