サンタローズにやって来ましたよ、と。
では、本編どぞ!
サンタローズに向かって一人走り出したアベルを追って、アリアは追いつくと声を掛けた。
「はぁっ、はぁっ、っ、アベルさんっ! ま、待ってくださいっ……!」
「はぁ、はぁ……あ、アリアさん……?(追い掛けて来てくれたのか……?)」
アベルは立ち止まって振り返り、膝に手をついて肩で息をするアリアを見下ろす。
「はぁっ、はぁ……、この先にサンタローズが……?」
「あ、ああ……、そうなんだ……、そうなんだけど……」
アリアが訊ねると、アベルの瞳は動揺を隠せない程狼狽えているように見えた。
「はぁ…………、私も、一緒に行きますっ」
「…………、あ、ああ……」
真剣な顔でアリアはアベルを真直ぐに見上げる。
「…………サンタローズで何かあったんですか?」
「え……?」
「…………何だかアベルさん、不安そうな顔されてるから……」
アリアの紫のアメジストがじっと見つめると、アベルはこくりと小さく咽喉を鳴らす。
「不安…………。あ……、いや、大丈夫。ちょっと動揺しただけ。今更動揺しても意味はないんだった……」
片手で額を抱えて、はぁ、とアベルは息を吐いた。
少し落ち着いた気がする。
そうだ、今急いだところで村が
僕が居ない時に起こったことなんだ。
サンチョを捜したところで、ここには居ない気がする……。
――だけど、胸が痛む……。
アベルは胸元を掴み、ぎゅっと握りしめた。
「え?」
「…………一緒に、行こう」
アリアがアベルの様子に首を傾げ瞬きをすると、アベルは僅かに口角を上げ淋し気に笑う。
「はい……」
その横顔をアリアは心苦しそうに見ていた。
◇
「っ……」
「ぁ……」
サンタローズに一歩足を踏み入れると、アベルとアリアは絶句した。
アベルが思い出した通り家々は焼け落ち、かつての美しい村の面影など見る影もない……、二人黙ったまま高台に登り眺めてみれば、見るも無残な村の様相が眼前に広がる。
「…………ぁ、やっぱり……」
アベルは眉を歪ませ片手で額を抱える。
空いた片手は拳を握り締め、小さく震えていた。
「……っ……」
アリアは黙ったまま、そっとアベルの手を取り両手で包み込む。
「っ……? ぁ、アリアさん……?」
「…………ここで、何があったんでしょうか……。とても…………、胸が…………苦しい……」
恐る恐るアベルがアリアの様子を窺うと、アリアの瞳から透明な雫が零れ落ちていた。
「っ!? ……アリア…………、っ、大丈夫かい……?」
アベルはぎょっとしてアリアの方へと向き直ると、静かに訊ねてみる。
「え……?」
「……な、涙が……」
「涙……? っ! ……ぁ、す、すみません……。涙が勝手に……」
訊ねられ首を傾げていたアリアだったが、アベルに指摘されると、ハッとしてアベルの手を放して涙を拭った。
「や、やだ私ったら……。どうして涙なんて……。っ、すんっ、どうしましょう……、止まらない……」
アリアは涙が止まらないのか、必死で涙を拭っている。
「何か思い出した……、とか?」
思い出してくれたなら嬉しいけれど……、とアベルはアリアを見下ろし様子を見ていた。
「…………いいえ、何も。でも……、何だか胸が痛くて……」
「……昔は綺麗な村だったんだ。ここで僕達一緒に散歩したり、追いかけっこをしたんだよ……。そこは宿屋でね。地下の酒場で妖精に会って妖精の国にも行ったんだよ」
頭を左右に振って俯き胸の前で手を組むアリアに、記憶が戻るきっかけになればとアベルは過去の話を少ししてみる。
まだ迷う部分もあるがピエールに云われた通り、アリアに記憶を取り戻させてやることにしたのだった。
宿屋……と説明した場所はすっかり焼け落ちており、記憶の中の宿屋とは程遠かった。
これでは思い出せないかな……とアベルは心配するが、
「そうなのですか? ……では、その記憶が私の中に眠っているんですね……」
アリアは宿屋跡地を見ながら涙を拭い、やっと止まったのかアベルを見上げて儚げに微笑む。
「眠って……。あ」
“私、眠ってるから……”
修道院に流れ着き、目を覚ます前に見た夢の中の少女が云った言葉がアベルの頭を過ぎる。
「アベルさん……? どうかしましたか?」
アリアは不思議そうな顔でアベルをじっと見上げていた。
「あ、いや……。アリア、君はやっぱり彼女なんだね」
「…………っ、えと? な、何でしょうか……?」
「疑ってるわけじゃないんだ。君はやっぱり僕の知ってるアリアなんだと思う。改めて言うよ。君の記憶を、僕は取り戻させてやりたい。協力させて欲しい」
アベルはアリアの手を取り、彼女を真っ直ぐに見つめる。
「ぁ……、……っ、はい……。私も……思い……、出したいです……」
「…………この村で思い出せるといいね」
おずおずとアリアが頬を真っ赤にして俯くと、アベルははにかんでアリアの手を両手で包み込んで優しく告げた。
「は、はい……(手が……温かい……)」
アベルさんの手、大きいな……。
温かい……。
アリアはアベルの両手に包まれた自分の手をじっと見つめ、急に恥ずかしくなり顔を上げられなくなってしまった。
耳まで赤い。
「…………っ、ぁっ、あっちに行ってみようかっ!」
アリア、耳が赤く色付いてる……。
顔も赤い……?
っ、僕も顔が熱くなって来たっ!
アベルもアリアの耳が赤いことに気が付いたのか頬を赤く染めて、片手だけ放して彼女の手を引いてかつての自宅へと向かう。
アリアは嫌がりもせずにそのままアベルに手を引かれて行った。
「…………なーんかいい感じだよなぁ?」
「…………ですね」
「「はぁ~~……」」
アベルとアリアの後ろで、漸く追いついたヘンリーとピエールが二人を見て深い溜息を吐く。
「ピエール、そう落ち込むなって」
「いえ、落ち込んでは……。ヘンリー殿こそ」
「……はは。まあ少しはね」
二人もアベルとアリアの後を追うのだった。
ちょっとずつ、二人の距離が近くなって来てますねっ!
早くアリアさん記憶取り戻さないかな~っと。
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