占いババに占ってもらおっ。
では、本編どぞ。
「……丁度良かった。アリアさんに訊きたいことがあったんだ」
「え、何でしょうか?」
宿屋の階段を下りながらアリアがアベルに顔を向ける。
「歩きながら話そう」
「はい」
二人は後ろにヘンリーがついて来ているとも知らずに宿屋を出て、オラクルベリーの町を歩く。
「あ、アリアさんはここに週一度来てるんだっけ……」
アベルは少し緊張しながら隣を歩くアリアに話し掛けた。
カジノに居る時はアリアがピンヒールを履いていたから気が付かなかったが、こうして並んで歩くとアベルよりアリアは頭一つ分以上小さい(オラクルベリーに来るまでは並んで歩いていないため気付かなかった)。
そういえば昔もアリアは自分よりも小さかったなと思い出していた。
手も小さくて腕も脚も自分よりも細く、彼女のどこを触っても柔らかい。
自分も昔は腕も脚も柔らかかったのに、小さかった手も大きくなってごつごつして……、十年経って随分と違ってしまったなとアベルは隣をアリアを見て思った。
昔は大体同じ目線だったのに、今は互いに合わせようとしないと目線すら合わない。
「はい。でも私、ここに来てすぐカジノのお仕事が決まったので、あまり町に詳しくないんですよ?」
「そっ、そうなんだ……。案内してもらおうかと思ったけど、残念。僕の方が詳しかったりして……」
アリアはアベルを見上げ微笑むのだが、アベルは彼女と目が合うとサッと視線を外して遠くを見て話を続ける。
「ぁ…………。…………ふふっ、アベルさん私のこと避けてますか?」
アリアはアベルの横顔に眉尻を下げ、ぽつりと零した。
「えっ!? そっ、そんなことないけどっ!?」
「…………そうですか? 何だか……あまり目を合わせてくれませんし……嫌われてるのかなって……」
彼女の言葉にアベルが目線をアリアに合わせる。
すると、町の街灯を反射し宝石のように輝く大きな瞳がアベルを真っ直ぐ見ていた。
その瞳の中にアベルだけが映っている。
「っ、そっ、それは……っ!! っ、断じて嫌ってなんかない……っ!! …………でもっ…………っ、ごめん……」
君に見つめられると、何故かダメだ。
は、恥ずかしくてまともに顔を見れないだけなんだ……!!!!
アベルはやっぱり目を逸らしてしまった。
「…………、…………そうですか。ならいいんですけど……(やっぱり見てくれない……)」
アリアは何となくモヤモヤしながらも、嫌われているわけじゃなくて良かったと口を窄め黙り込んでしまう。
納得はしていないようだった。
「…………っ……(気まずい……。何か別の話題に……、いや、もう本題に入った方が……いや、でも急に訊かれても昨日みたくはぐらかされるだけなんじゃ……)」
黙り込んでしまったアリアにアベルは何か話そうと話題を探すが……。
そんな時、
アベルとアリアの背後に誰かの走って来る足音が聞こえた。
「おーい! お二人さんっ! オレも一緒していい?」
その声に二人が振り返ると、ヘンリーが手をふりふり走って来る。
「あっ、ヘンリーさん」
「ヘンリー!!(いいところに!!)」
「へへっ、目が覚めちゃってさ~(二人きりになれると思うなよ!)」
ヘンリーの思惑など知らないアベルは、助け舟が来たと目を細めた。
そして「もちろん!」とアベルとアリアは快諾し、三人は引き続き町を歩くことにした。
◇
「もう夜ですが、教会でお祈りしてもいいですか?」
「もっちろん!」
アリアが、今日はまだお祈りしてなかったので教会に寄りたいと云い出すと、ヘンリーが二つ返事で了承した。
アベルも黙ってうんうんと頷く。
三人はカジノの水路沿いを歩き、教会を目指す。
すると、
教会東側の小さなスペースのカウンター奥で、水晶玉を磨く老婆の姿が目に入った。
