ドラゴンクエストV -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

絡み合う視線、それすなわち見つめ合い。

では、本編どぞ。



第百四十二話 絡み合う視線

 

 アリアが顔を真っ青にして俯いてしまい、両手にチリチリと小さな火の粉が舞う。

 

 

「アリア、逃げろっ!」「っ……燃やしますっ!」

 

 

 アベルが叫んだと同時、アリアは【くさった死体】に両手を突き出し、その顔目掛け……、

 

 

“メラッ、メラッ!!”

 

 

 火の玉を放ったのだった(しかも二回)。

 

 

「え?」

 

 

 攻撃呪文ダメって言ってなかったっけ?

 

 

 アベルは攻撃呪文が何故駄目なのか理由はわからなかったが、云った本人が使ったので呆気に取られる。

 

 

「グァアアアアッ! アツイィィ!!」

 

 

 【くさった死体】がアリアから放たれた【メラ】に苦しみもがいた。

 左右に身体が揺れ、傍の1コインスロットマシンにぶつかり、床に倒れそうになる。

 

 

「っ、っ、暴れないで下さいっ! ゆ、床っ、絨毯(じゅうたん)に火が点いたら大変っ! 火事になっちゃいますっ! っ、み、水っ!! ぁあっ、えと、ヒャドッ!!」

 

 

 アリアは今度は氷の呪文【ヒャド】を唱える。

 【ヒャド】は小さな氷の塊や氷の矢を一瞬で作り出し、敵一体に攻撃する呪文である。

 

 それを【くさった死体】の顔にまたもぶつけた。

 氷の塊が【くさった死体】の髪を焦がす炎を鎮火させるが【くさった死体】はその痛みにもがき苦しむ。

 

 

「ふぅ……危うく火事になるところでした……って……ひゃあああぁぁぁ!! ご、ごめんなさいぃ~!」

 

 

 アリアが額の汗を拭い、ほっと一息を吐くも【くさった死体】の焼けただれた顔の、あまりにも酷い有様に気が付くと彼女は涙を零した。

 

 

「っ……、アリア、大丈夫かい?」

 

「あ、あ、あ、アベルさんっ! 怖いっ!」

 

 

 ようやく追いついたアベルがアリアに声を掛けると、彼女は涙目でアベルに抱きついて来たのだった。

 

 

「っっ!!? ぁ……えと、もう……っ、大丈夫だから……」

 

 

 アリアの柔らかい感触にアベルはドキッとしたものの、どうしていいかわからず両手を上げ、とりあえずアリアを安心させるように告げてみる。

 

 

「ぅぅっ、私、ああいうの苦手なんです……。顔がキモチワルイ……」

 

「……ぁー……うん、君が燃やしちゃったからね……(うわぁ、ドロドロ……)」

 

 

 いっそ、一思いに止めを刺してやらないと可哀想だな……。

 

 

 アベルは顔の一部が溶け苦しむ【くさった死体】を少しばかり可哀想に思ったのだった。

 

 

「っ! そうでしたっ! ご、ごめんなさいっ!」

 

 

 アリアはハッとしてアベルを見上げる。

 

 

「っ! ……いや、謝らなくていいと思うよ?」

 

 

 上目遣いで見上げられ涙混じりのアリアが可愛くて、アベルは一瞬息を呑むが直ぐに視線を逸らして【チェーンクロス】を握り締める。

 

 

「アベルさん……?」

 

「すぐ、倒して来るから……、待ってて」

 

 

 アベルは頬を赤く染めながらここで待つ様にと、アリアの肩にそっと触れる。

 彼女の肩は剥き出しの素肌なので触れるのはかなり照れ臭く、アベルの指先は少し震えた。

 

 彼女の肌は滑らかで触り心地が良くて、アベルは肌の感触に驚き直ぐ様“ぱっ”と手を放す。

 

 

「あっ、攻撃魔法はダメですよ」

 

「…………えと、何で? さっきも言ってたね」

 

 

 もがき苦しむ【くさった死体】に向かおうとするアベルにアリアが声を掛けると、アベルは振り向いて訊ねた。

 

 

「……カジノの設備を壊してしまったら、弁償しなくてはいけませんから。私そんな大金持っていません」

 

「えぇ……。そういうことぉ……?? …………プッ」

 

 

 アベルは理由を聞いて思わず変なこと気にするんだなと、吹き出してしまう。

 普通なら自分の身の安全を気にするだけで精一杯なのでは……と。

 

 

 アリアは記憶が無くてもやっぱりアリアのままだ……!

