タイトルの前に【夜の】を付けると、何かいいですよねw(何がだ)。
では、本編どぞ。
オラクルベリーを出て、外を歩くこと数時間。
吟遊詩人が言っていた通り、辺りは薄暗くなって来た。
町の外では魔物が出る出る。
お馴染みの【スライム】に、以前妖精の世界で遭遇した小さなドラゴン【メラリザード】の色違い、水色の【ベビーニュート】に、【おおきづち】の上位種【ブラウニー】なんかとも遭遇。
ヘンリーが鉄の鎧を重いからと宿屋に置いて来たため(インナーだけ着てる)、アベルはヘンリーに配慮しつつ戦う羽目になってしまった。
とりあえずいつでも町に戻れるようにと、町が近くに見える場所で戦ってなんとか凌ぐ。
「お~! やっと夜だなっ!」
何度か戦闘を繰り返し、ヘンリーは空を見上げた。
黄昏時を経て夜の帳が降りると、星々が空に輝く。
二人は町へと戻るのだった。
◇
「いや~。参った参った。悪かったなアベル」
オラクルベリーの町へ再び足を踏み入れると、ヘンリーは傷だらけのアベルに謝罪した。
「……ベホイミ」
アベルがボロボロになった自分の身体に回復呪文を掛けると、アベルの身体に付いた傷が消えていく。
「……町中でも装備はちゃんとしておいた方がいいと思うよ」
「鉄の鎧、重いからなあ……」
「いや、買った意味!」
「ははっ、まあそう言うなよ。ありがたいって思ってるさ。にしてもお前のその回復呪文便利だよな~。オレも覚えられたら良かったのにな」
二人は会話をしながらカジノに向かう。
すると、町の出入口を警備していた兵士が声を掛けて来た。
「ここは誰もが楽しむオラクルベリーの町だ。君達は……ああ、そういえば昼間君達を見掛けたな。楽しんでいくといい」
「あ、はぁ……」
兵士は昼間にアベルとヘンリーを見掛けていたらしく、酒場のマスターから話は聞いているよと笑顔を向けてくれる。
「……最近北東から怪しい奴がやって来ているらしい。おかしな奴を見掛けたら教えてくれ」
「「北東……?」」
アベルとヘンリーは首を傾げる。
「……うむ。今この町では女性が二人行方不明になっているんだが、どうやら北東からやって来る連中が女性失踪事件に関与している可能性が高い。独りで歩いている女性を見掛けたら、気を付けるよう声を掛けてやってくれ」
警備はしているが隙をついてやられることもあるからな、と兵士に云われ、二人は頷いて彼と別れた。
そして、カジノへと向かう。
◇
カジノへとやって来ると、アベルとヘンリーは内部を見渡した。
「さて、夜に来てみたぞ……と。んーー……、見たとこピエールはいないみたいだ。どうする?」
「……うーん……」
カジノに来いとだけしか聞いていないアベルは、腕組みしてどうしたものかと思案してみるが、
「おっ! なあアベル、昼間のお姉さん達踊ってるぜ! 行ってみようぜ!」
ヘンリーが舞台を指し示すので、アベルはカジノ内をうろうろしていれば向こうから見つけてくれるだろうと踏んで、そちらへと向かった。
「うはー……。あの衣装、露出が多過ぎないか!? ……ぅぅ……。今夜は眠れないかも……」
ヘンリーが舞台前に着くなり舞台上に釘付けになる。
そこでは昼間会った踊り子達が、程良く引き締まった美しい肉体を巧みに操り、しなやかに流れるような動きで回転したり腰をくねらせたり、脚を高く上げてみたり瞳を伏せがちにしたりしながら、女性の曲線美をこれでもかと見せつけ妖艶に舞っていた。
彼女達の身に纏った踊り子の服という衣装は布地部分が少なく、上半身は胸を覆うだけのブラジャーに似たものだけで、おへそが見えてしまっている。
下半身はビキニパンツらしきものに、前と後ろに揺れる長い布が掛かっていた。
彼女達が回転する度にその布がふわりと浮いて、中のパンツが見えてしまうのだ。
衣装には装飾品である宝石が幾つか付いており、照明の灯りを反射しキラキラ輝くが、そんなものを見ている男性客は皆無である。
気付けば観客は男ばかり。
けしからん! けしからんぞ!
