ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ネコさん(ベビパン)との出会いです。

では、本編どうぞ!



第十五話 大きなネコ

 

 ……それからアベル達は宿を出て町を散策する。

 

 

『……ん? あっ、ねえ、あそこ!』

 

「? どうしたの?」

 

「…………、また誰も居ない方向いて話してる……」

 

 

 アリアが湖の中に浮かぶ小さな小島の広場に大きな猫に似た動物の姿が見つけ、指差した。

 アベル達よりも幼い少年二人が猫らしき動物を取り囲んで、毛を引っ張ったり、叩いたり、蹴ったりと嫌がらせをしている。

 

 

『……いじめられてるみたい!』

 

 

 ……アリアは独り広場に向けて走って行ってしまった。

 

 

「あっ! アリア!?」

 

「ちょ、ちょっとアベルっ!」

 

 

 アベルとビアンカもそちらへと向かう。

 

 

『……はぁ、はぁっ! やめなさいっ! そんな弱いものいじめするなんて、悪い子っ』

 

 

 アベルとビアンカより一足先に広場に着いたアリアは、猫を庇うように覆い被さろうとする。

 

 ところが、

 

 

「ガルルルルー!」

 

『っ、怯えないで……? 助けてあげるからっ(変わったネコちゃんね)』

 

 

 動物はアリアを威嚇するように唸った。

 そこへ、アベルとビアンカが駆け付けて来る。

 

 

「……アリアっ!」

 

「っ、はぁ、はぁ……ちょっともー……、一体どうし……」

 

 

 息せき切って来た二人の前に、少年二人と大きなネコが目に入る。

 

 

「ちょっと……、ねえ、何してるの?」

 

 

 ……ビアンカが口を開いた。

 

 

「なんだよう! 今こいつをいじめて遊んでるんだ! ジャマすんなよなっ!」

 

「変わったネコだろ!? 変な声で鳴くから面白いぜっ」

 

 

 一人の少年が鼻の下を擦って、にやにやと告げる。

 もう一人の少年も、ネコのたてがみらしき毛を乱暴に引っ張った。

 

 

「ガルルルルー!」

 

「ほらっ、もっと鳴け!」

 

 

 ネコの瞳が苦痛に歪み鳴き声を上げるが、構わずぐいぐいと少年は毛を引っ張る。

 パラパラと、赤い毛が地面に散らばった。

 

 

『やめてっ!!(なんで子供って平気でこんなことするかなぁっ! 姿が見えれば止められるのに!)』

 

 

 アリアは叫ぶが姿が見えないため当然声も届かず、悔しさに唇を噛み締めていた。

 目にはちょっぴり涙が溜まっている。

 

 

「アリア……」

 

 

 アベルはそんなアリアを見ていた。

 

 

 ――この子を助ければいいのかな……? また(・・)……。

 

 

 そんなことを考えていると、ビアンカが少年達をキッと睨みつける。

 

 

「やめなさいよ! 可哀想でしょう。その子を渡しなさい」

 

 

 語気を荒げてビアンカが云うと、

 

 

「おい、このネコ渡せって。どうする?」

 

「そうだなあ。いじめるのも飽きて来たし、欲しいならあげてもいいけどさ。そうだ! レヌール城のお化けを退治してきたらなっ!」

 

「そりゃいいや! レヌール城のお化け退治と交換だな!」

 

 

 少年達は一方的にネコの引き渡し条件を話してきた。

 

 

『そんな無茶なっ!(大体オバケなんているの?)』

 

 

 アリアは抗議するが、アベルがアリアの手を取り首を左右に振る。

 

 

『……あ、えと……(もしかして、イベント……的な……?)』

 

「……お化け退治したら、その子は僕がもらうね」

 

「「いいよ~!」」

 

 

 アベルが了承すると少年達は元気に返事する。

 そして再び子ネコに嫌がらせを始めてしまった。

 

 

『あっ! こら、もうダメだってば!!』

 

 

 アリアは再び子ネコを庇おうとするが、子ネコは「ガルルルルー!」と唸り声をあげて警戒する。

 

 

「ぁ……。……アリア、行こう。ここに居たらその子、ずっといじめられることになる」

 

『けどっ(って、アベル力強いってば……!)』

 

 

 アリアはアベルに手を引かれ、その場を離れた。

 

 

「あんなに小さい子ネコをいじめるなんて許せないわ!」

 

「うん、そうだね」

 

『ビアンカちゃんていい子だね。居てくれて良かった~(さすがヒロイン!)』

 

「うん、そうだね」

 

「ちょっと変わってるけど、可愛いネコさんね」

 

「うん、そうだね」

 

 

 宿に戻る道すがら、両脇に女の子を侍らせる恰好でアベルは二人の会話に笑顔で頷いて歩いて行く。

 

 

『本当。普通の猫にしては大きい気もするけど、もふもふしてて触り心地良さそうだったなぁ』

 

「…………、…………うん、早く助けてあげたいね」

 

 

 アリアの言葉にアベルは一時真顔になると、再び破顔する。

 

 

 ――やっぱり、アリアは違うんだなぁ……。

 

 

 また(・・)、ではないんだ。

 いつも、新鮮な反応が返って来る。

 

 これから起こる出来事、何があるのかは体験してみないとわからないけど……、また(・・)と感じないのは、アリアと居る時だけだ。

 

 彼女と居たら、奇跡(・・)が起きるかもしれない。

 

 ……奇跡?

