パン……。
では、本編どぞ。
このパンと似た味を、僕は知っている……。
サンチョが作ってくれた、パン……。
サンチョの作ったものよりちょっとパサついてるけど……、でも似てる。
アリア、再現しようとした……のかな……。
そういえば、さっき“何かが違う”とか何とか云ってたなと、アベルは思い出す。
「……違う、とは……?」
「おいしいよ、とても。これに似たパンを昔、食べたことがあるんだ」
首を傾げるアリアにアベルは顔を綻ばせた。
「まあ! そうなのですか!?」
「あれはもっと、ふっくらしっとりしてて、こんなにパサついてはいなかったかなぁ……(こっちの方が僕は好きだな……ソースに合わせやすいし)」
何気なく、アベルは云うのだが。
「あっ…………、………………………………っ、ごめんなさい」
アリアは瞳を揺らし、俯いてしまう。
「え…………?」
「っ、そのっ……、ふっくらしっとりって難しくって…………」
ごめんなさい……。とアリアは黙り込んでしまった。
「え、僕今何か……」
急に落ち込んだアリアにアベルは何か言ったっけ? と俯いた彼女に手を伸ばした。
すると、アリアがスッと、身を避けるように身体を引く。
「っ……!? あ、アリア、……さん?」
アベルの手が空を切り拒絶されたとチクリ……。胸が痛んだ。
そうしてアリアは立ち上がって、アベルから距離を取る。
「っ、ご、ごめんなさい……、修業が足りなかったみたいで……」
「修行って何の……?」
何で急に避けられたんだ……!?
僕、何か余計なことを……!!??
アベルの頬に冷や汗が零れ落ちる。
すると、カチャリと扉が開いて……、
「何のって……お前なぁ……、アリアのパンにケチ付けといて何言ってんだよ……」
ヘンリーが部屋に入って来たのだった。
いい雰囲気になるかと思って待っててやったのに、アベルの奴何言ってんだよ……。
「えっ、ケチ!? 僕、何か言ったっけ!?」
ヘンリーの言葉にアベルは目を見開く。
「“こんなにパサついてはいなかった”だっけ? 明らかにケチ付けてると思われるが? オレは聞いていたぞ!」
「ぇ…………っっ!? ち、違うんだっ、僕はそんなつもりで言ったわけじゃ!!」
アベルは誤解だとアリアを見上げるのだが、アリアはというと、
「いえ、いいんですいいんです。私の修業が足らないだけなので……っ!」
両手をフリフリ振りながら、若干涙目で笑っていた。
「ぅっ、ご、誤解だって! ……アリアっ!!」
「っ……だ、大丈夫ですっ! 私も何か違うな~って思ってましたからっ!!」
あはっ……アベルさんて鋭いですね! と、アリアは部屋を出て行こうとする。
ヘンリーは黙ったまま二人のやり取りを見ていた。
「だから違うんだって!! 僕はこっちのパンの方が好きで……!!」
“精進しますねっ!”
アベルの言い訳など聞かずに、一言残してアリアは部屋を出て行ってしまった。
「……ああ……!(アリアぁあああ!!)」
「………………………………プッ」
扉に腕を伸ばすアベルに、ヘンリーは吹き出す。
「ヘンリー! 笑い事じゃないだろっ!! 彼女が行っちゃったじゃないか!」
「はっはっはっ! ……いや、だっておまっ、くくくっ、あれじゃアリアのことディスってるだけじゃん。もっと言い方考えろよ……! あははははっ!!」
涙目のアベルにヘンリーは堪えきれずに腹を抱えて笑い出してしまった。
「ぅ……、しょうがないだろ……、つい口から出ちゃったんだから……。というか僕はこっちのパンの方が好きだ! ……なのに…………」
アベルはガツガツと丸パンをあっという間に平らげる。
おかわりしたいくらいだ! と口内の水分が奪われ黙り込んだ。
「ならそう言ってやれば良かったのに。さっきの言い方じゃ、アリアのパンは美味しくないって言ってるようなもんだろ。くくくっ……!! 」
「ヘンリー……!」
「アリアはパン作りが好きみたいだぞ? 好きなもの否定されたみたいなもんだ。そりゃ逃げ出したくもなるさ」
「っ……」
「謝るなら、今夜だな?」
お前って、結構不器用だよな……。とヘンリーは生暖かい目でアベルを見下ろしたのだった。
◇
食事を終えて皆が就寝した頃、ポッシスがアベルとヘンリーの部屋を訪れ、【特別室】へどうぞと言付を伝えてくれるので、二人は【特別室】へと向かう。
ポッシスは言付を伝えた後、他の皆が眠る部屋へと下がって行った。
「はぁ……」
アベルは肩を落とし、溜息を吐いている。
「そんなに落ち込むなって! アリアなら笑って許してくれるって!」
「許すとかそういうことじゃないと思う……、気付かなかったとはいえ、僕が傷付けてしまったんだし……」
どう切り出せば……と、アベルは考え眉間に皺を寄せた。
「いやあの子……、あんまり気にしてないと思うけどな」
「え……?」
「何か、あの子さ……、昔から切り替えが早いっていうかさ……前向きじゃん? 記憶はないけど、そういう気質は変わってない気がすんだよな」
「あ……ぁあ……、そう……なのかな……」
ヘンリーの言葉に、そういえば彼女に花を贈ったことも、彼女に触れたことも、その後で会った時あまり引き摺ってる感じはしなかったなと、思い起こす。
……意識されてないんだろうか……。……って、意識ってなんだ!?
アベルは頭を左右に振って瞳を瞬かせた。
「ま、ともかくマザーに話を訊こうか。アリアのこと、気になってるんだろ? せっかくだからこの際、疑問に思ってること全部訊いておこうぜ」
「……ああ」
二人の目の前に【特別室】の扉が現れる。
二人は扉をノックしてから中へと入るのだった。
修道院から中々進みませんねぇ。
そろそろ動き出したいかな。
スミマセン、もうちょっと掛かります。
サンチョ~~!!
サンチョに会いたい……。グランバニアは遠いなぁ……。
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!