ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

町を歩いて失踪事件の手掛かりを得る……とかいう話。

では、本編どぞー。



第百三十四話 事件の手掛かり

 

 さて、再び町の散策に繰り出した二人だったがすぐ側で、

 

 

『ワァッ!』

 

 

 という歓声が防具屋の張り紙を眺めるアベルとヘンリーの耳に届くと、そちらに振り返る。

 そこはカジノの裏手側に当たり、カジノを囲う水路の手摺柵の前で見目麗しい女性がダンスを披露していたのだった。

 

 幾人かの通行人が女性に歓声や拍手を送っている。

 

 丁度演目の終わりだったらしく、女性が汗だくで会釈して通行人達からお金を集めていた。

 彼女の帽子にチャリンチャリンとゴールドが投げ入れられていく。

 

 

「おぉ~! こんな所で踊る人なんているんだなっ! 綺麗な娘だなー。踊りを見てみたかったぜ」

 

 

 ヘンリーが女性をキラキラした瞳で見つめる。

 

 

「……あの人に注意しておこうか」

 

「え?」

 

 

 アベルは人々が居なくなるのを待って、女性が一人になるのを見計らい声を掛けた。

 

 

「あの」

 

「あら、お客さん? 今日はもうおしまいよ、また明日踊るから良かったら見に来てね」

 

 

 女性が帽子に入ったお金を袋に詰めながら笑顔を見せると、帽子を広げた。

 “お気持ちはここに入れてね”という営業スマイルである。

 

 

「あっ、そうじゃなくて……」

 

 

 アベルは踊りは見ていないんだけど……と思いつつ、2ゴールド入れる。

 

 

「あたし踊り子になりたくてこの町にやって来たの。きっとトップダンサーになってみせるわ」

 

 

 女性がアベルの入れた2ゴールドに、もっとたくさん貰えるようにならなきゃね! と自身を鼓舞し拳を握り締めた。

 

 

「……最近この町で女性が行方不明になっているそうなんです」

 

 

 アベルはようやく本題に入る。

 

 

「知っているわ! 葡萄のお菓子を食べた子が居なくなってるんですってね。私、甘いの嫌いなの。だから食べないから大丈夫よ。お兄さんひょっとして……それを教えるためにわざわざ言いに来てくれたの……? さっき私の踊り、見てなかったものね?」

 

「あ、ま、まあ……」

 

 

 アベルは指摘され後ろ頭を掻いた。

 

 

「お兄さんて優しい人ね。見てないのにチップをくれたのね……ありがとう、一応気に留めておくわ。でも、あの人達そんな悪そうな人に見えなかったのだけど……」

 

 

 女性が顎に人差し指を添えて、上を見上げる。

 

 

「えっ!? その人達に会ったのかい!?」

 

「え? ええ……。その誘拐犯なのかは知らないけれど……、葡萄のお菓子をあげるって言われたことはあるわね」

 

「どんな人だった!?」

 

「……そうね……。気の弱そうな……青年だったわね。言葉もたどたどしくて。ふふっ、何だか可愛げのある感じだったわ。でも、私さっき言った通り甘いものが苦手だから断っちゃった」

 

 

 女性の言い分に、アベルとヘンリーは顔を見合わせる。

 

 

 一体、どんな奴なのだろうか……?

 

 

 二人が考え込んでいる内に女性は、“じゃあ私は行くわね。明日良かったら見に来てね!”と笑顔で去って行った。

 

 

「……気の弱そうな青年か……。そんな奴が女性を誘拐すんのか……?」

 

「…………うーん……」

 

「……もしかしたら仲間がいるのか……?」

 

「……その可能性はあるね」

 

 

 アベルとヘンリーは少しだけ失踪事件についての手掛かりを得ることが出来たのだった。

 

 

「まあ、ともかく。食べなかった娘は誘拐を免れてるってことかな? 良かったな!」

 

「そうだね。アリアが食べてなくて本当、良かったよ……」

 

 

 ヘンリーが告げるとアベルはほっと胸を撫で下ろす。

 そんなアベルの様子にヘンリーは……。

 

 

「……フフフ……、だなぁ?」

 

 

 ニヤニヤと、アベルを見ていた。

 

 

「な、何……?」

 

 

 アベルはヘンリーのいやらしい視線に首を傾げる。

 

 

「…………お前さ……。…………はぁ、まあいいや。ほら、そろそろ何だっけ、モンスターじいさん? だっけ、そこに行かないか? ピエールも来てるんじゃないか? お前モンスターじいさんの居場所、知ってるんだろ?」

 

「え、あ……。えっと…………、あー………………っと……」

 

 

 ヘンリーに問われ、アベルは額を抱える。

 

 

 モンスターじいさんの居場所は確か……。

 

 ……町の南、……西……?

 

 

 ここに来て珍しく記憶が繋がり、アベルはモンスターじいさんの居場所がどこか思い出した。

 

 

「……モンスターじいさんの居場所は、町の南西だったと思うよ」

 

「ふーん。お前、子供の頃にこの町に来た事あったのか?」

 

「いや……」

 

「いやって……、じゃあ何で知ってるんだよ?」

 

「それは……、…………」

 

 

 ヘンリーに訊ねられて、アベルは黙り込んでしまう。

 

 

 自分は人生を何度も繰り返している……。

 

 

 なんて言って信じてもらえるかわからないし、言えばかつてのアリアのように災いに巻き込んでしまうとも限らない。

 親友の彼をそんなことに巻き込みたくはないアベルは……、

 

 

「町の東側には居なかったから、残るは西側かなって!」

 

「そうか、なるほどな! そりゃそうだな! じゃあ行こうぜ!」

 

 

 ヘンリーには本当のことは言えなかった。

 

 それからアベルとヘンリーは南下し、モンスターじいさんの住居を探し歩く。

 すると、

 

 

「確か……この辺……、だったかな。あ、あの階段だ」

 

 

 アベルの思い出した町の南西に、地下へと続く階段を見つけた。

 

 

「ん? お、おう」

 

 

 アベルが階段を下りて行くので、ヘンリーも後に続く。

 階段を囲うように出来た壁の外にはスライムが描かれた看板がぶら下がって、風に揺れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段を下りて行くと、そこは地下室というよりは掘られただけの土壁に囲まれた広い空間だった(部屋といえば部屋と呼べなくもない)。

 

 階段を下りて正面には土床の上に藁の敷物が敷かれ、ベッドが置かれている。灯りも置いてあるので、ここで暮らしているのだろうと察することができる。

 左は土壁、右を見れば手前にはテーブルに着く老人が、アベルの姿に目を見開き口角を上げていた(ちょっと目力が強い)。

 そして、その奥には何故かバニーガールがいて、こっちも笑顔で手を振っている。

 

 バニーガールの後ろには鉄格子が設置されており、“牢みたいだけどあれは何なんだ……”とアベルとヘンリーは首を傾げた。

 

 見た所、ピエールの姿はない。

 

 とりあえず、老人……おそらくは彼がモンスターじいさんなのだろうと、アベルは彼に話を訊くことにした。

 階段から離れ歩き出すと、階段の背後には積み(わら)が複数置かれているのが見えたのだった。

 




オラクルベリーも長くなりそうです。
なんせ広い、広すぎる。

基本ゲーム準拠なのでノロノロ。
いや、私は楽しいからいいんだけども。
お好きなとこから読んでもらっていいかなーと。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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