じゅーにわ。
同衾翌日、どきどきの目覚めです!
では、本編どうぞ!
◇
――朝。
チチチ、ピチチ……。
小鳥のさえずる声が窓の外から聞こえて来る。
頬に温かな光が差して、アベルの肩に何かが触れた。
「……ベル、アベル。起きて。お父さんもう起きてるみたいだよ?」
「……んん……?(……もう朝かぁ……)」
アベルが目を擦りながら身体を起こすと、アリアがベッドの縁に座って優し気な笑みで覗き込んでいた。
「おはよう、アベル。今日もいいお天気だよ」
アリアはアベルに一声掛けて立ち上がり、窓へと近づいて外を見上げる。
……空は澄んだ青色で、雲一つない。窓から差し込む光がアリアの翼を照らした。
「……ぁ。アリア……」
――そうだ、昨日、彼女と出会って……、夢じゃなかった……。
アベルは目を見開く。
「……ん? どうしたの?」
「……ううんっ、何でもない。おはよう、アリア!」
「うん、おはよう!」
アベルは目の前にいる少女に最上の笑顔で挨拶をする。
アリアもアベルの笑顔を見ると嬉しそうに破顔した。
「ふふっ、今日も元気そうで良かった! そういえば、さっき下にお客さんが来てたみたいだったよ?」
「そうなの?」
「うん、昨日アベルが言ってた、アベルのお父さんのお友達……なの、かな?」
さっき、階段の下をチラッと覗いたら、中年女性と小さな可愛らしい女の子が見えた、とアリアは背中にある羽をパタパタと動かしたかと思うと、背伸びをする。
「……あっ、そうかも! ちょっと行って来る! アリアも行かない?」
「え? あ、うーん……、今はちょっと恥ずかしいかなぁ……」
アベルに誘われたものの、アリアは気まずそうに胸の前で両手指を合せ、上目遣いにモジモジ。
「え? 何が……?」
「っ、いいからいいから。一人で行って来て?」
要領を得ないアベルの背をアリアは押した。
「っ? あ、うん、わかった。また後で呼びに来るから、ここにいてね」
「うん、私ここにいるね」
アリアはにこにこと微笑んで手を振り、階段を下りるアベルを見送る。
「……見えないとはいえ……、子ども同士とはいえ……、同衾は恥ずかしい……(アベルの寝顔めっちゃ可愛かったーー♡ あれこそ天使……♡♡)」
アベルの姿が見えなくなると、アリアは熱い頬を両手で覆い、その場に座り込んで悶絶した。
◇
「……アリアの様子何か変だったな……(何か恥ずかしいことしたっけ……?)」
アベルが何となく二階を見上げるが、アリアの姿は見えなかった。
そうして、そのまま階段を下りる。
「起きてきたかアベル!」
「父さん、おはよう!」
一階に下りるとパパスに声を掛けられ、アベルは元気に挨拶を返す。
パパスはアベルの様子にうんうんと頷く。「今日も元気で何よりだ!」とでも思っているのだろう。
「ああ、おはよう。昨日はよく眠れたか?」
「ん?」
「独り言なのか、寝言なのか、ぶつぶつ言っていただろう?」
「ぁ……、あはは……。寝言言ってたのかなぁ……(父さん確かに寝てたのに……)」
パパスの指摘にアベルはどきっとして、慌てて頭を掻いた。
そして、その場に居たサンチョやビアンカのお母さんが「おはよう」と挨拶してくれる。
――あ、ビアンカ可愛いなぁ……。
アリアも可愛いけど、ビアンカも可愛いよね。
アベルがビアンカを見ると、お母さんの後ろでビアンカがにこにこ、「おはよう」と手を振ってくれていた。
……アベルも軽く手を振る。
「薬が手に入ったので、おかみさんとビアンカは今日帰ってしまうらしい。しかし女二人では何かと危ない。二人を送って行こうと思うのだが、お前もついて来るか?」
「え……、またそれ……?」
ぽろっと、アベルの口から零れる。
「んん? またとは?」
「っ、あっ、うんっ! 行くっ!」
……何だ?