 奇跡って何……?

 

 

 アベルは首を傾げる。

 

 

 

 

 ……自分でも、何を求めているのかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿に戻ると、パパスがサンタローズに帰ろうとするが、おかみさんから「今日だけでも泊っていってくださいな」と引き留められ、パパスとアベルは一泊することになった。

 

 

「今日はもう眠ることにしよう。おやすみ、アベル」

 

 

 パパスがアベルをベッドに寝かせ、布団を掛ける。

 

 

「おやすみなさい……」

 

 

 アベルが目を閉じると、パパスは隣のベッドに入り早々にイビキを掻き始めた。

 

 

「……寝付きいいよね、パパスさん。昨日もすぐ寝てたもの……」

 

 

 アリアがアベルのベッドの端に腰掛けて、パパスを眺めながらくすくすと笑っている。

 

 

「アベルは眠ったかな……? ……アベルはいい子だからきっと眠ってるよね~?」

 

 

 アリアが大袈裟に告げると、今度はアベルを見下ろし様子を窺った。

 

 

「…………っ、……くかー、くかー……」

 

 

 アリアの視線を感じ、アベルはわざとらしく鼻息を鳴らした後で目をカッと開くと、座るアリアの手を勢い良く引く。

 そして、そのまま布団の中にアリアを引き摺り込んだ。

 

 

「アベルっ!?(やっぱり起きてたっ! てか、力強いんだってば!)」

 

「一緒に寝よっ」

 

「っ、ま、またぁ?(……子ども同士でもちょっと恥ずかしいんですけど……!?)」

 

「へへっ、アリア温かいから」

 

 

 アリアは目を丸くしながら戸惑いの顔をするも、最後には「しょうがないなぁ」と添い寝をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、夜の帳が下りて数時間もしない内に……。

 

 

「アベル起きて……。アベル……」

 

「う、ん……?」

 

 

 ビアンカの声が聞こえ、アベルは身体を起こした。

 

 

「起きたわね、アベル。じゃあ早く行きましょう。どこへって? もちろんレヌール城へよ。お化け退治をしてあの子ネコを助けなくちゃ」

 

「ぁ……。ぅん……」

 

 

 ビアンカの話を聞きながら、アベルはチラリと自分のすぐ隣に視線を移す。

 そこにはアリアがすぅすぅと寝息を立てて心地良さそうに眠っていた。

 

 

「レヌール城はこの町からずっと北にあるそうだわ。さあ、行きましょう」

 

「あっ、ちょっと待っ……(アリアを起こさないと……!)」

 

 

 アベルはアリアの肩に触れ、起こそうとするのだが。

 

 

「ねえ、また待たせるの……?」

 

「え……?」

 

「早く行こ!」

 

「あっ、ビアンカっ!!」

 

 

 怪訝な顔でビアンカが首を傾げると、アベルの手を引っ張ってベッドから引き摺り出した。

 そうして、ぐいぐいと部屋の扉まで、アベルは背を押され追い立てられる。

 

 

「……待たないんだからっ」

 

「っ、……アリアっ!」

 

「しーっ! パパスおじさまが起きちゃうわっ(だからありあ(・・・)って何なの~!? そんな呪文聞いたことないよ~!)」

 

「っ、……アリアっ、僕っ、レヌール城に……!」

 

 

 ビアンカに促されるまま、部屋を出る際に「レヌール城に行って来るね!」とだけアベルは言い残して出て行った。

 

 

「ん……、ぅぅん…………?(何か、今アベルの声したな……)」

 

 

 ――レヌール城に行くとかって聞こえたような……?

 

 

 アリアは目蓋を擦り、身体を起こして辺りを見回す。

 隣のベッドにはパパスが深い眠りに落ちているのか、イビキを掻くことなく眠っていた。

 だが、アベルの姿はどこにも見当たらない。

 

 

「……アベルがいない……。っ! レヌール城に行っちゃったの!?」

 

 

 アリアは慌てて布団から抜け出し、アベルとビアンカを追い掛けたのだった……。

 




さて、次回より、冒険再びです!

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読了お疲れ様でした、そしてお読みいただきありがとうございました!



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