アリア十年間、どうしてた? の回。
では、本編どぞ。
コンコン、とアベルが【特別室】扉をノックすると中から『お入り下さい』と、マザーの声が聞こえた。
アベルとヘンリーの二人が【特別室】に入ると、昼間はなかった椅子が元々あった椅子と共に、机の周りに合計で四脚置かれていた。
机を挟んで奥側にマザーとアリアが並んで座っている。
「マザー……やっと……!」
アベルの瞳に期待に満ちた輝きが宿っていた。
「ウフフ、昼間は忙しくて中々お話をお聞き出来ず、申し訳ありませんでしたわね」
「いえ……」
マザーが薄っすらと口角を上げ謝罪すると、アベルは頭を振るう。
これでやっとアリアの事を詳しく聞くことが出来るんだ。
待ったかいがあった……!
「どうぞ、お二人ともお掛けになって」
アベルとヘンリーはマザーに促されるままに席に着いた。
「ぁ」
「ん? あ、オレこっちな」
「っ……、別にいいけど……」
アリアの向かいを さり気なくヘンリーに取られてしまい、アベルは瞳を泳がせる。
二人が席に着くと、マザーが“ふぅ”と溜息に近い息を吐いてから口を開いた。
「アベルさん……。……アリアさんのことを……、訊きまわっていると……シスター達からお聞きしましたわ」
マザーは眉をハの字にしてアベルに訊ねる。
「……すみません……。その……かつての友としてどうしていたのか気になって……あ、今も友達ですけど……」
アベルは、勝手にアリアについて嗅ぎまわったことを、膝に手を置き軽く頭を下げる。
「ええ、ええ……。そのお気持ちはわかりますわ。アリアさんもどうにか記憶を取り戻したいとおっしゃっていますし……、ね?」
「…………はい」
マザーが隣に座るアリアを窺うと、アリアは静かに頷いた。
「アベルさんはアリアさんの何をお知りになりたいの? 彼女が記憶を失った原因でしたら、ヘンリーさんにお話した通りですわ」
これ以上お話しできることがあったかしら? とマザーはアベルが話し出すのを待つ。
アベルは少しだけ間を置いてから、静かに話し始めた。
「……シスター達と話をしていて、気になったことが幾つかあるんです。マザーなら……、答えて頂けるかと……。アリア……さんもいることですし……。僕は……と、友達としてアリア……さんが今後もここで平和に暮らして行けるのかを見極めたくて……。もし、何か不安なことがあるなら取り除いてあげたいと思って……、それが友達として僕が出来ることかなって……」
アベルは手を組み合わせ、マザーとアリアを交互に見ながらゆっくり真摯に伝える。
ヘンリーはうんうんと、腕組みをしながら首を縦に何度も下ろしていた。
アベルが伝え終えると、マザーはアリアの様子を優し気な瞳で眺める。
「……まあ…………。そうでしたのね……。アリアさん、いいお友達を持ちましたね」
「……はい。ありがとうございます、アベルさん、ヘンリーさん」
アリアは二人にそれぞれ、優しく微笑み掛ける。
「へへっ、いいんだよ。オレ達は友達だろっ?」
「あっ、いや……。君が楽しく過ごして行けるなら僕はそれで……」
鼻の下を掻くヘンリーに対し、アベルは頭の後ろを掻いて直視出来ないのか、アリアの瞳から逃れるように視線を自分の膝に落とした。
耳が赤くなっていたが、部屋の灯りが薄暗いので気付かれることは無かった。
「……では、順を追って、アリアさんについてお話致しましょう。アリアさん、よろしいですか?」
「あ、はい。構いません。お二人は……友達ですから」
マザーに問われ、アリアは目を細め快諾する。
「一通り私がお話しますので、質問は後でお願いいたしますわ。では、先ず重複しますが、アリアさんがこちらに来た経緯について……」
マザーはアリアについて話し始めたのだった。
◇◆◇
――アリアがここに来た経緯はヘンリーから聞いた通り、
傷だらけで近くの森で倒れていたという事。
そこで娘を送りに来た、旅の富豪に助けられたという事。
身体の傷は早めに治ったものの、八年間眠りに就いていた事。
そして、
「……彼女は眠りから覚めた時、呪われていました」
マザーから新しい情報が伝えられる。
「「……えっ!!??」」
アベルとヘンリーは目を見開いた。
「…………、魔が憑りついていたのでしょうね……。私も彼女が目覚めるまで気付かなかったのです。アリアさんが目を覚ました時、彼女の周りに異様な魔力を感じて……、彼女は私達に襲い掛かりました」
「その節は、す、すみませんでした……。……その……、襲った時の事は憶えていなくて……」
アリアはマザーに向かって頭を下げる。
「……いえ、いいのです。結局大したことはありませんでしたから……。お預かりしていた富豪のお嬢様が機転を利かせて下さいまして……事なきを得ました。まさか呪われているとは……。呪いに気付いて直ぐ様呪いを解いたのですが……、あの姿を見てしまったシスターの一人は今もトラウマを抱えています。ただ、アリアさんと接するのは問題ないようなのでそのままにしておりますわ」
「い、一体……、どんな姿だったんですか……?」
あ。質問は後でって云われたんだった……。とアベルは口を覆った。
「瞳が赤く輝き……、唇は歪み……、メラよりもずっと大きな炎を宙空に……」
ぶるぶるぶるっ、とマザーは思い出したのか身体を震わせる。
「え……」
アリアがそんなことを……?
