ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ヘンリーさんの服を買いに行きましょう。

では、本編どうぞ。



第百三十二話 奴隷服を脱ぎ捨てたくて

 

 アベルとヘンリーは酒場を出ると、再び町の散策に乗り出した。

 

 

「とりあえず、壁沿いに東に行ってみようぜ!」

 

 

 ヘンリーが町の東に歩いて行くので、アベルも付き合う。

 ところが、町の東には人っ子一人歩いている様子は見られなかった。

 

 そんな時、

 

 

 うにゃ~ん。

 

 

 丁度二人の目の前に町猫なのか三毛猫がやって来て、アベルの足元に頬を摺り寄せる。

 

 

「……猫……」

 

 

 アベルが立ち止まりしゃがむと猫を撫でてやる。

 すると、猫は咽喉を鳴らして気持ち良さそうに目を細めていた。

 

 

「猫か~、可愛いな~!」

 

 

 前を歩いていたヘンリーが戻って来て猫に触ろうとすると、

 

 

 フーーッ!!

 

 

 と、威嚇されてしまう。

 

 

「……っ、何だよ、アベルはオッケーでオレは駄目とか……!」

 

 

 ヘンリーは猫に触れようとしていた手を引っ込め後退った。

 猫はその後すぐに去って行ってしまう。

 

 

「ははは……。上から急に触ろうとするから驚いたんじゃないかな?」

 

「……ちぇっ、……しっかし、この辺は猫しかいないな。こっちは民家ばっかなのかな?」

 

 

 よし、ここに入って訊いてみるか! とヘンリーは民家らしき屋敷へと入る。

 

 

「っ、ヘンリー……!」

 

 

 アベルもヘンリーを追って民家へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 オラクルベリー南東に位置する民家へと、アベルとヘンリーは訪ねる。

 

 

「ごめんください」

 

「ヘンリー……!」

 

 

 民家に入ってすぐ、ヘンリーがアベルが止めるにもかかわらず、中に居た中年女性に声を掛けると、女性は丁度お茶を飲み終わったところなのか、立ち上がる所だった。

 

 

「さあさ、亭主と子供が帰って来るまでに夕食作っておかなきゃね……」

 

 

 女性はカップを手に独り言を呟くと、炊事場へと向かおうとしてアベルとヘンリーに気が付く。

 

 

「……あ、忙しい所だったかな……?」

 

「夕食を作るって言ってたよ。邪魔しちゃ悪いよ」

 

 

 アベルが他を当たろうよと、ヘンリーの服を引っ張る。

 すると、当然……、

 

 

 ビリリ。

 

 

 ヘンリーの服は破れてしまった。胸元が開けて、ヘンリーのそこそこ引き締まった上半身が露出する。

 

 

「あ、ごめ」

 

「っ、イヤンッ! って、お前なあっ! ボロなんだから強く引っ張んなよな! こんな成りじゃ、もしも城に帰ろうとしたって帰れないだろうが!(裸の王子なんて恥ずかしいわっ!!)」

 

 

 アベル、お前はちゃんとした服(?)を持ってたからいいけど、オレのは無いんだぞ!

 

 

 アベルが“やばっ”と引き攣り笑いで謝るが、ヘンリーは恥ずかしくなって慌てて胸元を隠した。

 すると、くすくすくすと、突然の訪問者であるアベルとヘンリーの様子を中年女性が笑う。

 

 

「おや、あんた旅の人だね。でも帰る所があるっていいもんだよ。とか言っても、若い人にはまだわからないかねえ……」

 

 

 ヘンリーのぼろぼろの姿に帰る家がないのかと思った中年女性は、“せっかく訪ねてくれたところ悪いけど、これから忙しくなるから他を当たっておくれよ”と告げて、アベルとヘンリーを家から追い出してしまった。

 

 

「……ほら、邪魔しちゃったじゃないか」

 

 

 アベルは閉じられた民家の扉を前に、言った通りだったろ? とヘンリーを見る。

 

 

「…………帰る家か……。…………そんなところがあったら、いいよなあ……。オレ達に帰る場所なんかないもんな?」

 

「……………………、……ははっ、そうだね……」

 

 

 そうは言うけど、ヘンリー……。

 君は城に帰ることが出来るんじゃないのかい?

