ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます。はすみくです。

さて、じゅういちわ。

便利なアイテムが色々あって楽しいドラクエ。
ゲームシステムも大好き! で、色々ツッコミたい事もあるけど、それもまたヨシッ!
つらつら綴って楽しく創作♪

では、本編どうぞっ!


第十一話 おやすみなさい

 

 そうして、地下三階へと降りて行くと、アベルが言っていた道具屋の親方らしき人(おじさん)が大きな岩に引っ掛かって出られないでいた。

 

 

「あ、アベル……、あのおじさん大丈夫かな……(意識無いみたいだけど……)」

 

 

 アリアはアベルの後ろから倒れているおじさんの様子をそっと窺い見る。

 

 

「うん、多分大丈夫」

 

「え」

 

「さっき来た時、イビキが聞こえたからね」

 

「い、イビキ……。確かに……。それで放っておいたの……?」

 

 

 アベルがにこにこしながら告げるので、アリアは呆気に取られた。

 確かにおじさんからは「ぐう、ぐう」とイビキが聞こえる。

 

 

「……いや……、そういうわけじゃ……。一人だと岩が大き過ぎて無理そうだなって……」

 

「あ、そっか。そんなこと言ってたもんね……」

 

「じゃあ、声、掛けてみるね」

 

「うん」

 

 

 アリアが見守る中、アベルはおじさんに声を掛ける。

 ついでに頬もつんつんと突いてみる。

 

 

「おじさん、大丈夫……?」

 

「……ぐうぐう。はっ! いかんいかん! 動けないのでいつの間にか眠ってしまったらしい! 歩いていたら突然上から大きな岩が落ちてきて……。坊や 悪いがちょっと押してくれるか! もう少しで動かせそうなんだ」

 

 

 アベルに起こされ、おじさんは目を覚ますと助けを請うので、

 

 

「うん、今手伝うね。アリア、手伝ってもらってもいい?」

 

「あ、うん。でも、私岩に触れるかな……?」

 

「僕の背中押してくれたら、それでいいよ」

 

「あっ、その手があったか」

 

 

 アベルって頭いいよね、とアリアは大岩を押そうとするアベルの背に触れ押した。

 

 

「…………っ、ちょっとくすぐったいや」

 

「んー? いくよー?」

 

 

 大岩を押そうとするアベルの頬がほんのり赤くなる。

 アリアが声を掛けると、アベルは大岩を押す手に力を込めた。

 

 

 けれど、

 

 

「あ、あれ……?」

 

 

 アリアは目を瞬かせる。

 アベルの背を押そうと力を込める前に、アベルはいとも容易く大岩を退かせた。

 

 

 ――私要らなかったんじゃ……?

 

 

 アリアはそう思ったが口に出さなかった。

 

 

「やれやれ助かった! 坊やありがとう! これでダンカンのおかみさんにも薬を渡せるってもんだ! おっとこうしちゃいられない! 戻ってこの薬草を調合しなくっちゃな!」

 

 

 おじさんは無事大岩から抜け出すと、急いで道具屋へと戻って行ってしまう。

 

 

「僕達も戻ろうか。おじさんが道具屋の親方であってたみたい。良かった……」

 

「あ、うん……。アベルってやっぱり力強い……、よね」

 

「え……? そうかなー……?」

 

「強いと思うな(ていうか、さっき自分で強いって言ってなかった?)」

 

「…………うん、そうだね。僕強いもん!(結構鍛えたからなー……)」

 

 

 アベルはアリアと来た道を歩きながら、自分がいかに強いかをアリアに自慢する。

 一生懸命自分を大きく見せようとするアベルが可愛くて、アリアはその度に「すごいっ!」「格好いいねっ」などと褒めた。

 

 

 そうしてアリアに褒められたアベルは上機嫌で洞窟から出ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 洞窟を抜け、アベルとアリアは家まで戻って来る。

 家の扉を開けると、アベルの姿にほっとしたような顔のサンチョが見えた。

 

 

「アベル坊ちゃん、今日はお疲れでしょう。お休みになりますか?」

 

「うん」

 

「それでは、坊ちゃんおやすみなさい」

 

 

 サンチョに見送られ、アベルは階段を上っていく。

 サンチョからは見えないが、アベルはアリアの手を引いていた。

 

 

「っ、ちょ、ちょっとアベルっ。私は地下室でいいよっ」

 

「えっ? あそこ冷たいよ? 風邪引いちゃうよ」

 

「っ、で、でも」

 

「僕のベッド大きいから一緒に寝れるよ?」

 

「いっ、一緒って……(何だか悪いな……)」

 

 

 困ったなぁとアリアの眉が下がるが、アベルが強引に手を引っ張るのでそのまま連れられて行った。

 

 部屋に着くと、ベッドが二つにタンスと本棚、シンプルな木の机が置いてある。

 そして……、ツボ。

 

 アリアは部屋の隅に置かれているツボについ目がいく。

 

 

「あ……ツボだ」

 

「ん……?」

 

「あ、えと、ツボだなーって……」

 

「うん、ツボだけど……?」

 

 

 中に何か入ってるのかな……?

 それとも、割ったり出来ちゃうの……?

