ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

アリアの所為なのでしょうがないです。

では、本編どぞ。



第百四十五話 アリアの所為

 

 アベルもじっとアリアの背を見送っていた。

 

 

「言ったけどモノに出来るかはお前次第だろ? っつーかお前やっぱアリアのこと好きなんじゃん?」

 

「っ、うっ……、ち、違う……。ぼ、僕は……そんなんじゃ……」

 

 

 ヘンリーの指摘にアベルは頑なに認めようとしない。

 

 

「……何で認めないわけ? 認めちゃえば楽になれんのにさ(バレバレなんだけど……?)」

 

「っ、そんな簡単な問題じゃないんだよ。僕はまた……」

 

 

 アベルは頭を抱えて俯いてしまった。

 

 

 認めてしまえば、楽になる?

 ……違う、苦しくなるだけだ。

 

 離れたくないって思ってしまうじゃないか。

 一緒に旅をしたいって思ってしまうじゃないか。

 

 僕の我儘で彼女を振り回したくはないんだ。

 また(・・)彼女を危険な目に遭わせたくない。

 

 だから、認めるわけにはいかない。

 絶対に……!!

 

 

 アベルがそう思い悩んでいることなど、ヘンリーにわかるはずもなく……。

 

 

「オカズにすんのはオッケ―なのにな?」

 

 

 ヘンリーは悪戯っぽい笑みを浮かべ白い歯を見せる。

 

 

「なっ!? そっ、それとこれとは別だろっ!? アリアがあんな恰好してるから悪いんだよ……。ってゆうかヘンリー。アリアをオカズにするのは止めてくれ」

 

「……ん? ……ンーーーー……? 無理だな」

 

 

 アベルがヘンリーに近付き威圧するが、ヘンリーは斜め上を見上げ思い見ると否定する。

 

 

「何でっ!?」

 

「……だってよ、こういうのはイマジネーションだろ? ヒントを貰っちゃったら妄想が捗っちゃうじゃん? オレ、健康優良児だし?」

 

 

 ヘンリーは昔アリアがやっていた、両頬に人差し指を突き刺し笑う仕草を真似て笑った。

 

 

「ぐっ……!!」

 

「はははっ、そう怒んなって。別に彼女に実際手を出すわけじゃねーんだしさ?」

 

「そうだけどっ! 何か嫌だっ!」

 

「…………そうは言われても思考まではなぁ……。あんな姿見せられたら……」

 

 

 アベルが苦々しい顔でヘンリーを睨み付けると、ヘンリーは参ったなと頭を掻く。

 そんなヘンリーの様子にアベルは、

 

 

「……わかった。宿に着いたらラリホーで眠らせてあげるよ」

 

 

 真顔で唇だけ歪ませ嗤った。

 

 

「お前ラリホーなんて覚えてたっけ?」

 

「あー、うん。ひのきの棒とかこん棒とかあるから問題ないかな」

 

 

 アベルは【ふくろ】の中をごそごそと確認する。

 

 

 うん、あるな。

 捨ててなくて良かった。

 

 

「へ……? ちょっ、物理的にかよっ!!」

 

「夜は安心してゆっくり休めるね」

 

 

 察したヘンリーの様子にアベルはにっこりと不気味な笑みを乗せ、目を細めたのだった。

 

 

「っ、勘弁してくれよ……」

 

「ヘンリーはマリアさんでも妄想してればいいんだよ……」

 

「なっ、まっ、マリアさんっ!? な、何でその名前がっ!!?」

 

 

 アベルの言葉に突然ヘンリーが動揺し出す。

 

 

「……お似合いだと思うけど?」

 

「っ、な、何だよ……」

 

 

 アベルは冷ややかにヘンリーを見つめた。

 

 

「僕はマリアさんのアレコレを妄想したりはしないから安心して」

 

 

 アベルが静かに告げると、

 

 

「すんなっ! 絶対すんなよっ!!」

 

 

 ヘンリーは怒ったのか大声でアベルに掴みかかる。

 

 

「じゃあヘンリーもしないでくれるよね? アリアにも失礼だ」

 

「っ、おうっ!! 約束は出来ないが善処する!」

 

「…………ッチ」

 

 

 ヘンリーに掴み掛られても、冷ややかなままのアベルは舌打ちをしたのだった。

 

