ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ピエールさんと再会ですっ!

では、本編どぜう。



第百二十九話 盟友ピエール

 

「……ふふっ、そうだったんですね。それは大変でしたね」

 

 

 アベル達がこちらに向かっていることなど知らないアリアは、柔らかく微笑み【スライムナイト】を見下ろしていた。

 【スライムナイト】も恭しくアリアに頭を下げ、頭を左右に振っている。

 睨み合っていたわけではなかった。

 

 

「……私の不徳の致すところ。まだまだ修行が足らなかったのです。アリア嬢をお護りすることこそ、私の喜び……、……ん? 何ヤツっ!?」

 

「えっ!? あっ!!!!」

 

 

 アリアが驚いて大きな声を挙げる前に、【スライムナイト】はアリアを突き放し、自分も背後に跳躍する。

 

 

 

 ピシッ!

 

 

 と、アベルの【チェーンクロス】が【スライムナイト】とアリアの間に打ち込まれたのだった。

 

 

「っ、はぁっはぁっ、スライムナイトっ! アリアに何をするつもりだっ!?」

 

 

 【スライムナイト】とアリアの距離が離れると、アベルはそこに割って入りアリアを背に隠して【スライムナイト】に向き合う。

 

 

「あっ、アベルさんっ、彼は……!」

 

 

 彼は悪い魔物じゃないんです……!!

 

 

 アリアはアベルの背中に誤解だと告げようとするが、

 

 

「大丈夫だったかい? 怪我は……?」

 

「っ、怪我はしてないです……」

 

 

 肩越しに気遣われて、アリアは昨日のことを思い出したのか、“ぽっ”と頬を染めたのだった。

 

 

「……引け。彼女の前で殺生したくない」

 

 

 アベルはキリッとした顔で告げるのだが、【スライムナイト】はその場から動かず、さりとて襲って来る気配もない。

 【スライムナイト】は黙ったままアベルを見つめ様子を窺っているようだった。

 

 

「はぁ……アベル!! おまっ、足が速いっつーの……ふぅ、スライムナイトか……!」

 

 

 ヘンリーも駆け付けてきて【ブロンズナイフ】を構えた。

 だが、【スライムナイト】が動く様子はなく、彼はまだアベルを見ていた。

 

 そして、

 

 

「…………、…………アベル……!? ………………な、なんということだ…………!!!!」

 

 

 ヘンリーの大きな声に【スライムナイト】が突然地面に剣と盾を放り投げ、両手の拳を握り締め身体を震わせる。

 

 

「…………? …………何だ?(力を溜めているのか?)」

 

 

 アベルは装備を手放した【スライムナイト】の様子に首を傾げた。

 

 

 

 

 次の瞬間――。

 

 

 

 

「……(あるじ)殿!!」

 

 

 【スライムナイト】が緑のスライムからよっこいしょと降りて、アベルに走り寄って来ると、その勢いのままアベルに飛び付く。

 

 

「え」

 

 

 アベルは武器を持たない相手に攻撃するわけにもいかず、飛び付いてくる【スライムナイト】を思わずキャッチした。

 

 

 

 

「主殿ではないかっ!! 私だ! ピエールだよ!!」

 

 

 

 

 【スライムナイト】がピエールと名乗った途端、アベルの目が見開かれる。

 

 

「えっ!? ぴ、ピエールっ!!??(ピエールってあの(・・)っ!?)」

 

「わははははっ! このような場所で主殿と再び相見えようとは!!」

 

 

 ピエールは兜越しにもかかわらず、涙を辺りにまき散らしながらアベルに縋りついていた。

 アベルも「う、うん……」と懐疑的ながらもピエールを抱き抱えている。

 

 

「……あれ? お二人はお知合いですか?」

 

「…………ど、どうなってんだ?」

 

 

 アリアとヘンリーが目を丸くして二人を見ていた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「…………あ、えっと……。……ピエール、君はあの(・・)ピエールなのかい……?」

 

 

 アベルは瞳を瞬かせながら、たどたどしく訊ねる。

 

 

「……主殿、私こそ主殿に問いたい。主殿は、あの(・・)主殿なのか??? 名前が……、その……。いや……。うん……今はアベル殿か……」

 

「ん? ピエール、何言って……?」

 

 

 ふむふむと、ピエールは一人わかった風に頷き、地面に落とした武器を拾って緑のスライムの元へと とてとて歩いていくと、よじ登って定位置へとついた。

 

 

「……主殿。私は今はアリア嬢に仕える身、どうか別行動することを許されたし」

 

「え……」

 

 

 ピエールの言葉にアベルは「どういうこと?」とアリアに目を向ける。

 すると、

 

 

「……あ、彼が私を助けて下さった騎士様です。……ふふっ♪」

 

 

 アリアはピエールの傍へと寄って行き、手の平を上に向けてピエールを指し紹介したのだった。

 

 

「なっ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっは! “引け! 彼女の前で殺生したくない”とかっ!! ウケる~!」

 

 

 この、格好つけめっ!

