パトリシアさん、謎多き最強の馬。
では、本編どぞっ!
◇
休憩を終えて、体力・魔力共に回復したアベル達は、町の外に控えていた馬車の元へと向かう。
馬車が見えてくるとアリアが瞳を輝かせ走り出した。
「わぁ、綺麗なお馬さん!」
アリアは身体の大きな白馬(メス)の前に立ち、少し距離を取って眩しそうに見上げる。
「……パトリシアっていうみたいだよ(確か……そんな名前だった気がする)」
アベルは何となくそんな気がしてアリアに名前を教えた。
「へえ……、素敵なお名前ですね。パトリシアさん……パティって呼んでもいいかしら? 私はアリア。少しの間お世話になります」
アリアは愛称を付けパトリシアを呼ぶと、深々と首を垂れる。
すると、パトリシアは愛称が気に入った様子で「ブブブブ……!」と小さく何度か頷き、アリアに傍に来るように前足でおいでおいでと地面を掻いた。
「……アリアさん、パトリシアが傍に来て欲しいみたいだ」
「え? あ、はい……、触っても……、いいですか?」
パトリシアの考えていることが何となくわかりアベルが伝えると、アリアは恐る恐るパトリシアに近付いて行く。
アリアが傍にやって来ると、パトリシアは頭を下げてくれた。
「では、失礼しますね……。あ……。ふふっ……たてがみは茶色で、身体は真っ白! 綺麗な毛並みですね……! あとでブラッシングしましょうねっ」
パトリシアの鼻の近くにそっと手を伸ばし、アリアは自分の匂いを嗅がせてから首辺りをぽんぽんと軽く叩く。
パトリシアは目を細めて顎を上げると気分が良さそうにアリアを見下ろしていた。
「……アリアさんて馬と触れ合ったことがあるのか? 随分扱いが上手いな」
「あ、いえ……。初めてで……。お馬さんは見た事がありましたが、こんなに綺麗な方は初めて見ました……!」
ヘンリーが感心したように告げると、アリアはパトリシアを見上げ、うっとりと目を細める。
パトリシアは褒められていることがわかっているのか、アリアの身体に頬を寄せるのだった。
「ふふっ……、パティ、仲良くして下さいねっ」
アリアもパトリシアの身体に寄り添う。
女同士何か通ずるものがあるのか、二人はすっかり仲良くなったようだ。
「……アリアって不思議だなー……(
アベルはパトリシアの事に関しては何となく思い出せたようで、自分以外の初対面の者には警戒心が強かった気がしたんだけど、とパトリシアとアリアが楽しそうにじゃれ合っている様子を眺める。
「やっぱ、元天使だからかな……? オレも挨拶してくっかな」
「ヘンリー、大丈夫かい? 彼女は……」
「何、大丈夫だよ。城で昔馬に乗ったことがあるんだ。任せておけって! ヘイ、パティ―!」
アベルの制止も聞かずヘンリーもパトリシアの元へと寄って行くが、パトリシアはヘンリーが来るなり口元を震わせ盛大に唾を吐き掛けた。
ブーッ!! びちゃあぁぁ……。
「うえっ!? ひ、酷くないっ!!?」
「あらっ……くしゃみ? お鼻がムズムズしちゃいましたか?」
ヘンリーが顔にぶっ掛けられた唾液を手で拭うと、アリアはパトリシアの様子を窺う。
パトリシアは首を左右に優雅に振るったのだった。
「だから言ったのに……(やっぱり、初対面は警戒心が強いなぁ……)」
今度はアベルがやって来る。
アリアはヘンリーに荷物の中からタオルを取り出し渡していた。
「ブブブブ……」
「…………久しぶり、パトリシア。元気だった?
小さく呟くパトリシアにアベルが手を伸ばし、アリアと同じようにそっと鼻元に手を当ててから首辺りを軽く叩いた。
すると、パトリシアは優しい瞳でアベルを見下ろし、二度三度、頭を上下に頷くように動かす。
その様子に、アベルはハッとする。
「…………っ、ぁ……パティ……、まさか、君も……?」
パトリシアの瞳は優しく澄んでアベルを見つめていた。
「……恐らくそうなのでしょうね。パトリシア殿、また宜しくお頼み申す」
最後にピエールがやって来ると、パトリシアはピエールに鼻先をくっ付け、ツンツンと軽く兜にキスをする。
この世界ではピエールとパトリシアは初対面の筈なのに……。
「……そうか……。そう、なんだ……」
ピエールにパトリシアもだなんて……!!
特にそうだと思ったわけではなく、たまたま“久しぶり”と発言してしまっただけなのだが、まさかパトリシアも別世界の記憶があるとは……!?
アベルは喜びに胸をきゅうっと締め付けられた。
「…………?(
「……オレだけ何でこんな扱いなんだよぉぉおおおっ!!」
アリアはアベルとピエールの言動を不思議に思いながら首を傾げ、ヘンリーはタオルで顔をゴシゴシと拭く。
そうして、一行は今度こそオラクルベリーを後にした。
◇
オラクルベリーを後にし、アベルを先頭に四人は平原を行く。
馬車の前をアベルとピエール、後ろをヘンリーとアリアが歩いていた(じゃんけんで決めた)。
北の橋を渡っているとピエールがぽつり。
「当時は橋が無かったのでここを泳いで渡りましてね……」
流れる河を見下ろししみじみと語る。
川幅は広く、泳いで渡るには無理がある距離だ。
「すごいな!」
――瀕死のアリアを抱えてこの距離を泳いだのか……。
アベルがピエールの話に感心して目を瞬かせた。
「アンドレがそれはもう、頑張ってくれまして……」
「……何のお話ですか?」
アリアが後ろの方からトトトと走って来て、アベルの隣にぴょこっと顔を出して来る。
「っ、ア、アリアさんっ!?(後ろにいたんじゃ!?)」
「……いえ、何でもありませんよ。アリア嬢、足は痛くありませんか?」
突然のアリアの登場にアベルの心臓が跳ねたが、ピエールはアベルの後ろで冷静に切り返していた。
「あ、はい! 長旅用の服装なので全然問題ありませんよ! 動きやすいですし」
アリアは胸の前に両手拳を持って来てグッと力を込め、微笑む。
あざとい仕草ではあるが、アベルはぽーっとつい見惚れてしまった。
「…………っ(可愛いなぁ……)……と、ところで後ろで何かあったのかい?」
「いえ、特には。ただ、ヘンリーさんが急に黙り込んでしまって……。アベルさんなら何か知っていらっしゃるかなと、訊きに来たんです」
アリアはちらっと後ろの方へと視線を投げてから、アベルに戻す。
「あ……、…………うん、そうだね。わかる……かも」
――もうすぐ関所が見えて来るだろうし……、気になるんだろうな……。
アベルは静かに頷いた。
やっと、やっと、やーっとオラクルベリーを出ましたよ~!
パトリシアってここから最後までずーっと行動を共にする仲間なわけで、神獣って言ってもいいんじゃなかろうか。
パティにはいつか子を産ませてあげるんだからねっ!
イケ馬を探さねばね~。
そしてアベルさん、パティも記憶持ちで良かったねっ!
持ってる奴は持っている。
そう、そんな感じ。
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