 

 

「……アリア……?」

 

 

 アベルが不思議そうに首を傾げ、アリアを見つめる。

 

 

「あっ、えと、ツボの中に何か入ってるかなーって……(って、よそ様のお家で何言ってんの私っ!)」

 

 

 あはは……。とアリアは乾いた笑いを浮かべてツボから視線を外した。

 

 

「……何かよくわかんないけど……、調べてみようか?」

 

「へ?」

 

 

 アベルはツボの方へと歩いて行く。

 そして、ツボの縁を掴みと持ち上げたかと思うと……、

 

 

「あっ! ちょっ、アベっ」

 

 

 アリアの制止も聞かずに、“ガッシャーンッ!!”。

 足元に落とし、叩き割る。

 

 ……ツボは粉々に砕けていた。

 

 

「えぇ……(ツボ割っちゃったよ……?)」

 

 

 アリアは突然のことに驚いて目を瞬かせている。

 

 

「何にもないよ?」

 

「っ、何も割らなくても……、って……あ」

 

 

 アリアの目の前で、アベルの足元に散らばったツボの欠片がすーっと消えていく。

 

 

「大丈夫だよ、ツボならその内元通りになるから」

 

「へっ!? そ、そうなのっ!?(どういう原理なのっ!?)」

 

「? ふふっ、アリアって面白いなぁ。ツボなんか元に戻って当たり前なのに」

 

「えぇ……、そぉなの……?」

 

 

 アベルがにこにこして告げるが、アリアには理解出来なかった。

 それでも、アリアの瞳がキラキラと輝き出す。

 

 

「……ということは、ストレスが溜まった時とか壊してもいいってことよねっ?(片付け不要とかそれ、気持ちよさそ~!)」

 

「え…………、ストレス……? …………、……あははっ! 何それっ! アリアってば面白すぎ!」

 

 

 ……ストレスって何だろ?

 よくわかんないけど、アリアの目がキラキラしてるからいっか!

 

 

 アリアの言葉にアベルは嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、夜――。

 

 

「ね、アベル、狭くない?」

 

「アリアもうちょっとくっついて。君と居ると温かいから」

 

「う、うん、わかった……」

 

 

 アベルの手がアリアの手を包んで、二人はベッドの中でこそこそと話をしていた。

 隣のベッドからはパパスのイビキが聞こえてくる。

 パパスがぐっすり眠っているようなので、二人は布団から顔を出した。

 

 

「「はぁ……」」

 

 

 息苦しかったので、二人で大きく息を吸い込む。

 

 

「……アベルに触れていると、お布団にも触れられるのね(温かい……)」

 

「だと思ったんだ」

 

「えー?」

 

「だって、アリア地下室で毛布掛けたけど、すり抜けてたから、寒かったでしょ?」

 

「そうだったんだ……」

 

「……温かいね」

 

 

 ぎゅっと、アリアの手を握るアベルの手に力がこもる。

 

 

「うん……、ありがとうアベル」

 

 

 異世界人の私にこんな小さな子(しかも可愛い)が良くしてくれるなんて……、とアリアは感動して微笑みを浮かべた。

 

 

「…………っ(可愛い……)」

 

 

 薄暗がりの中でも月明かりで見えたアリアの笑顔に、アベルは息を呑む。

 

 

「……おやすみなさい、アベル」

 

「うん、おやすみ」

 

 

 アリアが穏やかに告げると、彼女の目蓋はゆっくりと落ちていった。

 ……アベルも静かに目を閉じる。

 

 

 ――こんなこと、初めてだ……ん……? 初めて……?

 ――どういうこと……? っ、何でそんなことを思うんだ……?

 

 

 アベルはわけがわからず、急に不安に駆られて目を開ける。

 

 

「…………アリア、君は……何者?」

 

 

 身体を起こして、隣に眠るアリアを見下ろす。

 疲れているのだろう、アリアはアベルが身体を起こしても気が付かなかった。

 

 

「…………ぅーん……、……わからないや」

 

 

 頭の中がもやもやするが、思い当たることなど何もなく、アベルは首を左右に振るう。

 

 

「……アリアと居れば、もしかしたら、何かわかるかもしれない……」

 

 

 予感めいた何かを感じて再びアリアを見下ろせば、すぅすぅと規則正しい呼吸に安堵する。

 アベルはアリアの頭をそっと撫で、目を細めた。

 

 

 ――柔らかい髪、珍しい色だよね……。

 

 

 それからアベルはベッドに身体を横たえ、温かい天使の手を握ったまま、次第に意識を手放した。

 




PS2版のツボ、壊す時の音が爽快。

カシャン!

えぇ……、割るんかい……。

と思ってましたがゼルダとかでも割ってて、現実じゃそんなこと出来ないから割るよねー!
そして、マップ切り替えて戻ると元に戻ってるっていう、謎。
しかし割るの好きだ。

きっと、伝説の壺職人(瞬間移動自由自在)が居て、サッと戻しているんでしょうw

ここでは、勝手に魔法の壺にしておきました(明言してないけど)。
どの家の壺も魔法が掛かっていて一定時間経つと元に戻るっていう……w


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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!

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