オラクルベリー広すぎワロタ。
ヘンリーさんの防具を買いましょう。
では、本編どぞ。
◇
「さっきの防具屋で買わなくて良かったのかい?」
再び町を歩きながらアベルはヘンリーに訊ねてみる。
「いいんだよ。あのおっさん、何か視線が妙だったからな……」
ヘンリーは腕組みをして何となく胸元を隠しながら歩いていた。
二人は再び東に向かい、町を囲う壁沿いを歩き街の外れの広場へと差し掛かる。
そこでは子供達が“かくれんぼ”をして遊んでいた。
「かくれんぼか……オレは見つかっちまったな……」
子供達の遊ぶ様子にヘンリーがぼそっと呟く。
「……ははっ、アリアにね」
「そうそう。まさか、見られてるとは気付かなかったもんなあ、あれは反則だよなあ」
十年前、ヘンリーがラインハット城で隠し階段に隠れようとした所をアリアに見つかった記憶が思い出される。
「あはは……。何度宝箱を調べさせられたか……」
「……アベルが憶えててくれて嬉しいよ。今の彼女は何も憶えてないもんな。淋しい限りだぜ」
「だね……、でも……」
「けどさ……」
((……相変わらず可愛いっつーか、本当、美人だよな~!))
二人は同じことを思ったのか、今のアリアを思い出して口角を上げたのだった。
そうして二人は歩きながらもう一つの防具屋に気付くことなく通り過ぎ、突き当りまで来てしまう。
「あ、行き止まりじゃん。そこに階段あるけど、行ってみるかい?」
「そうだね、せっかくだし……。女性失踪事件についても何か聞けるかもしれないし」
「……別にお前が解決しなくてもいいと、オレは思うけどね」
アベルってあれだよな……。
厄介なことに首突っ込んで、解決しちまういい奴だよな……。
オレの時も助けに来てくれたし、マリアさんの時も手伝ってくれたし……。
そんなことばっかして疲れないんかな……?
ヘンリーはそう思ったが、アベルが優しい奴なのは充分わかっているので、その優しい性格が災いし、親友が辛い思いをしなければいいなと願うのだった。
◇
二人が階段を下って行くと、そこは地下牢で……。
「ここは地下牢。囚人と話したければ鉄格子越しに話し掛けるといい」
町の治安を守る兵士なのだろう、見張りの兵士が牢に立ち入ることを許可してくれる。
アベルとヘンリーは中へと立ち寄ることにした。
「……牢か……。うえぇ、カビ臭いな。ここで何か新しい情報を得られるとは思えないけどな……………………お?」
ヘンリーが鼻を抓むと、何かに気付く。
カビ臭さがわかるようになったってことは鼻が正常に戻ったんだな!
そういや、修道院で食べた料理とかもいい匂いがしてたっけ。
もう治ってたってことか……やったぜ!
ヘンリーは奴隷時代に莫迦になった嗅覚が戻ったことに今更気付き、僅かに指を離す。
するとやっぱりカビ臭くて鼻を抓み直したのだった。
「……鉄格子越しに話し掛けていいって言ってたね。あの牢に入ってる人に何か訊いてみようか」
「ん? んお」
アベルの言葉にヘンリーは鼻を抓んだまま頷いた。
アベルはいつの間にか鼻元にハンカチを当てている。パンを包んであるので、パンのいい香りがアベルの鼻腔を満たしていた。
すぅーはぁー、すぅーはぁー。
香ばしいいい香りだ……。
嫌な臭いは好い香りで相殺である。
そして、アベルは牢の扉傍にいる柄の悪そうな男に話し掛けた。
「ちょっと、話を訊きたいんだけど……最近この辺で女性……」
「全く、オレとしたことがカジノでイカサマがバレて捕まるとはなっ! その昔、人を攫っては売り飛ばしていた頃がオレの人生の華だったぜ!」
アベルが話し終わらない内に男が勝手に喋り出す。
「……人を……攫った……?」
ピクリと、アベルの眉間に皺が寄った。
「おうよ、昔な! 今じゃあイカサマがバレてこの様だ」
「……なら、最近この町で起きてる女性失踪事件は知らないんだね?」
男は素直に答えるが、アベルは鼻に当ててる手ではない空いた手で鉄格子を掴む。
アベルの後ろでヘンリーが男を睨みつけていた。
「あん? 知らねえなあ……。そんな事件あったんか? 姉ちゃん
へへへと男が下品な嗤いを浮かべると、
ガシャ、ガシャンッ!!