「あっ、占いババさまだわ」
「「占いババ?」」
アリアが黒いとんがり帽子を被った老婆を見て、手を振る。
すると、老婆が気付いて面倒臭そうに手を振り返した。
「有名な方なんです。よく当たるって先輩が言っていました。私も占ってもらったことがあるんですけど……、夜に女の子が独りで出歩くなって怒られてしまってそれっきり……」
気まずそうにアリアは耳に髪を掛ける。
「あはは……占いになってないね」
アベルはアリアの仕草につい見入ってしまった。
「へー……オレはあんまり占いって信じないけど」
「実は私も半信半疑で……。でもせっかくなので訊いてみますか?」
「オレはいいかな。アベル見てもらったら?」
アリアはヘンリーに占いを勧めてみたのだが、ヘンリーは興味がないのかアベルにバトンを渡した。
「え? ぼ、僕?」
突然渡されたバトンにアベルは自分を指差す。
「ええ、お嫌でなければ」
「……っ、アリアさんがそう云うなら……」
アベルは二人に勧められ、占いババの元へと向かった。
◇
「わしは占いババじゃ。占ってほしいのか?」
アベル達が占いババの元へとやって来ると、占いババは水晶を磨く手を止め告げる。
占いババは目を見開いてアベルをじぃーっと見上げた。
白眼部分の多いその瞳はあまりに不気味……否、神秘的でアベルはつい、
「あ、いや……僕は……(目がコワイ……)」
占いを拒否してしまっていた。
後ろでアリアが「アベルさん??」と、何故拒否したのかと驚いている。
「そうか……。自分の道は自分で見つけると言うのじゃな。それもまたよかろうぞ」
占いババは再び水晶玉を磨き始める。
「アベルさん、占ってもらうって言ってらっしゃったのに……」
アリアが後ろからアベルのマントを引いて上目遣いで見て来るので、その視線に……、
「っ、あっ、や、やっぱりお願いします……」
アベルはアリアの視線から逃れるように、慌てて占いババに占いをお願いしたのだった。
……アリアには弱いようだ。
「よろしい。おぬしは男前じゃから特別にただで見てしんぜよう。ふむふむ。おぬしは誰かをさがしておるな。それはおぬしに親しい女と出たぞ。しかしおぬしにはその者がまだ生きているのか分からないと見える……」
占いババが水晶玉の上で両手指を動かしながら、何か見えているのか言葉を紡いでいく。
アベルの背後で、ヘンリーとアリアが「もしかして?」と顔を見合わせていた。
「安心せい! その者はまだ生きておる! そしておぬしに会える日を待っているぞ! まず北に行くがいい。そこでおぬしは何かを見つけるじゃろう」
占いが終わると、アベルは「北か……」と呟く。
「親しい女ってお前の母さんのことかな? オレは占いはキライだけどこの占いの結果だけは当たってて欲しいと思うよ」
ヘンリーがアベルの両肩を掴みながらぴょこっと横から顔を出して、水晶玉を覗いた。
すると、占いババの眉間に皺が寄る。
「フンッ、占いが嫌いなヤツはお呼びでないよ。わしの好みじゃない男は要らんわ。しっし」
手でさっさと振り払われ、占いババはプイッとそっぽを向いてしまった。
「あっ、ひっど!(何だよ、そんなに怒ることないだろ~!)」
「占いババさま、私、前に占ってもらったアリアです。あの、今日も占ってもらっても?」
ヘンリーとは逆の方から占いを訊いてみようと思い立ったのか、アリアもアベルの腕を掴み、ぴょこっと顔を出し挙手していた。
当たるも八卦当たらぬも八卦。
占い大好き!
でも、良い事しか信じませんがw
持論ですが、悪い事を云う占い師は大体偽物だと思っております。
見えても云わないのがプロかと。
あくまで持論ですが。
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