ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

おてて繋いで見つめ合うものの……。

では、本編どぞ!



第百六十話 一路サンタローズへ

 

 甘やかな時間が二人の間に流れた気がしたのも束の間。

 

 

「……ちょっとお二人さん。船が出ないならここに居ても意味なくない? そろそろ出ようぜ」

 

「そ、そうですよ! ここは海風が冷たいですから風邪をひきますよ!」

 

 

 ヘンリーとピエールがアベルとアリアの傍にやって来て、割って入って来る。

 

 

「「え」」

 

 

 アベルとアリアは二人に視線を移し、“わぁっ!”と驚いて慌てて手を放した。

 そして、

 

 

「……っ、くしょんっ!」

 

 

 ピエールが言った通りにアリアがくしゃみを一つ。

 

 

「……中で温かいものでも いただいてから出ましょう」

 

「ズズッ……すみません……」

 

 

 アリアが鼻を啜(すす)るとピエールが先導し、待合所の隣にある港の建物内へと入って行く。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「すみません、奥方。何か温かいものを一杯いただけませんか?」

 

「まあまあ……外は寒かったろう? お茶くらいしかないけど今あげようね」

 

 

 建物の中に入ると、ふくよかな婦人が湯を沸かし、お茶を淹れてくれることになった。

 

 

「……船が出てなくてがっかりしたろう?」

 

 

 コポコポコポ……。

 

 ポットからカップにお茶を注ぎながら、婦人が語る。

 湯気と共に何のお茶かはわからないが茶葉のいい香りがした。

 

 

「あ、はい……」「あ、いえ……」

 

 

 アリアはお茶が注がれていく様子を眺めながら頷いた。

 同時にアベルはアリアとは真逆で、頭を左右に振っている。

 

 ついでにヘンリーとピエールも頭を左右に振っているので……、

 

 

「おや……、船が出なくて良かったみたいだねぇ、フフフ……」

 

 

 婦人は笑っていた。

 その顔にアリアは首を傾げ、男達は「ハハハ……」と照れ笑いを浮かべている。

 

 

「まったく嫌な世の中だよ。ラインハットの国はどうなっちまうのかねえ……」

 

 

 婦人はお茶を淹れ終えると、“はぁ”という溜息と共にポットを持って片付けに行ってしまった。

 婦人の言葉にヘンリーは俯き黙り込んでお茶を飲む。

 

 アベル達は温かいお茶を一杯ご馳走になってから建物を出たのだった。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした」

 

「風邪引かないようにね。お嬢ちゃん、その格好じゃいつ風邪を引いても知らないよ?」

 

「あっ、あはは……」

 

 

 玄関先でアリアの服装を婦人が指摘され建物を後にすると、アリアは“やっぱり長袖・長ズボンが良かったでしょうか……”とアベル達に訊ねていた。

 

 

「「「いやっ! このままで!!」」」

 

 

 アベル達は図らずも息をピッタリと合わせ、このままでいいと太鼓判を押す。

 

 

「あ、そ、そうですか?」

 

 

 この格好気に入っているので良かったですと、アリアはホッと胸を撫で下ろした。

 

 

「「「…………うん」」」

 

 

 長袖・長ズボンは……。

 うん、袖なし・ミニスカの方が断然いい!!

 

 

 アベル達は互いに視線を交わし、満場一致で頷くのだった。

 そうして一行はここに用はないとして、港を出ることにした。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

「さっき……ここに来る途中、北にサンタローズが見えたね」

 

 

 【ビスタの港】を出て、アベルが口を開く。

 

 

「あ、サンタローズって確か……アベルの……?」

 

 

 ヘンリーがそういえばアベルはサンタローズの出身だったっけと訊ねていた。

 

 

「うん。寄ってみようと思うんだけど、いいかな?」

 

「ラインハットがどうなったか気にはなるけど、オレは戻らない方がいいだろうし……。あの国のことは忘れて何か自分の目的が見つかるまでアベルの旅に付き合うよ」

 

 

 アベルが近くまで来たし、せっかくだからと提案してみただけなのだが、ヘンリーは快諾してくれる。

 

 

「ヘンリー、ありがとう。……アリアさんはどうかな?」

 

「あっ、私も構いませんよ。……もしかして、私がサンタローズに居たことってありますか?」

 

 

 アベルに問われて、アリアも快諾する。

 

 

「ああ、あるよ。何か思い出せるといいね」

 

 

 アリアに優しく微笑み掛け、アベルはサンタローズの記憶を辿った。

 

 

 一緒に、洞窟に行ったっけ。

 一緒に、追いかけっこもしたね。

 一緒に、妖精の国にも行ったんだよ……。

 

 

 ――君は憶えていないのだろうけど……。

 

 

 少し淋しさを感じつつ、目の前のアリアを見下ろす。

 すると、

 

 

「はいっ」

 

 

 アベルの想いなど知らないアリアは、真っ直ぐにアベルを見上げ花が綻ぶような笑顔を見せた。

 

 

「っ……! ぁ、う、うん……」

 

 

 天使のような明るい笑顔にアベルは釘付けになる。

 

 

 

 

 さ、淋しいとか、ど、どうでもいっかなー……。

 今のままで充分カワイイし……。

 

 

 

 

 記憶なんて戻らなくても、それはそれでいいやと思ったアベルだった。

 

 

 

 

◇

 

 

 

 

 サンタローズに近付くにつれ、アベルのこめかみにチリチリと痛みが走る。

 

 

「っっ……!」

 

 

 ――ああ、この感じ……。

 

 

「主殿……?」

 

 

 隣を歩くピエールがアベルを窺うと(ヘンリーとアリアは馬車の後ろを歩いている)、アベルは痛むこめかみに手を添え告げた。

 

 

「……ピエール、来たよ。アリアに再会してから感じなかったからもうないのかと思ってたけど、サンタローズの記憶……。村が……酷い目に……」

 

 

 アベルは眉を顰めて、苦々しく唇を噛む。

 アベルの脳裏に村の惨状が過ぎった。

 

 別の世界で来訪した際、村は燃やされた後だった。

 家々は燃え朽ちて、村人も多く亡くなった。残った人々は貧しい生活を余儀なくされている。

 

 

 ――理由は、父さんがヘンリーを攫ったからというでっち上げによるもの……。

 

 

「…………はい」

 

「っ、サンチョを捜さないと!」

 

 

 ピエールが静かに頷くとアベルはパトリシアの手綱をピエールに渡し、目前に迫るサンタローズへと一人駆け出した。

 

 

「ん? あ、おいっ、どうしたアベル!?」

 

「あっ、アベルさんっ!?」

 

 

 後列に居るヘンリーとアリアが駆けて行くアベルに呼び掛けるが、アベルは走って行ってしまう。

 

 

「っ、ヘンリーさん、私も行きますねっ!」

 

「えっ、アリアさん!?」

 

「アリア嬢っ!?」

 

 

 アリアもヘンリーとピエールが呼び止めるのを無視して走って行ってしまった。

 

 

「…………な、何だよ……二人して……」

 

「……アリア嬢……」

 

 

 残された二人はそれぞれ、前と後ろで馬車を引いてサンタローズに向かうことにしたのだった。

 




アベルさん、アリアさんと見つめ合うものの、二人の世界にはまだまだ至らず……チッ。

そして、久しぶりのあの感覚がやって来ました。
どこまで思い出しましたかね。

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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!
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