 

 

 ヘンリーの言葉にアベルは暫しの沈黙の後、頷いたのだった。

 そうして、二人は再び歩き始める。

 

 

「あ、防具屋みっけ!」

 

 

 歩いて間もなく、民家向かいの道具屋の左隣に防具屋を見つけ、ヘンリーが“服~!!”と喜び勇んで扉を開けると中へと入って行ってしまった。

 

 

「……ヘンリー! そっちは裏口だよ!?」

 

 

 アベルも防具屋の裏口に入って行ったヘンリーを追って中へ。

 すると、中ではヘンリーの嘆く声が聞こえて来る。

 

 

 

 

 

「えぇ~!? こっちからじゃ売ってくれないの!? そこを何とかっ!」

 

「こ、困りますよお客さん……。カウンタ―内はプライベートなんですから……」

 

 

 ヘンリーが防具屋の店主に迫っていた。

 店主はぐいぐいと迫って来るヘンリーの細マッチョな胸元をチラチラと見ながら頬を赤くしている。

 

 防具屋の店主は妻帯者なのだが、そっちもイケる口なのだろうか……。

 

 

「ヘンリー、無茶言っちゃいけないよ」

 

「だってよ、この格好じゃ……、っ、恥ずかしいだろ……」

 

 

 アベルがヘンリーと店主の間に入って二人を引き離すと、ヘンリーは恥ずかしそうに胸元を隠して視線を床に落とした。

 

 

「っ、カウンタ―越しにご注文下さればすぐご用意致しますよっ! お、おまけも致しますっ!」

 

 

 店主はヘンリーをうっとりと見つめる。

 

 

「…………な、何だよ。そんな眼でこっち見んなよ……」

 

 

 アベルを見るあの【ムチおとこ】みたいな目をしやがって……!

 オレは男だぞ!?

 

 

 ヘンリーは気まずそうに店主を見るとアベルの背後に隠れたのだった。

 気まずい空気が流れるもアベルが間に入ると、

 

 

「お客さん、知ってますか? なんでもインパスという呪文でいろんな物の鑑定ができるみたいですよ」

 

「へえ……。インパス……か……」

 

 

 そういや、覚えていたっけ。

 何に使うのかわからなかったから使わなかったけど……今度から使ってみようかな。

 

 

 アベルは、防具屋の店主に物の鑑定呪文【インパス】の使い道を教わり、ここに来たのは無駄じゃなかったなと満足した。

 一方で、防具屋の店主がアベルと話す間、ヘンリーを眩しそうにチラチラ見るので、ヘンリーはすっかり大人しくなってしまう。

 そこに、救いの神が現れる。

 

 

 すいませ~ん!

 

 

「はーい、ただいま~!」

 

 

 ふと、店に客がやってきて店主はカウンタ―へと行ってしまった。

 

 

「……おい、アベル。今のうちに他所へ行こうぜ。こんだけ大きい町だ、防具屋だって他にもあるさ」

 

 

 店主の舐めまわすような視線から解放され、ヘンリーが云い出す。

 

 

「……あ、ああ……。けどせっかくだから、二階にも行ってみないかい?」

 

「えー……。…………まぁ、いいけど……」

 

 

 アベルとヘンリーは防具屋の二階へと上がった。

 

 

「おや、あんたうちの人の知り合いかい? だったら聞いておくれよ。うちの人ったらずっと北東の大きなお城まで、商売に出たいなんて言うんだよ。でも、あんまり評判の良くないお城みたいだし、あたしゃなんだか心配で……」

 

 

 二階では、店主の奥さんが夕飯の支度をしながら憂いの表情を浮かべている。

 

 

「北東の城……?」

 

「…………うーん……(あのおっさん、奥さん居たんだな。良かった……。しかし、北東の城って……、なあ……)」

 

 

 アベルとヘンリーが奥さんの話にそれぞれ腕組みして考え込む。

 

 

「……状況をよく見て判断した方がいいと思いますね……。移転となると、色々と大変でしょうから……」

 

「ああ、そうだね。あたしもそう思うよ。聞いてくれてありがとね、うちの人にもよくよく状況を見るようにって伝えるよ」

 

 

 アベルの言葉に奥さんは少しほっとしたような顔をしていた。

 そうして、二人は防具屋を後にした。

 

 




防具屋のおじさんはバ……ゲフンゲフン。

ヘンリーって結構イケメンよねw

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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