ビスタの港にやって来ましたよっと。
では、本編どぞ。
――そうして道中何度か魔物に襲われたものの、四人での戦いは今までの世界から比べたらかなり楽に切り抜けることが出来た。
アリアが居るだけでこんなにも違うのかと、アベルは感心する。
いつの間にか仲間も増え、妖精の世界で会った【スピニ―】の上位種【ばくだんベビー】の【ニトロ】と、巨大なキノコの魔物【おばけキノコ】の【マッシュ】が馬車に乗り込み、先に仲間になったスラりんが二匹に何やら得意気に語っていた。
「……主殿、どうなさるおつもりで?」
「え? あ……」
前衛のアベルとピエールの前に【ビスタの港】が見えて来る。
ピエールはアベルに訊ねていた。
“どうなさるおつもり”というのは他でもない、アリアのことである。
彼女を手放したくない想いはあるものの、子供の頃とは違って無理強いはできない。
大人になった今、アベルはそれくらいの配慮は持ち合わせているのだ。
「彼女を船に乗せたら……、もう二度と……」
ボソッと、ピエールがアベルを見上げる。
「ぅ……、わ、わかってるよ。けど……、昔のようにそう簡単に引き留めるわけに行かないんだよ」
「昔のように……、とは? 昔も引き留められたのですか?」
「う……、君、鋭いなぁ……。そうだよ、彼女は捕まえてないとすぐ居なくなっちゃうんだ」
気が付くと、消えてしまうんだよな……すぐ見つけられるけど……。
故意にせよ、たまたまにせよ、アベルは昔アリアが何度も居なくなったことを思い出していた。
その言葉に、ピエールが深く頷く。
「……ああ……、確かに……」
「あ、納得するんだ」
「ええ、アリア嬢は自由な方ですから……。気が付くと居なくなってますね……。すぐ見つかりますが……」
なんと、ピエールもオラクルベリーで何度かアリアを見失ったことがあるらしい。
「…………ピエール」
「はい」
「……僕はまだ、アリアを、あ、あ、愛してる……とか……そういった想いはないんだ。でも、二度と会えないのは嫌だと思ってる。だから、引き留めるつもりではいるよ。けど、どう言えばいいのかわからないんだ」
アベルはほんのりと頬を染めてピエールに自分の今の想いを話した。
「……そう、ですか……。まあ、例え主殿が愛しておられても、結ばれることはありませんからね……」
ピエールは思案顔で小さく呟く。
「え……、今何て言ったの?」
「あ、いえ……。今はまだお話出来そうにないです」
「え? あ、そ、そう?」
アベルは首を傾げる。
ピエールは自分よりもより鮮明に先のことを知っている気がするのだが、どうなのだろうか……と。
「はい。
「…………つまり、君はこの先何が起こるか全て知っているということかい?」
ピエールが兜の口元をカチャカチャと手で触れて鳴らすと、アベルは訊ねる。
仲間になった時にも“必要な時、必要なご助言を差し上げます”とピエールは云っていたのだ。
――なら、そういうことなのだろう?