アベルは乱暴に鉄格子を揺らした。
「っ、な、なんでえ!? オレは何もやっちゃいねえよっ!?」
「……女性に何てことを考えているんだ……! …………行こう」
アベルは男を睨み付け踵を返し後ろに居たヘンリーの肩を叩くと、牢から離れる。
「人を攫って、っておい! まさかオレを攫いやがったのはアイツかぁ!? 全く、同情してやってソンしたぜ! あんなヤツ、一生出て来なきゃいいんだ!」
ヘンリーも気付いていたのか憤り、男を振り返って睨み付けると地下牢を後にしたのだった。
地上に戻って来ると、アベルが口を開く。
「……攫われた女性達は……、怖い目にあっているんだろうな……。どうにか解決できないかな……」
「……そうだな……。俺達で解決出来ることならいいけど……まだ情報が足りな…………って、あっ!」
「ん……?」
「防具屋!! みっけ!」
話の途中だったが、目と鼻の先に行きには気付かなかった防具屋を発見し、ヘンリーは喜悦の声を上げた。
「あ、さっき通り過ぎてたのか……」
「買ってもらうぞ!」
「わかってるよ」
二人は先程通り過ぎた防具屋へと向かう。
「いらっしゃいませ!」
アベルとヘンリーが防具屋に入ると、防具屋の店主がこれ以上にないという程の最上級の笑顔で迎えてくれた。
「そこの貼り紙に書いてあるようにお客以外の通り抜けはお断りだよ! いらっしゃいませ。ここは防具屋でございます。ご用はなんでしょう?」
「「……貼り紙?」」
二人は何のこっちゃと首を傾げる。
「あっ、こっちには貼っていませんでしたね。でもそんなことは関係ありません。ここは防具屋でございます。ご用はなんでしょう?」
要領を得ないアベルとヘンリーに、店主は笑顔を崩さずに手をもみもみ。
買わせる気満々らしい。
「え、あ、えーっと。買い物をしに来ました」
アベルも買う気なので、問題はない。
「お買い上げですね。どれになさいますか?」
店主も心なしか嬉しそうである。
「あ、オレ、これがいいな! 鉄の鎧! 中の服も付いてっから、町中は軽装で歩くよ」
「わかった。じゃあ、それにしよう。ご主人、鉄の鎧を下さい」
「鉄の鎧ですね。ありがとうございます。どちらさまがお持ちになりますか?早速装備なさいますか? きっとお客様にぴったりでございますよ」
アベルが【鉄の鎧】を注文すると、店主が棚から【鉄の鎧】を出してくれる。
そして、ヘンリーに鉄の鎧の中に着るインナーを着せてくれた。鎧本体はヘンリーの持ち物の中に仕舞う。
ヘンリーはやっとボロから解放され嬉しそうに服を見下ろしていた。
「他にもお買いになりますか?」
「いえ、もう結構です」
「他にもご用はございますか?」
「いえ、以上で」
「ありがとうございました。またおいで下さいませ」
店主とのやり取りは大体いつもこんな感じで、どこの店も大体一緒だな~と思いつつ、二人は防具屋を後にした。
「あ。さっき店主が言ってた貼り紙ってこれのことかな?」
店を出ると、ヘンリーが防具屋の壁に貼られた貼り紙を見上げている。
“当店にご用のない方の通り抜け、お断り”
「……みたいだね。丁度良かったみたいだ」
「だな」
二人は再び散策を開始するのだった。
ただ町を歩いているだけっていう……。
まあ、情報収集だし、そうか……。
確かまだ防具屋での買い物描写してなかったような気がしたので書いてみました。
防具屋でのやり取りの何もかもが愛おしくて堪らないドラクエェ……。
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ヘンリー「鉄の鎧歩く度ガッシャンガッシャンいうから、町中はインナーだけにしとくな! 重いしな!」
ということで、鉄の鎧を買いました。
町中は安全なので、ガッシャンガッシャンいわせんでもええかなと。
装備品の扱い困るぅ~。
ざっくりゆるーく書こーっと。
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