 

 

 アベルはアリアに見送られ【くさった死体】へ攻撃を仕掛けていく。

 それから数分もしない内に、魔物の群れは一掃されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピエールさん、ヘンリーさん、アベルさん。助けていただきありがとうございましたっ!」

 

 

 長い戦闘の果て、アベル達は無事勝利を手にし、アリアから頭を下げられ朗らかな笑顔でお礼を云われる。

 

 

 カジノ内では先程の騒動が収まり、「魔物だったのね!」「そんなまさか!」「信じられない!」等々、皆口々に驚いた表情で話をしていた。

 バーに居た助けに来なかった警備兵も「良かった良かった」と胸を撫で下ろしている(何故助けに来なかったのかは不明である)。

 

 戦闘中、多少床が汚れてしまった為か、マスクをしたカジノの清掃員達がやって来て後片付けを始めていた。

 【アウルベア―】の毛が床に散らばっているのは掃けばどうにかなるが、【くさった死体】の腐敗臭は中々のもので、絨毯に汚れと臭いが染み付いてしまって、臭い除去には骨が折れそうである。

 清掃員達が腕組みしながら「どうする……?」と相談しあっていた。

 

 アリアは気になっている様子で、ちらちらと清掃員達を見ていたのだが【くさった死体】の臭い除去など、アベル達にはどうしようもないので、そこはカジノ側に任せることにした。

 

 

 

 

 

「アリア嬢が無事で良かった。遅れて申し訳なかった、この通り!」

 

 

 ピエールが頭を下げると、アリアが「いえいえ、そんなっ!」とやんわり否定する。

 

 

「い、いいんだよ、当たり前のことをしたまでで……」

 

 

 ヘンリーはアリアから視線を逸らし、鼻の下を指で擦った。

 

 

(アリア、色っぽ過ぎるって……っ!!)

 

 

 でも、隙あらばチラッと時々アリアを見てたり……。

 

 

「そ、そうだよ。べ、別に……大したことじゃないし……」

 

 

 アベルも頭の後ろを掻くと、アリアを直視出来ずに彼女の足元を見つめる。

 

 

 名前を呼ぶ順が、僕は最後か……。

 まぁ……いいけど……。

 

 

 と、アベルはちょっと凹んでしまった。

 そして、アリアが靴を履いていないことに気付き辺りを見回す。

 アリアの網タイツの足元は、破れて少し擦り剥いたのか赤くなっていた。

 

 すると、1コインスロットマシンの裏に先程脱げたピンヒールが転がっているのを見つける。

 

 

「お三方がいらっしゃらなかったら、今頃私……。あれ……アベルさん?」

 

 

 アリアが手を合わせて三人の様子を窺いながら喋っていると、アベルは黙って歩き出す。

 

 

「……ちょっと待ってて」

 

「え? あ、はい」

 

 

 どうかしたのかなと首を傾げるアリアをそのままに、アベルは1コインスロットマシンの裏に落ちていたピンヒールを拾って戻って来た。

 

 

「あっ、靴。すみません、拾って来て下さったんですね」

 

「…………、足痛いでしょ? ……どうぞ」

 

 

 アベルはアリアの足元に片膝をついて跪き、ピンヒールを目の前に置いた。

 そして、アリアが履きやすいよう片手の平を仰向けに差し出す。

 

 

「えっ……っ、ぁっ……、っ、そのっ……」

 

 

 アリアは戸惑い、息を呑んで足を擦り合わせた。

 頬が瞬時に真っ赤に染まる。

 

 

「……っ、……転ぶといけないと思って……」

 

 

 アベルは足元しか見ないようにと思っていたが、アリアが後退った気がして、顔を上げる。

 

 

 逃げないでくれっ! これくらいさせてくれても……、

 

 

 と。

 

 

 ふと、二人の視線が絡んだ。

 

 

「「っ……!!」」

 

 

 アベルの頬が急に熱を上げ茹蛸に。

 アリアもアリアで目が合うと両手を合わせ鼻と口を覆って目を見開いている。

 

 

 

 

((何だろう……すごく恥ずかしいっっ!!))

 

 

 

 

 二人は時間にしたら数秒程度で、互いに視線をそれぞれ別方向へと逸らしたのだった。

 

 

「……ほーん……」

 

「……アリア嬢……」

 

 

 ヘンリーとピエールが二人の様子にそれぞれ思うことがあったのだろう、ヘンリーは腕組みして斜め上を見上げ口元をニヤつかせ、ピエールは斜め下を見下ろす。

 二人の反応は対照的だった。

 




キュンッ、てしてもらえたら嬉しいなぁ。
キュンキュンしたいお。

アベルさんがもう、めっちゃ優しい……すきw

時々謎行動をするモブキャラがおりますが、その内忘れた頃に判明するかもしないかも。(適当です……スミマセン)
買収されただけの話なんですけどね(ここで書くなwww)
外伝でアリア視点でこの辺書いてもいいかもなぁ……。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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