アベルは驚きに瞳を瞬かせた。
「……目覚めたばかりで魔力が不足していたのでしょう。結局は不発に終わったのですがその後、暴れてこの修道院から出ようとしたのです。そこで富豪のお嬢様が呪われていると仰られて、呪いを解いて……。……アベルさんが何か知ってらしたらいいのですが……。アリアさんは魔物……いえ……、魔族と接触があったりしませんでしたか?」
「魔族、と……?」
マザーの言葉にアベルが固まる。
「ええ……、推測の域を出ませんが、魔族は時に穢れを人間に移して行きますから……。その所為で呪われて凶行に至ったのではないか……、と」
何か心当たりはありませんかとマザーが話を一時止める。
すると、アベルもヘンリーも黙り込んでしまう。
………………………………、
…………ゲマかっ!!!!
男二人は険しい顔で唇を噛み締めたのだった。
「…………アリアは、ある魔族の男に……その……、……翼、を……」
アベルはそれ以上言えず、言葉を飲み込む。
痛々しいあの出来事を語ることは出来そうになかった。
「…………つ、ばさ……、ですか……?」
「翼……?」
マザーとアリアは首を傾げている。
「…………っ、何でもありません。アリアは、魔族と接触したことがあります。そいつの所為で……呪われたんですね……!!」
アベルはアリアを悲痛な顔で見つめた。
けれども、アリアは瞳をぱちぱちと瞬かせるだけで首を傾げたまま。
「…………やはり、そうだったのですね……。……実は、呪いは完全に解けていないようなのです……」
マザーはアリアの頭を撫で、憂いの顔を浮かべる。
「「え……?」」
「……呪いを解いた後、聖なる加護を授かるよう、アリアさんに神の祝福を受けてもらおうと洗礼式を行いました。……ですが、アリアさんの祈りは届かず神は彼女を拒みました。まだ呪われているのでしょうね……。とても強いチカラで、私では完全に解いて差し上げられず……。もしかしたら、記憶が戻らないのもその所為なのかも……と。こちらも断定は出来ないのですが……」
「そんな……」
「……っ……」
マザーの話にアベルとヘンリーは“ぎりっ”と歯噛みした。
マザーも眉尻を下げ、瞳を伏せる。
そんな様子の三人にアリアは、
「……あ、えと、マザー。私は別に……平気です。皆さん親切にして下さるし……。記憶はありませんが、暴走ももうしていないんですよね?」
「……ええ。あれ以来一度もありませんよ」
「なら良かった……。あ、お二人も気にしないで下さい。洗礼を受けられなかったお陰で自由にさせていただいているので、特に不便はないんです」
マザーに訊ねたアリアは穏やかに微笑んでいた。
アリアはゲマと縁を作ってしまったようです。
ゲマさん……。
そろそろ、修道院から出たいナ~。
キャラ達に任せてると、中々進まねぇ……!
こんな時プロットとかちゃんと書けばいいんだろうと思うのだけど、プロット書いても書かなくても多分変わんないんだろうな……。はぁ。
と、ぼやいてしまいました。
楽しいのでこのままイキマス。
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