何で
アルカパに行ったことなんてないはずなのに……。
アベルはつい口を衝いて出てしまった自分の言葉にはっとして、慌ててパパスに返事をした。
「よし、そうと決まったらさっそく出かけることにしよう!」
「っ、ちょっと待ってっ!」
「んん?」
「すぐ準備してくるから!!」
アベルは踵を返し、階段を駆け上がって行く。
「アベルっ? ど、どうしたのだ……!? 隣村に行くくらいなら何も必要は……」
パパスはアベルの背を見つめ首を傾げ、「すまないな」と、ダンカンのおかみさんとビアンカに断りを入れる。
「いいよいいよ。今更多少時間が前後したところで、あの人がどうなるもんじゃないからさっ。持って行きたいものでもあるんじゃないのかい? ビアンカ、待てるかい?」
「へ? うん、大丈夫(でも……早く帰ってお父さんにお薬あげたいなぁ……)」
おかみさんに云われてビアンカは深く頷いた。
……そうして三人はアベルを待つことにした。
◇
ダダダダダッ!
階段から慌てたように、木の板を踏みしめ駆け上がって来る音が聞こえる。
「はぁっ、はぁっ、……っ、アリアっ!」
アベルは階段を駆け上がると、部屋に入るなりアリアの名を呼んだ。
アリアは部屋の扉に背を向け、開いた窓辺に頬杖をつきながら小鳥達と戯れていた。
アリアの翼には数羽の小鳥が留まり、歌を歌っている。
「え……? あ……アベ……」
後ろから声を掛けられたため、アリアはアベルの声に振り向く。
すると、アベルが駆け込んで来るなり大きな声を出したからか、小鳥達が一斉に飛び去ってしまった。
「…………あっ(飛んでっちゃった……)」
「はぁ、はぁ……っ、あ。……ごめん」
名残惜しそうに外を見てアリアが云うので、アベルは呼吸を整えながらも謝る。
「ううん、気にしないで。空気を入れ替えようかと思って開けただけだから。そしたら小鳥達が遊びに来てくれて。ふふっ、こんなの初めてで嬉しくてつい夢中で小鳥達の歌、聞いちゃってた」
話しながらアリアは窓を閉めた。
朝陽に当たるアリアの髪がきらきらと輝いている。
「……はぁ、はぁ……、あ、窓触れるんだね」
アベルは額に薄っすら掻いた汗を拭う。
髪、きれいだなぁ。
柔らかくて、ふわふわしてるんだよね……。
僕の髪とは違う。
昨晩こっそり撫でた手触りを思い出して、また今度触らせてもらおうとアベルは思った。
「あ、本当。ふふっ、何の基準で触れないのかな? 色々試してみないとだね」
「はぁ、はぁ……、うんっ」
アリアの笑顔にアベルは頷く。
「ところでアベル、慌ててどうしたの?」
「っ……はぁ、はぁ……、そうだったっ。アリアっ! 僕これからアルカパまで行くんだけどっ」
「アルカパ……?」
アベルは肩で息をして、少しずつ整ってきた呼吸とともに告げる。
「っ、はぁー……、……一緒に行かないっ?」
「え、また、い、一緒に……?(アルカパって……何……)」
アベルの誘いにアリアは目を丸くする。
「うんっ、隣村に父さんのお友達のおかみさんと女の子を送っていくんだ」
「あ、アルカパって隣町のことね。私はてっきりアルパカかと……」
「アルパカって何?」
アリアがアルカパを理解したものの、今度はアベルが質問してくるものだから、アリアは顎に手を添え、答える。
「えーと……、羊……みたいな……? 何か似てるなーって……、アルカパ……、アルパカ……。ね? 間違えそうじゃない?」
「…………、プッ。あははっ! アルカパは町だよ? アルパカって何? アリアは面白いことを言うね。羊は羊でしょ?」
アリアの説明にアベルは「あははっ!」と愉快そうに腹を抱えた。
「っ、そうなんだけども、違うんだよ~!」
「ふーん……? ま、いいや、行こうよ! 送って行くだけだからすぐ帰って来れるし!」
「っ、いいの? すぐ戻るならお留守番しててもいいんだけど……(モンスター怖いし……)」
「そうと決まったら、すぐ出発だよ! 下で父さん達が待ってるから!」
「あっ! ……おーい……、アベル~?(人の話聞いてないなぁ~……?)」
アベルに手を取られ、アリアは階段に引っ張られていく。
まぁ、いいか。
ここに居ても何してたらいいかわからないもんね。
アベル強いから護ってくれるし。
アベルのお父さんも強いって言ってたもんね。
と、アリアは小さい身体に強い力を持つ少年の背を見つめた。「急いで急いで!」とアベルに急かされアリアはついて行くことになったのだった。
アベルは力が強く、アリアはひ弱で、いつも強引に引っ張られていきます。
強引にマイウェイ。
六歳児ってこんな感じかなーって。
さて、次回はアルカパへと向かいます。
アルカパ編の始まり始まり。
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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!