ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

バニーちゃんと踊り子さんと。

では、本編どぞ!



第百三十七話 カジノは刺激が強い所である

 

「世界を闇が蝕むというウワサがあるみたいですが……、人間死ぬ時は死ぬんです。人生楽しまなくちゃ!」

 

 

 アベル達がバーに着くなり、酒を飲んでいた客がバーのマスターに向けグラスを持ち上げ“カンパーイ!”とご機嫌に音頭を取る。

 

 

「ね、あんたもそう思うでしょ?」

 

 

 不意に、その客がマスターに話し掛けようとしたアベルに問い掛けた。

 

 

「……わかります。僕も本当にそう、思う……」

 

 

 アベルは酔っ払いの言動を重く受け止めてしまう。

 

 

 死ぬ時は死ぬ……。

 父さんは……死ぬべくして死んでる……。

 

 それも毎回……。

 何があってもそれは覆らない……。

 

 

「お、おい、アベル……、お前大丈夫か? 顔が怖いぞ……」

 

 

 ヘンリーがアベルを心配して肩を撫でてくれた。

 

 

「……あはは、あんた暗いなあ。もっと明るくいこうよ、明るくさっ!」

 

 

 客は再び“カンパーイ!”と一人で楽しく酒を飲み始めたのだった。

 

 

「……僕は大丈夫だよ、ヘンリー……」

 

 

 何の事情も知らないヘンリーに心配を掛けてしまったなと、アベルは僅かに唇で弧を描く。

 すると、バーのマスターが話し掛けて来る。

 

 

「伝説の勇者って知ってますか? そういう人がホントに出現するかどうか……。私は出現する方にコイン1000枚賭けてるんですよっ」

 

「伝説の勇者……? 闇を払うとかいう……?」

 

「伝説は伝説だろ? 勇者なんて人はいないんじゃないかなあ……」

 

 

 マスターの話に、アベルとヘンリーは昔聞いたことはあるけど……、と顔を見合わせる。

 

 

「ははは、勇者が現れたら私の勝ちだし、世界も明るくなって良いことだらけさ!」

 

「はははっ、そりゃ違いないな!」

 

 

 マスターがサムズアップしてウインクしはにかむので、ヘンリーも一緒に笑うのだった。

 そんなマスターにアベルはアリアについて訊ねてみた。

 

 

「マスター、アリアって娘を知りませんか? カジノで働いてるって聞いたんですけど……」

 

「え? アリアちゃん? あー……、今日出勤だったっけ。その辺で働いてると思うけど? ……で、お客さんはアリアちゃんの何? ファンかい? あの娘は難しいと思うよ?」

 

 

 マスターはアベルの全身を上から下まで品定めするように見る。

 

 

「え?(ファンて何?)」

 

「最近あの娘の周りをうろつく輩がいてね。見たとこあんたは悪い奴じゃなさそうだ。ピエール君だけじゃ心許ないから、あの娘のファンなら君も気を付けてやってくれ」

 

「ピエール君……、スライムナイトの……」

 

「彼女の騎士だよ。彼は魔物だが、いい奴だ。アリアちゃんがここに勤めだした時から一途に彼女を護ってる。普段は裏に控えてくれてるからアリアちゃんの勤務が終わらないとこっちには出て来ないんだがな」

 

 

 思いがけず、マスターからピエールとアリアの話を聞いてしまった。

 

 

(ピエールはここで受け入れられてるのか……。不思議だ……)

 

 

 アベルは今までこんなこと無かったなと、ふっと笑みを浮かべる。

 

 

「アリアちゃん、彼女とびきりの美人だろ? 週に一度しか出勤しないけど結構人気があるんだよなあ……。私もあと十年若ければ……」

 

 

 マスターがカジノのスロットマシンの方へと視線を投げる。

 アベルもマスターの視線の先を追うと、そこには背中まで真直ぐに伸びた長い黒髪のスタイルの良いバニーガールが、大当たりのスロットコインが詰まった箱をカートに載せ、客らしきでっぷりした腹を撫でるおっさんと笑顔でお喋りしながら運んでいた。

 

 

(…………誰だろう……? ちょっと遠くてよく見えないけど……、綺麗な人みたいだ……。……お、おっぱいが……大きい……な……。ぅ、刺激が強い……。あっ、箱がっ!?)

 

 

 アベルがたわわな果実を装備している黒髪バニーを遠目で見ていると、彼女が躓いてカートに載せた箱を床にぶちまける。

 そして彼女はおっさんに謝るが、おっさんはデレデレしながら笑って許し、一緒に散らばったコインを拾っていた。

 その間、おっさんの視線がコインを拾う黒髪バニーの胸元やお尻に集中し、舐めるように嫌らしい視線を彼女に向けている。

 

 

(……あんな風に見られたら不快じゃないのかな……。あ、男の人が怒られてる???)