 

 

 ヘンリーがアベルの顔マネしてから腕を頭の上で組むと、緑の野を歩きながら笑い飛ばす。

 

 

 ――ピエールを紹介されたアベルとヘンリーは、アリアも北の町へ行くというので“じゃあ一緒に”と同行することになったのだが、途中魔物に襲われた為戦闘へ。

 そこでアベル達は戦ったのだが、魔物の攻撃がアリアに向くと、ピエールが庇いアリアが攻撃する、といった連係プレーを見せ、あっさり魔物を倒してしまった。

 

 アリアは戦闘慣れしている様子で、ピエールが怪我をすれば【ホイミ】を掛けて回復させたり、補助呪文も適宜掛けてくれるので、アベルは“昔の怯えて僕の後ろに隠れていたあの頃のアリアじゃないんだな……”と淋しさを覚えたのだった。

 

 そうして、何度か魔物と遭遇するが、異なる種の魔物の群れと遭遇すると、アリアは爆発を起こす呪文【イオ】で魔物を一掃してしまった。

 それどころか、チェーンクロスで躊躇なくバシバシと魔物を攻撃し、倒しているではないか。

 殺生しまくりなんですが、それは。である。

 

 十年の間に随分逞しくなったアリアにアベルはやっぱりちょっぴり物悲しさを感じた。

 

 

「っ、ヘンリー、そんなに笑わなくたっていいだろう?」

 

 

 アベルも歩きながら少し後ろを歩くアリアの方をちらちらと窺う。

 ヘンリーに指摘された通り図星だったのかバツが悪そうだ。

 

 アリアはピエールと楽しそうにお喋りしている為、アベルの視線には気付かなかった。

 

 

「……くっくっく、だってさ。アリアめっちゃ強いじゃん(そりゃ修道院から出ても平気だわ!)」

 

「ぅ。あんなに強くなってるとは思わなかったんだよ……。ムチ捌きなんて……もう……」

 

 

 僕のあげたチェーンクロスをまだ使ってるみたいだけど、振り方が僕より上手くなってたな……。

 

 

(……ああ、その鞭で僕を打ってくれ……。)

 

 

 アベルはアリアにうっとりと期待の眼差しを向ける。

 

 

「……アベル、やめとけよ。それもう忘れた方がいい。ドン引きされるぞ」

 

「……えっ!? ま?」

 

 

 ヘンリーに指摘され、アベルはハッと我に返る。

 

 

「……おう。オレもドン引きだよ……」

 

 

 アベル、お前【ムチおとこ】に何されたんだよ……。

 

 

 ヘンリーの顔は引き()っていた。

 

 

「っ……。アリアには……………………、………………バレてなさそうだな」

 

 

 アベルはアリアの様子をちらちらと見て、聞かれていないことを確認するとほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「にしても、アリアもだけど、アベルに魔物の知り合いがいたなんてなぁ。驚いたよ」

 

「はは……。魔物の中にも悪意のない個体もいるんだよ……」

 

「ふ~ん……」

 

 

 魔物も色々いるんだなぁ、とヘンリーが笑うとアベルは複雑そうに笑みを返しながらピエールをちらりと見る。

 ピエールはアリアと楽しそうに話をしていた。

 

 

(何でピエールが……???)

 

 

 アベルの頭の中には疑問符ばかりが浮かぶ。

 そんな時、

 

 

「あっ! 見えてきましたよ。あそこですっ、北の町。オラクルベリー!」

 

 

 アリアが行く先を指差し、そちらへ目を向けると壁に囲まれた大きな町が迫っていた。

 




アベル、いつか鞭で打ってもらえるといいね……。
グリンガムのムチで。ヤダ死んぢゃうw

さて、次回からオラクルベリー編開幕です!

楽しい町に来ましたね♪

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読んでいただきありがとうございましたっ!

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