お喋りなスライムに話を聞きましょう。
では、本編どぞ。
「アリアっ!」
ドサッ! っと。
アベルは咄嗟に腕を差し出し、落ちて来る彼女を受け止めたのだった。
アリアはアベルの腕の中で目蓋をぎゅっと閉じて縮こまっている。
「……っっ……!!」
「……大丈夫?」
――アリア震えてる……、か、可愛いな……。
アベルはふるふると小さく震えるアリアの頭上にそっと囁く。
すると、アリアは恐る恐る目蓋を開いたのだった。
「へ……? あ…………っ、アベルさん……。ありがとうございます……」
アベルが自分を抱き上げていることがわかると、アリアの瞳が見開かれ頬が真っ赤に染まっていく。
「手が滑ったんだね。気を付けないと落っこちるよ?」
うわーーーーっ!!
アリア軽いっ、柔らかいっ!
そしていい匂いがするぅぅぅぅぅ!!!
アベルはアリアと視線を交わせないよう平静を装って告げながら、彼女の髪を気付かれないように、出来るだけクンカクンカとさり気なく鼻をひくつかせていた。
「はい、ごめんなさい」
――アベルさん、お日様みたいな匂いがする……。
アリアもぼーっとアベルの匂いを感じながら地面に下ろしてもらうのを待つ。
が、アベルがアリアを地面に下ろす気配はない。
「…………すー……はー……」
それどころか、アベルは無意識にアリアの髪に徐々に鼻を埋めて香りを堪能しだしてしまっていた。
「……っ、あ、あの……、アベルさん……?(吐息が……! ま、まさかニオイを嗅いで……!?)」
――私、ひょっとして、臭いですかっ!?
さっき走って汗も掻いたし……と、アリアの心臓がドッドッドッと跳ねる。
ただでさえ横抱きに抱えられ恥ずかしいのにニオイまで嗅がれるとは、羞恥の極み。
アリアは顔が熱くて仕方なかった。
「はぁ……(好い匂い……。ってこれ以上嗅いだらバレるかな……)」
既にバレているとも知らずにアベルは すんすんと最後にもうちょっとだけ、としっかり鼻の奥にアリアの匂いを焼き付ける。
「っ、あっ、アベルさんっ!? あのっ」
「…………はぁ……(何この好い香り……興奮するような落ち着くような……ずっと嗅いでいたい……)」
――もうちょっと、もうちょっとだけ……。
アリアが困った様子で訴え始めるが、アベルは自身に“バレてないバレてない”と言い聞かせ、そのまま彼女の
「ンっ……!」
アベルの鼻先が項に触れると、ビクッとアリアの身体が反応する。
――アベルさんやっぱりニオイ嗅いでるっ! 恥ずかしいっっ!!
アリアは身体を強張らせた。
と、その瞬間。
ベシッ。と、アベルの頭に背後から手刀が入れられる。
「おい、ヘンタイ」
そして、ヘンリーの不機嫌な声。
「っ……!?」
「アリアさんを下ろしてやれよ」
アベルがヘンリーの声に振り返ると、ヘンリーがピエールを伴い井戸の底に降りてきていたのだった。
「っ、あ、へ、ヘンリー……! っと、ご、ごめんアリア、今下ろすね」
「え、あっ、わっ!?」
アベルは我に返り漸くアリアを地面に下ろす。
今更照れ出したらしく、余裕がないのか ちょっぴり乱暴に下ろした為にアリアは尻餅を搗いてしまった。
「あっ、ご、ごめん!(しまった、力加減を間違えたっ!)」
「い、いえ……」
アベルは慌ててアリアの手を引いて立たせる。
アリアは“大丈夫ですっ”とお尻に付いた砂を払っていた。
「ったく……、お前って奴は……、はぁ……」
――目も合わせられず照れてたかと思ってたら、首に顔埋めてるし……やることが極端なんだよ!