「……あ、全てというわけではないのです。どうも……私の知っている記憶とこの世界は違うようでして……」
「あー……、それってアリアがいる……からかな?」
「…………アリア嬢がいるから……? ああ……」
アベルの言葉にピエールは言われてみればそんな気も……と、何度かうんうんと首を上下させた。
「ははっ、彼女って本当、不思議な
「その記憶を取り戻して差し上げねば、何も始まらないかと」
「……ああ、そうだね。何とか……するしかないね」
さてふりだしに戻ったぞと、アベルはどうやってアリアを引き留めるか本気で考えてみる。
が、目前には【ビスタの港】が迫っていた。
◇
アベルが答えを出せないまま、【ビスタの港】に到着してしまった。
港は馬車のまま入って行けるので、一行はそのまま【ビスタの港】へと歩いて行く。
待合所には筋肉隆々のマスク男が座っていた。
待合所まで下りて来ると、アリアが腰掛けるマスク男に話し掛ける。
「あの、船に乗りたいのですがいつ頃……」
男と話すアリアの後ろで、ピエールが肘でアベルを突いていた。
アベルは「うーん、うーん」と唸っている。
ヘンリーが二人の様子を訝しんで横目でちらちら。
アベルは考えが纏まらないまま、とりあえずアリアの元へ行くことにした。
「アリ……」
アベルが声を掛けようとすると遮るようにマスク男が話しだす。
「ここはビスタの港だ。船に乗りに来たのかい? でも船は来ないぜっ」
「えっ?」
「ラインハット王からの命令で王家が必要な時以外はこの港を使えないんだよ。そんなわけで、どの船もこのビスタの港には寄り付かねえってわけよ」
「そんな……」
なんと! 船は来ないらしい。
男から船は来ないと聞いてアリアはショックを受けるが、その後ろでアベルは不謹慎にも口角を上げていた。
そして、ショックで俯くアリアの肩にアベルはそっと触れる。
「……アリアさん、良かったらしばらく一緒に旅をしない?」
――アリアには悪いけど、僕にとってはいい機会だから利用させてもらうよ。
アベルはアリアを旅に誘うことにしたのだった。
「え……」
「修道院にも戻れないんでしょ? 僕と一緒なら君を護ってあげられるし、どうかな?」
「っ、私、力が弱くて……、ご迷惑では……?」
アリアはおずおずとアベルを見上げる。
「迷惑だなんてとんでもない! あれだけ呪文が使えれば充分だよ」
「でも……、私、得体の知れない人間なのに……。一度しか暴走していないとはいえ、いつまた呪いが発動するかもわかりませんし……」
海風が吹いて、アリアの髪を揺らす。
甘く爽やかで柔らかい香りが辺りに香る。
「僕は君の過去を知っているし、得体が知れないとか……君は素敵な人だからそんなこと問題ないよ。もし暴走したら僕が止めればいい」
「っ、アベルさん…………」
アベルの言葉にアリアは息を呑んだ。
いつも目を逸らす癖に、今は真っ直ぐに自分を見下ろしているアベルの優しい瞳に囚われたように目を逸らせなかった。
「……ダメ、かな?」
アベルはスッと手を差し出す。
“この手を取ってくれたら、僕は君をずっと護ってあげるよ”と手が語っているようで……。
「っ……、っ、ぁ……」
アリアの顔は真っ赤に染まってしまった。
「…………、……っ、もし、ダメでも僕は諦めないけどね」
アリアの顔真っ赤だ……!!
何、どうして?
僕なんか変なこと言ったっけ!!?
アベルは釣られて頬を赤く染めるが、手はそのままアリアの返事を待つ。
「え……」
「僕に、君の記憶を取り戻す手伝いをさせて欲しいんだ。……と、友達としてね」
アベルは後ろ頭を空いた手で掻いてはにかむ。
「ぁ、友達として……、ぁぁ……。…………ふふっ、ありがとうございます。でしたら、しばらくの間お世話になります」
照れたようにはにかむアベルに、アリアは勘違いだと気付いて差し出された手を漸く取った。
「……小さい手……(昨日も思ったけどアリアの手、滑々でもちもちしてて……気持ちいい……!!)」
「ぁっ、アベルさんの手大きいですねっ……!(男の人の手って大きい……!)」
せっかくなのでアベルはアリアの手をしばらく放さず握っていた。
アリアはアリアで、アベルの大きな手のぬくもりに心が落ち着く気がしてそのままにしている。
二人は黙ったまま互いの手元を見ていたのだった。
確か、ラインハットを攻略しても馬車を手に入れないと船が来ないとかいう。フラグがあったような気がします。
アベルさん付け込んで、アリアさんを旅に同行させることに成功。
なんだかんだでイチャイチャしてますかね?
----------------------------------------------------------------------
評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!