ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

オラクルベリー女性失踪事件発生。

では、本編どうぞ。



第百三十一話 オラクルベリー女性失踪事件

 

 ヘンリーの後について行くと、そこは酒場でアベルは酒場のマスターに一杯ご馳走になっていた。

 

 

「修道院じゃ飲めなかったもんな。確か……、修道院じゃ酒はダメなんだっけ?」

 

「…………う、うん……、そう、みたいだね……」

 

 

 アリアは持ち込んでたけど……。

 

 

 アベルはアリアの自由過ぎる行動に、記憶を失ってもそういうとこは変わらないんだなと思い、口角を上げグラスをまた傾け酒を一口。

 

 

「……ん? 何だよ? 歯切れが悪いな。……何かあったのか?」

 

「…………べ、別にっ!?」

 

 

 ふと、アベルの脳裏に昨晩アリアがそっと自分の手に菓子を乗せてくれた姿が浮かぶ。

 

 

 “はい、ナイショですよ?”

 

 

 昨日、アリアが僕に酒入りの菓子をくれた時の瞳が可愛かった。

 二人だけの秘密だから、ヘンリーに言うわけにはいかない。

 

 

「怪しいなあ~? お前がそんな風になるってことは……アリアのことかな~? 何があったんだ?」

 

「な、何がっ!? 別に何もないけど!?」

 

 

 ヘンリーに怪訝な顔をされ、アベルは慌てて酒を一気に飲み干す。

 

 

 

 

 ………………。

 

 

 

 

 酒は一気に飲んでしまうと、早く酔いが回りやすい。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「はははっ! なるほどなっ! お前、昨日アリアに酒入り菓子をもらったんか! それでかぁ!!」

 

「? なんだよ……。二人の秘密なんだから……」

 

 

 アベルはつい気が大きくなってしまい、ヘンリーに昨夜のことを話してしまっていた。

 ただし、彼女を押し倒したことは秘密だ。

 

 けれどもヘンリーは片側の口角だけ上げ、何か知ってる風にテーブルに肘をついて、その手を頬に当てるとニヤニヤとアベルを見る。

 

 

「へえ……二人の秘密ねえ……(……羨ましいぞ!)」

 

「な、何……」

 

 

 目を細くされ、じとーっと見られてアベルは“あれ? 何かマズイこと言ったかな?”と戸惑った。

 するとヘンリーが、ぽつり。

 

 

「……オレ、アリアから伝言を頼まれたんだよなあ……。けど、何かムカつくから教えなーい……」

 

「え?」

 

「マスターおかわりくれる~? 同じので」

 

 

 小さく呟いた後、ヘンリーはおかわりを注文する。

 マスターが「はいよ。ちょっと待ってね」と水割りを作り始めた。

 

 

「っ、アリアからの伝言だって!?」

 

 

 アベルがテーブルに手を叩き付け驚きの声をあげる中、出来上がった酒がヘンリーの前に置かれると、ヘンリーはアベルを無視して、

 

 

「…………ああ、来た来た。いっただっきまーす! …………んぐんぐ」

 

 

 っかー!! いいなこれっ! 気持ちがハイになるっ!!

 

 

 また一気に酒を飲み干したのだった。

 そんな様子のヘンリーにアベルは彼の胸元辺り、奴隷服を引っ張る。

 

 

 ビリッ、

 

 

 と、耐久力のないぼろきれは少し破けてしまった。

 

 

「……っ、ヘンリー教えてくれっ! アリアは何てっ!?」

 

「っ…………おま……、必死だなぁ~……、そんなにアリアちゃんのことが好きなのかい?」

 

 

 ただでさえ奴隷服のままなのに、破かれるとは……。

 防具絶対買ってもらうからなっ!

 

 

 ヘンリーはちょっとお怒りモードでアベルを煽る。

 

 

「っ!!?? ちっ、違うっ!! べ、別に僕は……!!」

 

「アリアちゃんカワイイもんなぁ……? オレの事憶えててくれてたらオレだって……」

 

 

 ヘンリーが手にしたままのグラスに目を落とし傾けると、氷が小さく“カランッ”と音を立てた。

 

 

「え」

 

「…………何でもない。今は気になる子がいるからいいんだ」

 

「ヘンリー! 教えてくれっ」

 

 

 アベルは食い下がる。

 

 

「しょうがねえなあ……、さっき言ってた酒入り菓子だっけ……? あれ、食わせてごめんってさ。あんなになるとは思わなかったって」

 

 

 先程アベルがピエールと話をしている間、ヘンリーはアリアに、

 

 

“アベルさんに、おかしなものを食べさせてごめんなさいと伝えて下さい。まさかあんなことになるなんて思わなくて……”