 

「舌打ちすんなよ、しょうがないだろ……。彼女はオレの初恋だったんだからさ……」

 

「なっ!? 初恋っ? そうだったのかい!?」

 

 

 突然のヘンリーの告白に、アベルは目を見開く。

 

 

「っ……、しょ、しょうがないだろ……。あの子、オレに優しくしてくれた初めての女の子だったんだからさ……。けど、彼女オレの事憶えてないし、初恋は実らないって聞くし……今は諦めてるよ」

 

「ヘンリー……」

 

 

 ヘンリーの瞳が哀しげに伏せられ、彼の気持ちを知りアベルはそれ以上何も言わなかった。

 

 

「……お前もアリアが初恋なら実らないかもなっ! まあ、お前モテるからすぐ別の女性が見つかるさっ!!」

 

「…………っ、ヘンリー…………、…………余計なことは言わなくていいから…………」

 

 

 ヘンリーの余計な一言にアベルは苛立ち、こめかみに血管が浮き上がる。

 

 

「っ、じょ、冗談だって! お、お前とアリア、お似合いだって……!」

 

「……っ、だから、僕はアリアのことは別に……」

 

 

 アベルの不穏な様子を察知してヘンリーがよいしょするが、アベルは途端俯いてしまった。

 

 

「お前何なんだよもう……、わけわかんねぇよ……(面倒くさい奴だな……)」

 

 

 はぁ。とヘンリーは溜息を吐いて、いつの間にかアリアがフロアに居ないことに気付いた。

 するとピエールが、アリアが先程向かった方向から戻って来る。

 

 

「アリアどっか行ったみたいだな。……あ、ピエールが戻って来たみたいだぞ」

 

「ピエールが?」

 

 

 二人はピエールが来るのを待っていた。

 

 

「主殿、ヘンリー殿。お待たせ致した。アリア嬢は着替えて来るので外で待つ様にと」

 

「あ、そうなんだ。わかった、じゃあ……外に……」

 

 

 ピエールがやって来て二人はカジノの外へと出ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カジノを出ると中の熱気とは裏腹に、町は静かに涼しい風が三人の間を吹き抜ける。

 

 

「……ピエール、後で二人で話せるかい?」

 

「ええ、今宵の宿を取ってからになりますが」

 

「あ! 宿ならオレ達昼間に取っておいたんだ。良かったら一緒にどうだい?」

 

 

 カジノ脇の噴水の前で三人は水飛沫を眺めていた。

 看板のネオンや照明の光を浴び、噴水は夜でもキラキラと輝いている。

 

 

「なんと! それは名案! かたじけない!」

 

「名案って……大袈裟だなぁ……」

 

 

 ピエールの反応にヘンリーが照れ臭そうに頭を掻いた。

 

 

「アリア嬢をつけ狙う輩が宿に来ないとも限りません。味方は多い方がよろしいでしょう。主殿がいれば百人力です」

 

「……そんなに狙われているのかい?」

 

 

 アベルが訊ねると、

 

 

「修道院に居る間はまだいいのです。あそこは神聖な場所で、不浄な輩は入れないので。この町に来ると、先程のような者共がどこからともなく……」

 

 

 ザァァーーーー、バシャバシャと噴水が噴き出し、引っ込み、噴き出し、引っ込みを繰り返し、ネオンの灯りがアベル達の顔にも反射する。

 そんな中、ピエールは腰にぶら下げた剣の柄をぎゅっと握り締めた。

 

 

「……その相手って……誰なんだい?」

 

「…………それは、アリア嬢の口からでないと私の一存ではお答え致しかねます」

 

 

 アリアもはぐらかして教えてくれないのでピエールならひょっとしてと思い訊いてみたのだが、アベルの質問にピエールは口を割らなかった。

 

 なので、アベルはちょっとイラっとしてしまう。

 

 

「…………、…………ピエール、君、僕を“主殿”って言ってくれてるけど、どっちが本当の主なの? 僕? それともアリア?」

 

「う……。そ、それは……」

 

 

 アベルに指摘され、ピエールは俯いてしまった。

 




自分の気持ちを頑なに認めないアベルさん。
結構頑固な所がありますね。

そして、若い青年たちよ。
大きくなあれ!

……何のことですかねw

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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