すいません、ただいちゃついています。
では、本編どぞ。
屋上は然程広くはないが金属製の柵で囲われており、目の前の雄大な海を見渡せる絶景スポットと呼んでもいい場所だった。
そこには綱で斜めに固定された鐘が設置されており、その鐘は時間になると綱を解いて鳴らすタイプの鐘らしい。
海風で揺れ勝手に鳴らないようになっているのだろう。
今はしっかり固定されているので、鐘が揺れることは無かった。
二人が屋上へと着くと、海風が吹いてアリアの髪とスカートを揺らす。
プラチナブロンドの髪がきらきらと輝いて、アベルにはアリアが眩しく見えた。
「……髪、伸びたんだね……。って当たり前か……(もう十年だもんな)」
こんなに綺麗になるなんて思わなかったよ……。
アベルは海を眺めるアリアの横顔をただ見つめる。
そうしていると、アリアがアベルの方へと顔を向けた。
「…………、…………やっぱり、アベルさんは私の過去を知っていらっしゃるんですね」
「え? あっ……。…………、…………えっと……」
アリアに指摘され、アベルは躊躇う。
正直に言ってもいいのだろうか……。
知らない方が、いいんじゃないか?
いや、でも知らないと不都合があるだろうし……。
アリアの記憶を取り戻させてやりたいとは思っていたが、もう少し情報を仕入れてから最終的にどうするか決めようと思っていたのに……とアベルは話すか迷うのだった。
「……ヘンリーさんから、アベルさんの身に起きたことは色々聞いています。私とお友達だったとも」
「…………えと、……はい。そうです……ね」
何故かアベルは敬語で喋り、素直に頷く。
「……私はどんな子でしたか?」
「ど、どんな子……。えっと……、………………」
アリアに訊ねられ、アベルは黙り込んでしまう。
そんなアベルの様子にアリアは不安気に瞳を揺らした。
「……え、えと……? 私、問題児……だったとか……?」
「いやっ、ちがっ……っ、か、可愛くて……優しくて……面白い子……かな」
アベルはアリアの瞳に、はっとして呟く。
「か、可愛くて……優しくて、面白い……ですか……? な、何だか照れちゃいますね……」
アベルの言葉に今のアリアは随分と恥ずかしがり屋なのか、頬が“ぽっ”とほんのり桃色に色付いた。
「いや、本当なんだっ、アリアは僕の唯一で……!!」
アベルはアリアの手をつい取って握ってしまう。
「っっ!!??」
瞬時に今度は“ボッ”とアリアの頬が、火が点いたように真っ赤に染まる。
耳まで真っ赤だった。
「あっ、いやっ、そうじゃなくって……! そのっ!!」
アリアの態度にアベルは慌てて手を放すが、自分の頬も熱くなったのが判って、二人は黙り込んでしまった。
………………………………………………。
沈黙する間、二人は互いに視線を外して遠くを見る。
「…………っ、そうじゃなくてって……ど、どういうことですか……?」
「っ、……話すと長くなるから……。けど、そ、そういうのじゃないから、安心して!」
わぁあああああっ!
そういうのじゃないって何だよっ!!
アベルの頭の中の一人がツッコミを入れて来る。
「そっ、そうですか……。なら良かった……」
「え」
「…………私、記憶がないので……。アベルさんのお気持ちにお応え出来ませんから……」
「っ!」
ズキンッ!
アリアの一言にアベルの胸に痛みがさした。
何……?
胸が、痛い……?
アベルは胸元をぎゅっと掴む。
「……って、すみません。私自意識過剰ですね、忘れて下さい。最近……ちょっと色々あって……過敏になってるみたいで」
「…………何かあったのかい……?」
口元に祈るように手を組み困ってる様子のアリアに、アベルは訊ねてみる。
「……アベルさんに話す程のことでは……」
「……何か力になれるかも……」
ひょっとして、求婚された話のことかな……?
アベルは何となくそんな気がした。
「……いえ、大丈夫です。何とか断るので……。アベルさんにご迷惑をお掛けするわけには……」
アリアは頭を左右に振って、アベルは必要ないと拒絶するのだった。
「……アリア……、さん」
(アリア、僕を拒絶しないでよ……。)
アベルは目の前の彼女を悲し気に見下ろす。
「……っ、はい」
アリアはアベルの瞳に何かを感じ取ったのか、一歩後退った。
「……僕と……、と、友達になってくれないかな……?」
「えっ……」
「そ、その……。昔みたいに……話せたら……、嬉しいんだけど……」
アベルはアリアの前に手を差し出す。
「昔みたいに……。私……記憶……戻らないかもしれないのですが……構いませんか……?」
「構わない。君が記憶を失くしたのは僕の所為だから、記憶が戻るように何か協力させてくれないかな……」
「……そんな……、アベルさんの所為では……」
アリアは頭を左右に振って、“大丈夫ですから気にしないで下さい”とはにかんだ。
「…………、……友達になってくれるなら、手を取ってくれないかな」
「……ぁ」
アリアは組んでいた手を解いて、その手をおずおずとアリアを待つアベルの手に近づけていく。
「…………ああ、もうじれったいなっ」
「えっ? あっ!!」
ぎゅううううっ。
と、アベルはアリアの手を自分の両手で包んだ。
アベルはもう大人なので子供の時のような強い握り方じゃなく、あくまでソフトに。
アリアの手は柔らかく、そしてその肌は滑らかだった。
「……これでもう、僕達は友達だよ。アリア、僕のことアベルって呼んでくれ」
「っ……、ぁの……、ごめんなさい……。よ、呼び捨ては……恥ずかしいです……」
(アリアの手、すべすべしてる……それに、好い匂いがする……。)
と、アベルがアリアの肌触りを堪能する中、アリアは俯いてか細い声を発する。
耳が赤い。
「……ぇっ、だ、ダメだった……!?」
どんだけ恥ずかしがり屋なんだ……!?
昔は僕が抱きついても何にも反応しなかったのに……!?
それどころかアリアから抱きついて来たこともあったのに!?
アベルはアリアのあまりの変わり様に驚愕し、手を放す。
そういえば、昔は同衾してたな……と今更ながらに恥ずかしくなる。
「っ、ぁの……、もう少し仲が良くなってからなら……」
アリアはもじもじと、上目遣いにアベルを真っ直ぐに見上げた。
長い睫毛の下、アメジストの神秘的な瞳の中にアベルだけが映り込んでいる。
まるで、その瞳には自分しか映してないかのような……、アベルはそんな錯覚を覚えてしまいそうになった。
「ぇ…………………………、……っ、わかった。アリア
くっ……。
可愛いぃっ!!
そんな
アベルはアリアに従うことにしたのだった。
「……はい、アベルさん、……ふふっ。よろしくお願いしますね」
「っ、はい、こちらこそ!」
アリアが花が綻ぶような笑みを浮かべるので、アベルはその笑顔に報いるため紳士な対応で返事をする。
――甘い疼きがアベルの胸を満たしていた。
ただのいちゃつきの回でした……。
いいよね、いいよね。
若いっていいよねっ!
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!