 

 

 と云われていたのだった。

 

 ちなみに“あんなことって何?”とは訊いたが、アリアは頬を染めてそれ以上は教えてくれなかった。

 

 

「え……? ア、アリアが謝ってたのかい?」

 

「……そうだけど? 何かあの菓子、客からの貰い物らしいぜ。仕事中に貰ったから食べれなくて持って帰って来たって。お前、部屋で倒れたんだってな?」

 

「あ……、っ、……ああ」

 

 

 二人の秘密だったって云ってたのに、話したんだ……。

 

 

 アベルはちょっぴり悲しくなる。

 すると、

 

 

「……その菓子、ひょっとして葡萄の味がするヤツかな? こんな丸い形の砂糖が付いた……」

 

 

 不意にマスターが指で菓子の形を形容し、険しい顔で話し掛けて来た。

 

 

「……え? あ、ええ……」

 

 

 急に何だろうと、アベルはその通りだと相槌を打つ。

 

 

「あ、いや、すまない。話が聞こえてね。それ、最近町で人気の菓子だと思うんだが……、それを食べた直後行方不明になる女性がいてね。つい最近販売を中止にしたんだよ」

 

「何だって!? そいつは一体どういうことだっ!?」

 

 

 マスターの言葉にヘンリーが身を乗り出した。

 

 

「……女性が行方不明になった現場に行くと、その菓子が落ちているんだよ。もう三人程行方不明だ」

 

「「っ……!?」」

 

 

 アベルとヘンリーは互いに目を合わせ見開く。

 

 

「落ちていた菓子のアルコール成分はそれ程じゃないはずなんだが、毎度現場に残される菓子は六個入りの内五つ。残り一つに高濃度のアルコールを入れてあったのか、薬が入っていたのか……。現場に残された女性の遺留品から意識を昏倒させ攫ったんじゃないかって町では見てる」

 

「っ、アリアは客に貰ったって……!」

 

「……そういや、すぐ食べるように勧められたけど、仕事中だからと断ったって言ってたな」

 

 

 マスターが、“元々その菓子に使われた酒はうちが仕入れているもので、昏倒するような強い酒を使っていない”と教えられ、アベルとヘンリーはこくりと唾を飲み込み、

 

 

「「………………、…………良かった…………」」

 

 

 アリアが攫われることがなくて良かったと、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。

 そもそも、ピエールがついているので大丈夫そうではあるが……。

 

 

「ここの所、柄の良くない連中を見かけるし、若い女性を見かけたら気を付ける様に声掛けしているんだよ。君達も町で若い娘を見かけたら言ってやってくれ」

 

「……わかった! つまり、可愛い子に声掛けていいってことだなっ! ちょっとドキドキするけど任せてくれ! マスターのこと出していいかい?」

 

 

 ヘンリーはマスターの頼みを快諾し、伺う。

 

 

「……はははっ! ああ、構わないよ。そんなんで行方不明になる女性が減るならいくらでも。女性がこの町に来なくなると町も廃れてしまうからね」

 

 

 そうしてマスターは協力してくれるならと、ヘンリーのおかわり分も奢ってくれた。

 

 

「……行方不明か……」

 

 

 また十年前みたいなことが起こっているのだろうか……?

 だが、今度は女性ばかり……、一体誰がこんなことを……?

 

 

 アベルはこんなこと今まであったっけ? と記憶を辿るが、やはり何も思い出せなかった。

 

 

「……アリアが無事で良かったな」

 

「うん……。彼女は運がいいのかもしれないね」

 

「運がいい……? まあ……これまで色々あったから、それはどうだかわからんけどな」

 

「あ……それもそうだね……」

 

 

 ヘンリーに指摘され、アリアは人間にされてしまった元天使なんだと思い出す。

 翼があってもなくても、自分にとったらアリアはアリアであって何も変わらない存在なのだ。

 アベルはそんな風に思っていた。

 

 

「じゃあ……、そろそろ行こうか。マスターご馳走様っ! ……今度こそ防具屋に行こうぜ!」

 

 

 ヘンリーが席を立ち、“ほれ、見てみろ”と胸を張って破かれた奴隷服をアベルの目に焼き付けさせる。

 先程アベルが引っ張った部分に穴が開いていた。

 

 

「あ、ああ……ごめん」

 

 

 アベルは謝罪してヘンリーに防具を買うことを約束したのだった。

 




オリジナルエピソードですね。
ゲーム中には一切登場しないエピソードです。

たまにはこういうのもいいかな。
アリアさん華麗にスルーしてるっていう。運がいいのか悪いのか。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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