と、どこぞのおっさんの興奮した声が聞こえた。
「…………っ、これは……、ちょっと僕には刺激が……」
真正面から見ると刺激が強すぎる為、アベルは舞台から顔を背け、口を開けニヤけるヘンリーを置いて誰も居ない舞台の左側へと逃げ出す。
そして舞台から背を向け、ピエールが見つけてくれないかなと再びカジノ内部を見回していた。
……のだが、アベルは舞台から流れてくる音楽が良くてつい身体を揺らしてしまう。
すると、
「あら、お客さんもリズム感良さそうね。さあ、踊ってみて!」
「っ、えっ、ぼ、僕?」
不意に舞台上から踊り子に声を掛けられ、昼間話をした女性だと気付いたアベルは、顔を真っ赤にして言われるままに見様見真似でステップを踏んでみる。
「こ、こう?」
「まあ! 中々ステキよ」
女性はウインクと投げキッスをアベルに送って、他の踊り子達の元へと戻って行った。
「……はは……、踊っちゃった……」
僕って、流されやすいな……。
アベルは頬をカリカリと掻く。
「あー、ずりぃ~の! オレも踊りたかったな~!」
いつの間にかヘンリーがアベルの傍にやって来ていた。
あれ以上見てたら、鼻血出ちゃう……。とか何とか云っている。
「……バーのマスターに訊いてみようか」
「そうだな」
アベルとヘンリーはちょっぴり後ろ髪を惹かれながら舞台を後にした。
そんな二人の背後を黒髪のバニーガールが見ていたが、二人は気付かなかった。
◇
二人がバーカウンターへとやって来るとマスターは丁度接客中で、客として来ていた兵士と話をしていた。
話が終わるまで待つかと、二人が邪魔にならないように端の方の席へと着く。
と、
「もし、そこのお二人。ああ……、昼間見た顔じゃな……。……マスターに用かな?」
不意にアベルとヘンリーに、カウンターの一番端に座っている顎に長い白髭を蓄えた老人が声を掛けて来た。
「え? あっ、はい。けどお話中みたいで」
アベルは老人にそう返す。
ヘンリーは、アベルが対応してるからオレは舞台でも見てるよと、カウンターテーブルに背を預け舞台を眺めていた。
「フム。今話し始めたばっかりじゃ、あの二人中々に話が長いでな。毎晩賭けがどうのと話しておるわ。しばらく待ちぼうけせねばならんなあ……」
「そうですか……」
「何を訊きたいのかは知らんが、ワシは客じゃが一日中ここにおるからここの事情に詳しい。マスターの代わりにワシが話を聞いてやってもいいんじゃが……どうする?」
「……スライムナイトが……、ここに来ていると思うのですが……」
老人の言葉にアベルは訊いてみることにした。
「ああ、ピエール殿か。そうじゃな、そろそろ上がって来る頃じゃて」
「上がって来る?」
「アリア嬢を迎えにな」
「っ、アリアはどこに!?」
「アリア嬢なら……その辺を何度も行き来しておるが……?」
そう云って老人はスロットマシンの方へと目を向ける。
「えっ??」
アベルは後ろに目を向け老人の視線の先を追うが、100コインスロットマシンの傍で金髪巻き毛のバニーガールと黒髪ストレートのバニーガールが背を向けマシンの点検を行っているだけで、アリアの姿は見つからなかった。
彼女の髪色はとても珍しいので一目でわかるはずなのに。
「ふぁっふぁっふぁっ。お前さん、昼間もアリア嬢のことを訊いておった癖に気が付いておらんのか」
老人は視線をカウンターテーブルに戻し顎髭を手で弄びながら笑う。
アベルも視線を戻し、老人に視線を合わせた。
「っ、気が付くって一体……?」
「ここに来ると色んな人の人生が見えるのじゃよ。この歳になったら、それだけが楽しみで……ふぁっふぁっふぁっ」
それ以上何を言うでもなく、老人は愉快そうにアベルの顔をじっと眺める。
「…………っ??」
「ふぁっふぁっふぁっ」
老人の視線にアベルは居心地が悪くなって、視線を逸らすとカウンターテーブルに手を置き指を絡ませた。
――その時だった。
外伝を書くことになったら【夜の~】シリーズで書くのもええかなと思ってますwww
いつになるかは知らんけど、妄想だけならいっぱいしております、ハイ。
ふぁっふぁっふぁっw
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!