ヘンリーはアベルの不可解な行動に溜息を吐くしかなかった。
「……大丈夫だったかい? アベルに変なことされなかった?」
アリアに訊ねるヘンリーの後ろでアベルが「別に変なことなんかしてない!」と首を左右に振っている。
バレていないと思っているらしい。
「っ、あっ、はいっ、大丈夫です。私が手を滑らせたところをアベルさんが受け止めて下さって……」
ちらっとアベルに視線を送って、アリアは頬を赤く染めたままヘンリーを見上げた。
「そっか、ならいいけど。こいつ、結構むっつりなとこあるから気を付けた方がいいぜ!」
「なっ!? む、むっつりって……!!」
アベルの肩に腕を回して、ヘンリーがニヤニヤと口を歪ませるとアベルの頬が赤くなる。
「あっ……、っ、……はいっ、気を付けます」
アリアは理解したのか、深く頷いた。
「アリアっ! 僕はそんなっ!!」
――誤解なんだっ!!
アベルは目で訴えかけたが、アリアは上目遣いで小さく呟く。
「っ……、だってアベルさん、えっちなんだもん……」
「もん、って…………っ!!(な、に、その語尾……!?)」
かぁあああああっ! と。
アベルの顔が瞬く間に沸騰し真っ赤に茹る。
「…………もんって、可愛いかよ……」
ヘンリーも聞こえたのか口元を覆ってアリアから視線を逸らした。
と、
「あ、スライムがいる」
「え? あ、本当だ」
視線を逸らした先、井戸の奥にスライムがいるのをヘンリーは見つけ指差した。
アベルも云われて視線を奥へと向ける。
「退治するか?」
「待って下さい、あの子震えています」
武器を構えヘンリーが訊ねると、アリアは武器を下ろすように制止する。
奥にいるスライムは ぶるぶると震え上がっていた。
「……話が出来るかもしれない。訊いてみるよ」
「あっ、アベルさん! 気を付けて下さ……」
「大丈夫、僕に任せて。もし襲って来ても僕はスライムくらいじゃ倒れたりしないよ」
アベルは心配そうに自分を見るアリアの頭を ぽんぽんと軽く撫で、一人で奥へと歩いて行く。
「……あ、はい……」
アリアは撫でられた頭を照れ臭そうに触れてから、アベルの後ろについて行った。
◇◆◇
「いじめないで!」
アベルが【スライム】に寄って行くと、【スライム】は勝手に喋り出す。
「いじめませんよ? 私達あなたのお話を聞きに来たんです」
【スライム】が喋り出したのでアリアはアベルの隣に位置取って、【スライム】と目線が近くなるようしゃがんだ。
「ボクはずっと昔洞窟の奥にいたスライムだよ。この村がものすごい火事になったの知ってるよ。襲って来た兵士たちちょっと様子が変だったんだよね」
「……ああ! あの! って、やっぱり火事があったんだね……」
――そういえば、【サンタローズの洞窟】の奥に喋るスライムがいたっけ……?
アベルは薄っすらと洞窟奥の【スライム】を思い出しつつ、大きな火事があったことはやはり事実なのか……、自分の記憶は正しいのだと再確認したのだった。
「火事……」
アリアが悲し気に瞳を伏せる。と、
「襲ってきた兵士たちの様子が変だった……? いったい何があったんだ?」
ヘンリーは顎に手を当て眉間に皺を寄せた。
そんな中、【スライム】は話を続ける。
「それから洞窟の奥にパパスさんの大事な部屋があったのも知ってるもん。イカダに乗って洞窟に入った先のずっと奥だよ」
「え……、と、父さんの……部屋?」
――その記憶はまだ来てないけど……、うん、行けば思い出せるかもしれないな。
お喋りな【スライム】からいい事を聞いたと、アベルは頷いた。
「アベルさんのお父さまのお部屋……」
「隠し部屋かぁ……」
アベルの背後でアリアとヘンリーもパパスの部屋が気になるのか黙り込んでしまう。
「……では、次の目的地も決まりましたし、地上に戻りましょう」
これまで黙っていたピエールが急に話し出したかと思ったら、踵を返し地上へと井戸綱を登って行った。
アベルさん……。
Ⅲなら性格は【むっつりスケベ】に決まりですかね……。
アリアさんは【セクシーギャル】ですね。能力の伸び良し。
「誤解なんだ!」とアベルさんよく言うんだけど、全然誤解じゃないっていう。
大人になったとはいえ、良くも悪くも素直な性格は変わっていないような気がします。
次回は、ちょいえち悪ふざけ回です。先に謝っておきます、ごめんちゃい。
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読んでいただきありがとうございましたっ!