 

 

 コインを拾い終えると、女性は笑顔でおっさんの額にデコピンをかました。そのデコピンをおっさんは嬉しそうに受け入れている。

 そうして、黒髪バニーはおっさんと共にコインを交換所へと運んで行った。

 

 

(僕も……、ああいうのが良かったな……)

 

 

 アベルは【ムチおとこ】の鞭なんかよりこっちの方がよっぽど……とか何とか……。

 僕も大当たりしたらあの娘に運んでもらえるといいな……、とおっさんが羨ましくなってしまったアベルだった。

 

 

「マスター、おかわり」

 

「あ、すまない仕事だ」

 

 

 マスターが他の客に話し掛けられ視線を戻すと、アベルもバーへと視線を戻し、会釈する。

 

 

「アリアいないみたいだなー。やっぱ夜じゃないと会えないか。おっ! 舞台で何かやってるみたいだ。行ってみようぜ!」

 

 

 ヘンリーが舞台でやっている演目が気になったのか、そちらへ行こうと誘うので、アベルはついて行った。

 

 

 

 

 

 

 舞台では劇団が劇を行っており、二人は舞台下から劇を眺める。

 

 

「へー……、何か途中からだからよくわかんないけど、悲劇ものっぽいな」

 

 

 劇は身分違いの恋の演目らしく、貧しい若者が愛しい彼女を金持ち貴族に譲ったが、二人の心は離れることはなく……。

 彼女の心が自分にないことがわかった金持ち貴族は嫉妬し、貧しい若者に何かしら罠を仕掛けようとしているシーンらしい。

 それまでの背景がよくわからないので、感情移入がし辛い。

 

 ヘンリーが“観るなら最初っからじゃないとわかんないよな~”と腕組みしていた。

 

 そんな時、アベルが急に動き出す。

 

 

「……あっちに……!」

 

「えっ、ちょ、アベル舞台上に上っていいのか!? って、そっちは楽屋だぞ!? 急にどうしたんだよ!?」

 

 

 ヘンリーの制止を振り切り、アベルは舞台に上がって楽屋へと行ってしまうので、ヘンリーは慌てて追い掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 

「おい、アベル! 何で楽屋なんかに……っ、あぅっ!?」

 

 

 楽屋に着くなりヘンリーは目を両手で覆う。

 ヘンリーの視線の先では、踊り子の女性が着替えを行っているではないか。

 

 

「ヘンリー、あっちを見たら失礼だよ。着替え中みたいだからね」

 

「き、き……着替え中~!? だ、ダメだ……、鼻血が……。オレも年頃な証だぜ」

 

 

 ここは刺激が強すぎるぜ……。

 

 

 鼻の奥がツンとした気がして、ヘンリーは鼻を抓んで着替えている女性から顔を背ける。

 が、ヘンリーもお年頃なのでチラチラと生着替えを堪能していた。

 

 

 アベルは興味がないのか、それとも失礼に当たると思ったのか、着替えている女性に背中を向け、ドレッサー前に座っている踊り子達三人に話し掛けようとしている。

 夜に公演するであろう、踊り子達が化粧をしながらキャッキャッとお喋りをしている中、アベルは「あの」と話し掛けた。

 

 

「ここは私達の控室よ。タンスを勝手に開けたりしないでね」

 

「昼間のステージはオーナーが旅まわりの劇団に貸しているんですって」

 

「あら、ダメよ。いくらお客さんでも着替え中は入って来ないでね」

 

 

 それぞれにそんなことを言われた後で、“私達の公演は夜だから絶対観に来てね!”と笑顔で言われる。

 アベル達のような楽屋に入って来た失礼な客にもスマイルを欠かさないお姉さん達はプロの踊り子のようだ。

 

 

「あの、女性失踪事件について訊きたいんですけど……」

 

「あ~! 怖いわよね。私達三人はいつも一緒だから大丈夫よ」

 

 

 アベルが訊ねるとアベルから一番近くの席に座っていた女性が“素敵なお兄さん、心配してくれてありがとねっ”と投げキッスを送ってくれる。

 

 

「っ、あ、いや……、その……。誘拐犯について何か知っていることとかありませんか……?」

 

 

 アベルは照れて後ろ頭を掻くと、今度はおずおずと質問した。

 女性に強く出られると、臆してしまう様である。

 

 

「誘拐犯ねえ……。私達は差し入れであのお菓子を貰ったことはあるけど、ここで皆で食べて何ともないから……、わからないわ。お役に立てなくてごめんなさいね」

 

 

 女性は頬に手を当て、知り得る限りの情報を教えてくれたのだった。

 




黒髪バニーちゃん、ちょっとドジっ子みたいですね。
誰なんですかねw

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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